金融機関の経営問題・景気失速懸念で軒並み下落
- MRA商品市場レポート
2023年4月27日 第2443号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「金融機関の経営問題・景気失速懸念で軒並み下落」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は非鉄金属を除けばほとんどの商品が下落した。
米国の金融機関の経営破綻懸念、金融引締め継続(政策金利高止まりの長期化)観測を背景に、今年の後半に掛けて景気が悪くなるのではないかとの見方が強まったことが、リスク回避の動きを強めたことが背景。
このコラムでも指摘してきたが、そもそも循環的な景気減速局面にあるなかで、金利を高止まりさせれば銀行の融資は減少し、破綻する企業も出てくることはある意味自然だ。その中で、リスク資産の価格が高止まりすることは難しい。
非鉄金属に関しては、中国はペントアップ需要の顕在化が期待され、実際に(緩やかではあるが)その需要の一部が顕在化していることから、ドル安進行が買い戻しの材料となった。
ただし、海外景気の失速があれば、中国の輸出も減少するためこれも長くは続かないのではないか。
結局、景気は悪くなるときには悪くなり、価格が下がってくれなければある意味問題であり、この状態でも価格が上昇するのであれば、年後半の景気減速局面での下振れリスクはさらに増すことになると予想される。
【本日の見通し】
本日は、米景気の減速懸念が強まる中でドル安が進行しやすいことから、昨日の下落もあっていったん買い戻しが入る商品が目立つと考えられる。
本日はQ123の米GDP(市場予想 前期比年率+1.9%、前期+2.6%)、コアPCE(+4.7%、+4.4%)、米週間新規失業保険申請件数(248千件、245千件)に注目している。
また、回復の足取りが重い中国の現状を図る手掛かり材料の1つである、工業セクター利益(1-2月期 前年比▲22.9%)にも注目したい。
【昨日のトピックス】
本日の日経新聞朝刊の1面トップに、日本の人口動態について解説があった。2056年に日本の人口は1億人を下回るという。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21BKP0R20C23A4000000/
第一次ベビーブームの時に生まれた子供は今、後期高齢者となり、第二次ベビーブームの時に生まれた子供は50歳前後と、出産適齢期を終えてしまった。
第一次ベビーブーマーの出産が第二次ベビーブームをもたらしたが、第二次ベビーブーマー世代は、日本の不動産バブル崩壊以降の景気失速を受けて、結婚が遠のき、出生数の増加をもたらさなかった。
恐らく自国民だけで人口を増やすことは100年単位で考えれば話は別かもしれないが、目に見える未来ではもう不可能ではないか。
人口の減少は国力の減少とほぼ同義であり、政府はこの30年間この問題に有効な対策を打ち出すことができなかった。そしてこの30年、日本の実質賃金は全く上がっていない。
この状態で高齢者の介護や保険料を現役世代は負担しなければならず、社会保険料は引き上げの見通しである。
社会保障費の財源として消費税上げが検討されたが、これを見送る結果、社会保険料は引き上げられることになる。この一部を少子化対策に充てる、という意見もあるようだが本末転倒だろう。
少子化問題は景気・経済の問題であり、今までの延長線で対策を考えても恐らく解はないだろう。やはり、外からの移民を受け入れるぐらいしか、即効性のある対策はないのではないか。
仮に移民を受け入れず、国立社会保障・人口問題研究所の推計通り人口が減少するとした場合、人口が減る中では国力が低下するため稼ぐ力が低下し、円安が進行する可能性がある。
そして、この状況で脱炭素が進むならば、資源価格の高騰は続くだろう(人口が今から20%以上減るのなら、温室効果ガスの排出もかなり減ると考えられるが、それでも脱炭素は進める方針)。
この状況で価格変動リスクヘの対応能力、上昇リスクヘの国としての耐久力は上記の通り、人口の減少と共に低下していくことになる。少なくとも価格変動リスクを回避するための体制作りは必要なのではないだろうか。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は下落した。ドル安が進行、米石油統計が予想比強気な内容だったものの、景気減速に伴う需要減少観測がこれに勝った。
米国はインフレが十分に抑制されていないことから「利上げ・しばらく維持」となる可能性が高く、OPECプラスの減産はあるものの景気は減速ないしは低迷するとみられ、年後半にかけての景気減速・価格下落の可能性は高い。
弊社は原油価格は2024年に掛けて上昇するとみているが、2023年の見通しに関しては現時点で主要なリサーチハウスの中で、弱気な見通しに分類されている。
市場コンセンサスは非常に強気で、Q423のBrent平均価格は90ドル、最も高いところで110ドルが予想されている。一方弊社は78.67ドルであるが、これはEIAの見通しの方向性と大きな差はない。
この見通しの差は、1.景気底入れのタイミング、2.米金融緩和の動向、3.OPECプラスの減産遵守動向、4.中国の景気回復期待の差、によって発生していると考えられる。
下期に掛けてノンバンクも含めた金融機関の経営環境の悪化、それに伴う信用収縮の懸念を指摘する向きも多いため、政策の変更がなければ、回復は2024年にずれ込む可能性が高い。
仮に早期に利下げが行われれば、ファイナンシャルな面で価格が押し上げられるため、見通しの上振れリスク(価格上昇が早期に発生)となる。
現在の原油市場は、ソフトランディングに成功すれば年後半か来年以降、急速に価格が上昇する、あるいは金融引締め継続を背景に金融危機・信用収縮が発生してソフトランディングに失敗、価格急落、の両方のリスクに晒されている状態。
しかし、OPECプラスの生産能力が、一部の調査機関も指摘しているように本当に毀損(ロシアなど)しており生産量が回復しなければ、価格急落時も下げ余地が限定され「スタグフレーション」となる可能性も有り得る。
脱炭素ヘの移行期間、それに伴う中途依存度・ロシア依存度の高まりを受けて消費国は非常に大きな痛みを受けることは不可避の状況かもしれない。
3月の中国の原油輸入は前年比+22.5%の5,230万8,000トン(前月+12.1%の4,074万トン)と伸びが加速した。中国のリオープンが顕在化し始めたと考えられる。
一方、石油製品は輸入が前年比+110.0%の389万5,000トン(+40.1%の290万トン)とこちらも大幅に加速、輸出は+33.9%の545万トン(+91.7%の621万トン)とやはり加速している。
直近のWTI投機筋のポジションは4月18日時点でWTIがロングが前週比+12,136枚、ショートが+3,193枚とネットロングが増加。
Brentは4月18日付けのCOTレポートで、ロングが+8,793枚、ショートは+847枚とやはりネットロングを増加させている。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。
現在は 3.の状態。
<シナリオ別原油価格見通し>
1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続 産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル
2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 65-90ドル
3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 60-80ドル/70-90ドル
4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下
(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)
5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル
6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。
しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。
Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)
※矢印の向きは価格の方向性。
本日は、米GDPが発表されるが前期から伸びが減速の見込みであり、過去の指標ながら売り材料視されると予想。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は期近が下落、期先は殆ど変わらずだった。寒波が英国の需要を押し上げているが、LNGの輸入が例年を上回るペースで増加しており、足下の調達圧力が弱まっているためとみられる。
冬場に向けた在庫積増しが始まっているが、弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。
逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。
また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。
ただし昨年に比べれば景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていることから上記シミュレーションの通り気温の低下がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。
しかし今年の冬が例年通りの冬であれば、2022-2023年の冬よりも寒い冬となること、冬場のラニーニャ現象再度発生のリスクを考えるとまだ調達環境は安泰とは言えない。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)
「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高止まり、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。
弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。
3.4.は顕在化している。
5.は「凪」のシーズン。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は冷夏となる見通し。ただしエルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、冬場のリスクは小さくはない。
米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも低下している。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米天然ガス価格も期近が下落、期先はほぼ変わらずだった。
米国の天然ガス生産は過去5年レンジを大きく超えて増加しており、在庫の水準も過去5年の最高水準に近く、目先の凪のシーズンでの調達需要が減少していることが期近の価格を押し下げている。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物は欧州ガスと同様、期近が小幅に下落したが、期先はほぼ変わらずだった。
JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが不需要期に突入していることもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。
3月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+11.2%の887万トン(+0.9%の866万トン)と過去5年の最高水準を上回り、中国の経済活動が再開していることをうかがわせる内容。
3月のLNG輸入は前年比+15.9%の536万3,000トン(前月+7.1%の652万トン)と高い水準を維持した。
3月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.6%の351万トン(▲7.1%の345万トン)とこちらも輸入は増加した。
中国国内の天然ガス生産は3月は±0.0%の1,448万5,000トン(1-2月累計+7.0%の2,926万5,000トン)と過去5年の最高水準となった。
3月の中国の電力消費量は前年比+6.1%の7,369億kwh(前月+11.5%の6,950億kwh)と伸びが減速した。回復はしているもののそのペースは緩慢と見られる。
天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。ただしペントアップ需要がどの程度継続するかは、現時点ではまだ不透明である。
中国国内の渇水による水力発電の停滞観測から、ガスや石炭などの代替燃料の需要は今後も旺盛とみられ、景気減速下でも需要は底堅いと予想される。
※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。
サハリン2は、欧米の圧力による輸入禁止よりも、欧米企業がメンテナンスから撤退していることによる中長期的な供給途絶のリスクの方が大きいだろう。
4月16日時点の日本の発電用LNG在庫は242万トン(前年同月末196万トン、2018~2022年平均235万3,900トン)と過去5年平均を上回り、在庫は足りている状況。
ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。
また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。
この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。
本日も手掛かり材料に乏しい中、現状水準を維持と考える。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル
◆石炭
豪州石炭スワップ先物は小幅に上昇、期先は下落。在庫がしやすい製品であることや、中国のリオープン期待、インドの熱波による調達需要の増加観測が価格を支えているが、基本、凪のシーズンであり、ガス価格も低迷しているため動きは鈍い。
中国の豪州炭輸入は再開しているが、中国の工業セクターの活動がまだ緩慢なままで、製鉄会社が価格を引き下げるなどの動きに出ている事もあり、追加の石炭在庫積増しには慎重な可能性がある。
欧州API2石炭の期間構造は、期近が上昇したが期先はほぼパラレルに小幅に続落。
現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は140ドル、±1標準偏差で70~210ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。
しかし、期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度であることを考えると、実際は150~210ドルが説明可能なレンジか。
2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)であることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。
ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。
そろそろ夏場を意識した調達が本格化するため、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。
実際、豪州炭の週間輸出動向を見ると、日本と中国の輸入量が増加し始めており、夏場に向けた動きが出始めたと考えられる。
3月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+150.7%の4,116万5,000トン(前月+159.8%の2,917万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準となった。
昨年のロシアの軍事侵攻による物流の停滞から輸入は減少していたため発射台が低かったこともあるが、中国のリオープンと豪州に対する制裁解除や国内の渇水の影響で輸入が増加したものと考えられる。やはり、この国の発電燃料は石炭なのだ。
国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後輸入は増加が予想される。やはりカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されるのではないか。
3月の中国の石炭生産は、前年比+5.4%の4億1,900万トン、1,351万トン/日(1-2月+6.9%の7億3,400万トン、1,245万トン/日)と伸びが減速している。
海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を下回っているが、豪州炭の輸入再開の影響でその必要性が低下したこと、発電需要の伸び鈍化が影響したと考えられる。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
本日も、凪のシーズンであることもあり現状水準維持と考える。ただし、インドの熱波の影響による石炭調達増加の可能性があること、ゆるゆると消費者の冬場のヘッジが入り始めているとみられることから、方向性はやや上向きか。
◆LME非鉄金属
LME非鉄金属市場は上昇した。この数日の大幅な下落の中、ドル安が進行したことが割安感からの買いを促した形。固有の材料には乏しい。
中国のペントアップ需要の顕在化はあるものの、全体として景気回復の足取りは重い。その中では為替動向が価格に影響を与えやすいが、昨日は米統計減速を受けた株安、リスク回避のドル高が進行したことで、非鉄金属価格は大きく調整することになった。
非鉄金属はQ223には中国のペントアップ需要が顕在化し、米国の利上げが一巡することから足下は上昇を予想しているが、下期に掛けてはペントアップ需要の剥落と、世界景気の減速もあって回復は息切れし、水準を切下げるとみている。
景気が減速する中で米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られ、価格のリスクは下向きだ。
実際、中国の消費者物価指数の内訳を見ると、食品・エネルギーを除くコア指数が+0.7%(前月+0.6%)と伸びが緩慢であり、商品別では住宅関連が▲0.3%(▲0.1%)と減速しており、消費は弱い。住宅セクターの減速は工業金属全体の需要にマイナスに作用する。
しかし、米国が想定よりも速く利下げを行えば、そのタイミングから価格は再びドル安を材料に上昇することに。しかしこの場合、2024年に再び世界がインフレのリスクに晒されるリスクが高まることになる。
直近のCOTレポートは銅と亜鉛を除き、買越しポジションを拡大。
銅・亜鉛はロングが減少、ショートが増加。弱気のポジション取りだが先々の買い戻しによる上昇のマグマが溜まったともいえる。
鉛・アルミ、ニッケル・錫はロングが増加しているが、ショートも減少しており強気のポジション取りに。
ミャンマー北部の最大武装組織「ワ州群」が同国北部からの鉱物資源輸出停止を決定、有効な契約を締結している業者は8月1日まで取引を継続できるが、それ以降は取引が禁じられる見通しであり、錫やニッケル価格の上昇要因となっている。
錫供給の減少が現実のものとなれば、半導体その他のハイテク関連製品供給の障害となる。
3月の中国製造業PMIは51.9(市場予想51.6、前月 52.6)と市場予想、前月とも上回り、中国のペントアップ需要の顕在化が続いていることを確認する内容。
需要の指標である新規受注は減速(54.1→53.6)受注残も減少(49.3→48.9)、輸出向け新規受注も閾値の50は上回ったが、50.4(52.4)と大きく減速している。
また、投入価格も50.9(54.4)と急減速、卸価格も48.6(51.2)と減速している。このことは製造業に関しては需要面の回復が遅れていることを示唆している。
結局、ペントアップ需要の顕在化は続いているものの、1月・2月の勢いはなくなった見るべきではないか。
ただし、新規受注在庫レシオは完成品が0.924(0.935)、原材料が1.110(1.086)と完成品は余剰だが、原料が不足していることを示唆。渇水などの影響で国内生産が影響を受けていると見られ、短期的にはペントアップ需要と相まって、非鉄金属を含む工業金属価格を押し上げるだろう。
長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。
早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。
価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。
3月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲19.0%の40万8,174トン(前月▲10.9%の40万9,514トン)と過去5年平均を下回り低迷した。
一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比▲7.5%の202万1,293トン(前月+9.6%の228万トン)と過去5年の最高水準で推移している。
3月の中国の精錬銅生産は+10.8%の104万5,000トン(1-2月+14.3%の194万5,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。
精錬品の輸入減少や銅精鉱の輸入減少は調達面の問題(在庫の低さ)を背景とするものである可能性が高く、製品生産が増加していることから、ペントアップ需要の顕在化が起きているものと見られる。
3月の銅スクラップの輸入は前年比+18.4%の17万7,571トン(前月+58.3%の17万3,825トン)と過去5年平均を上回っている。
以上を考えると、中国の需要は政策的なテコ入れによって一時的に急回復していると考えられる。ただし、世界景気の減速やこれ以上、住宅バブルを発生させることはさすがに回避すると考えられることから、中期的な見通しは引き続き弱気だ。
本日は、中国の需要回復が弱い中で為替目立った材料に乏しい中、ここ数日、急速に高まっている米金融機関の経営問題が株安・長期金利低下を促しており、ドル安バイアスが掛りやすく、逆に非鉄金属の上昇要因に。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。
中国は建築シーズン入りし、在庫の取り崩し時期に入っているが、鉄鋼製品価格を引き下げなければ売れない状況が続いており鉄鋼セクターの地合は悪い状態が続いている。
週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲41万2,000トンの1,496万7,000トン(過去5年平均 1,739万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジの下限。
鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲160万トンの1億3,170万トン(過去5年平均 1億4,141万6,000トン)、在庫日数は24.6日(▲0.3日、過去5年平均30.7日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は低い。
原料炭在庫は▲20万トンの137万トン(185万8,000トン)、在庫日数は▲0.7日の4.8日(過去5年平均 7.8日)とこちらも、日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状態。
3月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.4(前月50.1)と減速した。しかし、新規受注は50.2(48.9)と増加しているため景況感の悪化というよりは完成品在庫(前月比▲11.7)、原材料在庫(▲13.2)の減少がヘッドラインの数値を下振れさせたと考えるのが妥当。
鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは1.13(0.87)と大幅に上昇、新規受注原材料レシオも1.31(0.95)と大幅に上昇しており、鉄鋼製品・鉄鋼原料の需給がタイトであることを示唆している。
しかし、輸出向け新規受注は42.1(49.8)と急減速しており、今回の需要が国内の需要(ペントアップ需要+地方政府財政を何とかしなければならない中での不動産市場のテコ入れ)に因るものと考えられ、中国の財政状況と、「更なる不動産バブルの発生を容認できるのか」という視点から考えれば、持続可能ではないとみている。
とはいえ、中国の建設業PMIは65.6(60.2)と統計が確認可能な2012年5月以降の最高水準となっており、しばらくはこの建設セクターの戻り需要が鉄鋼製品・鉄鋼原料需給をタイト化させ、価格を高止まりさせると考える。
3月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲32.6%の68万1,840トン(前月▲33.7%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。
3月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+59.7%の789万トン(+70.2%の616万トン)と過去5年レンジを上回る高い水準を維持している。
3月の中国粗鋼生産は前年比+8.4%の9,573万トン(前月+6.8%の8,437万8,000トン)と回復し、過去5年レンジを上回った。
国内の粗鋼生産を増加させ、輸入を減らし輸出に回していることが窺える。銅などは国内の需要がペントアップ需要の顕在化で増加していると考えられるものの、鉄鋼製品に関してはこの数字の上ではむしろ輸出増加で国内需要、不動産セクターの回復が遅れていることを示唆している。
中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。
本日も、最終需要の弱さはあるが、鉄鉱石・原料炭とも在庫水準が低いため、一定の在庫積増しが期待され、じり安ながらも現状水準維持の公算。
◆貴金属
昨日の金価格は下落した。金利はほぼ変わらずだったが、原油価格急落による実質金利の上昇が価格を下押しした。銀・プラチナも下落。パラジウムは50日移動平均線のサポートラインでサポートされていたこともあり、テクニカルな買い戻しが入った。
足下、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇している。金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、以下の通り。
1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めたこと2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念4.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念
4.に関しては6月15日の米連邦税収が無事終了するまでは、債務上限問題や米国債の格下げ懸念がつきまとう。現在の金価格はこのリスクを織り込んでいると考えられ、6月15日のXデーを無事乗り切ることができれば、このプレミアムが剥落して水準を切下げるのではないか。
現在、実質金利で説明可能なポーション以上に、リスク・プレミアムの影響が大きい。
基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。
ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。
なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。
基準価格をざっくり1,000ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」はIMFベースであれば1,156ドル、WGCベースでは1,454ドルとなる。
簡単な要素分析で現在の信用リスクが550ドル程度であるため、IMFベースであれば1,706ドル、WGCベースでは2,004ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのIMFベースの価格となっている。
恐らく信用リスク分は上述のXデーを過ぎれば剥落するため、過去5年平均程度である330ドル程度までの下落が想定され▲220ドル程度の下落要因となる。年後半の金価格の目線は1,785ドル程度、ということになろうか。
なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。
銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。
月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。
現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。
本日は、ドルが米金融機関の経営問題などを材料に軟調に推移しやすいため、買い戻しが入ると予想。
◆穀物
シカゴ穀物市場は続落した。原油価格が急落したことを受けてトウモロコシ価格が下落、穀物セクター全体を弱含ませた。
本日も手掛かり材料に乏しいが、米金融機関の経営問題などを背景にドル安が進行しやすいこと、原油がさすがに昨日の下落を受けて上昇するとみられることから、上昇余地を探る動きに。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。
・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)
新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。
・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。
そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。
・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。
中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。
一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。
・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。
台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。
また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。
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