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ドル安と中国景気刺激策期待で堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年4月12日 第2432号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ドル安と中国景気刺激策期待で堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーやその他農産品などが上昇、非鉄金属が軟調な推移となった。

昨日はIMFの経済見通し(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)が発表され、先行きの景気減速リスクが指摘されたことが広く景気循環系商品価格の下押し材料となったが、中国のCPI・PPIが減速しており、中国人民銀行の利下げの可能性が意識されたことや、米景気の減速に伴うドル安進行が、ファイナンシャルな面で商品価格を支え、押し上げた。

足下、景気が金融引締め、景気循環で減速する可能性が高まる中、政治的な動きが活発化している。通常、景気が悪くなると税収が減るため、経済対策を行う「財布」が小さくなる。

そのために、国民の不満を解消したり、注意を外に逸らす目的で外交的な動きが活発化することが多い。もちろん、外遊などはすぐに決めてすぐに動けるものではない。

しかし、このタイミングでサウジアラビアとイランが国交を回復し、仏マクロン大統領が中国を往訪して航空機購入の仕事を取り付け、岸田首相もグローバル・サウスを往訪する計画であり、豪州と中国が大麦の輸出紛争で和解を目指す方向を示すなど外交が活発化しているのは事実である。

皮肉な話だが、これらの動きは世界景気減速の裏返し、とも言えるため今後、要人の外遊動向は注視しておきたい所だ。、

 

【本日の見通し】

本日は、米国のCPIの発表待ちでアジア時間は小動き、米国時間に上昇する商品が目立つと考えられる。

現時点のCPI予想は、総合指数が前月比+0.2%(前月+0.4%)、コア指数が+0.4%(+0.5%)といずれも減速の見込みである。

ただし、前年比の価格上昇率は総合指数が+5.1%(+6.0%)、コアが+5.6%(+5.5%)と、コア指数はインフレ基調を維持する見込みであり、米国の利上げを正当化することになると予想される。

ただし、市場が期待している5月で利上げは打ち止め、となる可能性は高まっていると考えられる。

【昨日のトピックス】

昨日、発表されたIMF経済見通しは、2023年の成長見通しが2.8%(前回見通し比▲0.1%)と下方修正、2024年も3.0%(▲0.1%)に下方修正された。基本、3.0%成長を下回ると実質的に景気は後退局面入りしたと判断される。

見通し引下げの背景は、インフレ抑制のための中央銀行の金融引締めの影響で経済活動が鈍化擦る影響が大きいとしており、さらに金融引締めによって金融市場が混乱した場合大きな下振れリスクとなり、経済成長が2%を割り込む可能性も指摘された(25%の確率)。経済成長が1%を割り込む可能性は15%としている。

既に米国などではローンの伸びが急減速しており、高金利政策が継続することによる逆ざや定常化で、金融環境は厳しさを増すことが予想される。基本、景気を減速させてインフレを抑制しようとしているため、狙い通りの効果が出ている、とも言えなくもない。

IMFは先進各国がインフレを抑制しながら景気後退を回避しなければならないとする非常に難しい舵取りを要求されており、ハードランディングの可能性がたかまっていると懸念を表明している。

地域別で下方修正が大きかったのが新興国であり、中国は昨年のロックダウンからの回復やサプライチェーンの回復で前回見通し比で横這いだったものの、インドは2023年が5.9%(▲0.2%)、2024年が6.3%(▲0.5%)と大幅に下方修正された。

先進国の中では日本が1.3%(▲0.5%)と大きく下方修正されている。これは昨年10-12月期の成長率が設備投資の不足などで低くなったため、見通しの発射台が低くなったためと指摘された。

食料の安全保障や制裁の影響、米中対立の高まりによって世界貿易は2022年の5.1%から2.4%に減速するとしており、商品価格にとってはマイナスとなる。

またCPIが目標としている水準に戻るのは早くても2025年頃としている。エネルギーなどの資源価格の調整はあるものの、構造変化や労働市場の需給のタイトさからコアインフレが高止まりしていることの影響も指摘された。

恐らく物価の上昇基調は継続し、資源価格も景気減速の後、底入れすれば水準を大きく切り上げる可能性がある。このことは先々の中央銀行のオペレーションがより困難になることを示唆している。

商品市場参加者は需要動向を見極める上でIMFの見通しを重視しているが、この見通し通りであれば需要の伸び鈍化で価格は下落することになる。なお、IMFは基本的に「強気の見通しを出しがち」な傾向があるため、景気減速局面での見通しを「上に外す(IMF予想を下回る)」ことが多い。

多くの商品市場参加者がこの見通しを元に見通しを立てて、取引しているため「IMFの経済見通し下方修正」の可能性が高まる局面では更なる下押しのリスクは残る。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米景気の先行き不安は根強いもののまだ後退したわけではない中でOPECプラスが自主減産を行う中、需給はタイトで、ドル安進行が価格を押し上げる形となった。

市場は米国の利上げはそろそろ終了し、景気の減速と共にドル安が進行すると見ている。しかしこれは同時に原油需要を減じるため、価格の下落要因となる。恐らく早晩「ドル安・原油安」の展開になろう。

またIMFの経済見通しも2023年は実質景気後退局面となり、リスクは著しく下向きとしていることも中期的な価格の下落要因となる。

弊社は原油価格は2024年に掛けて上昇するとみているが、現時点で主要なリサーチハウスの中で、弊社の見通しが最も弱気な見通しとなっている。

市場コンセンサスは非常に強気で、Q423のBrent平均価格は90ドル、最も高いところで110ドルが予想されている。一方弊社は78.67ドルであるが、これはEIAの見通しとさほど変わらない。

この見通しの差は、1.景気底入れのタイミング、2.米金融緩和の動向、によって発生している。しかし、下期に掛けてノンバンクも含めた金融機関の経営環境の悪化、それに伴う信用収縮の懸念を指摘する向きも多いため、政策の変更がなければ、回復は2024年にずれ込む可能性が高いとみている。

仮に早期に利下げが行われれば、ファイナンシャルな面で価格が押し上げられるため、見通しの上振れリスク(価格上昇が早期に発生)となる。

直近のWTI投機筋のポジションは4月4日時点でWTIがロングが前週比+17,862枚、ショートが▲27,196枚と強気のポジション取りに。

Brentは4月4日付けのCOTレポートで、ロングが+44,236枚、ショートは▲29,118枚とやはり強気のポジション取りとなった。

いずれも、OPECプラスのサプライズ自主減産を受けた、ポジション反転の動きによるものと考えられる。

しかし、景気の先行きを考えるとこれらの強気ポジションが解消されたときの下押し圧力は小さくない。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米CPIの発表待ちだが恐らく弱めの統計になるとみられ、ドル安進行が価格を押し上げよう。

しかし、朝方発表のAPI統計は原油在庫が+0.4MBと増加しており、現在のDOE統計予想は▲1.0MBの減少であることを考えると、予想に反して在庫が増加し、価格を下押しする可能性は高いとみている。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。割安感からの買いが入ったとみられる。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

ただし昨年に比べれば景気が減速する可能性が高く、LNGのフローも確立されていることから上記シミュレーションの通り気温の低下がなければ、調達は昨年の冬に比べれば厳しくはないと予想される。

しかし今年の冬が例年通りの冬であれば、2022-2023年の冬よりも寒い冬となること、冬場のラニーニャ現象再度発生のリスクを考えるとまだ調達環境は安泰とは言えない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高止まり、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開。ただし安定稼働になるかどうかは半年程度、稼働状況を確認する必要がある。

フランスではLNGの受入ターミナルがストライキで停止。パイプライン渡し価格の上昇要因となるが、スポットのLNGカーゴ価格の下押し要因となる。

ナイジェリア北部ではイスラム過激派勢力と政府の対立も続いているうえ、物価高騰、新紙幣導入による混乱が、国内情勢不安に拍車を掛けている状況。供給はしばらく不安定な状態が続こう。

3.4.は顕在化している。

5.はしばらく「凪」のシーズンに入る。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生するため夏は冷夏となる見通し。ただしエルニーニョ現象発生後はラニーニャ現象が発生することも多く、冬場のリスクは小さくはない。

LNGのタンカーレートはスエズ以東が横這い、以西が低下している。季節的に欧州は需要が減少、アジア太平洋は夏場に向けた調達(日本は在庫の水準が高くない)がタンカーレートを高止まりさせていると考えられる。

しかし、例年と異なりロシアの供給が事実上停止しているため、北欧は不需要期であるにも関わらず、春先から夏にかけてもLNG調達が必要になることから、タンカーレートの水準は昨年よりも高い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は上昇。LNGの輸出需要がピークに達したことで、域内の需給タイト化観測が強まったことが背景。「

火曜日のLNG輸出は前週比+5.8%の14.7BCFに達した模様。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は欧州ガス価格の上昇を受けて水準を全ゾーンパラレルに切り上げた。

JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが穏やかなシーズンに突入していることもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。

2月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+0.9%の866万トン(1月▲17.8%の927万トン)と前年比で増加したが、1-2月で見ると、▲9.7%と低迷している。

2月のLNG輸入は前年比+7.1%の521万1,000トン(前月▲24.4%の590万8,000トン)と1月の春節時よりも回復した。

2月のパイプラインベースの輸入は前年比▲7.1%の345万トン(前月▲3.27%の336万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。ロシアからの輸入は増加したが、ウズベキスタン・トルクメニスタンからの輸入が減少した。

1-2月の中国の天然ガス生産は前年比+7.0%の2,926万5,000トン(12月+5.7%の1,500万トン)と増加している。

2月の中国の電力消費量は前年比+11.5%の6,950億kwh(12月▲4.6%の7,784億kwh)と回復したものの、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はない。しかし、付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくない。

この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

4月2日時点の日本の発電用LNG在庫は240万トン(前年同月末196万トン、2018~2022年平均2,353万9,000トン)と過去5年平均を上回り、在庫は足りている状況。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日は、ピークシーズンの終了と景気への懸念から現在の低水準を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は期近が小動き、期先は大幅に上昇した。基本的に期先の価格は現在の生産者の生産コストに収れんしやすい。一方、API2石炭価格全ゾーンパラレルに低下している。

恐らくこの価格の差は、中国の豪州炭輸入再開の影響がじわりと出てきてるため、と考えられる。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが説明可能なレベルと水準が20ドル切り上がっている。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)で有ることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を切下げるとみているが、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

実際、豪州炭の週間輸出動向を見ると、日本と中国の輸入量が増加し始めており、夏場に向けた動きが出始めたと考えられる。

2月の中国の石炭輸入は前年比+159.8%の2,917万トン(前月+30.3%の3,148万トン)と減速。リオープンの遅れが影響した。

石炭輸入はモンゴルからの輸入増加が顕著であり、ロシアからの輸入も高い水準を維持している今後はカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

1-2月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不要になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、ピークシーズンの終了と世界的な景気減速懸念を背景とするガス価格の下落と、中国の豪州炭輸入再開を受けて現状水準でもみ合うものと考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場はまちまち。中国のファイナンス関連統計が発表され、新規融資はズークしているが、重視されているM2の伸びは鈍化が確認され、CPIやPPIの伸びも鈍化した。

中国の景気が市場が期待するほどの回復になっていないことは広く非鉄金属価格の押し下げ要因となったが、同時に1.人民銀行の金融緩和の余地が出てきたこと、2.米国のドル安、が価格を押し上げることとなった。

中国の消費者物価指数の内訳を見ると、食品・エネルギーを除くコア指数が+0.7%(前月+0.6%)と伸びが緩慢であり、商品別では住宅関連が▲0.3%(▲0.1%)と減速しており、消費は弱い。住宅セクターの減速は工業金属全体の需要にマイナスに作用する。

中国のペントアップ需要の顕在化で、恐らくQ223は堅調な推移になる金属が多いと考えるが、欧米の政策金利高止まりが下期に掛けて信用市場の収縮をもたらすと予想されるため、景気のパスは昨年から想定しているパスに復帰し、価格にも下押し圧力が掛りやすい。

今のところ、今回の金融危機がシステミックリスクとなるケースはリスクシナリオと位置づけている。しかし、景気が減速する中で米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られる。

4月6日付けのMRA's Eyeでも指摘しているが、米国債のデフォルトが意識される中では、リスク回避の動きは強まり、その状況でもドル高が進行するため非鉄金属価格の下押し要因となりやすい。

景気底入れのタイミングの判断は難しいが、FRBは政策金利を高止まりさせる見通しであり、Q124、場合によるとQ224にずれ込む可能性が出てきた。それまでは、中国のペントアップ需要の顕在化があっても頭重いのではないか。

直近のCOTレポートは全ての非鉄金属の買越しポジションが増加、ニッケルを除く全ての金属は「ロング増加・ショート減少」の強気ポジションに転じている。

ニッケルはロング・ショートとも減少したが、ショートの解消圧力の方が強いため、結局強気ポジションに。このコラムで指摘した様に、金融危機の一巡に伴うポジション解消の動きが起きたと考えられる。

3月の中国製造業PMIは51.9(市場予想51.6、前月 52.6)と市場予想、前月とも上回り、中国のペントアップ需要の顕在化が続いていることを確認する内容。

需要の指標である新規受注は減速(54.1→53.6)受注残も減少(49.3→48.9)、輸出向け新規受注も閾値の50は上回ったが、50.4(52.4)と大きく減速している。

また、投入価格も50.9(54.4)と急減速、卸価格も48.6(51.2)と減速している。このことは製造業に関しては需要面の回復が遅れていることを示唆している。

結局、ペントアップ需要の顕在化は続いているものの、1月・2月の勢いはなくなった見るべきではないか。

ただし、新規受注在庫レシオは完成品が0.924(0.935)、原材料が1.110(1.086)と完成品は余剰だが、原料が不足していることを示唆。渇水などの影響で国内生産が影響を受けていると見られ、短期的にはペントアップ需要と相まって、非鉄金属を含む工業金属価格を押し上げるだろう。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

1-2月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲9.2%の88万トン(12月+14.6%の51万4,049トン)と前年比の伸びが減速した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.3%の464万トン(12月+2.1%の210万3,029トン)と過去5年の最高水準で推移している。

1-2月の中国の精錬銅生産は+4.4%の194万5,000トン(12月+▲0.1%の96万2,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は1-2月が前年比+5.8%の282万4,000トン(12月 前年比▲4.8%の147万6,000トン)と伸びが加速した。

2月の銅スクラップの輸入は前年比+58.3%の17万3,825トン(前月▲20.3%の12万9,756トン)、年初来累計でも前年比+11.3%となっており、リオープンの動きで在庫積増しの動きが強まっていると見られる。

本日は、中国のペントアップ需要の顕在化の遅れやIMFの経済見通しの下方修正に象徴される景気減速観測が価格を押し下げるが、米国時間に発表の米CPIが減速見込みであり、ドル安進行で価格は下支えされると見る。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は下落した。

不動産セクターの回復の鈍さと当局の監視強化を受けて鉄鋼製品価格は下落しているが、鉄鋼原料は在庫積増しの動きで上昇を続けている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲45万1,000トンの1,568万4,000トン(過去5年平均 1,972万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジを下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲10万トンの1億3,690万トン(過去5年平均 1億4,441万6,000トン)、在庫日数は31.5日(±0.0日、過去5年平均36.4日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状況。

原料炭在庫は▲18万トンの201万トン(117万トン)、在庫日数は▲1.0日の8.4日(過去5年平均 8.5日)と在庫水準はまだ高いものの、日数ベースでは過去5年へ金を下回り、需給はタイトになってきた。

3月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.4(前月50.1)と減速した。しかし、新規受注は50.2(48.9)と増加しているため景況感の悪化というよりは完成品在庫(前月比▲11.7)、原材料在庫(▲13.2)の減少がヘッドラインの数値を下振れさせたと考えるのが妥当。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは1.13(0.87)と大幅に上昇、新規受注原材料レシオも1.31(0.95)と大幅に上昇しており、鉄鋼製品・鉄鋼原料の需給がタイトであることを示唆している。

しかし、輸出向け新規受注は42.1(49.8)と急減速しており、今回の需要が国内の需要(ペントアップ需要+地方政府財政を何とかしなければならない中での不動産市場のテコ入れ)に因るものと考えられ、中国の財政状況と、「更なる不動産バブルの発生を容認できるのか」という視点から考えれば、持続可能ではないとみている。

とはいえ、中国の建設業PMIは65.6(60.2)と統計が確認可能な2012年5月以降の最高水準となっており、しばらくはこの建設セクターの戻り需要が鉄鋼製品・鉄鋼原料需給をタイト化させ、価格を高止まりさせると考える。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲44.1%の123万トン(12月▲30.0%の69万9,620トン)と大幅に減速した。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+48.1%の1,219万トン(+7.4%の540万1,000トン)と高い水準を維持している。

2月の中国粗鋼生産は前年比+6.9%の8,010万トン(前月▲2.7%の7,950万トン)と回復している。

中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、例年よりも早く在庫は減少している。中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、中国当局の介入観測や、鉄鋼製品在庫低下に伴う在庫積増しの動きで結局、現在の水準を維持するものと予想。

◆貴金属

昨日の金価格は再び上昇した。米景気の先行き懸念を背景としたドル安が進行したこと、原油価格上昇に伴う実質金利の低下が価格を押し上げた。

株価は米利上げ打ち止め期待を受けて堅調だったため、銀やPGMの価格も上昇している。

足下、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇している。金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、

1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めたこと2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念4.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念

あたりだろう。基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

仮にこの在庫積増しがなければ現在の価格は1,800ドル程度、と言うことになる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

しかし、リスク回避の安全資産需要の増加が見込まれること、(安全資産ではないが)G7諸国がマネーロンダリングや、金融機関の新たなリスクとなっている仮想通貨を規制・廃止にする方針であることを考えると、弊社が想定していた1,600ドル台への下落は難しくなった。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。

現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。

本日は、米国時間に発表予定のCPIが減速の見込みであり、ドル安が進行することが予想されるため、貴金属も堅調な推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇後下落した。原油価格の上昇とドル安進行が価格を押し上げたが、米需給報告で在庫見通しが上方修正されたことを受けて引けに掛けて水準を切下げる流れとなった。

なお、豪州は中国との間の大麦の貿易紛争を解決する方向で合意したと伝えられた。景気が減速してくる中で、どちらの国も景気を優先せざるを得なくなったということだろう。

昨日発表の米需給報告は以下の通り。

・4月米単収見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 173.3Bu/エーカー(NA、173.3Bu/エーカー)大豆 49.5Bu/エーカー(NA、49.5)小麦 46.5Bu/エーカー(NA、46.5)

・4月米生産見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 137億3,000万Bu(NA、137億3,000万Bu) 新穀 1億2,500万Bu(1億2,598万Bu、1億2,500万Bu)大豆 42億7,600万Bu(NA、42億7,600万Bu) 新穀 1億5,400万Bu(1億5,351万Bu、1億5,300万Bu)小麦 16億5,000万Bu(NA、16億5,000万Bu)

・4月米輸出見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 18億5,000万Bu(NA、19億2,500万Bu)大豆 20億1,500万Bu(NA、20億1,500万Bu)小麦 7億7,500万Bu(NA、7億7,500万Bu)

・4月米在庫見通し 実績(市場予想/前月)トウモロコシ 13億4,200万Bu(13億3,228万Bu、13億4,200万Bu)大豆 2億1,000万Bu(1億9,938万Bu、2億1,000万Bu)小麦 5億9,800万Bu(5億7,652万Bu、5億6,800万Bu)

本日は、米CPIが減速見通しでありドル安基調が予想されることから、底堅い推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。


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