米各種ローン規模と延滞率
- MRA商品市場レポート
2023年7月14日 第2499号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米PPIも減速・中国対策期待で軒並み高」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は総じて堅調な推移となった。注目の米生産者物価指数が市場予想を下回り、米国のインフレが収束に近づいているとの期待が高まったことが金利低下とドル安をもたらしたことが材料となった。
ただし、米国の個人消費が減速しておらず、インフレは鈍化のトレンドにあるもののまだ景気が減速していないため、このドル安はファイナンシャルな面でのドル安であり、米景気の減速を織り込んだドル安ではない。
メインシナリオは金融引締めの効果で個人消費にも減速感が強まり、需給ファンダメンタルズの減速でエネルギー価格が下落(しかし減産やドル安で下げ幅は限定)という形になるだろう。問題は「いつ景気の底入れがあるか」になる。
仮にこのまま景気の減速がなく、回復基調になるならば多くの景気循環系商品価格が再度上昇することになるが、その場合いったん沈静化していた「エネルギーや食品」の価格の上昇に繋がる。
この場合、リビングコストが上昇するため再び金融引締めへ、といった流れが強まることは懸念である。
また、インフレが収束しつつあることから今後は個人消費が金融引締めやローン減免終了の中でどの程度減速していくかに焦点が当たることになろう(詳しくは今日の見通しを参照ください)。
【本日の見通し】
本日は米国のインフレピークアウト期待が高まる中、ドル安基調となりやすく、かつ、まだ米国景気が減速していないことからドル安が商品価格を押し上げると考える。
また、中国に関しては統計が悪いことから逆に経済対策期待が高まっており、ドル安進行は同様に工業金属価格をファイナンシャルな面で押し上げやすい。
一方、消費量が気温や経済環境に左右されやすい発電燃料価格は停滞している。このことは景気が減速し始めていることを示唆するもの。
今後、市場は特に米国の個人消費動向に注目することになる。コロナ下で民主党が進めてきた、バラマキ政策が終了することの影響が小さくない。
先日、バイデン政権が昨夏に中間選挙対策で発表した教育ローン返済免除は「違憲」と判断され(と言っても米最高裁は、トランプ政権時代に保守派が過半数を超えているため、民主党の政策には否定的な見解になりやすい)、これにより個人消費が減速する可能性は高い。
実は教育ローンの対GDP比は既に8.4%と過去最高に達しており、自動車ローンも8.2%とこれも過去最高水準、住宅ローンも62.9%とリーマン前の63.4%に近づいており、個人の金利負担は徐々に重くなっている。
利上げは打ち止めで一安心だが、上述の教育ローンの返済免除終了は、まず、個人消費に小さからぬ影響を与えることになろう。
本日予定されているイベント・統計で注目は以下の通り。
・G20財務相・中央銀行総裁会議
・EU財務相理事会
・7月米ミシガン大学消費者マインド指数
・企業決算各社(ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン、ブラックロック、シティG他)
【昨日のトピックス】
6月の中国の貿易統計は輸出が前年比▲12.4%(市場予想▲10.0%、前月▲7.5%)、輸入が▲6.8%(▲4.1%、▲4.5%)と、輸出入とも、前月、市場予想を下回った。
5月の統計では輸入の減少が市場予想を上回ったため、景気減速が底入れしたか、と期待されたがやはり同国の景気が減速していることを確認する内容だった。
循環的な景気回復が想定よりも早く始まった可能性がある米国向けの輸出も、年初来の累計の前年比が▲17.9%(1-5月期▲15.1%)とマイナス幅が拡大、欧州も▲6.6%(▲4.9%)、ボリュームの大きいアセアン諸国向けも+1.5%(+8.1%)と大幅に減速している。
世界の工場である中国の輸出減少は、世界景気が減速している可能性を示唆している。
米国は先日の消費者物価指数の減速で利上げが打ち止めになるとの見方が強まり、ドル安が進行して多くの商品価格の上昇を誘ったが、恐らく数量ベースのモノの需要は鈍化する可能性が高い。
中国の国内情勢は厳しく、財政面でのゆとりも余りないことから内需刺激策が打ち出し難い。その中で海外に活路を見いだそうとしていたが、海外も今後景気が減速する可能性が高いため、中国の回復には時間が掛かると予想され2024年に回復はずれ込むのではないか。
しかし、ここまで統計が悪化するとさすがに何らかの対策を実施する必要性は、共産党内でも意識されていると考えられ、早晩財政出動を伴う経済対策が、対象や規模を限定して行われると予想される。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。米PPIがインフレ収束を支援する内容だった他、リビアのエルフィール油田とシャララ油田が抗議行動で生産を停止(合計▲30万バレル超)しており、それに伴う需給ひっ迫観測が価格を押し上げた。
DOEデータの更新を元に価格見通しは、弊社の6月末更新の予想よりも上振れする可能性が高い。オフィシャルには次の見通し変更は10月であるが、現在のこのデータを元にすると、Brentの価格予想が2023年が79.15ドル(6月27日付見通し77.84ドル)、2024年が84.39ドル(83.19ドル)と各々、1.5ドル程度引き上がることになる。
WTIは2023年が74.25ドル(73.02ドル)、78.92ドル(77.75ドル)。
なお、リビアの▲30万バレルの減産が続くようであれば、上記見通しはさらに+0.5ドル程度、上方修正されることになる。
OPECプラスは2024年も減産継続、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意、ロシアも自主的に▲50万バレルの輸出削減を決定した(詳細は以下の通り)。
しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。
問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。
OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施
サウジ 7月以降も▲100万バレルの追加減産
サウジアラビアの財政均衡価格は81ドル、OPECバスケット価格のここまでの平均が80ドル程度であるため、やや予算を下回っていることから多少の減産で価格が上昇するなら、減産はありと判断していると考えられる。
一方、ロシアは2023年度のウラル原油前提価格を70.1ドルに設定しているとみられるが、今年のウラルの平均価格は50ドル台であり、想定を大きく下回っている。
6月27日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲2,996枚、ショートが+25,093枚と、弱気に転じている。
Brentはロングが▲12,255枚、ショートが+18,331枚となっており、こちらも弱気に転じている。
6月の中国の原油輸入は前年比+45.3%の5,206万2,000トン(前月+12.3%の5,144万4,000トン)と伸びが前月からさらに加速した。この水準は同じ時期の過去5年の最高水準に迫る。
今回の輸入増加は、製油業者のメンテナンス終了と、ティーポットと言われる独立系生産者の輸入枠拡大が影響したとみられる。
一方、石油製品は輸入が前年比+168.8%の441万トン(前月+195.9%の438万トン)とこちらも大幅に加速、輸出は+40.9%の451万トン(▲1.8%の375万トン)と回復したが、過去5年平均は下回っている。
国内景気の回復が遅れる中、原油の輸入増加は先々の製品輸出の増加に繋がる可能性がある。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。
現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。
<シナリオ別原油価格見通し>
1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続 産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル
2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル
3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル
4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下
(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)
5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル
6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
※矢印の向きは価格の方向性。
本日は、ドル安基調、OPECプラスが減産を断行する中で、供給面の大きなトラブルが発生していることもあり、テクニカルに200日移動平均線のレジスタンスライン(Brentで82.5)を試す展開が予想される。
仮にこの水準を上抜けすれば、明確なレジスタンスが存在しないため、オプションの攻防ラインとなる85ドルを試す展開に。
なお、ドル安が価格上昇の主因の1つであることに間違いはないが、このまま景気が減速する中でのドル安であれば需要が減少するため再び価格は下落に転じると考えるが、その「絶対価格水準」がどこになるのか、を判断する上で、上記のレジスタンスラインの上抜け有無は非常に重要になると考える。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は南欧の気温上昇と、ノルウェーの生産回復が下落した。ノルウェーのメンテナンス終了を受けた供給面のタイトさが解消したことが材料。
弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要削減をしなくても足りるとの結果(前回シミュレーションでは+5%の需要増加でも足りていたので、若干状況は悪化)であるが、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。
しかし、仮にロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲10%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。
年後半に掛けて景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていることから、気温の低下(ないしは夏場のアジアの猛暑)がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。
今年の夏・冬にかけてのガス供給に今のところ問題は生じていないが、スーパーエルニーニョでなぜか厳冬予想だったり、エルニーニョ現象の後のラニーニャ現象の発生の可能性による厳冬、異常気象発生時にはガス供給インフラに物理的な障害が発生するリスクが高まること、それがなくても例年通りであれば昨年よりも寒い冬になるだろう、ということを考えるとやはり上昇リスクは拭い切れない。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況
1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。しかし、ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。
弊社のシミュレーションでは欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。
今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。
そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。
しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。
2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。今年はエルニーニョ現象、冬はスーパーエルニーニョ、ないしは再びラニーニャ現象の発生が懸念されており、そのリスクは無視できず。
3.4.は顕在化している。
5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。
今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。
米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇し、過去2年のレンジを上抜けした。気温の上昇や冬場に向けた調達圧力が高まっているものと考えられる。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米天然ガス市場は在庫の増加がほぼ市場予想通りだったこともあり、水準を切下げた。今のところ米天然ガス在庫の水準は過去5年レンジの上限近辺であり、供給に懸念は生じていない。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物市場は期先の価格が上昇した。これまでの下落が大きかった事もあり、調整的に物色されたと考えられる。しかし、足下のLNGタンカーレートは上昇しており、気温上昇に伴う発電燃料の調達意欲は旺盛とみられる。
現在のJLCの水準は13.58ドルであり、現在のスポット価格は、かなりその差を縮小させたが、まだこの水準を下回っている。
その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。
今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。
この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。
6月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+19.2%の1,039万トン(前月+17.3%の1,064万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。
まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産の減少や、気温上昇による発電向けの需要増加が輸入を高水準に維持している可能性がある。
5月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.9%の423万トン(前月+12.6%の421万トン)と過去5年の最高水準(415万トン)を上回った。
5月のLNG輸入は前年比+30.2%の641万3,000トン(+9.6%の476万7,000トン)と過去5年平均(514万3,000トン)を回復している。
5月の中国の天然ガス生産は+7.3%の1,397万1,000トン(+5.6%の1,382万4,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。
5月の中国の電力消費量は前年比+7.5%の7,222億Kwh(前月+8.5%の6,901億kwh)と伸びが減速、過去5年レンジも上回った。
天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。
ただし、気温上昇による需要増加の面も否めず、景気の先行きは不透明で、中国南部の降雨による水力発電の回復をみるに、高水準の発電燃料輸入は減速の可能性がある。
※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。
7月9日時点の日本の発電業者のLNG在庫は207万トン(過去5年平均259万4,200トン)と過去5年平均を下回り、過去5年の最低水準に迫っている。現在、日本は猛暑の状態であり、スポット価格の上昇リスクは低くない。
サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。
本日は、米国の景気減速、欧州の利上げ継続を受けた工業向け需要の鈍化観測と、エルニーニョ現象の影響で世界各地の気温が上昇していることに伴う需要増加観が相殺する形で、現状水準でもみ合うと考える。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル
◆石炭
豪州石炭スワップ先物は全ゾーン続落。昨日も期先の下落が大きかった。API2石炭スワップも期先の下げが大きかった。
ここしばらく、期先の価格が上昇して全ゾーンコンタンゴになるか、とみて注視していたが、期先の上昇圧力は緩和して水準を切下げており、目先全ゾーンコンタンゴ化の可能性は大幅に後退している。
ただ、欧州の石炭生産規制によって供給が絞られる一方、中国やインドは石炭を今後も使う見通しであり、中長期的な需給ひっ迫を市場が意識し始める可能性はあるため期先の動きは引き続き、注意したい。
期近は今のところ需給が緩和しているため、消費国である日本にとって大きな問題にはならないが、期先のコンタンゴがさらに進むリスクは意識しておく必要がある。
現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は135ドル、±1標準偏差で65~205ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。
期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が125~130ドル程度まで再び低下しているため、125~205ドルが説明可能なレンジ。
2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できない。
ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。
て今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる可能性があり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。
6月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+110.0%の3,987万1,000トン(前月+92.6%の3,958万4,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。
ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。
国別では5月まではインドネシアと豪州からの輸入が増加、ロシアからの輸入が減少している。特に豪州からの輸入増加が顕著で制裁解除の影響が顕在化していると考えられる。
5月の中国の石炭生産は、前年比+5.1%の3億8,500万トン、1,242万5,000トン/日(前月+2.7%の3億7,400万トン、1,246万トン/日)と伸びが加速した。
5月の中国の電力消費量は前年比+7.5%の7,222億Kwh(前月+8.5%の6,901億kwh)と伸びが減速、過去5年レンジも上回った。やはり猛暑・渇水(中国南部)に対応するための発電燃料需要は増加しているとみられる。
今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇による電力供給減少がなければ、南部の降雨による水力発電の回復や、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
本日は、発電燃料価格動向を左右する主体のガス価格が低迷していることから、石炭価格も低迷すると考える。
◆LME非鉄金属
LME非鉄金属市場はまちまち。米PPIを受けたドル安進行でファイナンシャルな面が価格を左右しやすい銅やアルムにの価格は上昇したが、余り投機取引の影響を受け難いニッケルや錫に関しては、中国統計の悪化を受けて水準を切下げた。
世界の非鉄金属消費の5割を占める中国の景気は不動産セクターの停滞で回復しておらず、需要は低迷した状態が続いている。
数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。
通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないのではないか。
とはいっても年内の回復は難しく、中国の回復の遅れと欧米の景気減速から今年の秋頃まで低迷した後、景気底入れが期待される(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。
なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えば「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるが、そのタイミングは不明。
COTレポート(+CFTCのCME銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向は、金属毎にまちまち。
LME銅・亜鉛・錫は新規ロングの増加が新規ショートの増加を上回った。鉛・アルミはロングが減少、ショートが増加して明確に弱気のスタンス、CME銅とニッケルはロング・ショートとも減少したがショートの減少が顕著で結果、強気に。
全体としてポジションはネットショートに傾いている。基本、現物を必要としないファンド勢は将来的に必ずこのポジションを解消するため、先々の上昇のマグマが溜まっていると考えるべきだろう。
タイミングとしては中国政府の財政出動を伴う経済対策、あるいは欧米の景気底入れ。
6月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲16.4%の44万9,649トン(前月▲4.6%の44万4,010トン)と過去5年平均を下回った。
一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+3.2%の212万5,046トン(+16.9%の256万トン)と過去5年の最高水準で推移しているが、前月からは数量が減った。
経済活動再開を意識して銅精鉱の輸入が増加していたが、電力不足や経済活動再開の遅れから輸入全体のペースが鈍っている状況。
5月の中国の精錬銅生産は+26.9%の109万3,000トン(前月+25.3%の112万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善(渇水のリスクはある)を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。
5月の銅スクラップの輸入は前年比+11.6%の17万6,490トン(前月+7.4%の14万5,366トン)と過去5年平均を回復した。
長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。
早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている(循環的な需要増加とは別)。
価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。
また、習近平政権になってから、権力掌握のためにかなり無理な経済政策(過剰な投資)を行ってきたため、そのツケを払う結果、中国が「日本化」するリスクは以前よりも高まっている。
この場合、工業金属のみならず、エネルギーなどの景気循環系商品の構造的な下押し要因となるため、今後の中国政府の政策対応の重要性は増すことになる。ただ、中国は2030年頃まではまだ構造的な成長が見込めるため、これはまだリスクシナリオの位置づけ。
本日は、米CPI・PPIともインフレの減速を確認する内容であり、金融面でドル安が進行しやすいこと、中国統計が非常に悪いことを受けた経済対策期待が逆に価格を押し上げると考えられる。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は小幅に上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。
中国統計の悪化が経済対策ヘの期待を高めたため、鉄筋先物価格が上昇したことが鉄鋼原料価格を押し上げた。
なお、河北省と江蘇省で鉄鋼生産量を前年を下回るように制限するという報道が流れていたが、誤りであったことが確認されている。
疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)を元に鉄鋼製品との回帰を行うと、この数年の原料炭取得の困難さから有意な相関関係は喪失しているが、直近1年のデータを元にすると、概ね現在の鉄鋼原料価格と鉄鋼製品の価格はこの回帰直線上に位置する。
恐らく、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていないため、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため総じて下押し圧力が掛りやすい。
週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+13万7,000トンの1,273万7,000トン(過去5年平均 1,378万7,000トン)と過去5年平均を下回っているが、在庫の増加ペースは例年よりも速い。
鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲50万トンの1億2,520万トン(過去5年平均 1億2,633万6,000トン)、在庫日数は25.6日(+0.7日、過去5年平均26.5日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均に近接しつつあり、需給は緩和の動き。
主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+4万トンの174万トン(過去5年平均 187万5,000トン)、在庫日数は+0.2日の6.7日(過去5年平均 7.3日)とこちらも在庫水準が増加し、日数ベースでも需給は緩和している。今後、原料炭価格には下押し圧力が掛ることになるだろう。
6月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲22.5%の61万2,010トン(前月▲22.2%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。
6月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.7%の750間8,100トン(+7.7%の836万トン)と昨年の水準を下回ったが、過去5年の最高水準は下回ってきた。
5月の中国粗鋼生産は前年比▲6.7%の9,012万トン(前月▲0.2%の9,264万トン)と減速基調を維持し、過去5年平均を下回った。
これまで中国は輸出品の価格を下げて(この間、人民元安も進行)販売を促してきたが、海外も減速を始めており輸出増加が厳しくなってきたようだ。また、この状況を受けて鉄鋼製品生産に「上限」を地方政府が設定する動きもみられている。
製造業全体の在庫循環図は調整局面入りしており、まだ在庫調整が必要といえるだろう。
鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないと考える。
バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要に成るが、今のところかけ声は大きいが、大きな経済対策を打ち出せるほど中国の財布は大きくない。
なお、WSJは関係者の話として1兆元規模の特別国債の発行を検討しており、調達した資金はインフラ整備などの成長促進に充て、大都市以外の地域を対象に非居住用の購入制限の撤廃を検討していると報じているが、今のところその動きはみられていない。
本日は、鉄鋼製品価格が需要の減少で低下する中、鉄鋼原料は在庫積みの動きと調達抑制の動きで現状維持の見込み。
なお、中国政府による不動産開発業者向けの更なる対策実施観測が報じられており、仮にそれが報じられれば価格の上昇要因となる。
ただし金利下げや返済免除などの金融面だけでは恐らく反応は薄く、不動産取得制限の緩和や頭金の引下げなどの需要を喚起する政策でなければ影響は限定されるとみる。
◆貴金属
昨日の金価格は、実質金利の低下とドル安進行を受けて、水準を切り上げた。銀、プラチナ、パラジウムも金の上昇と株高を受けて同様に水準を切り上げた。
金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)、2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト、3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え、あたりだろう。
これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。
恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。
恐らく、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。
ちなみに、2021年末から今年4月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が74.6トン、新興国が436.9トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは511.5トンとなる。これだけで205ドル程度の価格押し上げ要因となる(ETF1トンの積増しで0.4ドルの上昇となるため、それを用いた)。
なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。
基準価格は低下しているため800ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」となる基準価格はIMFベースであれば1,000ドル、WGCベースでは1,250ドル程度となる。
簡単な要素分析で現在の信用リスクが500ドル程度であるため、IMFベースであれば1,500ドル、WGCベースでは1,750ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのWGCベースが基準となる。
残りの200ドル程度が、ドル指数回避や諸々の安全資産需要による要因と考えられる。
仮に過去5年平均程度である380ドル程度までの信用リスク分の低下があるとすれば、▲120ドル程度の下落要因となる。WGCデータを基準にした場合、年後半の金価格の目線は1,830ドル程度、ということになろうか。
なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。
銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。
月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限を目指す動きになっている。しかし、米ISM製造業指数が55を下回っている状況だと、ボリンジャーバンドの下限に張り付きやすい。
仮にボリンジャーバンドの下限75倍、上限ならば94倍程度が目処になるが、金を1,950ドル程度とすると20.7~26.0ドルが現在取り得る範囲といえる。
100日移動平均線のサポートライン、チャート的には23.4ドルが目先の下値として意識される。ここを下抜けすると次は22.20ドルが目処に。
本日は、米インフレのピークアウトを市場が強く意識し始めているため、実質金利が低下しやすく、ドル安も進行しやすいことから上昇余地を探る展開を予想。
また、株価が上昇していることもありPGM価格にも上昇圧力が掛る展開。
◆穀物
シカゴ穀物市場は上昇した。朝方から米CPIを受けたドル安で水準を切り上げていたが、PPIがさらに弱い内容だったことでドル安が加速したことが価格を押し上げた。
一昨日発表された米需給報告は以下の通りで、単収の見通し改善が生産増加観測に繋がり、在庫増加・需給緩和が見込まれている。
ただ、いずれの穀物も作柄が例年を大幅に下回っており、取引所で受渡可能なGood/Excellentの比率は低下が見込まれるためやや楽観的な見通しといえる。
・7月米単収見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 177.5Bu/エーカー(176.3Bu/エーカー、181.5Bu/エーカー)大豆 52.0Bu/エーカー(51.3Bu/エーカー、52.0Bu/エーカー)小麦 46.1Bu/エーカー(NA、44.9Bu/エーカー)
・7月米生産見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 153億2,000万Bu(152億130万Bu、152億6,500万Bu)大豆 43億Bu(42億6,404万Bu、45億1,000万Bu)小麦 17億3,900万Bu(16億8,689万Bu、16億6,500万Bu)
・7月米輸出見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 21億Bu(NA、21億Bu)大豆 18億5,000万Bu(NA、19億7,500万Bu)小麦 7億2,500万Bu(NA、7億2,500万Bu)
・7月米在庫見通し 実績(市場予想/前月)トウモロコシ 22億6,200万Bu(22億4,930万Bu、22億5,700万Bu)大豆 3億Bu(2億261万Bu、3億5,000万Bu)小麦 5億9,200万Bu(5億7,091万Bu、5億6,200万Bu)
エルニーニョ現象が発生している場合、買いは続かず下落に転じていることが多い。2000年以降はエルニーニョ現象が発生した時はむしろ豊作で価格は下がっていることも多く、過去の傾向からすれば、エルニーニョ現象の影響は小さいと考えられる。
しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。
本日は、需給緩和見通しであるものの、米インフレピークアウトを期待したドル安が進行しやすく、上昇余地を探る展開か。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国債の格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。
・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。
・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化している)
新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。
・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。
そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。
・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。
中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。
一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。
中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)
・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。
また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。
◆本日のMRA's Eye
「3つの脱レビュー」
※しばらく当方都合でMRA's Eyeが休載となるため、本日、MRA's Eyeを掲載いたします。
2022年以降、3つの重複が発生し、インフラ投資の重複による資源価格の上昇リスクが高まることを指摘してきた。
今回のロシアのウクライナ侵攻、それを巡る中国のロシア支援の姿勢などを背景に、脱炭素、東西経済圏の分裂が想定通り進捗している状況だ。
脱炭素と有炭素は、「脱ロシア」を進めるための戦略の1つであり、東西経済圏の分裂とやや重複するところがある。
最終的に温暖化防止を目的として化石燃料を使わない世の中を志向したとしても、
1.移行期間中は化石燃料が不足する可能性があるため、供給能力の拡充が必要であること(新興国は環境よりも電化進捗による近代化を優先する可能性が高い事)
2.仮に脱炭素が成功したとしても、バックアップ用の電源や燃料は常に確保する必要があること
3.それらの資源を同盟国の間で確保する必要が安全保障面から高まっていること、から、投資の重複度は上がり、かつ、速度も加速する見込み
しかし、過度な脱炭素進捗や東西対立による「経済的な不利益」が今年の年末から来年に掛けて意識される可能性はあり、さらに来年は米中対立のカギとなる「台湾総統選」や「米大統領線挙」が実施されると予想される。
台湾総統選で与党が勝利した場合対中強硬政策が続く可能性が高く、米民主党政権は同様の政策を継続するため対立がより先鋭化するのではないか(逆に親中派が勝利した場合、対中強硬姿勢が緩和する可能性も)。
米大統領選で共和党が勝利し、トランプ元大統領のようなアメリカ・ファースト型の保守候補が大統領となった場合、経済を優先して対中政策や対ロシア政策、ウクライナ支援、親欧政策の見直し、脱炭素戦略の見直し(化石燃料採掘規制の一層の緩和など)が行われ、コロナ以降の政策が逆回転するリスクも想定される。
ただ、トランプ元大統領以外の候補者は基本的に嫌ロシアであるため、ウクライナ政策が見直される可能性は低いとみる。
民主党が次回大統領選挙に勝利し、現在の政策が継続するためには2024年の景気がよくならなければならない。
そのため、早期にインフレ抑制を完了し、2024年はむしろ金融緩和で景気刺激、支持率上昇で再選、を目指したいバイデン政権だが、ここまでの景気、インフレのパスを見ると来年の後半まで景気が低迷(PMIベースで50を回復するタイミングが遅れる)する可能性は高くないと見ている。
なお、中国とインドの近代化のための投資は継続するとみられるが、中国は人口動態がピークアウトしており構造的な低成長局面入りした可能性が高い。この場合、特に習近平政権になってから権力掌握のために行ってきたバブル発生が重しとなり、1990年代から「失われた30年」となった日本のように中国経済が「日本化」するリスクはゼロではなくなってきている。
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