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日米欧金融政策決定会合の総括
  • MRA外国為替レポート

2023年6月19日号

◆先週の市場総括


先週は材料が目白押し。とくに日米欧の金融政策に注目が集まった。米国では消費者物価指数や生産者物価指数の上昇率が低下しインフレ鈍化基調を示した。

FOMCでは予想通り利上げ見送りとなったものの、メンバーの予測であと0.50%の利上げが示唆されたことから金融引き締めの長期化観測が強まり、年後半の利下げ期待が後退した。ただパウエル議長は追加利上げにやや慎重なスタンスを示した。

一方、ECBは0.25%の利上げを実施。ラガルド総裁は次回も利上げの可能性を示唆した。

日銀は超金融緩和政策の維持を決定。植田総裁は引き続き政策修正に慎重な姿勢を示した。その結果、あらためて内外金利差が意識され円安が大きく進んだ。

欧州をはじめ米国以外の追加利上げを材料にクロス円相場は上昇。ユーロ円相場は週初の149円80銭から週末には155円20銭台に。ドル円相場は139円40銭から140円~141円で推移したあと週末は141円80銭台。それぞれ高値引け。

米国株は景気堅調、インフレ鈍化というバラ色のシナリオを織り込んで上昇、NYダウは年初来高値を更新。日経平均はバブル崩壊後、33年振りの高値の更新が続き、週末は33,700円台で取引を終えた。

月曜日の東京市場では日経平均が続伸。前週末のSQ(特別清算指数算出)を無難に乗り切った安心感、週末の米国ハイテク株買いの流れで、値がさ株、グロース株(成長株)が上昇。一時前週末比+250円高。ただ後場に上げ幅を縮めて引けは+168円高の32,434円。

ドル円相場は139円40銭で始まり40銭~50銭で上下。欧州市場ではドルが軟調となり139円10銭~40銭で上下した。

ユーロドル相場は1.0750近辺で小動きもみ合いのあと、欧州市場にかけて1.0790へ上昇した。ユーロ円相場は149円80銭で始まりもみ合い横ばい小動き。欧州市場にかけ150円30銭に上昇した。ただユーロ高は続かず。

ユーロドル相場は1.0740~50へ、ユーロ円相場は149円80銭へ押し戻された。

ドル円相場は持ち直し139円60銭~70銭で上下し60銭で引け。ユーロ円相場も150円20銭に反発して引け。

今週、FOMCは政策金利据え置き、ECBは0.25%利上げ、との見方がユーロドル相場を支えた。

米国では公表されたNY連銀調査の期待インフレ率が1年先で4.07%と前月4.45%から低下。3年先はやや上昇も2.98%。引き締め長期化による景気下振れ懸念が後退し株を押し上げた。

米長期金利は小幅低下。10年債は3.743%、2年債は4.583%。

NYダウは前週末比+189ドル高の34,066ドル。ナスダックは+202ドル高の13,461ドルで引けた。

火曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。前日の米ハイテク株高が支えとなり半導体関連など値がさ株、ハイテク株が堅調。ソフトバンクやトヨタなど大型株が個別に堅調だったほか、岸田首相が会見で衆議院解散を匂わせる発言をしたことかを材料に幅広く買われた。引けは前日比+584円高の33,018円と大台の33,000円台に乗せる大幅高。

ドル円相場は139円60銭で始まり40銭~60銭で方向感なく上下。夕刻から欧州市場にかけては50銭~60銭で推移した。ユーロは堅調。ユーロドル相場は1.0760で始まり夕刻、欧州市場に入る頃には1.08へ。

ユーロ円相場は150円20銭で始まり150円80銭に上昇した。

米国市場では注目の消費者物価指数(CPI、5月)が発表された。総合指数は前年同月比+4.0%と前月+4.9%から大きく低下。ただコア指数は+5.5%から+5.3%へ低下したが低下幅は予想+5.2%よりやや小さかった。

これを受けて当初は利上げ見送り観測から米長期金利が低下、ドルを押し下げた。ただコア指数がさほど低下しなかったことからドル安は一服。

ユーロドル相場は1.0820に上昇したあと1.0780~90近辺でもみ合い引け。ドルインデックスは前日比小幅下落し103.30ポイント。

ドル円相場は発表直後に139円ちょうど近辺へ、ユーロ円相場は150円20銭台に下落した。ただ金利据え置き見通しが強まったこと、利上げ停止が近い、との見方から景気先行き懸念が後退。

米国株が景気敏感株を主体に堅調。リスク選好が強まるなか、欧州や豪州、カナダなど米国以外の利上げ継続観測から、クロス円相場主体に円が全面安。

ユーロ円相場は151円30銭に上昇してもみ合い引け。ドル円相場は140円30銭に反発して引けは140円20銭。NYダウは前日比+145ドル高の34,212ドル、ナスダックは+111ドル高の13,573ドル。

水曜日の東京市場では日経平均が4営業日続伸、1990年3月以来33年振りの高値を更新した。

FRBの利上げ見送り、衆議院解散・総選挙は株高との思惑が支え。トヨタが連日の年初来高値更新、他の自動車株も買われるなど市場心理が強まった。引けは前日比+483円高の33,502円。一時は+600円高もFOMCの結果を前に利益確定売りが上値を抑えた。

為替市場もFOMCの結果を前に様子見が強かった。ドル円相場は140円20銭で始まり上値の重い値動き。夕刻、欧州市場にかけて140円を挟んで139円90銭~140円20銭で上下し米国市場朝方は140円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は151円30銭で始まり151円ちょうど~20銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.0790で始まり1.0780~1.08ちょうど。

米国市場では発表された生産者物価指数(PPI、5月)が総合指数で前月比▲0.3%、前年同月比で前月の+2.3%から+1.1%へ大きく鈍化。コア指数も+3.2%から+2.8%へ鈍化。これを受けてドルは下落。

ドル円相場は139円30銭へ、ユーロドル相場は1.0840へ。しかしその後、FOMCの結果が市場予想よりタカ派的な内容だったことからドルは反発した。

予想通り利上げは見送りとなったが、メンバーの金利予測、ターミナルレート(最終到達金利)が従来の5.1%(5.00%-5.25%)から5.6%(5.50%-5.75%)0.50%に引き上げられ、あと2回の利上げを示唆。来年以降の利下げ見通しは不変だが、金利水準は0.3%ずつ、利上げ1回分(0.25%)、3月時点の予測から上方修正された。

ドル円相場は140円20銭へ、ユーロドル相場は1.08ちょうど近辺へドル高。ただその後のパウエル議長の会見がそれほどタカ派ではなかったことからドル高は一服。

ドル円相場は139円60銭に反落し引けは140円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.0830近辺で引け。

パウエル議長は、ほぼすべてのメンバーが年内さらなる利上げが適切と判断している、と述べたが、予測は決定事項や計画ではないという点を強調したい、と述べた。

今回の据え置きは利上げスキップとみるべきでなく今後はデータ次第、7月会合はライブ、として利上げ・据え置き双方の可能性があると示唆した。

インフレ抑制に必要な経済条件が整いつつあると述べた一方、インフレは依然として高く利下げは2年ほど先の話とも述べた。

米10年債利回りは3.84%に上昇したあと3.79%台に低下。2年債は4.694%。

米国株は当初タカ派姿勢に大きく下落しNYダウは▲400ドル安。ただパウエル発言を受けて下げ幅を縮めた。NYダウは前日比▲232ドル安の33,919ドル、ナスダックは+53ドル高の13,626ドルで引け。

リスク選好が持ち直したこと、ECBの利上げは確実なこと、からユーロ円相場は底固く、151円20銭~40銭でのもみ合いのあと上昇し151円70銭で引けた。

木曜日の東京市場では日経平均が5営業日ぶりに小幅反落。米国株はNYダウが下落もハイテクがしっかり。円安も支えとなり+200円高となる場面もあったが利益確定売りに押された。引けは▲16円安の33,485円。

発表された日本の貿易収支(5月)は赤字が前月から拡大し1兆3,700億円。

中国の主要経済指標(5月)は全般に弱く景気低迷を示した。小売売上高は前年同月比が前月+18.4%から+12.7 % に鈍化。

鉱工業生産は+5.6%から+3.5%へ、都市部固定資産投資は+4.7%から+4.0%へ伸びが鈍化した。

ドル円相場は140円ちょうどで始まり昼にかけて141円ちょうどへ、さらに夕刻には141円50銭まで上昇した。

ユーロ円相場はECBがこの日利上げ実施が確実、日銀は金融政策据え置き、との見方を材料に一貫して上昇。朝方151円70銭で始まり夕刻には153円10銭をつけ、152円80銭~153円10銭で上下。

ユーロドル相場は1.0830で始まり1.08台前半でもみ合い、1.0810~50で推移した。

ECB理事会では予想通り政策金利が3.75%から4.00%へ0.25%引き上げられた。ラガルド総裁は会見で、利上げはまだ終わっていない、7月会合でも利上げの可能性が極めて高い、と述べた。

米国株は大幅高。経済指標が、個人消費の堅調、製造業の弱い数字、雇用情勢の緩和、となり金融引き締め長期化観測が後退しソフトランディング期待が強まった。

輸入物価指数(5月)は前月比▲0.6%と下落。週次の失業保険新規申請件数は262千件と予想250千件よりやや多く、継続受給件数は1,755千件から1,775千件に増加した。

小売売上高(5月)は前月比+0.3%と予想▲0.1%より強く、鉱工業生産は前月+0.5%から▲0.2%に予想外の減少。設備稼働率は79.7%から79.6%へやや低下した。

NY連銀製造業景気指数(6月)は前月▲31.8から▲15への改善予想を上回る6.6と強かった。

一方、フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月)は前月▲10.4から▲13.7へ予想以上に悪化した。

米10年債利回りは3.72%へ、2年債利回りは4.65%へ低下。ドル円相場は141円30銭から140円20銭へ下落。その後は下げ止まり60銭台に戻したあと140円30銭近辺でもみ合い引け。

ユーロドル相場は1.0810から1.0940~50へ大幅上昇して引け。ドルインデックスは102.16に下落した。ユーロ円相場は一段高となったあと153円50銭~60銭で上下して引け。

NYダウは前日比428ドル高の34,408ドル、ナスダックは+156ドル高の13,782ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が反発して33年ぶりの高値を更新した。岸田首相が衆議院解散を否定。解散=株高との見方で上昇していたため一時▲300円ほど下落した。

しかし日銀が金融政策の現状維持を決定。後場に上昇。FOMCを無事に通過、前日の米国株高も手伝い海外勢から買いが続き、引けは+220円高の33,706円で引け。

ドル円相場は日銀金融政策決定会合の結果発表を前に円買い戻しがやや優勢。ドル円相場は140円30銭から139円80銭台に下落。ユーロ円相場は153円50銭から10銭近辺に下落した。

ただ金融政策の現状維持が発表されると昼からは円が急落。ドル円相場は140円80銭へ。その後は140円20銭に押し戻されたが植田総裁の会見後に再び円安が加速。141円40銭へ上昇。

欧米市場では140円80銭~141円40銭で上下したあと141円80銭近辺に上昇して引けた。

ユーロ円相場も153円90銭に上昇。会見後には154円70銭に大きく円安が進んだ。154円10銭~70銭で上下したあと、さらに上昇し155円20銭台で引けた。

ユーロドル相場は東京時間に1.0940~60近辺でもみ合い横ばい。欧州市場から米国市場にかけて1.0970に上昇、1.0920へ下落したあと引けは1.0940。

FRBウォラー理事は、インフレ低下に向けた進展は遅く幾分の追加利上げが必要となる可能性がある、と述べた。

リッチモンド連銀総裁は、インフレ鈍化がなければさらなる利上げに賛同、と語った。

タカ派発言を受けて米長期金利は上昇。10年債は3.767%、2年債は4.72%。

ただミシガン大学消費者信頼感指数(6月)が前月59.2から63.9へ改善。期待インフレ率は1年が4.2%から3.3%に大きく低下。長期5年も3.1%から3.0%に。

消費マインドが堅調、一方でインフレ鈍化、でバラ色シナリオを織り込み株価を支えた。NYダウは前日比▲108ドル安の34,299ドル、ナスダックは▲93ドル安の13,689ドルで引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.パウエル議長議会証言、FRB当局者発言

FOMCを終え、発言禁止期間が解消。今週は地区連銀総裁らの発言が相次ぐ。FOMCすべてのメンバーが、追加利上げが適切、とみているようだが、メンバー以外も含め、どれほどタカ派な姿勢が確認されるか。

またパウエル議長は水曜日に下院金融委員会で、木曜日に上院銀行委員会で、議会証言を行う。インフレ抑止に向けた姿勢をあらためて明確にするとみられるが、利上げについてどのようなスタンスを示すか。

他のメンバーに比べて追加利上げに慎重な姿勢がみられるが、ハト派的なスタンスがあらためて確認されるか。水曜日には3名の理事(ジェファーソン、クック、クーグラー)も上院で証言を行う。

2.米国の経済指標

市場は景気堅調・インフレ鈍化とバラ色なシナリオを描くが、そうしたリスク選好を支える材料が確認されるか。

月曜日 NAHB住宅市場指数(6月、予想51、前月50)

火曜日 住宅着工件数(5月、季節調整済み年率換算、予想1,405千戸、前月1,401千戸)

木曜日 シカゴ全米活動指数(5月) 週次の新規失業保険申請件数 カンザスシティ連銀製造業活動指数(6月) 中古住宅販売(5月、季節調整済み年率換算、予想424万戸、前月428万戸)

金曜日 PMI景況感指数(6月、製造業、予想48.3、前月48.4、サービス業、予想54.0、前月54.9)

3.イギリス中銀、スイス中銀、金融政策決定会合

先週はFRBが利上げ見送り、ECBが利上げ実施で次回も利上げ方針を明確にした。日銀がなおも超金融緩和政策を維持する姿勢を明確にしたことで、ドル以外の通貨の対円相場、クロス円相場が大きく円安となった。

今週木曜日はイギリス中銀(BOE)、スイス中銀がそれぞれ金融政策決定会合を開催。BOEは政策金利を4.50%から4.75%に引き上げる公算が大きい。

スイス中銀も1.50%から1.75%に利上げをする可能性が高まっている。これによりさらにクロス円相場を中心とする円安が加速する可能性はないか。織り込み済みでひとまず一服となるか。ドル円相場が節目とみられる142円を上抜ける材料となるか。

◆今週のMRA's Eye


日米欧金融政策決定会合の総括

日米欧の金融政策決定会合が続く重要な週が終わり、市場参加者の当面の相場観が定まったようだ。

大まかにみて、FRBは利上げ見送り、追加利上げの可能性は1回ないし2回程度はありながらも、7月、9月も見送りとなる可能性が残る。金利は上方バイアスながら横ばいも。

ECBは利上げを実施、少なくとも次回7月の利上げは確実、その後も利上げが続く可能性が残る。金利は上昇基調でなお打ち止めとなるタイミングはみえない。

日銀は超金融緩和政策を維持し当面変更する意欲がみられない。ただ景気物価動向が予想を上回る状況で政策修正の可能性が以前よりは高い。

こうした限界的な政策金利バイアスからみた主要3通貨の強弱は、単純にみてユーロ>ドル>=円となる。

もっとも、こうした結果は事前の予想通りで、追加的に相場を大きく動かす材料とはいえない。ドル金利の先行きは不透明でとりあえず足元は横ばい。あえていえば、ユーロ金利が上昇し日欧短期金利差は拡大。ユーロ円相場に上昇バイアスがかかり続けるのは妥当。

イギリスやスイスなど欧州の他国でも利上げ継続との見方が強まっており、欧州通貨の対円相場がさらに上昇するとの見方が根強い。

それによりドル円相場に副次的な上方バイアスが強まるというところか。

加えてリスク選好が強まっている点もクロス円相場、ドル以外の通貨の対円相場が上昇するとの見方につながっている。

背景にあるのが米国経済のソフトランディング期待。景気は減速基調にあるが、雇用・消費が底固く、一方、インフレ率は鈍化傾向が続く。それによりFRBが追加利上げを踏みとどまるとの見方が市場に根強い。

その結果、景気悪化見通しが後退し株価を支えている。米国株が年初来高値を更新する状況で、市場全体のリスク選好が強まっている。リスク選好・株高=クロス円相場上昇、ユーロ高円安、新興国通貨堅調、ドル高一服、との見方が通例。

現状では景気減速、中国景気の低迷などから、新興国通貨や資源国通貨は選別的に買われる状況。米国株堅調のなか欧州での利上げ継続が欧州通貨全体を対円で押し上げる状況となっている。

ただ株高、リスク選好がこのまま中期的に継続するとは考えにくい。

株価上昇がいつまでも続くことはなく、いずれは上昇一服となる。株高に応じたリスク選好、円安にも歯止めがかかるだろう。

政策面で景気が加速するような施策はなんらとられていない。インフレ抑止のための景気抑制、金融引き締め強化(欧州)ないし引き締め状態の継続(米国)のなか景気が再拡大する可能性は低い。製造業の在庫調整が一巡して持ち直す程度。

サービス業においては雇用・サービス消費が堅調なまま推移する可能性はあるが、それでも加速する状況にはない。サービス業でも景況感が悪化、雇用にはやや陰りがみえつつある。この状況でソフトランディング期待が広がる状況は楽観的すぎるだろう。

中国は景気低迷を受けて金融緩和に動いた。経済指標も、個人消費、鉱工業生産、ともに伸びが鈍化。生産者物価の上昇率は前年同月比でマイナス。消費者物価の上昇率は0.5%以下。

輸出は海外景気の減速で伸び悩み、輸入は国内需要の低迷、需給緩和でマイナス。貿易黒字ではあるが好ましい状況ではない。

ウクライナ問題の余波で、西側諸国が生産拠点としての中国依存率を低下させる動きとなったことも影響している可能性がある。

その分、プラスに作用しそうなのが日本。金融政策が超緩和的であることも手伝って、日本経済にはポジティブな見方が多い。

日銀の想定よりも景気物価が強めに推移している点は、インバウンドの回復やコロナ禍の悪影響が軽微だったことと併せて、足元では先進国のなかで最も逆風が少なく、むしろやや追い風が吹いている状況か。

この先のFRBの金融政策に対する市場の見方とFOMCの予測ではなお乖離がある。メンバー予測では追加利上げ2回が示唆された。ターミナルレート(金利の最終到達水準)が5.1%(5.00%-5.25%、現状の政策金利水準と同じ)から5.6%(5.50%-5.75%)に上方修正された。

一方、市場は追加利上げがあっても1回で、かつその可能性は五分五分。年末の金利水準は現状と同程度を見込んでいる。

さすがに年後半利下げ2回、3回、との見方は修正されたが、なおもギャップがある。これがどう埋まるのか。

タカ派的なFOMC予測に反し、パウエル議長は会見で追加利上げの有無は不明とハト派的な発言。連続利上げから、以前の2回ないし3回に1回の「通常の」利上げペースに戻るのか。あるいはこのまま打ち止めか。

7月会合での利上げの有無はますます注目される。

さらに雇用物価動向、経済指標の重みはさらに増す。次回会合前に確認できるのは、6月の雇用統計、週次の失業保険申請や企業の雇用スタンス、様々な企業景況感。6月の物価指標がインフレ鈍化を示すか。

ミシガン大学の調査によると期待インフレ率は顕著に低下している。この点はFRBに一定の安心感をもたらすだろう。

金利据え置きでもインフレ鈍化で実質金利は上昇。金融引き締め効果が強まる。利上げ打ち止めを好材料として株式市場が楽観的になるのは尚早だ。

景気悪化は続き、景気の底は年末を越えて来年になる。そこで通常の利下げサイクルに入るのではなく、利下げを実施するとしてもインフレ率低下に応じた調整利下げ。

実質金利の上昇により一段と景気悪化を促すことを回避するためのものとなりそうだ。

この状況はリスク選好の後退とドル金利先安感の共存。さらにECBほか欧州の利上げ打ち止めが視野に入れば、円全面安は終了し、円高方向に基調が転換する可能性が高まる。

さらに日銀が景気物価見通しを上方修正し政策修正に動く可能性も高まっている。これらが明確になるにはなお3ヵ月程度はかかりそうだ。

当面はドル円相場や欧州通貨の対円相場は高値圏でもみ合いとなる。まずリスク選好の円安は長続きしないだろう。そのうえで、10月以降に基調転換、円高方向に転ずるとの見方がメインシナリオとなる。


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