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米債務上限問題楽観も物価指数上昇が重し
  • MRA商品市場レポート

2023年5月29日 第2464号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米債務上限問題楽観も物価指数上昇が重し」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は価格水準を切り上げる商品が目立った。週末は3連休となるためこれまで上昇してきたドルが売られ、ドル建て資産価格の上昇要因となった。

また、米債務上限問題で進展があり、近く合意するとの報道が流れたことも市場参加者のリスク選好の安心感を強めたと考えられる。

しかし、発表された米PCE価格指数は前月比+0.4%(市場予想 +0.3%、前月 +0.3%)、前年比+4.4%(+4.3%、+4.2%)と上昇、コア指数も前月比+0.4%(+0.3%、+0.3%)、前年比+4.6%(+4.7%、+4.6%)と上昇しており、米FRBのインフレ抑制策が奏功していないことが明らかになったことが、米金融引締め加速観測を強め、ドル高を誘発、ドル建て資産価格の上昇余地を限定した。

既にFed Watchでは6月のFOMCでの25bpの利上げ確率が64.2%となっている。1週間前は17.4%であったことを考えると状況は一変している。

市場参加者はある意味勝手に年内3回の利下げを想定していたが、この部分ではFEDが主張していたことが正しいことになる。しかし更なる利上げが必要、という意味ではFRBは政策を誤っていたと言わざるを得ない。

今のところ、市場参加者は6月利上げで7月は見送り、と想定しているが、1週間前までは可能性はゼロだった「7月25bp利上げ」の可能性も27.1%まで上昇している。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、欧米主要市場が休場のため基本的には様子見気分強い展開が予想される。しかしこの週末に債務上限問題で米バイデン大統領と下院議長が合意したことを受けて(詳しくは昨日のトピックスを参照ください)、市場参加者のリスクテイクが回復することから、オープンしている市場ではリスク資産価格に上昇圧力が掛ることになるだろう。

月曜日に予定されている統計・イベントは殆どない。予定されているのは日本の景気先行・一致指数改定だが、商品市場動向には殆ど影響を与えないだろう。

・4月日本景気一致指数 市場予想 98.7(速報 98.8) 先行指数 97.5(97.7)

【昨日のトピックス】

先ほど米大統領と下院議長が債務上限の引き上げで合意。目先のリスクは後退した。恐らく週初はリスクテイクの再開で多くのリスク資産価格、特に景気循環系商品価格に上昇圧力が掛ることになるだろう。

なお、今回の合意は米大統領と米下院議長が合意しただけなので、米下院共和党の保守強硬派がすんなりOKを出すかどうかはまだ分らない。

ただ、これだけ世界から注目され、イエレン議長が出し直した6月5日のXデーまでに可決しなければ、共和党の支持率が低下することも目に見えているため、恐らくフリーダム・コーカスもしぶしぶながら賛成票を投じるのではないか。

しかし、今回の債務上限引き上げで、歳出は削減することで一定の合意をみたが米国の財務健全性・持続性が担保されている訳ではなく、フィッチは既に米国債をネガティブウォッチ、ムーディズも追随するとみられる。

結局、次のステージは「米国債の格下げ」に焦点が当たることになる。

通常、融資などの与信行為には何らかの担保を差し入れて行うことが多いが、米国債も当然その対象となる。各々の契約にもよるが、与信行為に関して米国債の格付動向がトリガーとなっていることは十分に有り得る。

また、格下げになれば米国債が売られ、利回りが上昇することも有り得る。AAA格の債券とBBB格の債券で利回り水準が異なるのは、財務状況を反映してのことだ。

この場合、格下げの影響が波及的に広がる可能性があることを示している。しかし2011年のS&Pによる米国債格下げの時も市場は混乱したが、その後の信用収縮にまでは繋がらなかったため、そこまでの警戒は取り越し苦労かもしれない。

しかし、テールリスクが顕在化した場合、その他の「想定していないリスク発動のトリガー」となることは十分に有り得る。今後は格付機関の動向を注視する必要があるだろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。債務上限問題が合意に近いとの報道を受けて週末3連休を控えたポジション調整の買い戻しが入ったためと考えられる。

5月23日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲10,371枚、ショートが▲12,021枚と、「両方のポジションを落す動き」がみられる。債務上限問題に備えた動きと言えるだろう。

Brentはロングが+16,490枚、ショートが▲13,663枚となっており、こちらはBrentとの連動性が高い中東原油の上昇要因となり得る、OPECプラスの減産が意識されているとみられる。

足下、株価が強く推移し、景気の先行きを逆に不透明にしているが、インフレ沈静化の兆しが見えない中でFRBの高金利政策は持続せざるを得ない状況は続いており、先行きの景気減速、リスク回避の続落リスクはむしろ高まっている。

景気のソフトランディングに成功すれば供給能力の制限から年後半か来年以降、急速に価格が上昇するシナリオ、金融引締め継続を背景に金融危機・信用収縮が発生してソフトランディングに失敗して価格が急落する、の両方のリスクに晒されている状態。

前者の場合、OPECプラスの減産や非OPECプラス諸国の上流部門投資が不充分であること(脱炭素に加えて、金利高の影響もある)から、2024年の価格上昇は弊社が想定しているよりも大きなものになる可能性はある。

後者の場合でも供給能力の制限から思ったほど価格は下落せず、「スタグフレーション」となる可能性は高まっている。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は欧米主要市場が休場のため動意薄く、現状水準でのもみ合いとなろう。

ただし、米債務上限問題で合意に至ったことから、オープンしている市場では上昇圧力が掛ることが予想される。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は期近と冬場を中心に下落した。欧州・中国の景気減速に加え、ロシアを含む生産国のガス供給に大きな支障が出ていないことが材料になっている。

欧州最大のエネルギー消費国であるドイツの発電量(7日平均)は、同じ時期の過去5年の最低水準である478億キロワット(単位時間あたりの日平均)を下回る474億キロワットとなっている。GDPに見られるように、リセッション入りの影響で工業向けの需要が減少しているのだろう。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果。

逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合、需要を過去5年平均の水準から▲10%以上削減することが必要となる。

ただし年後半に掛けて景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていること、ロシアも原油価格・ガス価格下落による財政状況の悪化が懸念されるため更なるガス供給の削減は常識的に考えて難しいことから、気温の低下(ないしは夏場のアジアの猛暑)がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。しかし、ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

しかし、上述の通りロシア産ガスの供給が実質的に制限されていないことから、実際はこの中間で2026年頃に脱ロシア完了となるのではないか。

このことは、2026年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

3.4.は顕在化している。

5.は夏場の調達が始まる時期であるが、今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は最大消費地の北アジアは冷夏となる見通し。ただしエルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、冬場のリスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも低下し、昨年の水準を下回った。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は期近のみ下落した。在庫の積み上がりに遅れはみられるものの、欧州向けの輸出需要が、同地域の景気減速で低迷するとの見方が価格を押し下げて居る。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は全ゾーンパラレルに低下した。欧州ガス価格の下落と、中国の国内生産とパイプライン供給増加でLNGの輸入需要が抑制されていることが背景。

現在のJLCの水準は15ドル程度であり、現在のスポット価格はこれを大きく下回っている。その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

4月の天然ガス生産は+5.6%の1,382万4,000トン(±0.0%の1,448万5,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準。

4月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+11.0%の898万トン(+11.2%の887万トン)と先月とほぼ同じ前年比水準を維持したが、それでも過去5年の最高水準は下回っている。

内訳を見ると、4月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.6%の421万トン(前月+4.6%の351万トン)と過去5年の最高水準(374万トン)を大きく上回った。

一方、4月のLNG輸入は前年比+9.6%の476万7,000トン(前月+15.9%の536万3,000トン)と過去5年平均(481万トン)を割り込んだ。国内生産の増加とパイプラインベースの輸入増加、燃料の種類は異なるが、石炭在庫の積み上がりが発電向けのLNG輸入需要を減じたと考えられる。

4月の中国の電力消費量は前年比+8.5%の6,901億kwh(前月+6.1%の7,369億kwh)と伸びが加速したが季節的に数量は減少している。昨年4月はロックダウン開始月ということもあり伸びが加速していても不自然ではない。

天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。ただしペントアップ需要がどの程度継続するかは、現時点ではまだ不透明である。

季節的な猛暑、渇水などによる発電燃料輸入需要が増加する可能性があるものの、景気の回復ペースが想定よりも緩慢であるため高水準の発電燃料輸入は減速の可能性がある。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

5月21日時点の日本の発電用LNG在庫は250万トン(前年同月末211万トン、2018~2022年平均249万6,500トン)と過去5年平均程度。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

週明け月曜日は、欧米主要市場が休場のため小動き。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は期近が下落、売られすぎた期先が上昇した。API2石炭は期先が低下している。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は125ドル、±1標準偏差で55~195ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~140ドル程度まで低下してきたことを考えると、実際は130~195ドルが説明可能なレンジ。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)であることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除しない。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

そろそろ夏場を意識した調達が本格化する。そして今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏にある可能性があり、南アジアでは既に記録的な熱波が観測されている地域も多い。そのため、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

4月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+72.7%の4,067万6,000トン(前月+150.7%の4,116万5,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準となった。

昨年のロシアの軍事侵攻による物流の停滞から輸入は減少していたため発射台が低かったこともあるが、中国のリオープンと豪州に対する制裁解除、中国南部の渇水の影響で高水準の輸入が続いている。やはり、この国の発電燃料は石炭なのだ。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後も輸入は増加が予想される。

4月の中国の石炭生産は、前年比+2.7%の3億7,400万トン、1,246万トン/日(前月+5.4%の4億1,900万トン、1,351万トン/日)と伸びがさらに減速した。

中国の消費電力は前年比+8.5%の6,901億kwhと前月から伸びは加速したが季節性もあり総量は減少している。この状況で豪州炭の輸入再開で4月の石炭輸入が記録的な水準である事もあり生産が低迷したと考えられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇や渇水による電力供給減少がなければ、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

週明け月曜日は、欧米主要市場が休場のため様子見気分強く、オープンしている市場でも大きな変化はないと考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇した。ドルがアジア時間から軟調に推移していたことを受けて水準を切り上げる動きとなっていたが、米国時間に発表された米PCE物価指数が市場予想・前月を上回る伸びとなり、利上げ観測が強まってドル高が進行したため、上げ幅を削る展開に。

非鉄金属のベンチマークである銅の人民元建ての価格は過去65,600人民元/トンが「最高値」として意識される傾向が強い。というのも2000年以降、この水準にタッチすると下落していることが多く、今回も同様。

やはり中国の景気はそれほど回復しておらず、非鉄金属価格の上昇がある中で消費を継続するのは困難、という事だろう。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は意図せざる在庫積増し局面の終期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況とみられる。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛ることになるが、恐らく景気てこ入れもあるためそこまで時間は掛らないのではないか。

弊社は中国のペントアップ需要の増加で価格がQ123に上昇し、その後年末に掛けて水準を緩やかに切下げると考えていたが、中国の回復の遅れと欧米の景気減速から今年の秋頃まで低迷した後、景気底入れが期待されるQ423~Q123に上昇に転じるとみる。

COTレポート(+CFTCのCME銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向はさらにネット売り越し幅を拡大した。CME銅を除く全ての金属がロング減少・ショート積増しとなっている。

ロングポジションの解消も進んでポジションが軽く、新規ショートも積み上がっているので、イベントリスク終了後には上昇に転じるとみているが、それにはまだ時間が掛りそうだ。

直近でネット売り越しだったのは、2020年6月はまさにコロナ危機時だったが、このときは大幅な財政出動や金融緩和が行われ、物流の停滞やコロナの影響による鉱山生産減少が意識され始めたタイミングであり、この後、ネット買越しは増加して価格は上昇している。

今回は、金融引締め継続、財政も削減、物流停滞は解消し、鉱山生産も回復していることから、2020年とは逆の動きになる可能性は低くない。やはり構造的な脱炭素向けの需要増加が期待され、景気が底入れするとみられる2023年後半以降までは上値は重いのではないか。

ただ、脱炭素などのテーマ性のある金属は景気底入れ後は顕著な上昇になるリスクはあると考えている。

最大消費国である中国の景況感は良いとは言えず、4月の中国製造業PMIは49.2(市場予想 51.4、前月 51.9)と市場予想、前月とも下回り、中国のペントアップ需要の顕在化が一巡した可能性があることを示唆する内容となった。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、新規受注のマイナス寄与度(▲1.44)が大きく、次いで、生産(▲1.10)、雇用(▲0.18)の寄与度が大きかった。

景気回復局面では新規受注が生産を促し、雇用に繋がるという過程を経ることが多いが今回は明確に新規受注に減速がみられ、今回の回復がペントアップ需要の顕在化による一時的なものである可能性が高まった。

実際、輸出向け新規受注の減少が▲2.8に止まる一方、新規受注全体では▲4.8となっており、輸入も48.9(前月50.9)と▲2.0の低下となっており「国内の新規受注が低迷」していることを示唆している。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が0.988(1.083)、原材料が1.019(1.110)と両方とも低下しているが、完成品は閾値の1を下回っている。

生産が減少しているにもかかわらず完成品在庫の水準は49.4(49.5)と小幅にしか調整していない。いわゆる「意図せざる在庫積増し局面」にあるとみられる。規模別の製造業PMIも全ての規模で閾値の50を下回っており、やはり世界景気の減速を受けて景況感は減速する可能性が高いと見るべきだろう。

4月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲12.5%の40万7,293トン(前月▲19.0%の40万8,174トン)と過去5年の最低水準を下回った。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.8%の210万2,572トン(▲7.5%の202万1,293トン)と過去5年の最高水準で推移している。

4月の中国の精錬銅生産は+25.3%の112万1,000トン(前月+10.8%の104万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善(渇水のリスクはある)を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。

4月の銅スクラップの輸入は前年比+7.4%の14万5,366トン(前月+18.4%の17万7,571トン)と過去5年平均を下回った。恐らく国内生産の増加と需要の減速でスクラップ輸入需要が低下したと考えられる。また、景気減速に伴うスクラップ供給減少の可能性も否定できない。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている(循環的な需要増加とは別)。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

本日は、バンクホリデーでLMEが休場。

週末、米バイデン大統領と下院議長が債務上限の引き上げで合意したことから、オープンしている市場はリスク選好回復で上昇すると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は小動き。

新規の材料に乏しい中、割安感からの買いで鉄鋼製品価格が小幅に上昇したが、その他はまちまちだった。

ただ、鉄鉱石・原料炭の在庫日数は低く、統計上は鉄鋼原料価格が高止まりしやすい。

疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)を元に鉄鋼製品との回帰を行うと、この数年の原料炭取得の困難さから有意な相関関係は喪失しているが、直近1年のデータを元にすると、概ね現在の鉄鋼原料価格と鉄鋼製品の価格はこの回帰直線上に位置する。

恐らく、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていないため、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため総じて下押し圧力が掛りやすいと考えている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲22万4,000トンの1,340万5,000トン(過去5年平均 1,433万トン)と減少、水準は低いが減少ペースが鈍化しており、徐々に過去5年平均に水準は近づいている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲5万トンの1億2,690万トン(過去5年平均 1億3,2793万6,000トン)、在庫日数は25.3日(±0.0日、過去5年平均28.5日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は低い。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+25万トンの203万トン(171万4,000トン)、在庫日数は+0.9日の7.6日(過去5年平均 6.9日)とこちらは急速に在庫水準が増加し、日数ベースでも需給は緩和している。今後、原料炭価格には下押し圧力が掛ることになるだろう。

4月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.0(前月48.4)と減速した。新規受注の落ち込みが特に顕著(50.2→39.9)だが、輸出新規受注は55.5(42.1)と増加していることを勘案すると、国内需要が急速に減少している可能性があることを示唆。

実際、中国の棒鋼先物価格は4月末時点で前年比▲29.4%(前月末▲19.1%)と低下しており、前月比ベースでも下落している。各調査レポートでも指摘されているように、「価格を下げないと売れない」状況にあると考えられる。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは0.87(1.13))と大幅に低下、原材料レシオも1.02(1.31)と急低下しており、鉄鋼原料・製品需給とも急速に緩和。

これまでの需要は政府のテコ入れによるものと考えられるが、それが剥落している状況。やはり更なる不動産バブルの発生は容認できないという視点では、これまでの需要回復は持続可能ではないといえる。

とはいえ、中国の建設業PMIは63.9(65.6)と減速してはいるものの、非常に高水準を維持しており、恐らく不動産在庫の削減は進むと期待されるため当面、回復感は持続すると考えられる。

4月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲39.1%の58万4,930トン(前月▲32.6%の68万1,840トン(前月▲33.7%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

4月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+59.3%の793万2,430トン(前月+59.7%の789万トン)と過去5年レンジを上回る高い水準を維持している。

4月の中国粗鋼生産は前年比▲0.2%の9,264万トン(前月+8.4%の9,573万トン)と急減速したが、まだ過去5年平均は上回っている。

国内で生産した鉄鋼製品が国内で処理仕切れず輸出に回していたが、それも厳しくなってきたために生産量を減らし始めたと考えられる。製造業全体の在庫循環図は意図せざる在庫減少局面の終期にあり、まだ在庫調整が必要な事を示唆している。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、欧米の主要市場が休場であり様子見気分強いが、米債務上限問題の合意が鉄鋼製品価格を「若干」押し上げるとみられ、小じっかりとなるのではないか。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。米債務上限問題の楽観や原油価格の上昇で、実質金利が低下したことが背景。銀価格も上昇、PGMも株価上昇を受けて水準を切り上げた。

債務上限問題は週末、米大統領と下院議長が合意に達し、目先のリスクは後退した。しかし、この交渉の間、米格付機関が米国債の格下げを検討し始めており、その格下げリスクを勘案するとまだ金の安全資産需要はあるものと考えられる。

結果、一定の価格下押し圧力が掛ることが予想されるものの、まだリスク・プレミアムは高止まりすると考えられる。

金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、以下の通り。

1.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

2.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念

3.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米国・第三国が意識し始めたこと

4.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと

1.に関しては概ね米国の利上げの影響に寄るものであるため、米国の金融引締めが続く以上、リスク・プレミアムは高止まりすることになる。

逆に言えば、利上げが終了し、利下げに転じればリスク・プレミアムは低下することが予想されるが、今の状況だと早くても年後半になるだろう。

2.に関しては日本時間の5月28日に合意に至ったが、債務上限を引き上げることで財政の健全性が担保されないとして、問題が解決されても格下げになる可能性は残る。

実際、2011年の債務上限問題発生時は妥結していたものの、「財政赤字の削減が十分ではない」としてS&Pは米国債を格下げし、米国債は下落している。

仮に格下げがなければこれまで指摘したように、リスク・プレミアムが剥落して▲220ドル程度の下落になるだろうが、その判断はもう少し情報収集が必要だろう。

3.は2022年以降、特にその動きが顕著になった。各国政府・中央銀行の金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。

基準価格をざっくり1,000ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」はIMFベースであれば1,156ドル、WGCベースでは1,454ドルとなる。

簡単な要素分析で現在の信用リスクが550ドル程度であるため、IMFベースであれば1,706ドル、WGCベースでは2,004ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのIMFベースの価格となっている。

恐らく信用リスク分は上述のXデーを過ぎれば剥落するため、過去5年平均程度である330ドル程度までの信用リスク分の低下があるとすれば、▲220ドル程度の下落要因となる。WGCデータを基準二した場合、年後半の金価格の目線は1,785ドル程度、ということになろうか。

ただ、米中対立の構図が続く中ではドル忌避の動きが継続するため、上述の1.の要因が継続して高止まり、ということも有り得る。

なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限まで低下していたが、再び上限を目指す動きとなっている。景気の先行きへの懸念が強まっていることが背景。

仮にボリンジャーバンドの上限に達するならば、21ドル程度までの下落余地があることになるが、この下落で100日移動平均線のサポートを割り込んだため、さらに大きな下落となる可能性。チャート的には22ドルまでの下落があってもおかしくない。

実際、銀のチャートはダブルトップを形成していたため、テクニカルには下落しやすい地合だった。

週明け月曜日は欧米の主要市場が休場であるため、様子見気分が強いが、金は債務上限問題で米政権と下院が合意したため、売り圧力が強まる展開が予想される。銀も同様。

これに対してPGMは株価が上昇すると見られることから、軟調地合も価格は下支えされると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇。原油価格の上昇や、米国の乾燥気候が穀物生産にマイナスになるとの見方が価格を押し上げた。

週明け月曜日はメモリアルデーで米国市場は休場。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・債務上限問題を契機とする、米国債のデフォルトないしは格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「2023年のガス価格は低迷~景気底入れがあれば急騰も」

欧州のガス在庫水準は高く、同じ時期の過去5年の最高水準で推移している。気候が穏やかであることや自然エネルギー供給に大きな支障が出ていない中、LNGの海上輸送が順調で供給に大きな支障が出ていないことが背景だろう。

Bloombergのデータを元にすると、洋上にこの20日間に停留(航行)していたLNG船の状況を見ると、米国のLNG船の比率(33.4%)が最も高い、ロシア船の比率も同様に高いことが分る(22.3%)。

このことは、これまでの欧米のロシアに対する経済制裁が、輸出抑制に殆ど機能していないことを示唆している。これは原油などでも同じであり、インドがロシア産原油の受け皿となっていることは明らかになっている。

一方、需要面ではEU19のガス需要は穏やかな気候と景気の減速で過去5年レンジを下回る状況が続いており、今後、ECBがインフレ抑制のために2回程度、利上げを行う見通しであることを考えると、今年の年末に掛けての工業向けの需要の伸びは減速する、と考えるのが妥当だろう。

この結果、TTFとJKMは大きく下落しているが、期間構造を見ると2025年頃から水準を大きく切下げていることが分る。これは脱ロシアが進捗し、LNG市場の需給が緩和すると見られているためだ。

弊社のシミュレーションでは2026年頃に「欧州がロシア産のガスを完全にリプレースできる」見込みであるものの、実際には上述の通りロシア産のLNG供給はさほど大きく減少していない。

結局、様々なルートを通じてロシア産のガスが供給されるため、実際にLNG市場の需給が緩和するのは2026年よりも早い2025年頃になると、市場は考えて居る可能性が高い(TTFやJKMと異なり逆に米天然ガス期間構造は季節性を除き、長期的にコンタンゴに)。

過度なLNGの供給懸念が上述の通り解消しつつある中、JKM価格はBrentで説明可能な水準まで低下している。このことは、将来のガス価格の見通しを考える上で原油価格動向を用いても問題ない状態になりつつあることを示している。

もちろん、ガス供給が突如停止したり、LNG船に支障がでて輸送に問題が出る、ということは十分に考えられるが、それをリスク要因として整理すると、以前ほど冬場の調達は困難ではないと推察される。

仮に「年初のBrent/JKMの水準を発射台とし、過去の過去5年平均の季節性通り、Brent/JKMレシオが推移した場合※」年末のJKMを算出すると25ドルオーバーとなる。

※仮に年初のBrentが100ドル、JKMが20ドルだった場合、Brent/JKMレシオは5倍、Brent/JKMレシオの過去5年平均が、年初5倍で、年末3倍だったとすれば、「5×3÷5=3倍」となり、Brent価格予想が60ドルの場合、JKMは20ドル、と計算される。

しかし、供給面のリスクが後退しているため過去5年平均程度のBrent/JKMレシオの水準をそのまま適用した場合、年末の価格は15ドル弱程度までの上昇に止まる公算。

ただし、夏場の気温上昇や冬場の気温低下は、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生リスクの高まりを考慮すると有り得る話であり(ただしより価格に影響があるラニーニャ現象は現在沈静化)、欧米景気が市場が期待するようにQ423で底入れすれば、Q124以降の価格上昇が顕著となるリスクは残存していることは付言しておきたい。


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