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FOMC前後の調整売りと買い戻しで景気循環系商品は前日比マイナス
  • MRA商品市場レポート

2023年7月27日 第2508号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「FOMC前後の調整売りと買い戻しで景気循環系商品は前日比マイナス」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、非鉄金属やエネルギーなどの景気循環系商品が売られ、その他農産品などの非景気循環銘柄が上昇する流れとなった。

FOMCを控えてこれまで積極的に物色されてきた景気循環系商品が調整売りにおされ、金融政策動向と余り関係がないその他農産品が物色されたためと考えられる。

昨日のFOMCはほぼ予想通りで、市場参加者は「利上げ打ち止め、来年は利下げ」という期待を高めている状況。しかしこの状態が容認されると原油価格の上昇がその他の商品の上昇に繋がりかねない(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)。

【本日の見通し】

本日は、FOMCに続き、ECB政策会合が行われる。欧州の景況感は悪化しているもののインフレ抑制のための利上げは必要との判断であり、25bp程度の政策金利の引き上げが行われる見通し。

市場の予想は米国は年内利上げは予想されておらず、ECBはあと2回弱の利上げが見込まれている。このことは金利差に着目するとドル安が進行しやすくなることを意味する。

パウエル議長が言うように「FRBメンバーが最早リセッションを想定していない」ならば、景気循環系ドル建て商品価格にはかなり顕著な上昇圧力が掛るのではないか。

本日の注目統計、イベントは以下の通り。米GDPでのコア物価指数に注目。

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 235千件(先週 228千件)

・6月米耐久財受注 前月比+1.3%(前月+1.8%) コア資本財受注 ▲0.1%(+0.7%)

・Q223米GDP 市場予想 前期比年率+1.8%(前期+2.0%) 個人消費 +1.2%(+4.2%) GDP価格指数 +3.0%(+4.1%) コア指数 +4.0%(+4.9%)

【昨日のトピックス】

昨日のFOMCは市場予想通り、25bpの利上げが決定され、いったん利上げが打ち止めになることを確認する内容だった。

ただし、今後のFOMCは全てライブになる可能性があり、まだ年内追加利上げの可能性もパウエル議長は排除していない。

しかし、これは今週の日銀政策会合でも別次元で議論されるだろうが、コロナショック後以降にFRBが実施したQEの後始末が終っておらず、政策金利引き上げにもかかわらず、長期金利が上昇せず、十分な景気過熱鎮静効果が得られていない。

結局、長期金利を意図的に上昇抑制している時点で、現在の期近の金融政策の効果が相殺されているということだろう。

実際、FEDのバランスシートは7月19日時点で8兆2,379億ドルと、コロナショック前の2020年1月1日時点の4兆1,270億ドルの2倍近い水準を維持しており、米国も「止めた」とはいえ、YCCが継続してしまっていること示唆している。

このことは、これまで以上に不要な長期金利の低下をもたらし、逆イールドカーブ期間の長期化をもたらす一因となっている。

結果、住宅投資などは金利引き上げにもかかわらず好調であり、実際、昨日の米新築住宅販売も、減速はしているものの、市場予想ほど悪くなかった。

日銀が筆頭ではあるが、中央銀行のバランスシート拡大政策が、伝統的な金利を主体とする金融政策の効果を減じており、異常な過剰流動性供給策が各方面にインフレなどの悪影響や軋みをもたらしていることは周知の事実。

長期金利を放置する中で、金利引き上げも終了、来年は金利引下げとなるならば、再びインフレになる可能性は否定できない。金融政策動向がドル安を誘発し、原油などのインフレの指標となる資産価格を押し上げてしまう可能性があるからだ。

過去の例では、1.金融引締め終了→原油価格上昇、2.その後に訪れる景気後退局面で原油価格下落、3.景気後退局面終了で原油価格上昇、となっていたが、。昨日のパウエル議長は会見で、「FRBメンバーはもはやリセッションを想定していない」とまで発言している。

このことは、1.の後に訪れるはずの2.の過程をパスして3.に移行することを意味する。この場合、原油価格の上昇は顕著なものになる怖れがある。

そうなるとリビングコストの上昇で国民からの不満が高まり、2024年の利上げ継続、というシナリオも排除できなくなる。インフレ抑制が政策金利引き上げの目的であり、「年内で利上げ終了が目的ではない」からだ。

また同時に、既に実質政策金利はプラスに転じ、金融政策は引締め状態にある。この状態を放置すると恐らく、教育ローンの支払い免除期間が終了する9月以降頃から、個人消費が減速し、景気が急速に悪化する可能性も否定できない。

このとき、安直な利下げが上述のように再びインフレをもたらす可能性もある。米金融政策と景況感も転換点に差し掛かっていると言える。

そもそも米民主党は、「インフレ早期沈静化→雇用環境悪化→2024年は雇用対策で大統領選挙を逃げ切り」と考えていたのだろうが、そのシナリオの達成はなんとも言えないところ。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は乱高下した結果、下落した。基本、200日移動平均線のレジスタンスラインを上抜けする中でテクニカルな売買が価格を主導しているが、昨日発表された米石油統計で、ガソリン・ディスティレートを含む石油製品出荷が減速、コロナショック時の2020年を除く過去5年平均を下回っていることで、景気減速、需要減少ヘの懸念が強まったことが背景。

ただし、FOMCがほぼ予想通りとなり、利上げが終盤に差し掛かっていると判断されたことがドルを押し下げたため、引けに掛けては下げ幅を削った。

原油価格は景気動向に左右されるが、米製造業PMIやのコンファレンスボード消費者信頼感指数をみるに、米景気が「まだ減速していない」ことを示唆している。景気の減速がなければ原油価格には上昇圧力が掛ることになる。

しかしこれまで逆イールド期間の継続と、景気後退局面入が同時に起きていることはなく、逆イールド期間狩猟後に(金融緩和開始)原油価格が上昇し、その後、景気後退を経て価格が下落、景気後退局面が終了してから再び価格が上昇する、というパスを経ることが一般的(というか1990年以降は全てそうなっている)だった。

今回そのバスを経ずに景気が底入れするならば、原油価格は想定よりもかなり早く上昇し、Brentで90ドルを目指す展開になってもおかしくない。

ただ、そのような景気過熱とインフレを当局が容認するとは考え難く、原油価格動向がその他の商品価格やサービス価格(分りやすいところで行けば、旅行サービス関連価格は上昇することに)にも上昇圧力が掛ることになる。

この場合、期待インフレ率も上昇するため現在プラスの実質金利に低下圧力が掛ることから、2024年に利下げでなく再度の金融再度引締めのリスクを高めることも否定できない。

OPECプラスは2024年も減産継続、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意、ロシアも自主的に▲50万バレルの輸出削減を決定した(詳細は以下の通り)。

しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。

問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。

 OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
 サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
 ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施

 サウジ 7月以降も▲100万バレルの追加減産

サウジアラビアの財政均衡価格は81ドル、OPECバスケット価格のここまでの平均が80ドル程度であるため、やや予算を下回っていることから多少の減産で価格が上昇するなら、減産はありと判断していると考えられる。

一方、ロシアは2023年度のウラル原油前提価格を70.1ドルに設定しているとみられるが、今年のウラルの平均価格は50ドル台であり、想定を大きく下回っている。

7月18日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+20,044枚、ショートが▲12,622枚と、強気ポジションを維持。

Brentはロングが▲30,891枚、ショートが+9,442枚と、リビアの生産再開などが材料になった可能性が高い。

6月の中国の原油輸入は前年比+45.3%の5,206万2,000トン(前月+12.3%の5,144万4,000トン)と伸びが前月からさらに加速した。この水準は同じ時期の過去5年の最高水準に迫る。

今回の輸入増加は、製油業者のメンテナンス終了と、ティーポットと言われる独立系生産者の輸入枠拡大が影響したとみられる。

一方、石油製品は輸入が前年比+168.8%の441万トン(前月+195.9%の438万トン)とこちらも大幅に加速、輸出は+40.9%の451万トン(▲1.8%の375万トン)と回復したが、過去5年平均は下回っている。

国内景気の回復が遅れる中、原油の輸入増加は先々の製品輸出の増加に繋がる可能性がある。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、FOMCの結果が想定通りだったことから、金融面での波乱はないものと思われるが、9月以降も利上げの可能性が示唆されたこと、昨日の石油製品統計をみるに、徐々に個人消費にもマイナスの影響が出ることが想定されることから、下値余地を探る展開を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。気温上昇派あるものの、太陽光や風力などの発電が回復していること、ガス貯蔵設備のキャパシティ問題、これまでの上昇の反動から水準を切下げた。

ただし、ロシアからのガス供給停止のリスクも無視できないため、冬場の価格は高値を維持している状況。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要削減をしなくても足りるとの結果であるが、2025年以降、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

しかし、仮にロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲10%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

ただし、上記のリスクシナリオ(在庫減少)が顕在化すれば、TTF価格は上昇し、延いてはJKM価格の上昇要因となる(供給が足りても在庫減少で価格は上がる)。

また、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(価格が上昇擦る)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。しかし、ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。今年はエルニーニョ現象、冬はスーパーエルニーニョ、ないしは再びラニーニャ現象の発生が懸念されており、そのリスクは無視できない。

3.4.は顕在化している。特に3.に関しては恐らく今年がロシア・ウクライナ戦争の山場である可能性が高く、ロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。

今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇し、過去2年のレンジを上抜けした。気温の上昇や冬場に向けた調達圧力が高まっているものと考えられる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス市場は期近が小幅に下落した。米北東部の気温低下見通しを南部の気温上昇予想が相殺していたが、南部の気温上昇見通しが若干緩和したことが背景。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は下落した。欧州ガス価格の下落を受けて水準訂正が起きた。

現在のJLCの水準は12.74ドルであり、現在のスポット価格は、かなりその差を縮小させたが、まだこの水準を下回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

6月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+19.2%の1,039万トン(前月+17.3%の1,064万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産の減少や、気温上昇による発電向けの需要増加が輸入を高水準に維持している可能性がある。

6月のパイプラインベースの輸入は前年比+13.6%の443万トン(前月+1.9%の423万トン)と過去5年の最高水準(390万トン)を上回った。

6月のLNG輸入は前年比+23.5%の595万8,000トン(前月+30.2%の641万3,000トン)と前月から伸びは減速したものの、過去5年平均(515万2,000トン)を上回っている。

6月の中国の天然ガス生産は+5.8%の1,338万2,000トン(前月+7.3%の1,397万1,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

6月の中国の電力消費量は前年比+4.0%の7,751億kwh(前月+7.5%の7,222億Kwh)と伸びが減速したが、依然、過去5年レンジを上回った状態が続いている。

気温上昇による需要増加の面も否めず、景気の先行きは不透明で、中国南部の降雨による水力発電の回復をみるに、高水準の発電燃料輸入は減速の可能性がある。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

7月23日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は198万トン(過去5年平均259万4,200トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は208万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準に近い。

現在、日本は猛暑の状態であり、スポット価格の上昇リスクは低くなく、冬場の調達圧力も高まることになるだろう。

サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

本日は、世界の景気減速見通しはあるものの、ほぼ全世界的に気温上昇が確認されており冷房需要の増加観測が価格を高止まりさせると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は小動き。北半球の気温上昇を背景とした発電用燃料需要増加、ガス在庫のスペース不足に伴い、保管がより簡単な石炭が物色されていると考えられ、昨日のガス価格の下落の影響は相殺された。

また昨日も期先の価格上昇が顕著であり、再び「全ゾーンコンタンゴ」の可能性が意識された。

ここしばらく、期先の価格が上昇して全ゾーンコンタンゴになるか、とみて注視していたが、現状、「期中」の価格が下落し、期先の価格が上昇しており、再び全ゾーンコンタンゴ化の可能性が否定できなくなってきた。

欧州の石炭生産規制によって供給が絞られる一方、中国やインドは石炭を今後も使う見通しであり、中長期的な需給ひっ迫を市場が意識し始める可能性はあるため期先の動きは引き続き、注意したい。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は135ドル、±1標準偏差で65~205ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が145~155ドル程度まで再び上昇しているため、145~205ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安い。。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できない。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

6月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+110.0%の3,987万1,000トン(前月+92.6%の3,958万4,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では特にロシアからの輸入増加(+149万トン)と顕著であり、次いでカナダ(+31万トン)、米国(+15万トン)となっている。

6月の中国の石炭生産は、前年比+2.5%の3億8,863万トン、1,295万4,000トン/日(前月+5.1%の3億8,500万トン、1,242万5,000トン/日)と伸びが減速した。

6月の中国の電力消費量は前年比+4.0%の7,751億kwh(前月+7.5%の7,222億Kwh)と伸びが減速したが、依然、過去5年レンジを上回った状態が続いている。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇による電力供給減少がなければ、南部の降雨による水力発電の回復や、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、気温上昇とロシアのガス供給停止ヘの懸念からガス価格が高止まりすると予想され、石炭価格も堅調な推移を予想。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。中国の経済対策期待で大幅な上昇になっていたが、FOMCの結果待ちで調整売りに押された。

中国は経済対策を打ち出す方針を示したが、財政的に「ない袖は振れない」と考えられるため、具体的に景気を浮揚させる政策をこのタイミングで打ち出せる可能性はさほど高くないと見ている。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないのではないか。

とはいっても年内の回復は難しく、中国の回復の遅れと欧米の景気減速から今年の秋頃まで低迷した後、景気底入れが期待される(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えば「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるが、経済対策実施を匂わせている現時点でもそのタイミングは不明。

COTレポート(+CFTCのCME銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向は、LME銅と亜鉛は売り越し幅を拡大(買越し幅を縮小)したが、その他は買越し幅を拡大(売り越し幅を縮小)した。

今週予定されている中銀ウィークを控え、ポジション調整的な取引が主体と考えられる。

ただ全体では「やや」ネット買越しの状態であり、まだ投機筋の買い余力は存在している。そのため、中国政府の経済対策実施見通しは価格を投機的な面から押し上げやすい。

6月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲16.4%の44万9,649トン(前月▲4.6%の44万4,010トン)と過去5年平均を下回った。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+3.2%の212万5,046トン(+16.9%の256万トン)と過去5年の最高水準で推移しているが、前月からは数量が減った。

経済活動再開を意識して銅精鉱の輸入が増加していたが、電力不足や経済活動再開の遅れから輸入全体のペースが鈍っている状況。

6月の中国の精錬銅生産は+17.5%の109万6,000トン(前月+26.9%の109万3,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。

6月の銅スクラップの輸入は前年比+2.8%の16万9,754トン(前月+11.6%の17万6,490トン)と過去5年平均を回復した。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている(循環的な需要増加とは別)。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

また、習近平政権になってから、権力掌握のためにかなり無理な経済政策(過剰な投資)を行ってきたため、そのツケを払う結果、中国が「日本化」するリスクは以前よりも高まっている。

この場合、工業金属のみならず、エネルギーなどの景気循環系商品の構造的な下押し要因となるため、今後の中国政府の政策対応の重要性は増すことになる。ただ、中国は2030年頃まではまだ構造的な成長が見込めるため、これはまだリスクシナリオの位置づけ。

本日は、昨日のFOMCで取りあえず利上げが打ち止めとの期待感からドル安が進行しており、ファイナンシャルな要因で価格は上昇すると考える。

ただ、中国政府の経済対策の詳細が分らないことから、上昇余地も限定されることになろう。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は期近が下落、中心限月が上昇した。

中国政府の内需刺激策ヘの期待と、天津と邯鄲の一部の製鉄書が政府から鉄鋼製品の生産量を昨年以下に抑制するようにとの口頭通知を受けたことで鉄鋼製品価格が上昇したことが、鉄鋼原料価格を押し上げたようだ。

現在、疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)と鉄鋼製品との関係性は回復している。ただ、鉄鋼原料調達は最終消費動向に左右されるため、当面、鉄鋼製品価格動向が重要になってくる。

ロシア問題の一巡、原料炭もロシア・モンゴルからの輸入が増加しており(特にモンゴル)、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていない。

結果、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため、最終需要が増加するような経済対策の実施がなければ、総じて下押し圧力が掛りやすい。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲4万7,000トンの1,276万7,000トン(過去5年平均 1,381万9,000トン)と過去5年平均を下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲50万トンの1億2,280万トン(過去5年平均 1億2,914万6,000トン)、在庫日数は25.1日(▲0.1日、過去5年平均27.1日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均を下回っている。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+2万トンの194万トン(過去5年平均 181万4,000トン)、在庫日数は+0.1日の7.4日(過去5年平均 7.1日)とこちらは在庫水準・日数ベースでも需給は緩和している。

6月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲22.5%の61万2,010トン(前月▲22.2%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

6月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.7%の750間8,100トン(+7.7%の836万トン)と昨年の水準を下回ったが、過去5年の最高水準は下回ってきた。

6月の中国粗鋼生産は前年比+0.4%の9,111万トン(前月▲6.7%の9,012万トン)と小幅に増加し、過去5年平均を上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

7月が不需要期であること、製造業全体の在庫循環図は調整局面入りしていることを考えると、7月以降の生産は減少するのではないか。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないと考える。

バランスシート不況にあると考えられる中国は公的セクターの支出を必要としているが、大きな経済対策を打ち出せるほど中国の財布は大きくない。

一部報道では1兆元規模の特別国債の発行(インフラ投資目的)を検討、大都市以外の地域を対象に非居住用の購入制限の撤廃を検討していると報じているが、今のところその動きはみられていない。

本日は、中国政府の対策期待が再び高まっているため鉄鋼製品先物価格が上昇、鉄鋼原料価格も上昇するとみる。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。FOMCはほぼ予想通りで、実質金利要因は価格に中立、だったが、ドル安進行がリスク・プレミアムを押し上げた。銀も上昇。

PGMはハイテク関連株が下落したことが影響して水準を切下げた。

金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)、2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト、3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え、あたりだろう。

これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

恐らく、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が4割、信用リスク要因が2割、その他の要因が3割となる。

過去実質金利異常に、その他の要因のシェアが大きくなったのは、第一次オイルショック~プラザ合意にかけてが最も高く、有事やドル価値の減価に備えて「各国が金準備を増やした時」であり、現在の状況はこのときの状況と類似する。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、7月FOMC以降、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格を1,950ドルとすれば、1,800ドル程度までの下落がありそうだ。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限を目指す動きになっている。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,950ドル程度とすると21.6~26.0ドルが現在取り得る範囲といえる。

この数日で銀は100日移動平均線のレジスタンスラインを上抜けしてテクニカルに急騰している。しかし、50日移動平均線が100日胃ヘを下抜けするデッドクロスとなっていることからいったん水準はテクニカルに切り下がろう。

本日は、FOMCがほぼ予想通りであり、いったん利上げは打ち止めとの期待感が高まっていることから上昇余地を探る展開を予想する。

◆穀物

シカゴ穀物市場は大豆が上昇、トウモロコシ・小麦が下落した。トウモロコシと小麦の下落は、ロシアが追加的に港湾を攻撃していないことに加え、昨日の米石油統計を受けて原油価格が下落したことが影響した。

大豆は行き先不明だが2023-2024年度に27万2,000トン、22万9,000トンの輸入契約があったと報じられたことや、中国向けの販売が62万2,000トンになるとの見方が価格を押し上げた。

エルニーニョ現象が発生している場合、買いは続かず下落に転じていることが多い。2000年以降はエルニーニョ現象が発生した時はむしろ豊作で価格は下がっていることも多く、過去の傾向からすれば、エルニーニョ現象の影響は小さいと考えられる。

しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

本日は、米FOMCでの利上げ打ち止め期待を受けたドル安で堅調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化している)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「2023年下期発電燃料価格見通し」

ロシアに対する制裁実施や、ウクライナによるノルドストリーム破壊工作以降も、ロシアからのガスはトルコラインを通じて欧州に供給され、LNGも欧州向けに提供が続いている状況であり、今年の冬に向けた欧州のガス調達は順調で、景気の減速を勘案すると今年の冬の欧州のガス調達は、供給面のトラブルや想定外の厳冬がなければ問題ない状態になった。

一方、日本の発電事業者のLNG在庫水準は、極東地区の気温上昇の影響もあって過去5年の最低水準で推移しており、中国のLNG輸入も減速したとはいえ、前年比+23.5%の595万8,000トンと過去5年平均(515万2,000トン)を大きく上回っている。

夏本番・今冬を睨んだ場合十分とは言えず、今後在庫の積増しが行われる可能性も否定できない。この状況を受けて、欧州とアジアでは需給のタイト化に差がでており、JKMとTTFの価格水準は逆転、東高西低の通常の状態に復帰している。

今後、脱ロシアの動きは続くとみられ、徐々にLNG市場の需給は緩和することが予想される。

ただし脱ロシアは米国のLNG供給能力拡充の進捗状況に依拠するため、金融引締めが継続している状況では想定よりもLNG市場の需給緩和に時間が掛る可能性も否定できない。

以上から2023年のTTF価格は16.07ドル/MMBTu(▲3.50ドル/MMBTu)、JKM価格は15.17ドル/MMBTu(▲3.11ドル/MMBTu)、HH価格は2.76ドル/MMBTu(+0.19ドル/MMBTu)、JLCは14.63ドル/MMBTu(▲0.52ドル/MMBTu)を予想。

石炭の最大消費国である中国の発電燃料は、圧倒的に石炭のシェアが大きい。中国の再生可能エネルギ-キャパシティの増加が伝えられているが、実際に発電を行った時間とのかけ算である発電量としては依然、圧倒的に石炭火力の比率が高く、経済の近代化目的の電化も進捗していることから、石炭火力の発電能力も増加が継続している状況。

2023年は中国南部の記録的な渇水(2022年から続く)の影響を受けて、発電量2位の水力発電量が減少、主に石炭火力がこれを代替していた。しかし今度は逆に、中国南部は記録的な洪水に見舞われており、今後、水力発電の回復によって石炭火力のシェアが低下する見込み(とはいえ、発電量は12ヵ月平均で4倍以上違うため、石炭需要は継続)。

中国は石炭生産を増加させているものの、使い勝手の良さなどから海外炭需要は継続しており、豪州への制裁解除から豪州からの輸入も増加。ただし主にロシア炭の輸入が増加しており「巡り巡って世界石炭需給」をタイト化すると考えられる。

石炭価格の期間構造は、期近がコンタンゴ、期先がバックワーデーションの状態が定常化しているが、徐々に期先の価格が水準を切り上げている。

直近限月vs36ヵ月スワップ先物スプレッドは、36ヵ月先渡し価格の方がスポット価格よりも高い「コンタンゴ」の状態になった。過去5年でコンタンゴになったのは、コロナ・ショックが発生して直近限月の価格が急落したときのみ。

EU主導の石炭廃絶の動きから先々の供給が金融面で制限される可能性が否定できない中、今後、他の商品で見られたように「期先の価格が上昇して、全ゾーンコンタンゴとなる可能性は無視できない(石炭スポット価格はこのまま高止まり)。

以上から、石炭価格はロシアからの供給継続、ガス価格の低下で水準は2022年対比で低下する見通しだが、冬場の気温が不透明であることや中国景気回復期待から年末にかけてやや水準を切り上げる展開を予想。

2023年のNEWC価格は177.21ドル/トン(▲50.84ドル/トン)、J Coalは297.47ドル/トン(+34.37ドル/トン)とした

なお、J Coal価格予想モデルには流動性ファクターの代替指標としてタイムスプレッドを指標の1つとして織り込んでいるが、ウクライナ危機後の流動性枯渇時のデータの影響が大きく、次回見通しでは「ウクライナ危機前」の水準を参考に算出の予定であり、予想数値は引き下げられる見込み。

上記見通しの上昇リスクは、OPECプラスが想定以上の減産を行った場合(JCCの上昇→JLCの上昇を通じてTTF、JKM、石炭を押し上げヘ)、ロシアに対する追加制裁実施、猛暑厳冬渇水による発電燃料不足、金融引締めペースを中央銀行が鈍化させた場合、ハリケーン頻発予報を背景とする米国原油・ガス生産の下振れなど。

個別では増産を企図している中国の増産が想定を下回る場合(石炭)、原油増産の遅れによる随伴ガス供給の下振れ(天然ガス)。

下落リスクは各国中央銀行の金融引締め過ぎ、OPEC・非OPEC諸国の想定を上回る増産、冷夏・暖冬・豪雨、OPECプラスの結束崩壊で無秩序な増産が起きる場合、想定以上に早いペースで「脱ロシア」が完了し、ロシア分の原油・ガス・石炭などの供給が「浮く」場合など。


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