CONTENTSコンテンツ

債務上限問題継続で引けに掛けて売られる
  • MRA商品市場レポート

2023年5月22日 第2460号(簡易版)商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「債務上限問題継続で引けに掛けて売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーセクターが軟調な推移となり、工業金属セクターが物色される流れとなった。

上昇を続けてきたドルに戻り売り圧力が強まる中で広くドル建て資産に買いが入り上昇余地を試す動きとなっていたが、米債務上限問題に関して共和党の交渉団が交渉を中断、交渉のテーブルから外れたことで、引けに掛けてはドル安と景気循環系商品安の動きが強まった。

これに対して貴金属セクターは、交渉進捗の期待で下落していたが、引けに掛けて買い戻しが入り急騰、株の下落はあったもののパラジウムなども大幅な上昇となった。

結局、ギリギリまで債務上限問題を巡る交渉は続くと考えられる。というのも早期の妥結は共和党にとってはバイデンに塩を送ることになるため回避したい、しかし決裂すれば確実に自党の支持率が低下することが分っているためだ。

類似の事態は、2013年のオバマ政権時代に発生している。しかしこのときは、債務上限問題は期限となる3月27日までに両党が合意し、政府閉鎖を回避した。

しかし、オバマケアを巡って民主・共和が対立、暫定予算の成立が10月1日までに成立できず、政府機関が閉鎖に追い込まれた。しかしこのとき、政府機関閉鎖に追い込んだ共和党の支持率が急落したため、政府閉鎖に持ち込むのは「悪手」といえるため、今回も基本的には回避されるがメインシナリオだろう。

なお、主要格付3社は、国債の元利払いができなければ「テクニカルデフォルト」と見做すとして、さらに元利返済に遅れが生じた場合は格付を引き下げることを検討するとしている。

格下げに繋がる「更なる元利払いの遅延」まで行かなければ大丈夫、としてテクニカルデフォルトまでは大丈夫ではないか、と考えている共和党保守系議員も多いと推察され、そのリスクは小さいとは言えない。

また、2011年も同様の債務上限問題が発生したが、このときは上限引き上げ合意したものの「財政赤字削減の取組みが不充分」としてS&Pが格下げを決定している。

今回のインフレ発生は、ロシアのウクライナに対する軍事進行などの要因ももちろん有るが、過度な金融緩和と財政出動に起因するものと考えられる。

コロナ禍でトランプ政権が財政の大判振る舞いを行ったが、バイデン政権はさらにそれを加速させたため民主党にインフレ発生、債務上限到達の責任の一端があることは事実であり、無秩序な財政拡大は止めるべきとする共和党の主張は首肯される。

そのため、債務上限問題に関する交渉に応じない共和党だけが悪いとは言い切れない。

最終的には合意するイベントであるものの、「発生した時のリスクが大きすぎるイベント」で有るため、完全妥結までは混乱が予想される。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について