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CPIでドル安も景気への懸念は続き軟調
  • MRA商品市場レポート

2023年5月11日 第2453号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「CPIでドル安も景気への懸念は続き軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、石油製品とその他農産品などが上昇したが、その他の商品は原油を含めて軟調な推移となった。

市場が注目していたCPI(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)はほぼ市場予想通りやや弱めな内容となり、米国のインフレの沈静化期待を高める内容となった。

しかし、米国が直ちに利下げに走るような内容でもなく、米債務上限問題や、中国の経済活動回復の遅れといった景気の下振れ要因は多く景況感の先行き悪化を意識した売り圧力の方が強かった、という感じだろうか。

米債務上限問題は6月1日にXデーが繰り上がり、現在虚々実々の駆け引きが共和・民主の間で繰り広げられているが、全く両者とも妥協する気配はない。

今回米国債が仮にデフォルトすれば(その形式にもよるが)米国債・ドル・株のトリプル安が加速、金融機関の経営環境悪化にも繋がるため、政治を楽しんでいる場合ではないのだが、政府のバランスシートを基本的には拡大させる政策を取りがちな民主党と、小さくしたいと考える共和党の溝を埋めるのは難しい。

問題の大きさから最終的には妥結すると考えられるものの、ギリギリまで政治ゲームが繰返されるため、市場はリスク回避姿勢をしばらく維持せざるを得ないのではないか。

【本日の見通し】

本日は、昨日の米CPIが市場予想通りやや鈍化を示す内容だったことで、ドル安が進みやすく、いったん買い戻しが入るものと考える。

ただし、総括のところでコメントしている様に、米債務上限問題はこれまでになく合意に手間取る可能性があることから積極的にリスクも取り難く、金や銀を除いて上値は重いのではないか。

本日の統計で注目は以下の通り。

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 245千件(前週 242千件)

・4月米PPI 総合 前月比+0.3%(前月▲0.5%)、前年比+2.5%(+2.7%) 除くエネルギー・食品 前月比+0.2%(▲0.1%)、前年比+3.3%(+3.4%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された米CPIは、総合指数が前月比+0.4%(市場予想+0.4%、前月+0.1%)、前年比+4.9%(+5.0%、+5.0%)、コア指数が前月比+0.4%(+0.4%、+0.4%)、前年比+5.5%(+5.5%、+5.6%)と、総合指数が前月比で上昇したものの、総じてインフレが鈍化していることを示唆する内容となった。

項目別の内訳を見ると、価格への反映に時間が掛る住宅が、2021年2月以来、初めて前年比の上昇率が+8.1%(前月+8.2%)と鈍化、サービス(除家賃)も+5.2%(+6.1%)と鈍化している。食品も+7.7%(+8.5%)と減速が鮮明になってきた。

ただ気になるのは自動車がマイナスながらも▲0.3%(▲1.8%)と前月からマイナス幅を2ヵ月連続で縮小している点。また、エネルギーが▲6.4%→▲5.1%とマイナス幅を縮小しているところもやや気がかりではある。

基本、景気の減速の中でエネルギー価格は年後半に掛けて下落するため、広くインフレ懸念は抑制される方向となるが、足下、ISM製造業指数などが循環的な景気底入れが想定よりも早く発生していることを示しており、エネルギー価格が想定外に上昇することも起こり得る。

また、低下したとはいっても、現在の失業率を基準に考えれば、CPIは5.5%程度あってもおかしくない。

以上を考えると、「年後半に利下げを行う余地を開く」内容だったが、当面は現在の高い政策金利水準を維持する必要があることを確認する統計だったと言える。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。米CPIが市場予想をやや下回る内容だったことを受けたドル安進行で上昇したが、米石油統計で原油在庫の増加が確認されたことが売り材料視された。

なお、出荷の増加で在庫が想定以上に減少したガソリンと灯油の価格は上昇している。現在、米ガソリンと中間留分の在庫水準は過去5年の最低水準であり、過去5年平均程度の在庫水準を維持している原油とはやや需給環境の様相が異なる。

夜重要な在庫日数は、ガソリンが24.4日(過去5年の最低水準 24.0日)、輸出を含む在庫日数は22.4日(22.5日)、ディスティレートが各々、27.6日(27.2日)、21.3日(20.5日)と低く、クラック・スプレッドの押し上げ要因となっている。

しかし、ガソリン、ディーゼルともクラック・スプレッドは年初から水準を切下げてきており、価格上昇が需要を減じていると考えられ、今後、このまま製品価格が上昇していくかどうかは不透明であり、まさに今後の景況感が価格の方向性を決めることになる。

FRBは政策金利を高値維持するか、追加利上げを実施するかを選択せざるを得なくなっている。利下げはしばらくは封印だろう。そのため、先行きの下落リスクはむしろ高まっている。下期に掛けてノンバンクも含めた金融機関の経営環境の悪化、それに伴う信用収縮の懸念を指摘する向きも多い。

景気のソフトランディングに成功すれば供給能力の制限から年後半か来年以降、急速に価格が上昇するシナリオ、金融引締め継続を背景に金融危機・信用収縮が発生してソフトランディングに失敗、価格が急落する、の両方のリスクに晒されている状態。

前者の場合、OPECプラスの減産や非OPECプラス諸国の上流部門投資が不充分であること(脱炭素に加えて、金利高の影響もある)から、2024年の価格上昇は弊社が想定しているよりも大きなものになる可能性はある。

後者の場合、供給能力の制限から思ったほど価格は下落せず、「スタグフレーション」となる可能性も有り得る。

4月の中国の原油輸入は前年比▲1.4%の4,240万7,000トン(前月+22.5%の5,230万8,000トン)と伸びが鈍化した。リオープンを受けて輸入が急増した先月の反動と、実際にリオープン後の最終消費の戻りが緩慢であることが影響したとみられる。

一方、石油製品は輸入が前年比+195.9%の438万トン(前月+110.0%の389万5,000トン)とこちらも大幅に加速、輸出は▲1.8%の375万トン(+33.9%の545万トン)と減速した。

直近のWTI投機筋のポジションは5月2日時点でWTIがロングが前週比▲94枚、ショートが+21,499枚とネットロングが減少。

Brentは5月2日付けのCOTレポートで、ロングが▲42,383枚、ショートは+27,014枚とネットロングが大幅に減少している。

いずれも新規ショートポジションの積み上げによる下落であり、早晩ポジション解消で上昇に転じるマグマが溜まっていると考えるべきである。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続 産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→) グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米CPIを受けて金融面で価格は押し上げられると予想。ただし市場では急速に米債務上限問題が意識されていることから、積極的に上値を試す展開にはなりにくいのではないか。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格はほぼ全ゾーン、小幅に下落した。冬場に向けた調達が始まっているが、LNGの輸入が昨年を大きく上回るペースで進み、航海中のLNG船数も多いことから、調達への楽観が有ることが背景。

とはいえ、特段目立った材料があるわけでは無く、小動きの状態が続いている。

冬場に向けた在庫積増しが始まっているが、弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。

逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

ただし昨年に比べれば景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていること、ロシアも原油価格・ガス価格下落による財政状況の悪化が懸念されるため更なるガス供給の削減は常識的に考えて難しいことから、気温の低下がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。ロシアのLNGが第三国経由で欧州に流入することを想定した場合は2025年頃に脱ロシアが完了する。実際はこの中間で2026年頃に脱ロシア完了となるのではないか。

このことは、2026年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

3.4.は顕在化している。

5.は「凪」のシーズン。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は冷夏となる見通し。ただしエルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、冬場のリスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は期近が下落。週初の山火事の影響で輸出が停止していた、カナダからの輸出が再開された一方、気候が穏やかなことが足下の需要を押し下げた。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物期近は全ゾーンほぼパラレルに小幅に下落した。目立った手掛かり材料がない中で、現状水準でのもみ合いが続いてるが、欧州ガスの下落が影響した。

4月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+11.0%の898万トン(+11.2%の887万トン)と先月とほぼ同じ前年比水準を維持したが、それでも過去5年の最高水準は下回っている。

まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産が増加しリオープンの動きが緩慢であるため、輸入が手控えられたと考えられる。また、石炭輸入が高水準なこともガス輸入の減少に影響した可能性も否定できない。

3月のLNG輸入は前年比+15.9%の536万3,000トン(前月+7.1%の652万トン)と高い水準を維持した。

3月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.6%の351万トン(▲7.1%の345万トン)とこちらも輸入は増加した。

中国国内の天然ガス生産は3月は±0.0%の1,448万5,000トン(1-2月累計+7.0%の2,926万5,000トン)と過去5年の最高水準となった。

3月の中国の電力消費量は前年比+6.1%の7,369億kwh(前月+11.5%の6,950億kwh)と伸びが減速した。回復はしているもののそのペースは緩慢と見られる。

天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。ただしペントアップ需要がどの程度継続するかは、現時点ではまだ不透明である。

中国国内の渇水による水力発電の停滞観測から、ガスや石炭などの代替燃料の需要は今後も旺盛とみられ、景気減速下でも需要は底堅いと予想される。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧米の圧力による輸入禁止よりも、欧米企業がメンテナンスから撤退していることによる中長期的な供給途絶のリスクの方が大きいだろう。

4月23日時点の日本の発電用LNG在庫は256万トン(前年同月末196万トン、2018~2022年平均235万3,900トン)と過去5年の最高水準に近く、在庫の水準は十分か。

しかし、ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日も新規手掛かり材料に乏しい中、現状水準を維持と考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物はほぼ全ゾーンパラレルに続落した。中国の貿易統計で同国の景気の回復が想定よりも弱いこと、電力需要も過去5年レンジを上回っているが、その伸びに鈍化がみられること、石炭在庫の水準の高さ、まだ凪のシーズンであること、といった複合要因によるもの。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は130ドル、±1標準偏差で60~200ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

しかし、期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度であることを考えると、実際は150~200ドルが説明可能なレンジか。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)であることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

そろそろ夏場を意識した調達が本格化する。そして今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏にある可能性があり、南アジアでは既に記録的な熱波が観測されている地域も多い。そのため、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

4月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+72.7%の4,067万6,000トン(前月+150.7%の4,116万5,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準となった。

昨年のロシアの軍事侵攻による物流の停滞から輸入は減少していたため発射台が低かったこともあるが、中国のリオープンと豪州に対する制裁解除、中国南部の渇水の影響で高水準の輸入が続いている。やはり、この国の発電燃料は石炭なのだ。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後も輸入は増加が予想される。

3月の中国の石炭生産は、前年比+5.4%の4億1,900万トン、1,351万トン/日(1-2月+6.9%の7億3,400万トン、1,245万トン/日)と伸びが減速している。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を下回っているが、豪州炭の輸入再開の影響でその必要性が低下したこと、発電需要の伸び鈍化が影響したと考えられる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、そろそろ夏場を意識した在庫の積増しが始まると考えられる為、この2日間の下落もあり、いったん水準を切り上げる展開を予想。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。中国貿易統計が同国経済の回復の弱さを示唆する内容だったことで、水準を切下げる動きとなった。

COTレポート(+CFTCの銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向は、数量に換算したベースで2020年6月19日以来、初めてネット売り越しに転じた。

2020年6月はまさにコロナ危機時だったが、このときは大幅な財政出動や金融緩和が行われ、物流の停滞やコロナの影響による鉱山生産減少が意識され始めたタイミングであり、この後、ネット買越しは増加して価格は上昇している。

しかし今回は、金融引締め継続、財政も削減、物流停滞は解消し、鉱山生産も回復していることから、2020年とは逆の動きになる可能性は低くない。やはり構造的な脱炭素向けの需要増加が期待され、景気が底入れするとみられる2024年以降までは上値は重いのではないか。

年初に期待されていたような中国の需要の大幅な回復が価格を支える、というよりは減速が見込まれていた米国の景気が、FRBの期待していないタイミングで底入れし、かつ、今月でFOMCでの利上げは終了するとの期待感が、リスク選好の買い戻しを誘いやすい状況ではある。

しかし、最大消費国である中国の景況感は良いとは言えず、4月の中国製造業PMIは49.2(市場予想 51.4、前月 51.9)と市場予想、前月とも下回り、中国のペントアップ需要の顕在化が一巡した可能性があることを示唆する内容となった。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、新規受注のマイナス寄与度(▲1.44)が大きく、次いで、生産(▲1.10)、雇用(▲0.18)の寄与度が大きかった。

景気回復局面では新規受注が生産を促し、雇用に繋がるという過程を経ることが多いが今回は明確に新規受注に減速がみられ、今回の回復がペントアップ需要の顕在化による一時的なものである可能性が高まった。

実際、輸出向け新規受注の減少が▲2.8に止まる一方、新規受注全体では▲4.8となっており、輸入も48.9(前月50.9)と▲2.0の低下となっており「国内の新規受注が低迷」していることを示唆している。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が0.988(1.083)、原材料が1.019(1.110)と両方とも低下しているが、完成品は閾値の1を下回っている。生産が減少しているにもかかわらず完成品在庫の水準は49.4(49.5)と小幅にしか調整していない。いわゆる「意図せざる在庫積増し局面」にあるとみられる。規模別の製造業PMIも全ての規模で閾値の50を下回っており、やはり世界景気の減速を受けて景況感は減速する可能性が高いと見るべきだろう。

4月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲12.5%の40万7,293トン(前月▲19.0%の40万8,174トン)と過去5年の最低水準を下回った。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.8%の210万2,572トン(▲7.5%の202万1,293トン)と過去5年の最高水準で推移している。

3月の中国の精錬銅生産は+10.8%の104万5,000トン(1-2月+14.3%の194万5,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

精錬品の輸入減少や銅精鉱の輸入減少は調達面の問題(在庫の低さ)を背景とするものである可能性が高く、製品生産が増加していることから、ペントアップ需要の顕在化が起きているものと見られる。

3月の銅スクラップの輸入は前年比+18.4%の17万7,571トン(前月+58.3%の17万3,825トン)と過去5年平均を上回っている。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

本日は、昨日の米CPIが弱めの内容でドル安が進行しやすいことから、いったん買い戻しが入ると予想する。

ただし、中国の経済活動回復の遅れや、米債務上限問題がリスク回避姿勢を強めていることも事実であり、上値も重かろう。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は小幅に下落、上海鉄筋先物は下落した。

採取需要が弱い中で鉄鋼製品価格は軟調に推移しているが、鉄鋼原料在庫の水準の低さから、一定の在庫積増し需要が見られるため比較的高い水準を維持している。

疑似鉄鋼原料価格を元に鉄鋼製品との回帰を行うと、この数年の原料炭取得の困難さから有意な相関関係は喪失しているが、直近1年のデータを元にすると、概ね現在の鉄鋼原料価格と鉄鋼製品の価格はこの回帰直線上に位置する。

恐らく、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていないため、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため総じて下押し圧力が掛りやすいと考えている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+5万9,000トンの1,457万2,000トン(過去5年平均 1,596万3,000トン)と増加、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進んでいたが減少ペースが鈍化し、徐々に過去5年平均に水準は近づいている。。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲60万トンの1億2,920万トン(過去5年平均 1億3,832万6,000トン)、在庫日数は24.9日(+0.7日、過去5年平均29.6日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は低い。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+9万トンの139万トン(175万2,000トン)、在庫日数は+0.3日の4.8日(過去5年平均 7.3日)とこちらも、日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状態。

4月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.0(前月48.4)と減速した。新規受注の落ち込みが特に顕著(50.2→39.9)だが、輸出新規受注は55.5(42.1)と増加していることを勘案すると、国内需要が急速に減少している可能性があることを示唆。

実際、中国の棒鋼先物価格は4月末時点で前年比▲29.4%(前月末▲19.1%)と低下しており、前月比ベースでも下落している。各調査レポートでも指摘されているように、「価格を下げないと売れない」状況にあると考えられる。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは0.87(1.13))と大幅に低下、原材料レシオも1.02(1.31)と急低下しており、鉄鋼原料・製品需給とも急速に緩和。

これまでの需要は政府のテコ入れによるものと考えられるが、それが剥落している状況。やはり更なる不動産バブルの発生は容認できないという視点では、これまでの需要回復は持続可能ではないといえる。

とはいえ、中国の建設業PMIは63.9(65.6)と減速してはいるものの、非常に高水準を維持しており、恐らく不動産在庫の削減は進むと期待されるため当面、回復感は持続すると考えられる。

4月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲39.1%の58万4,930トン(前月▲32.6%の68万1,840トン(前月▲33.7%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

4月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+59.3%の793万2,430トン(前月+59.7%の789万トン)と過去5年レンジを上回る高い水準を維持している。

3月の中国粗鋼生産は前年比+8.4%の9,573万トン(前月+6.8%の8,437万8,000トン)と回復し、過去5年レンジを上回った。

国内の粗鋼生産を増加させ、輸入を減らし輸出に回していることが窺える。銅などは国内の需要がペントアップ需要の顕在化で増加していると考えられるものの、鉄鋼製品に関してはこの数字の上ではむしろ輸出増加で国内需要、不動産セクターの回復が遅れていることを示唆している。

中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、中国景気の回復の遅れから鉄鋼製品価格は現状の低い水準での推移が続くと考えられ、鉄鋼原料価格も現状維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は実質金利が低下したが、リスク・プレミアムが低下したことで水準を切下げた。

足下、金融引締めが金融期間の与信態度を硬化させ、信用不安に繋がるとの懸念がリスク・プレミアムの上昇要因の1つであるが、昨日の米CPIを受けてややその懸念が後退したことが、安全資産需要を後退させたためと考えられる。

銀も金価格の下落を受けて下落、ハイテク株の影響を受けやすいPGMは昨日のCPIを受けて上昇した。

現在、期間1年の米国債CDSは176bpと過去最高水準まで上昇している。今のところ民主党・共和党の間で全く妥協は見られない。

金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、以下の通り。

1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米国・第三国が意識し始めたこと

2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと

3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

4.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念

4.に関しては6月15日の米連邦税収が無事終了するまでは、債務上限問題や米国債の格下げ懸念がつきまとう。現在の金価格はこのリスクを織り込んでいると考えられ、6月15日のXデーを無事乗り切ることができれば、このプレミアムが剥落して水準を切下げるのではないか。

ただし、目先は6月1日が資金枯渇日とされており、そこまでに合意する必要が出てきた。

各国政府・中央銀行の金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。

基準価格をざっくり1,000ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」はIMFベースであれば1,156ドル、WGCベースでは1,454ドルとなる。

簡単な要素分析で現在の信用リスクが550ドル程度であるため、IMFベースであれば1,706ドル、WGCベースでは2,004ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのIMFベースの価格となっている。

恐らく信用リスク分は上述のXデーを過ぎれば剥落するため、過去5年平均程度である330ドル程度までの下落があるとすれば、▲220ドル程度の下落要因となる。年後半の金価格の目線は1,785ドル程度、ということになろうか。

なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限まで低下しており、トレンドは低下方向に転じている。米統計の底入れを受け、景気への楽観が実需増加期待を高めているためと考えられる。

現在のボリンジャーバンドの下限は74倍で、この水準までの低下があると28ドルまで価格は上昇することになる。

本日は、昨日の米CPIを受けて利下げヘの道が開かれたことから、リスク・プレミアムの剥落で金銀は小幅に水準を切下げると見る。しかし、債務上限問題の解決の目処が立つまでは、高井水準を維持するのではないか。

PGMは株価の上昇もあり、上昇。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。トウモロコシ・大豆は米国の作付が順調であることから軟調に推移していたが、米CPIがやや弱めな内容だったことでドル安が進行し、下げ幅を削り、トウモロコシはプラス圏で引けた。

5月12日の夜発表のWASDE見通しは以下の通り。

・5月米単収見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 180.81Bu/エーカー(173.3Bu/エーカー)大豆 51.9Bu/エーカー(49.5Bu/エーカー)小麦 NA(46.5Bu/エーカー)

・5月米生産見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 151億3,996万Bu(137億3,000万Bu)大豆 44億9,630万Bu(42億7,600万Bu)小麦 18億1,152万Bu(16億5,000万Bu)

・5月米在庫見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 21億530万Bu(13億4,200万Bu)大豆 2億9,244万Bu(2億1,000万Bu)小麦 6億774万Bu(5億9,800万Bu)

本日は米利上げ打ち止め、利下げヘの期待が高まる中でドル安が進行しやすく、堅調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・債務上限問題を契機とする、米国債のデフォルトないしは格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「下期の錫供給リスク」

錫価格は長期で見て見ると、中国が勃興した2000年以降に価格が上昇、その後のパリバ・ショック、リーマン・ショックで下落したが、中国政府の4兆元経済対策以降、水準を切り上げるがその後は低迷し、20,000ドル割れの状態が続いていた。

しかし、コロナショックの発生や、それに伴うリモートワークの定着を受けたPCやスマホなどに用いる半導体向けの需要が急増したため価格水準を切り上げた。これは他の銅などとも同じである。錫は半導体以外でも同じであるが、主にはんだやメッキに用いられる。

LME錫価格は中国の通信・パソコン・電子機器の工業生産の年比変化の説明力が高いが、これらの生産量は昨年から減速しており、錫価格もそれに合わせて水準を切下げていた。

世界の半導体販売も減速、MBの見通しでも錫需給は2024年に掛けて緩和の見通しであり、自然体であれば錫価格は年末に掛けて水準を切下げる可能性が高い。

2021年に通信・パソコン・電子機器の工業生産が減速しているにもかかわらず、錫価格が上昇しているのはサプライチェーンの寸断や、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻によるエネルギー価格の上昇、供給の制限、最大生産国である中国の渇水の影響で供給が十分ではなかったことが背景にあると考えられる。

この状況で、世界3位の錫鉱石生産国であるミャンマーで、同国最大の民間武装組織「ワ州軍」が支配する同国北部の経済計画委員会が、鉱山活動の全面停止を決定、有効な契約を締結している業者は8月1日まで取引を継続できるが、それ以降は取引が禁じられる見通しとなった。

中国が輸入する錫鉱石のうち、直近12ヵ月ではミャンマーのシェアが73.4%に達ししている。恐らくこの供給停止は中国の製錬錫供給に大きな障害となると予想され、錫価格の上昇要因となり得る。

中国は昨年後半から製錬錫の輸入を増加させており、上海在庫の水準は過去5年レンジを上回って高いことから、当面、中国は精錬錫不足にはならないだろう。

しかし、8月1日以降に禁輸措置が宣言通り発動されるなら、錫需給はひっ迫することが懸念される。中国南部も渇水で電力供給が制限される見通しであることも需給ひっ迫のリスクを高める。

また、半導体サイクルは、早ければ今年の秋頃からの回復の可能性を示唆しているため、価格が大きく上昇するリスクが高まることになる。

錫需給がひっ迫するだけならまだ良いのだが、錫供給の停止が半導体生産にも影響を及ぼすような事があれば、下期以降の景気の下押し要因となる。その観点からも今回の禁輸の話は小さい話ではないとみている。


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