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米利上げ・債務上限問題を背景に下落
  • MRA商品市場レポート

2023年5月25日 第2462号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米利上げ・債務上限問題を背景に下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーセクターが続伸したことを除けば、ほとんどのセクターが水準を切下げる展開となった。

米国の債務上限問題が再び政争の具となり、格付各社が格下げの可能性を検討し始める中、インフレ継続に伴う金融引締め再加速観測と相まって長期金利が上昇、ドル高進行と株安が発生したことが、広くリスク資産価格の下落要因となった。

米国の利上げは5月が最後とみられていたが、Fed Watchで見る25bpの利上げの可能性は36.4%(前日28.1%)に上昇しており、急速に利上げ懸念が台頭し始めている。

また、落着いたはずの中国で再び新型コロナの感染再拡大が指摘されており、6月のピークには1週間で6,500万人の感染者が発生すると報じられたことも市場参加者のリスク回避姿勢を強めた。

中国は恐らく昨年のゼロコロナ政策の反省から、ロックダウンなどは行わないと考えられるものの、やはりワクチン接種が浸透していない(というよりは中国製のワクチンが効果がない)ことで、まだ他国に比してコロナへの対応力が高くないと考えられる。

しかしこれにより、今後回復が期待されていた中国の国内経済活動の回復がおくれたり、日本もインバウンドや輸出の減少などの影響を受けるため、中国のコロナ動向は無視できないリスクになってきた。

【本日の見通し】

本日も、米債務上限問題に目立った進捗がないこと、格付各社の米国債格付引下げ観測、中国のコロナ感染再拡大といった景気に対してマイナスの材料が多いことから、水準を切下げる商品が目立つと考えられる。

本日予定されている統計・イベントで注目は以下の通り。

・リッチモンド連銀バーキン総裁講演(投票権なし・タカ派)

・ボストン連銀コリンズ総裁講演(投票権あり・中間派)

・トルコ、南アフリカ、インドネシア、韓国中銀政策金利発表

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 24.5万件(前週 24.2万件)

・Q123米GDP改定 前期比年率+1.1%(速報比変わらず) 個人消費 +3.7%(±0.0%) コアPCE +4.9%(±0.0%)

【昨日のトピックス】

昨日も米国の債務上限問題を巡る交渉は進捗がなかった。懸念されていた事であるが共和党の(特に)保守派は、「イエレンが提示した6月1日はかなり保守的にみた期限であり、まだXデーまでには時間がある」と指摘しており、まだしばらくの間政治ゲームで市場を混乱させ、溜飲を下げようとする可能性はある。

この状況で懸念されていたように、英フィッチが米国債をネガティブ・ウォッチとし、ムーディーズもネガティブ・ウォッチに関して言及した。

フィッチによれば、期限前に債務上限問題で合意すると考えてはいるものの、「期限が迫っているにも関わらず、債務上限の引き上げや適用停止に向けた交渉が、政治の党派制の高まりで妨げられている事を反映している」としており、デフォルトリスクを織り込んで、ネガティブ・ウォッチにしたとしている。

ムーディーズも同様で、最終的に債務上限引き上げで合意するものの、協議中に交渉担当者が仮にデフォルトを想定していると公的に示唆すれば、見通しをネガティブに変更するとしている。

通常、ネガティブ・ウォッチになると3-4ヵ月で結果が示され、改善がなければ格下げされるケースが多いようだ(ここは格付機関による)。

ただし、今回仮に合意したとしても財務の健全性に疑問符が付けば、2011年のS&Pによる米国債格付の引下げと同様のことが起きる可能性がある。

つまり、民主党の過剰な財政支出拡大による財政悪化に一定の歯止めを掛ける(一定の歳出削減を認める)内容にならなければ、格下げは有り得るということだ。

この場合、担保に入れている国債の評価価値が下がるため、地銀を含む銀行保有の国債の評価下方修正、それにともなう信用収縮、価格下落・金利上昇による株価調整などの悪影響が多方面に及ぶ可能性があるため、米国両党は早期に妥結することが必要だ。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。サウジアラビアの減産懸念でショート・スクイーズが入った他、夜間発表の米石油統計が想定を大きく上回る強気な内容だった事が価格を押し上げた。

昨日の石油統計では石油製品出荷が回復しており、同じ時期の過去5年の最高水準に迫った。各国サービス業の景況感改善で需要が戻っている可能性を示唆する内容。

原油生産は増加して過去5年の最高水準を上回り、製油所の稼働率も過去最高水準で、石油製品生産もガソリンは過去5年の最高水準となった。

しかし出荷が回復基調にあるため在庫はガソリン・ディスティレートとも大幅な減少となり、在庫水準は過去5年の最低、在庫日数も同様であり石油製品需給がタイトであることを示唆している。

この結果、ガソリンのクラック・スプレッドは拡大している。季節的に需要が減少する灯油のクラックも回復したが、過去5年平均を若干上回る程度。

現在、BrentとWTIの投機筋のショートポジションは、Brentが2021年7月以来の高水準であり、WTIは今年3月頃の水準まで積み上がっている。

今年3月は、WTI・Brentとも景気の先行き楽観や米利上げ打ち止め観測を背景とするドル安進行、OPECプラスのサプライズ減産が材料となり、急速にこのショートポジションの買い戻しが入り、各々10ドル程度価格が上昇している。

ただ、景気は減速方向に向かう見通しであるため中期的に見通しは弱気であるが、3月~4月にかけてのこの高騰の経験があるため、ショート筋はサウジアラビアの口先介入に敏感に反応したようだ。

ただし、本当に買い戻しが継続するかどうかは、実際に減産があること、ドル安が進行することなどの要素が重なる必要があるため、目先は影響はこれでも限定的だろう。

足下、株価が強く推移し、景気の先行きを逆に不透明にしているが、インフレ沈静化の兆しが見えない中でFRBの高金利政策は持続せざるを得ない状況は続いており、先行きの景気減速、リスク回避の続落リスクはむしろ高まっている。

景気のソフトランディングに成功すれば供給能力の制限から年後半か来年以降、急速に価格が上昇するシナリオ、金融引締め継続を背景に金融危機・信用収縮が発生してソフトランディングに失敗して価格が急落する、の両方のリスクに晒されている状態。

前者の場合、OPECプラスの減産や非OPECプラス諸国の上流部門投資が不充分であること(脱炭素に加えて、金利高の影響もある)から、2024年の価格上昇は弊社が想定しているよりも大きなものになる可能性はある。

後者の場合でも供給能力の制限から思ったほど価格は下落せず、「スタグフレーション」となる可能性は高まっている。

直近のWTI投機筋のポジションは5月16日時点でWTIがロングが前週比▲10,184枚、ショートが+14,975枚とネットロングが減少。

Brentは5月16日付けのCOTレポートで、ロングが▲11,427枚、ショートは▲5,407枚とネットロングが減少している。

WTIは新規にショートポジションが積み上がり、Brentはともに減少している。5月23日のアブドルアジズ発言での上昇率が、WTIの方が大きかったのは、新規のショートが積み上がっていたため、と考えられる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、OPECプラスでの減産観測、米金融政策動向、ネガティブ・ウォッチとなった米国債の動向を受けたドル指数動向、といった強弱材料が混在する中、取りあえず50日移動平均線のレジスタンスラインが意識され、調整売りに押されると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は期近がさらに下落下。景気の減速や気候の安定、LNG調達の安定が目先の需要を減じていることが背景。期先に関してはさほど状況が変わっていないため、前日の水準を維持した。

欧州最大のエネルギー消費国であるドイツの発電量(7日平均)は、同じ時期の過去5年の最低水準である481億キロワット(単位時間あたりの日平均)を下回る474億キロワットとなっている。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果。

逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

ただし年後半に掛けて景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていること、ロシアも原油価格・ガス価格下落による財政状況の悪化が懸念されるため更なるガス供給の削減は常識的に考えて難しいことから、気温の低下(ないしは夏場のアジアの猛暑)がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。しかし、ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

しかし、上述の通りロシア産ガスの供給が実質的に制限されていないことから、実際はこの中間で2026年頃に脱ロシア完了となるのではないか。

このことは、2026年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

3.4.は顕在化している。

5.は夏場の調達が始まる時期であるが、今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は最大消費地の北アジアは冷夏となる見通し。ただしエルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、冬場のリスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも低下している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は上昇した。気候が穏やかだったが全米で気温が上昇し、冷房需要が増加するとの見方が価格を押し上げた。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は前ゾーン小幅に下落した。中国の景況感の回復の遅れで需要の戻りが緩慢。

4月の天然ガス生産は+5.6%の1,382万4,000トン(±0.0%の1,448万5,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準。

4月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+11.0%の898万トン(+11.2%の887万トン)と先月とほぼ同じ前年比水準を維持したが、それでも過去5年の最高水準は下回っている。

内訳を見ると、4月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.6%の421万トン(前月+4.6%の351万トン)と過去5年の最高水準(374万トン)を大きく上回った。

一方、4月のLNG輸入は前年比+9.6%の476万7,000トン(前月+15.9%の536万3,000トン)と過去5年平均(481万トン)を割り込んだ。国内生産の増加とパイプラインベースの輸入増加、燃料の種類は異なるが、石炭在庫の積み上がりが発電向けのLNG輸入需要を減じたと考えられる。

4月の中国の電力消費量は前年比+8.5%の6,901億kwh(前月+6.1%の7,369億kwh)と伸びが加速したが季節的に数量は減少している。昨年4月はロックダウン開始月ということもあり伸びが加速していても不自然ではない。

天然ガス輸入量は、国内生産が増加しているものの増加しており、同国の経済活動が徐々に再開していることを示唆するもの。ただしペントアップ需要がどの程度継続するかは、現時点ではまだ不透明である。

季節的な猛暑、渇水などによる発電燃料輸入需要が増加する可能性があるものの、景気の回復ペースが想定よりも緩慢であるため高水準の発電燃料輸入は減速の可能性がある。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

5月21日時点の日本の発電用LNG在庫は250万トン(前年同月末211万トン、2018~2022年平均249万6,500トン)と過去5年平均程度。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日も新規材料に乏しい中、景気の先行きヘの懸念と足下在庫水準の高さから、低水準での推移が続くと予想される。

冬場の需給はこれまで懸念していたほどタイトにはならないと予想されるものの、気温次第ではタイト化するリスクは残存するため期先は高止まりしよう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物はほぼ全ゾーンパラレルに大幅に下落。世界的な景気の減速や、最大消費国である中国の景気回復の遅れ、コロナの感染再拡大を受けた需要の減少観測などが材料となったようだ。API2石炭もほぼパラレルに下落。

Q223が恐らく今年、最も石炭価格が安くなるタイミングと予想していたが、その想定以上に水準が切り下がっている状況。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は125ドル、±1標準偏差で55~195ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~140ドル程度まで低下してきたことを考えると、実際は130~195ドルが説明可能なレンジ。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)であることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除しない。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

そろそろ夏場を意識した調達が本格化する。そして今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏にある可能性があり、南アジアでは既に記録的な熱波が観測されている地域も多い。そのため、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

4月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+72.7%の4,067万6,000トン(前月+150.7%の4,116万5,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準となった。

昨年のロシアの軍事侵攻による物流の停滞から輸入は減少していたため発射台が低かったこともあるが、中国のリオープンと豪州に対する制裁解除、中国南部の渇水の影響で高水準の輸入が続いている。やはり、この国の発電燃料は石炭なのだ。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後も輸入は増加が予想される。

4月の中国の石炭生産は、前年比+2.7%の3億7,400万トン、1,246万トン/日(前月+5.4%の4億1,900万トン、1,351万トン/日)と伸びがさらに減速した。

中国の消費電力は前年比+8.5%の6,901億kwhと前月から伸びは加速したが季節性もあり総量は減少している。この状況で豪州炭の輸入再開で4月の石炭輸入が記録的な水準である事もあり生産が低迷したと考えられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇や渇水による電力供給減少がなければ、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、割安感からの買いで上昇余地を探るが、中国の景気減速観測が強まっていることからさほど大きな上昇にはならない見込み。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は大幅に下落した。米債務上限問題を背景に米国債が売られ金利上昇を受けてドル高が進行したこと、中国の景気回復の遅れに加え、新型コロナの感染再拡大が最大消費国の需要を減じるとの見方が強まったことが背景。

非鉄金属のベンチマークである銅の人民元建ての価格は過去65,600人民元/トンが「最高値」として意識される傾向が強い。というのも2000年以降、この水準にタッチすると下落していることが多く、今回も同様。

やはり中国の景気はそれほど回復しておらず、非鉄金属価格の上昇がある中で消費を継続するのは困難、という事だろう。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は意図せざる在庫積増し局面の終期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況とみられる。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛ることになるが、恐らく景気てこ入れもあるためそこまで時間は掛らないのではないか。

弊社は中国のペントアップ需要の増加で価格がQ123に上昇し、その後年末に掛けて水準を緩やかに切下げると考えていたが、中国の回復の遅れと欧米の景気減速から今年の秋頃まで低迷した後、景気底入れが期待されるQ423~Q123に上昇に転じるとみる。

COTレポート(+CFTCのCME銅売買動向)による、ファンド筋の売買動向はさらにネット売り越し幅を拡大した。CME銅を除く全ての金属がロング減少・ショート積増しとなっている。

ロングポジションの解消も進んでポジションが軽く、新規ショートも積み上がっているので、イベントリスク終了後には上昇に転じるとみているが、それにはまだ時間が掛りそうだ。

直近でネット売り越しだったのは、2020年6月はまさにコロナ危機時だったが、このときは大幅な財政出動や金融緩和が行われ、物流の停滞やコロナの影響による鉱山生産減少が意識され始めたタイミングであり、この後、ネット買越しは増加して価格は上昇している。

今回は、金融引締め継続、財政も削減、物流停滞は解消し、鉱山生産も回復していることから、2020年とは逆の動きになる可能性は低くない。やはり構造的な脱炭素向けの需要増加が期待され、景気が底入れするとみられる2023年後半以降までは上値は重いのではないか。

ただ、脱炭素などのテーマ性のある金属は景気底入れ後は顕著な上昇になるリスクはあると考えている。

最大消費国である中国の景況感は良いとは言えず、4月の中国製造業PMIは49.2(市場予想 51.4、前月 51.9)と市場予想、前月とも下回り、中国のペントアップ需要の顕在化が一巡した可能性があることを示唆する内容となった。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、新規受注のマイナス寄与度(▲1.44)が大きく、次いで、生産(▲1.10)、雇用(▲0.18)の寄与度が大きかった。

景気回復局面では新規受注が生産を促し、雇用に繋がるという過程を経ることが多いが今回は明確に新規受注に減速がみられ、今回の回復がペントアップ需要の顕在化による一時的なものである可能性が高まった。

実際、輸出向け新規受注の減少が▲2.8に止まる一方、新規受注全体では▲4.8となっており、輸入も48.9(前月50.9)と▲2.0の低下となっており「国内の新規受注が低迷」していることを示唆している。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が0.988(1.083)、原材料が1.019(1.110)と両方とも低下しているが、完成品は閾値の1を下回っている。

生産が減少しているにもかかわらず完成品在庫の水準は49.4(49.5)と小幅にしか調整していない。いわゆる「意図せざる在庫積増し局面」にあるとみられる。規模別の製造業PMIも全ての規模で閾値の50を下回っており、やはり世界景気の減速を受けて景況感は減速する可能性が高いと見るべきだろう。

4月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲12.5%の40万7,293トン(前月▲19.0%の40万8,174トン)と過去5年の最低水準を下回った。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.8%の210万2,572トン(▲7.5%の202万1,293トン)と過去5年の最高水準で推移している。

4月の中国の精錬銅生産は+25.3%の112万1,000トン(前月+10.8%の104万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善(渇水のリスクはある)を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。

4月の銅スクラップの輸入は前年比+7.4%の14万5,366トン(前月+18.4%の17万7,571トン)と過去5年平均を下回った。恐らく国内生産の増加と需要の減速でスクラップ輸入需要が低下したと考えられる。また、景気減速に伴うスクラップ供給減少の可能性も否定できない。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている(循環的な需要増加とは別)。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

本日は、いったん買い戻しが入るものの、債務上限問題や米国の利上げ観測、中国のコロナ感染再拡大といった景気循環系商品にネガティブな材料が多く、結局軟調推移に。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

景気回復の遅れやコロナの感染再拡大などが懸念される中で鉄鋼製品需要が低迷、にも関わらず粗鋼生産が5月中旬時点で291万トン/日と5月上旬から僅か▲0.24%しか減少しておらず、完成鋼材の生産量は+1.3%の373万トンとなるなど、鉄鋼製品の需給環境が緩和していることが、鉄鋼製品・原料価格の下落要因となっている。

ただ、鉄鉱石・原料炭の在庫日数は低く、統計上は鉄鋼原料価格が高止まりしやすい状況。

疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)を元に鉄鋼製品との回帰を行うと、この数年の原料炭取得の困難さから有意な相関関係は喪失しているが、直近1年のデータを元にすると、概ね現在の鉄鋼原料価格と鉄鋼製品の価格はこの回帰直線上に位置する。

恐らく、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていないため、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため総じて下押し圧力が掛りやすいと考えている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲48万5,000トンの1,362万9,000トン(過去5年平均 1,490万1,000トン)と減少、徐々に過去5年平均に水準は近づいている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲135万トンの1億2,695万トン(過去5年平均 1億3,453万6,000トン)、在庫日数は24.5日(▲0.3日、過去5年平均29.8日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は低い。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+8万トンの153万トン(163万2,000トン)、在庫日数は+0.3日の5.5日(過去5年平均 6.7日)とこちらも、日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状態だが、徐々に緩和してきている。

4月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.0(前月48.4)と減速した。新規受注の落ち込みが特に顕著(50.2→39.9)だが、輸出新規受注は55.5(42.1)と増加していることを勘案すると、国内需要が急速に減少している可能性があることを示唆。

実際、中国の棒鋼先物価格は4月末時点で前年比▲29.4%(前月末▲19.1%)と低下しており、前月比ベースでも下落している。各調査レポートでも指摘されているように、「価格を下げないと売れない」状況にあると考えられる。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは0.87(1.13))と大幅に低下、原材料レシオも1.02(1.31)と急低下しており、鉄鋼原料・製品需給とも急速に緩和。

これまでの需要は政府のテコ入れによるものと考えられるが、それが剥落している状況。やはり更なる不動産バブルの発生は容認できないという視点では、これまでの需要回復は持続可能ではないといえる。

とはいえ、中国の建設業PMIは63.9(65.6)と減速してはいるものの、非常に高水準を維持しており、恐らく不動産在庫の削減は進むと期待されるため当面、回復感は持続すると考えられる。

4月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲39.1%の58万4,930トン(前月▲32.6%の68万1,840トン(前月▲33.7%の63万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

4月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+59.3%の793万2,430トン(前月+59.7%の789万トン)と過去5年レンジを上回る高い水準を維持している。

4月の中国粗鋼生産は前年比▲0.2%の9,264万トン(前月+8.4%の9,573万トン)と急減速したが、まだ過去5年平均は上回っている。

国内で生産した鉄鋼製品が国内で処理仕切れず輸出に回していたが、それも厳しくなってきたために生産量を減らし始めたと考えられる。製造業全体の在庫循環図は意図せざる在庫減少局面の終期にあり、まだ在庫調整が必要な事を示唆している。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、中国の政策期待はまだ残存しているが、中国の景気回復の遅れや鉄鋼需給の緩和を受けて調達圧力は徐々に弱まると考えられ、水準を切下げる展開を予想。

しかし同時に鉄鋼原料の在庫水準も低いため、下げ余地も限定。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。米長期金利がインフレ懸念を背景とした米利上げ観測や、米国債の格下げ懸念を背景に上昇したことで実質金利が上昇したことが背景。

銀は金に連れ安、PGMは株価の下落を受けて大幅に下落した。

債務上限問題が再び行き詰まり、米1年CDSも165bpまで再び上昇した。マッカーシー米下院議長は共和党内で求心力がある議長ではないため、まだ完全に妥結するまではリスク・プレミアムは高止まりするだろう。

金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇しているが、上昇要因の主なところは、以下の通り。

1.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

2.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念

3.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米国・第三国が意識し始めたこと

4.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと

1.に関しては概ね米国の利上げの影響に寄るものであるため、米国の金融引締めが続く以上、リスク・プレミアムは高止まりすることになる。

逆に言えば、利上げが終了し、利下げに転じればリスク・プレミアムは低下することが予想されるが、今の状況だと早くても年後半になるだろう。

2.に関しては6月15日の米連邦税収が無事終了するまでは、債務上限問題や米国債の格下げ懸念がつきまとう。また、根本的な問題解決のためには債務上限を引き上げる必要があることに変わりはない。

実際、米国債がデフォルトするリスクは非常に小さいと考えられるが、より大きなリスクは交渉の長期化を嫌気して、米国債を格下げすることだろう。ただ、債務上限を引き上げることで財政の健全性が担保されないとして、問題が解決されても格下げになる可能性もある。

実際、2011年の債務上限問題発生時は妥結していたものの、「財政赤字の削減が十分ではない」としてS&Pは米国債を格下げしている。

3.は2022年以降、特にその動きが顕著になった。各国政府・中央銀行の金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、IMFデータを元にすれば先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

なお、WGCは2022年の政府・中央銀行の金購入が1,136トンだったとしている。これを基準にすれば454ドルの価格上昇要因となる。

基準価格をざっくり1,000ドルとし、各国当局の金準備積み上げは「原則売却されない」と仮定すると、金価格の「発射台」はIMFベースであれば1,156ドル、WGCベースでは1,454ドルとなる。

簡単な要素分析で現在の信用リスクが550ドル程度であるため、IMFベースであれば1,706ドル、WGCベースでは2,004ドル程度となる。現在の価格水準は主ねこのIMFベースの価格となっている。

恐らく信用リスク分は上述のXデーを過ぎれば剥落するため、過去5年平均程度である330ドル程度までの信用リスク分の低下があるとすれば、▲220ドル程度の下落要因となる。WGCデータを基準二した場合、年後半の金価格の目線は1,785ドル程度、ということになろうか。

ただ、米中対立の構図が続く中ではドル忌避の動きが継続するため、上述の1.の要因が継続して高止まり、ということも有り得る。

なお、実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限まで低下していたが、再び上限を目指す動きとなっている。景気の先行きへの懸念が強まっていることが背景。

仮にボリンジャーバンドの上限に達するならば、21ドル程度までの下落余地があることになるが、この下落で100日移動平均線のサポートを割り込んだため、さらに大きな下落となる可能性。チャート的には22ドルまでの下落があってもおかしくない。

実際、銀のチャートはダブルトップを形成していたため、テクニカルには下落しやすい地合だった。

本日は、債務上限問題の不透明感やFOMCメンバーのタカ派発言を受けたドル高進行、米国債がフィッチよってネガティブ・ウォッチとされたことで安全資産需要が高まると考えられるため、高値維持の公算。

銀はテクニカルに売られやすいが、金価格の高値維持で下げ余地は限定か。

PGMは金利引き上げや米国債格下げリスクを受けて水準を切り下げる展開。

PGMは株価に下押し圧力が掛かりやすくなってきたため、軟調推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシと大豆が上昇した。原油価格の上昇に加え、米国の作付は進捗しているものの、気温上昇と乾燥気候が生産を下振れさせるのではないかとの懸念を高めたことが背景。

生産地が世界中に遍在している小麦はドル高の影響で利益確定の売りに押されて下落した。

本日は、再びFOMCメンバーがタカ派的な発言をしていることを受けてドル高となりやすく、水準を切下げる展開を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・債務上限問題を契機とする、米国債のデフォルトないしは格下げリスク(ほとんどの商品価格の下落要因に)。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「鉛価格は自動車販売回復が支えだが...」

2023年の非鉄金属パフォーマンスは錫のみ年初来上昇率がプラスだが、その他は全てマイナスとなっている。

本稿執筆時点で最も下落しているのがニッケル(▲30%)、次いで亜鉛(▲17.3%)であるが、鉛は騰落率が▲10.0%と「比較的」下落幅が抑制されている。

鉛価格は今年の冬が暖冬だったことでバッテリーの交換需要が期待ほどではなかったが、中国が年初からゼロコロナ政策を解除し、中国のリオープンによるリベンジ消費の影響か、自動車販売が世界的に回復していることが、車載向け鉛バッテリー需要を増加させているためと考えられる。

しかし、ここまで発表された中国の経済統計はそれほど強いものではなく、ペントアップ需要はQ123で一巡してしまったようだ。

自動車販売は、春節のズレがあるため年初来累計で比較すると、4月段階で前年比+7.2%とプラスに転じた。しかし、昨年は4月から中国ではロックダウンが行われているため、昨年の水準は6月頃までは低い。

そのため、2021年と比較して見ると、前年比▲5.7%とマイナスとなっており、回復はまだ道半ばの状態にあると言える。

そもそも、最大消費国である中国の自動車販売は住宅販売動向の影響を受ける。住宅取得→車庫確保→自動車購入、となるからだ。これは日本の構造と大差はない。

そのため自動車販売は住宅販売から遅行して回復するため、中国の不動産セクターの回復に時間が掛る可能性が高い事を考えると、ペントアップ需要顕在化が一巡した後は、販売は減速の可能性がある。

また、中国の新車販売の3割弱が新エネルギー車になっていることを考えると、仮に自動車セクターの回復があったとしても、以前ほどの力強い回復にはならない事も考えられる。

ただし、今年の夏はエルニーニョ現象が発生の見通しであり、局地的に猛暑となる可能性があること、エルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することが多く、今年の冬が厳冬となる可能性があることを考えると、不慮の価格上昇はあり得るだろう。

精錬鉛の需給バランスは、MBのデータを元にすれば2023年が▲48千トンの供給不足、2024年が▲77千トンの供給不足になる見通しであり、景気は減速ながらも需給ファンダメンタルズはタイトな状態であり、「何らかの切っ掛け」があれば価格が上振れしやすい事には注意が必要だ。

そのため冬場の価格上振れ、2024年(に期待される)景気の底入れ後の価格上昇が顕著になるリスクも考慮しておく必要があろう。

また、非鉄金属価格動向分析に伝統的に使われてきたLME・上海在庫の水準とLME鉛価格の相関性は現在殆ど確認されていない。

その代わり、鉛価格と米国の10年期待インフレ率との相関性は高まっている。10年期待インフレ率は原油価格との連動性が高く、米WTI原油価格も年末に掛けて下落、米FRBもインフレ抑制方針を維持する見通しであることから、鉛価格も基調としては下落方向だろう。

ただし原油価格は2024年以降に再度上昇が見込まれるため、インフレ率の観点からも鉛価格は2024年に掛けて再度上昇する可能性が高いと考えている。


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