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露不安でエネルギー上昇 工業金属安い
  • MRA商品市場レポート

2023年6月27日 第2486号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「露不安でエネルギー上昇 工業金属安い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はその他農産品や穀物セクター、貴金属セクターなど、非景気循環系商品価格が上昇したが、景気循環系商品のうち工業金属は軒並み水準を切り下げる展開となった。

なお、ロシアでクーデター未遂が発生し、エネルギー供給への懸念が意識されたことからエネルギーセクターも総じて買戻しが優勢となった(後に下落)。

各国中央銀行がインフレ抑制のために再び利上げモードに舵を切っており、それを受けたリスク資産価格の調整が、広く景気循環系商品価格の下押し要因となった。

これまで市場参加者は米国の年内2回程度の利下げを期待していた。しかし、FRBパウエル議長はかなり当初から年内利下げはないとしており、ようやく市場がその見通しを受け入れたということだろう。

もちろん、期待インフレが低下する中では調整的に政策金利が引き下げられ「引き締め過ぎを回避する」可能性はあったが、欧米とも特にサービス業を中心に粘着質なインフレが解消するに至っていない。

やはり、コロナの影響による生活様式の変化、ロシアのウクライナ軍事侵攻による東西分裂の加速、物流への影響などは無視できなくなっているということだろう。

基本的にインフレが解消するには、1.価格上昇に伴う採算性の改善による生産能力の増強、2.景気の減速、3.1.2.両方、が必要になるが1.は脱炭素や金融引き締め加速、資源価格高止まりで進捗していない。

現在各国とも2.を選択しているが逆に言えばこれこそ一時的であり、景気が底入れすれば再び価格には上昇圧力がかかることになる。ただ今回の金融引き締めが、欧米の顕著な景気下振れをもたらし、特に米大統領選挙を控えて政策金利引き下げや、QEなどが行われるようであれば本末転倒である。

【本日の見通し】

本日は、欧米中央銀行の金融引き締め継続スタンスを受けた株の調整、それに伴うリスク回避の動きが価格を下押しすると考える。

なお、予定されている経済統計やイベントで注目は以下の通り。

中国で夏季ダボス会議が開催される。今回のテーマは「起業家精神と技術革新」。中国は海外からの投資を呼び込み、技術を取得することを企図していると考えられるが、米欧(除くフランス)が中国への投資を手控える中、どの程度の企業が参加し、どの程度の議論がなされるかに注目が集まる。

また、過剰債務の罠など問題の多い「一帯一路」についても議論される見通し。

・5月米耐久財受注速報 市場予想 前月比 ▲0.8%(前月+1.1%) コア資本財受注速報 ±0.0%(▲0.3%)

・4月米FHFA住宅価格指数 +0.5%(+0.6%)

・4月コアロジック住宅価格指数 前月比 +0.35%(+0.45%)

・5月米新築住宅販売 前月比▲1.2%の67.5万戸(+4.1%の68.3万戸)

・6月米コンファレンスボード消費者信頼感指数 103.9(102.3)

・6月リッチモンド連銀製造業指数 ▲12(▲15)

【昨日のトピックス】

昨日発表された独IFO景況感指数は、総合指数が88.5(市場予想 90.7、前月 91.5)、現況指数が93.7(93.5、94.8)、期待指数が83.6(88.1、88.3)となり、総じて市場予想を下回った。

現況指数は市場予想を上回っており、市場が想定している以上に欧州の景況感が悪化していないことを示唆している。このことはとりもなおさず、ECBがさらに金融引締めを強化する余地を拡大するものと言える。

今のところ市場は、年内2回の利上げ、来年1回程度の利下げを織り込んでいる状況。

ただ懸念すべきは期待指数の悪化だ。2005年以降のデータでは、基本的に期待指数が現況指数よりも悪化を始めると製造業PMIが50を下回り、少なくとも製造業の景況感が悪化する「景気停滞~減速局面」入りする。

欧州の期先の景況感の悪化は昨年10月頃に底入れし、その後回復基調となり早ければこの5~6月頃に水面上に復帰する可能性があった。

しかし欧州は米国以上にインフレが深刻であり、消費者物価指数は前年比+6.1%とECBの政策金利の4.0%を大きく上回っている状況。この状態で金融緩和に舵を切ることができないことはほぼ自明であり、今後の追加利上げが先行きの回復を妨げる可能性が高い。

恐らくこの展開だと、欧州金利引き上げでドル安となり、ドル建て資産価格は上昇するが、欧州景気の減速は最大貿易相手経済圏である中国の外需にも影響を及ぼすため、最終的には広く景気循環系商品価格の下押し要因となるリスクが存在する。

来年第2四半期以降からの回復を弊社はメインシナリオとして想定しているものの、その回復が想定よりもかなりゆっくりとしたものになる可能性はあるだろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格はもみ合った結果前日比プラスとなった。ロシアでのクーデター未遂を受けて国内が混乱、原油供給に影響が出るのではないか、との見方が買い戻しを誘ったようだが、基本、欧州・中国の景気減速観測を背景に需要が戻らないとの見方が上値を抑えている。

原油相場は完全にボックス圏での取引となっており、新規材料待ちの状態が続いている。

ロシアのウクライナ軍事侵攻、制裁実施中の2022年以降のデータも含めて回帰分析を行うと、2023年のBrent価格予想は78.1ドルとなるが、直近5月までのデータを用いると81.1ドルとなる。2024年は上昇見通しで82.7ドルが予想平均価格となる。

ただし、各国の利上げがまだ行われ、景気過熱の沈静化の遅れを考えると景気回復のタイミングは大方の市場参加者が期待している年内底入れではなく、Q224頃にずれ込む可能性がたかまっているとみている。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

OPECプラスは減産期間を1年延長し、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意(詳細は以下の通り)。

しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。

問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。

 OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
 サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
 ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施

 サウジ 7月から▲100万バレルの追加減産(8月以降も継続の可能性)

サウジアラビアの財政均衡価格は81ドル、OPECバスケット価格のここまでの平均が80ドル程度であるため、やや予算を下回っていることから多少の減産で価格が上昇するなら、減産はありと判断していると考えられる。

一方、ロシアは2023年度のウラル原油前提価格を70.1ドルに設定しているとみられるが、今年のウラルの平均価格は50ドル台であり、想定を大きく下回っている。

6月20日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲12,486枚、ショートが▲23,889枚と、ポジション解消の動きが強まったがショートポジションの解消が大きかったため上昇圧力に。

Brentはロングが+12,996枚、ショートが▲3,120枚となっており、こちらも強気に傾いている。

5月の中国の原油輸入は前年比+12.3%の5,144万4,000トン(前月▲1.4%の4,240万7,000トン)と伸びが加速。中国の消費者は価格に敏感であるため、5月の原油価格は4月よりも低下したことが影響したとみられる。

一方、石油製品は輸入が前年比+195.9%の438万トン(前月+110.0%の389万5,000トン)とこちらも大幅に加速、輸出は▲1.8%の375万トン(+33.9%の545万トン)と減速した。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、ロシア問題が一応解決したこと、本日発表の米統計は強弱まちまちながら、インフレの判断材料の1つである個人消費関連統計(コンファレンスボード消費者信頼感)の改善が見込まれているため、ドル高進行で軟調推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇後下落した。ロシアのワグネル反乱未遂で供給懸念が強まったが、詳細はまだ明らかではないがこれが鎮圧されたことで供給懸念が後退したことが背景。

ただし今回の反乱で、長期的にはロシア国内の内政不安が、ガス供給を減じるリスクが意識されるようになったと考えられる。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要が過去5年平均よりも+5%増加したとしても足りるとの結果であるが、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

しかし、仮にロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲10%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

年後半に掛けて景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていることから、気温の低下(ないしは夏場のアジアの猛暑)がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。しかし、ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

3.4.は顕在化している。

5.は夏場の調達が始まっているが、今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は最大消費地の北アジアは冷夏となる見通し。ただし既に東南アジア・南アジアは気温上昇と渇水が起きている地域も多いこと、エルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、夏・冬とも価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けともほぼ変わらず。昨年の水準を下回った状態が続いている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は気温上昇を背景に水準を小幅に切り上げた。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は上昇後下落。ロシアのクーデターを受けて欧州ガス価格が上昇したが、その後鎮圧されて水準を切下げた。

現在のJLCの水準は13ドル程度であり、現在のスポット価格はこれを大きく下回っている。その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

5月の中国の天然ガス生産は前年比+7.3%の1,397万1,000トン(前月+5.6%の1,382万4,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている

5月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+17.3%の1,064万トン(前月+11.0%の898万トン)と先月から急速に輸入量が増加、過去5年の最高水準を上回った。

5月の中国のパイプライン輸入は、前年比+1.9%の423万トン(+12.6%の421万トン)と、前月からは伸びが減速したが過去5年の最高水準を維持している。

一方、LNG輸入は前年比+30.1%の641万トン(+9.6%の476万7,000トン)と大幅な増加となっている。中国南部の記録的な気温上昇が影響していると見られる。

一般にエルニーニョ現象発生時は赤道近辺の気温が上昇しやすく、中国以外でもベトナムなどが5月に熱波と小雨による発電の制限などが発生している。

5月の中国の電力消費量は前年比+7.5%の7,222億Kwh(前月+8.5%の6,901億kwh)と伸びが減速、過去5年レンジも上回った。

天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。ただしリオープン後の回復がどの程度継続するかは、現時点ではまだ不透明である。

季節的な猛暑、渇水などによる発電燃料輸入需要が増加する可能性があるものの、景気の回復ペースが想定よりも緩慢であるため高水準の発電燃料輸入は減速の可能性がある。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

本日は、世界的な利上げペースの加速を受けた工業向け需要の鈍化観測と、エルニーニョ現象の影響で各地の気温が上昇していることに伴う需要の季節的な増加観測が相殺しあい、現状水準でもみ合うと考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は今年の冬場の価格と、期先が上昇した。ロシアのクーデター未遂はあったがその後鎮圧され、基本的には売り買い材料にはならないはずなのだが、期先の買い戻しが続いている。

期先は殆ど取引流動性がないため、下落時/上昇時の変動幅が大きくなりやすい。ただし、当面、インドや中国などの新興国を中心に石炭需要はなくならない一方、欧州中心に鉱山生産は制限されるとの見方から、割安感を意識した買いが期先の価格を下支え→押し上げる可能性は高まっていると見ている。

過去、原油やその他の商品でも見られたことだが、コンタンゴ→バック、の形状になっている状態が継続すると、1.期近が上昇してバックワーデーションになる、2.期先が上昇して全ゾーンコンタンゴになる、3.そのまま、のいずれかが起きることになる。

仮に、欧州の石炭生産規制によって供給が絞られる一方、中国やインドは石炭を今後も使う見通しであり、中長期的な需給ひっ迫を市場が意識し始める可能性はあるため期先の動きは注目だ。

期近は今のところ需給が緩和しているため、消費国である日本にとって大きな問題にはならないが、期先のコンタンゴがさらに進むリスクは意識しておく必要がある。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は130ドル、±1標準偏差で60~200ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~145ドル程度まで再び上昇してきていることを考えると、実際は130~200ドルが説明可能なレンジ。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)であることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除しない。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

て今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏にある可能性があり、南アジアでは既に記録的な熱波が観測されている地域も多い。そのため、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

5月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+92.6%の3,958万4,000トン(前月+72.7%の4,067万6,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準となった。

ガスも同様であるが、中国南部の記録的な熱波や小雨の影響で、発電燃料の調達が急遽必要になったと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では4月まではインドネシアと豪州からの輸入が増加、ロシアからの輸入が減少している。特に豪州からの輸入増加が顕著で制裁解除の影響が顕在化していると考えられる。

5月の中国の石炭生産は、前年比+5.1%の3億8,500万トン、1,242万5,000トン/日(前月+2.7%の3億7,400万トン、1,246万トン/日)と伸びが加速した。

5月の中国の電力消費量は前年比+7.5%の7,222億Kwh(前月+8.5%の6,901億kwh)と伸びが減速、過去5年レンジも上回った。やはり猛暑・渇水(中国南部)に対応するための発電燃料需要は増加しているとみられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇や渇水による電力供給減少がなければ、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、中国の渇水の影響で発電向けの燃料確保の動きは継続すると予想されること、各国の金融引き締め加速を受けた景気の減速観測が相殺しあう形で現状水準を維持すると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は続落した。欧州経済統計の悪化や、各国中央銀行のインフレ抑制のための利上げ継続が意識された。

市場は「勝手に」夏からの米利下げを織り込んでいたが、その可能性がほぼなくなり、年内利下げがなくなったことで株が調整、それに伴うリスク選好の後退が価格を下押ししていると考えられる。

また、世界最大の非鉄金属消費国である中国の景気回復が遅れており(不動産セクターに偏り過ぎた経済成長のツケを払っている状態)、そのことも価格を低迷させている。

このコラムで主張している通り、中国の不動産セクターの立て直しは簡単なことではなく、さらに地方政府のサイフも大きくないことからやはり回復には時間が掛るとみている。

これもかねてから指摘している通りだが、1.中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続くため、まだ近代化を目的としたインフラ投資は継続する、2.人口ボーナス期に入り、かなり積極的に国内インフラ投資を行っているインドが今後10年~20年の非鉄金属需要を牽引する、可能性が高い。

ただ、新興国の場合、為政者がかじ取りを誤ると潜在需要が顕在化しないため、モディ首相率いるインドの政策動向は注視していく必要がある。

世界の非鉄金属消費の5割を占める中国の景気は不動産セクターの停滞で回復しておらず、需要は低迷した状態が続いている。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛ることになるが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないのではないか。

とはいっても年内の回復は難しく、中国の回復の遅れと欧米の景気減速から今年の秋頃まで低迷した後、景気底入れが期待される(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

そしてその場合、非鉄金属の在庫絶対水準が低いことから、比較的顕著な上昇になるとみている。

COTレポート(+CFTCのCME銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向は特段材料がない中で、中国政府の対策期待で総じて買い戻しが入る展開隣、アルミを除く全ての非鉄金属が買越し幅を拡大、または売り越し幅を縮小した。

銅・亜鉛・鉛・ニッケル・錫は新規ロングの増加とショートの減少で明らかに強気に転じている。

アルミはロング・ショートとも増加しているがショートの増加が大きい。恐らく中国雲南省のアルミ生産増加観測が材料視されたと考えられる。

この一連の買い戻しで再びネット買越しに転じている。景気の底入れのタイミング次第だが、早ければ年後半から需要が回復し、かつ、脱炭素などのテーマ性のある金属の物色が始まるため、比較的大きな上昇になるのではないか、と見ている。

最大消費国である中国の景況感は良いとは言えず5月の中国製造業PMIは48.8(市場予想 49.5、前月 49.2)と市場予想、前月とも下回り、非製造業PMIも54.5(55.2、56.4)と減速が確認された。ゼロコロナの終了とそれに伴うペントアップ需要の顕在化が期待されたが、Q123でそれも一巡したとみられる。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、新規受注のマイナス寄与度が▲0.15(前月▲1.44)と引き続き大きく、次いで、生産▲0.15(▲1.10)、雇用▲0.08(▲0.18)、在庫▲0.03(▲0.04)となった。

先月から比べればマイナス幅が縮小しているため、状況の更なる悪化は一応歯止めが掛りつつあると言える。

しかし、本確的な回復には不動産セクターの問題解消(必要条件)に加え、個人消費の回復や、海外景気の回復に伴う輸出の回復が必要になるため、やはり年内の回復は難しいのではないか。

統計の内訳を見ると、新規受注は48.3(48.8)、輸出向け新規受注も47.2(47.6)と低迷している。国内の消費の弱さに加え、人民元安をテコに進めてきた輸出も欧州景気の減速を受けて減速している。

また、投入価格は40.8(46.4)と大幅低下、販売価格も41.6(44.9)と低下しており、欧米はインフレで苦しんでいるが中国はデフレに突入した感(日本化)すらある。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が0.988(0.988)、原材料が1.015(1.019)と先月とほぼ変わらなかったが、完成品は閾値の1を下回っている。

生産が減少しているにもかかわらず完成品在庫の水準は48.9(49.4)と小幅にしか調整していない。いわゆる「意図せざる在庫積増し局面」が継続しているとみられ、しばらくは在庫調整圧力が強まることになるだろう。通常、意図せざる在庫積増し局面から調整局面を経て在庫積増しが必要な局面に入るまで、1年程度は掛る。

ただ、欧米と違い、国の意向で「無理」が通る国営企業の在庫調整は進捗しやすいと考えられるため、通常のサイクルよりも早く回復する可能性はある。

5月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲4.6%の44万4,010トン(前月▲12.5%の40万7,293トン)と過去5年平均を回復した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+16.7%の255万6,713トン(+11.8%の210万2,572トン)と過去5年の最高水準で推移している。

精鉱輸入・精錬品輸入も増加しており、徐々に中国の経済活動の再稼働が意識されていると考えられるものの、そもそも在庫の水準が低いことに伴う在庫積増しの動きではないだろうか。

5月の中国の精錬銅生産は+26.9%の109万3,000トン(前月+25.3%の112万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善(渇水のリスクはある)を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。

5月の銅スクラップの輸入は前年比+11.6%の17万6,490トン(前月+7.4%の14万5,366トン)と過去5年平均を回復した。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている(循環的な需要増加とは別)。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

また、習近平政権になってから、権力掌握のためにかなり無理な経済政策(過剰な投資)を行ってきたため、そのツケを払う結果、中国が「日本化」するリスクは以前よりも高まっている。

この場合、工業金属のみならず、エネルギーなどの景気循環系商品の構造的な下押し要因となるため、今後の中国政府の政策対応の重要性は増すことになる。

本日は、この下落の影響で一旦買い戻しが入ると考えるが、株式市場など広くリスク資産が利上げリスクを織り込んで調整しているため、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は下落、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国政府の経済対策余地のなさが改めて意識されている他、各国中央銀行がインフレ抑制のための金融引締めを継続する見通しであり、リスク選好が後退していることが背景。

疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)を元に鉄鋼製品との回帰を行うと、この数年の原料炭取得の困難さから有意な相関関係は喪失しているが、直近1年のデータを元にすると、概ね現在の鉄鋼原料価格と鉄鋼製品の価格はこの回帰直線上に位置する。

恐らく、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていないため、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため総じて下押し圧力が掛りやすいと考えている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲25万トンの1,217万8,000トン(過去5年平均 1,364万9,000トン)と減少。

これまで過去5年平均の減少ペースほどの減少になっていなかったが、ここに来て在庫の減少ペースが加速している。5月の粗鋼生産が減少しており、景気の回復が緩慢なことを背景とした生産調整の影響と考えられる。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+65万トンの1億2,635万トン(過去5年平均 1億2,637万6,000トン)、在庫日数は25.0日(+0.1日、過去5年平均24.9日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均に近接しつつあり、需給は緩和の動きに。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は▲18万トンの200万トン(過去5年平均 177万2,000トン)、在庫日数は▲0.7日の7.4日(過去5年平均 6.7日)とこちらも在庫水準が増加し、日数ベースでも需給は緩和している。今後、原料炭価格には下押し圧力が掛ることになるだろう。

5月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が35.2(前月45.0)と大幅に減速した。生産の落ち込みが特に顕著(47.2→27.5)。これは年初から生産が高水準であったことによる在庫の積み上がりの反動と考えられる。

新規受注も33.9(前月39.9)と落ち込みが大きく、輸出向けも44.1(55.1)と急減速している。これまで人民元安などをテコに輸出にバイアスが掛っていたとみられるが、海外製造業の景況感は金融引締めの影響で減速しており、頭打ち感が出てきている。

実際、中国の棒鋼先物価格は5月末時点で前年比▲26.7%(前月末▲29.4%)と低下、さらに過去5年レンジも下回っており鉄鋼製品を巡る需給環境は緩和していると考えられる。各調査レポートでも指摘されているように、「価格を下げないと売れない」状況が継続している。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品在庫レシオは0.88(0.87)と低迷、原材料在庫レシオも1.00(1.02)と閾値の1まで低下しており、鉄鋼原料・製品需給とも急速に緩和している。

Q123の需要が国内の需要(ペントアップ需要+地方政府財政を何とかしなければならない中での不動産市場のテコ入れ)が増加ことによるもので、それが剥落していると考えられる。やはり更なる不動産バブルの発生は容認できないという視点では、これまでの需要回復は持続可能ではなく、回復には時間がかかろう。

好調だった中国の建設業PMIも58.2(63.9)と急減速しており、更なる低下のリスクは無視できない。世界的に景気の減速感が強まる(逆に回復を始めた米国はそれを抑制するための金融引締め維持)可能性が高いことから、回復はやはり2024年にずれ込むのではないか。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲22.1%の63万1,350トン(前月▲39.1%の58万4,930トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

5月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+7.7%の835万5,720トン(+59.3%の793万2,430トン)と過去5年レンジを上回る高い水準を維持している。

5月の中国粗鋼生産は前年比▲6.7%の9,012万トン(前月▲0.2%の9,264万トン)と減速基調を維持し、過去5年平均を下回った。

国内で生産した鉄鋼製品が国内で処理仕切れず輸出に回していたが、それも厳しくなってきたために生産量を減らし始めたと考えられる。製造業全体の在庫循環図は調整局面入りしており、まだ在庫調整が必要な事を示唆している。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、各国中銀の利上げ継続や、中国政府の対策余地がさほど大きくないことから調整すると見ており、鉄鋼製品、鉄鋼原料とも水準を切り下げる展開を予想する。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅に上昇した。ロシアでクーデター未遂が勃発、地政学的リスクの高まりから安全資産需要が高まったことが背景。

また、景気の先行き懸念で実質金利が低下したことも価格を押し上げた。銀も連れ高。PGMも上昇したが、株安が頭を押さえた。

金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、以下の通り。

1.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

2.米国債の格下げないしはデフォルト懸念

3.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米国・第三国が意識し始めたこと

4.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと

1.に関しては概ね米国の利上げの影響によるものであるため、米国の金融引締めが続く以上、リスク・プレミアムは高止まりすることになる。

逆に言えば、利上げが終了し、利下げに転じればリスク・プレミアムは低下することが予想されるが、今の状況だと早くても年後半になるだろう。

2.に関しては2025年に債務上限問題が延期されたが、その間、財政の健全性が担保されないとして、格下げになる可能性は残る。

実際、2011年の債務上限問題発生時は妥結していたものの、「財政赤字の削減が十分ではない」としてS&Pは米国債を格下げし、米国債は下落している。

仮に格下げがなければこれまで指摘したように、リスク・プレミアムが剥落して▲220ドル程度の下落になるだろうが、その判断はもう少し情報収集が必要だろう。

3.は2022年以降、特にその動きが顕著になった。各国政府・中央銀行の金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。

基準価格は低下しているため900ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」となる基準価格はIMFベースであれば1,100ドル、WGCベースでは1,350ドル程度となる。

簡単な要素分析で現在の信用リスクが550ドル程度であるため、IMFベースであれば1,650ドル、WGCベースでは1,900ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのIMFベースの価格となっている。

仮に過去5年平均程度である370ドル程度までの信用リスク分の低下があるとすれば、▲210ドル程度の下落要因となる。WGCデータを基準にした場合、年後半の金価格の目線は1,720ドル程度、ということになろうか。

ただ、米中対立の構図が続く中ではドル忌避の動きが継続するため、上述の1.の要因が継続して高止まり、ということも有り得る。

なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限を目指す動きになっている。しかし、米ISM製造業指数が55を下回っている状況だと、ボリンジャーバンドの下限に張り付きやすい。

仮にボリンジャーバンドの下限75倍、上限ならば94倍程度が目処になるが、金を1,950ドル程度とすると20.7~26.0ドルが現在取り得る範囲といえる。

100日移動平均線のサポートライン、チャート的には23.4ドルが目先の下値として意識される。ここを下抜けすると次は22.20ドルが目処に。

本日は、米国でややタカ派な消費関連統計が発表される見通しであり、ドル高進行が価格を下押しすると考える。ただし今回のロシアのクーデター未遂でロシア関連の地政学リスクの高まりが意識されることから、価格は下支えされよう。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシ、大豆が上昇、小麦が下落した。トウモロコシ・大豆は引き続き北米の生産下振れが意識された。

小麦はロシアでクーデター未遂が発生、一時供給懸念が価格を押し上げたが沈静化されたため結局前日比マイナスで引けている。

通常、エルニーニョ現象が発生している時は穀物価格は下落しやすいのだが、北米の生産見通しが乾燥気候の影響でかなり悪い状態であり、生産下振れリスクが強く意識されている状況。

ここに来てエルニーニョ現象の発生による不作の可能性(現在は米グレートプレーンズ)が指摘されるようになってきた。

ただ、2000年以降はエルニーニョ現象が発生した時はむしろ豊作で価格は下がっていることも多く、過去の傾向からすれば、エルニーニョ現象の影響は小さいと考えられる。

しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

本日は、各国中央銀行の利上げでリスク回避的にドルが物色されていることから、軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化している)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「景気見通しとリスクシナリオ」

各国の製造業PMIはQ421をピークに減速を続けており、一時的に回復の兆しが見られた米国製造業も減速感が強まっている。

各国中央銀行がインフレ抑制のための利上げスタンスを再び強めたことで、金利に対する業績や企業活動の感応度が高い製造業の景況感悪化を助長しているためだ。

一方好調だったサービス業にも減速感が強まっており、インフレ抑制のための金融引き締めが最終局面に差し掛かっていることを示唆している。

最大経済国である米国のISM製造業指数とISM非製造業指数の過去の動きを見ると、まず製造業の景況感が悪化した後、非製造業の景況感が悪化し、その後、金融緩和などの経済対策によって景気が底入れし、回復基調に至る、というパスを経ることが多い。

今回はコロナ禍時の金融・財政政策が行き過ぎであったため、サービス業の景況感が製造業と同様に減速するまで、今まで以上に時間が掛っていると考えるのが妥当だろう。

1997年以降では、景気過熱を沈静化させる目的で政策金利を引き上げると、その後高い確率で同じ期間、景気が後退する局面が米国では訪れており(同時に利下げ実施)、今回も年後半に景気後退局面入りするならば、そこから半年程度で景気は底入れする可能性がある。景況感が良い、と意識されるようになるこれらの指数が水面上(50超)に復帰するのはさらに1年後か。

ただし、インフレを懸念した政策金利の高止まりが必要以上に景気を悪化させ、景気が底割れするリスクは完全には排除できない状況。

現在の景況感の認識は恐らく上記で概ね間違いはないとみている。では今後の想定される景気のシナリオはどうか。

メインシナリオは米国は金利を高止まりさせ、サービス業の景況感も減速、2024年、2025年に1%程度の利下げが行われることで2024年の中頃に景気底入れ。

その後循環的な回復が2026年頃に景気はピークを迎えるが、政策金利が相対的に高止まりすること、QTの継続などによって景気の山は通常よりも低くなるシナリオ(発生確率45%)。

リスクシナリオ1は、各国の金融引締めが景気過熱の沈静化に繋がらず、想定以上の金融引締めが年末~年後半にかけて発生して景気が急速に減速。

その後、景気が悪化したことに伴う金融緩和や財政出動を大規模に行わざるを得ず(2024年に2%~3%、2025年に1%、合計3%~4%程度の利下げ)、2026年に掛けて景気が過熱するシナリオ(発生確率25%)。

リスクシナリオ2は、2024年の米大統領選挙を睨み、政府が望む「景気粘り腰シナリオ」。このシナリオの場合、2024年に0.5%程度の利上げが行われ、2025年に掛けて減速、2025年に2%~3%、2026年に1%程度の利下げを余儀なくされるシナリオ(発生確率15%)。

リスクシナリオ3は市場が期待する「年内ショートターム景気後退」シナリオで、かなり早期に通常の景気循環に戻るシナリオ。金融緩和も断続的に行われるものの、インフレも同時に解消するというバラ色シナリオ(発生確率:15%)。

これらを総括すれば、コロナ発生時に行った過剰な金融緩和と財政出動によって発生したインフレを解消しなければならない局面にあり、コロナへの対策の差が、景況感や金融政策の差になっており、それがシナリオの差に繋がっている。

なお、リスクシナリオ2以外は米民主党に不利であり、米国の脱炭素、対ロシア政策が大転換となるリスクも存在する。


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