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米雇用統計を受けたドル高で総じて軟調
  • MRA商品市場レポート

2023年4月11日 第2431号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米雇用統計を受けたドル高で総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は自国通貨建て商品価格が上昇し、ドル建て資産価格は総じて水準を切下げる展開となった。

先週末の米雇用統計が「景気の減速とインフレの継続」を示唆する内容だったため、弊社の見通しと同様の展開となった。市場は需給ファンダメンタルズを意識した展開が続いていたが、再び金融政策動向に注目が集まっている状況。

大きな視点で見た場合、今年は景気が減速する見通しであるため多くの景気循環系商品価格は軟調な推移になりやすい。結局の所「どのタイミングで価格が底入れするか、景気が底入れするか」が恐らく落としの市場を占う上では重要になってくる。

その場合、利下げのタイミングが重要にあるが、安直な利下げは市場の期待を必要以上に醸成するため、インフレ抑制が主な命題であるFRBもECBもそれを匂わせる発言派しないのではないか。

となると、現在、まだインフレが続いていることを考えると、金融引締め継続観測を受けて軟調な推移になる商品が目立つと考えられる。

【本日の見通し】

本日は、需給ファンダメンタルズを考える上で非常に重要な、IMFの経済見通しが発表される。恐らく2023年に関しては弱気、2024年に関しては強気な内容になるというのが一般的な見方だろう。

しかし、IMFは前回の見通しで2022年に新興国(中国)は既に景気が底入れしている、という強気な見方に転じている。

IMFの見通しはどのような場合でも非常に強気になる傾向が強いため、場合によると今回も見通しが上方修正される可能性は否定できない。

多くの市場参加者が需要見通しの前提にIMFの見通しを用いていることから、常識的な判断以上に見通しが上方修正されるリスクは小さくないと考えられる。

【昨日のトピックス】

昨日、日銀の新総裁である植田氏が就任会見を行った。会見ではYCCや低金利政策を継続する姿勢を示し、YCC解除を期待していた市場にはサプライズとなった。

しかし、基本的には「これから過去の政策の検証を行う」スタンスであると考えられる為。YCC解除があるとするならばやはり今月の政策決定会合になるのではないか。

黒田日銀の間にYCCの実効性に関する評価は「自分の政策を自己肯定するために」批判的な評価を行っていない。それは第三者でなければできないことであるのもまた事実であり、結局、それを経なければ政策の変更は難しいだろう。

しかし、異次元の政策を取り続けた黒田日銀の方針を直ちに変更することは大きなリスクを伴うため、安直に解除を示唆した場合、市場がこれを先行して織り込んでしまい、政策の手足を縛られてしまう可能性が有るため、このような発言をしたというのが妥当ではないか。

いずれにせよ、異次元の政策を終了させることは容易ではない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。週末の雇用統計を受けてドル高が進行したことが、統計が市場予想よりも強かったことに伴う、需要増加期待を上回った。

恐らく今後は、米国の「市場予想よりも強いが、前月よりは悪い統計」が続けば価格は下落し、「市場予想、前月よりも強い統計」が続けば価格は上昇すると考えられるが、恐らく前者となる可能性が高いとみている。

弊社は原油価格は2024年に掛けて上昇するとみているが、見通しの差は、1.景気底入れのタイミング、2.米金融緩和の動向、によって発生している。しかし、下期に掛けてノンバンクも含めた金融機関の経営環境の悪化、それに伴う信用収縮の懸念を指摘する向きも多いため、政策の変更がなければ、回復は2024年にずれ込む可能性が高いとみている。

仮に早期に利下げが行われれば、ファイナンシャルな面で価格が押し上げられるため、見通しの上振れリスク(価格上昇が早期に発生)となる。

現時点で主要なリサーチハウスの中で、弊社の見通しが最も弱気な見通しとなっている。一方で市場コンセンサスは非常に強気で、Q423のBrent平均価格は90ドル、最も高いところで110ドルが予想されている(弊社は78.67ドル)。

直近のWTI投機筋のポジションは3月28日時点でWTIがロングが前週比▲13,687枚、ショートが▲40,415枚と期末を控えたポジション解消が進んだ。

Brentは3月28日付けのCOTレポートで、ロングが▲2,932枚と減少、ショートは+5,886枚と増加。

ファンド筋は基本、受け渡すべき現物を保有しないため、これらのショートポジションはいずれかのタイミング(相場の反転、四半期末)で買い戻しが入り、価格を一時的に押し上げる可能性が高いと指摘してきたが、OPECプラスの自主減産がその契機となった。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的には現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、IMFの景気見通しが下方修正される可能性が高いため、軟調推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は欧州市場が休場だった。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

足下のガス在庫の水準は高いが、ロシア産ガスの供給の完全回復は現状あり得ないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開。ただし安定稼働になるかどうかは半年程度、稼働状況を確認する必要がある。

フランスではLNGの受入ターミナルがストライキで停止。パイプライン渡し価格の上昇要因となるが、スポットのLNGカーゴ価格の下押し要因となる。

ナイジェリア北部ではイスラム過激派勢力と政府の対立も続いているうえ、物価高騰、新紙幣導入による混乱が、国内情勢不安に拍車を掛けている状況。供給はしばらく不安定な状態が続こう。

3.4.は顕在化している。

5.はしばらく「凪」のシーズンに入る。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生

LNGのタンカーレートはスエズ以東が横這い、以西が低下している。季節的に欧州は需要が減少、アジア太平洋は夏場に向けた調達(日本は在庫の水準が高くない)がタンカーレートを高止まりさせていると考えられる。

しかし、例年と異なりロシアの供給が事実上停止しているため、北欧は不需要期であるにも関わらず、春先から夏にかけてもLNG調達が必要になることから、タンカーレートの水準は昨年よりも高い。

米天然ガス価格は上昇。割安感からの買いが入った。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は欧州市場が休場。

JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが穏やかなシーズンに突入していることもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。

2月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+0.9%の866万トン(1月▲17.8%の927万トン)と前年比で増加したが、1-2月で見ると、▲9.7%と低迷している。

2月のLNG輸入は前年比+7.1%の521万1,000トン(前月▲24.4%の590万8,000トン)と1月の春節時よりも回復した。

2月のパイプラインベースの輸入は前年比▲7.1%の345万トン(前月▲3.27%の336万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。ロシアからの輸入は増加したが、ウズベキスタン・トルクメニスタンからの輸入が減少した。

1-2月の中国の天然ガス生産は前年比+7.0%の2,926万5,000トン(12月+5.7%の1,500万トン)と増加している。

2月の中国の電力消費量は前年比+11.5%の6,950億kwh(12月▲4.6%の7,784億kwh)と回復したものの、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はない。しかし、付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくない。

この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

4月2日時点の日本の発電用LNG在庫は240万トン(前年同月末196万トン、2018~2022年平均2,353万9,000トン)と過去5年平均を上回り、在庫は足りている状況。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日は、ピークシーズンの終了と景気への懸念から現在の低水準を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は欧州市場が休場。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが説明可能なレベルと水準が20ドル切り上がっている。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)で有ることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を切下げるとみているが、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

実際、豪州炭の週間輸出動向を見ると、日本と中国の輸入量が増加し始めており、夏場に向けた動きが出始めたと考えられる。

2月の中国の石炭輸入は前年比+159.8%の2,917万トン(前月+30.3%の3,148万トン)と減速。リオープンの遅れが影響した。

石炭輸入はモンゴルからの輸入増加が顕著であり、ロシアからの輸入も高い水準を維持している今後はカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

1-2月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不要になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、ピークシーズンの終了と世界的な景気減速懸念を背景とするガス価格の下落と、中国の豪州炭輸入再開を受けて現状水準でもみ合うものと考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は欧州市場が休場。

中国のペントアップ需要の顕在化で、恐らくQ223は堅調な推移になる金属が多いと考えるが、欧米の政策金利高止まりが下期に掛けて信用市場の収縮をもたらすと予想されるため、景気のパスは昨年から想定しているパスに復帰し、価格にも下押し圧力が掛りやすい。

今のところ、今回の金融危機がシステミックリスクとなるケースはリスクシナリオと位置づけている。しかし、景気が減速する中で米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られる。

4月6日付けのMRA's Eyeでも指摘しているが、米国債のデフォルトが意識される中では、リスク回避の動きは強まり、その状況でもドル高が進行するため非鉄金属価格の下押し要因となりやすい。

直近のCOTレポートは全ての非鉄金属の買越しポジションが増加、ニッケルを除く全ての金属は「ロング増加・ショート減少」の強気ポジションに転じている。

ニッケルはロング・ショートとも減少したが、ショートの解消圧力の方が強いため、結局強気ポジションに。このコラムで指摘した様に、金融危機の一巡に伴うポジション解消の動きが起きたと考えられる。

3月の中国製造業PMIは51.9(市場予想51.6、前月 52.6)と市場予想、前月とも上回り、中国のペントアップ需要の顕在化が続いていることを確認する内容。

需要の指標である新規受注は減速(54.1→53.6)受注残も減少(49.3→48.9)、輸出向け新規受注も閾値の50は上回ったが、50.4(52.4)と大きく減速している。

また、投入価格も50.9(54.4)と急減速、卸価格も48.6(51.2)と減速している。このことは製造業に関しては需要面の回復が遅れていることを示唆している。

結局、ペントアップ需要の顕在化は続いているものの、1月・2月の勢いはなくなった見るべきではないか。

ただし、新規受注在庫レシオは完成品が0.924(0.935)、原材料が1.110(1.086)と完成品は余剰だが、原料が不足していることを示唆。渇水などの影響で国内生産が影響を受けていると見られ、短期的にはペントアップ需要と相まって、非鉄金属を含む工業金属価格を押し上げるだろう。

ペルーで発生した暴動は沈静化の兆しを見せており、銅の生産障害は徐々に取り除かれている。Glencoreはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを見せ、MMGも銅の輸送再開が見込まれている。

懸念していた米国の景気が過熱するリスクは、欧米金融危機問題を受けた信用不安が意識され、一方で、その信用不安が「個別事案」と整理できる状況になりつつあることから、景気は循環的な減速パスに戻ったと考えられる。

ただし、政策金利高止まりが続く以上、類似の事象が発生するリスクは小さく無い。

景気底入れのタイミングの判断は難しいが、FRBは政策金利を高止まりさせる見通しであり、Q124、場合によるとQ224にずれ込む可能性が出てきた。それまでは、中国のペントアップ需要の顕在化があっても頭重いのではないか。

同時に、銀行救済のためにFRBのバランスシートは拡大しており、下落余地も限定されると予想される。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

1-2月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲9.2%の88万トン(12月+14.6%の51万4,049トン)と前年比の伸びが減速した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.3%の464万トン(12月+2.1%の210万3,029トン)と過去5年の最高水準で推移している。

1-2月の中国の精錬銅生産は+4.4%の194万5,000トン(12月+▲0.1%の96万2,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は1-2月が前年比+5.8%の282万4,000トン(12月 前年比▲4.8%の147万6,000トン)と伸びが加速した。

2月の銅スクラップの輸入は前年比+58.3%の17万3,825トン(前月▲20.3%の12万9,756トン)、年初来累計でも前年比+11.3%となっており、リオープンの動きで在庫積増しの動きが強まっていると見られる。

本日は、欧米主要市場が休場であるため動意薄く、オープンしている市場は現状水準を維持の公算。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

不動産セクターの回復の鈍さと当局の監視強化を受けて鉄鋼製品価格は下落しているが、鉄鋼原料は在庫積増しの動きで上昇した。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲45万1,000トンの1,568万4,000トン(過去5年平均 1,972万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジを下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲10万トンの1億3,690万トン(過去5年平均 1億4,441万6,000トン)、在庫日数は31.5日(±0.0日、過去5年平均36.4日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状況。

原料炭在庫は▲18万トンの201万トン(117万トン)、在庫日数は▲1.0日の8.4日(過去5年平均 8.5日)と在庫水準はまだ高いものの、日数ベースでは過去5年へ金を下回り、需給はタイトになってきた。

3月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.4(前月50.1)と減速した。しかし、新規受注は50.2(48.9)と増加しているため景況感の悪化というよりは完成品在庫(前月比▲11.7)、原材料在庫(▲13.2)の減少がヘッドラインの数値を下振れさせたと考えるのが妥当。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは1.13(0.87)と大幅に上昇、新規受注原材料レシオも1.31(0.95)と大幅に上昇しており、鉄鋼製品・鉄鋼原料の需給がタイトであることを示唆している。

しかし、輸出向け新規受注は42.1(49.8)と急減速しており、今回の需要が国内の需要(ペントアップ需要+地方政府財政を何とかしなければならない中での不動産市場のテコ入れ)に因るものと考えられ、中国の財政状況と、「更なる不動産バブルの発生を容認できるのか」という視点から考えれば、持続可能ではないとみている。

とはいえ、中国の建設業PMIは65.6(60.2)と統計が確認可能な2012年5月以降の最高水準となっており、しばらくはこの建設セクターの戻り需要が鉄鋼製品・鉄鋼原料需給をタイト化させ、価格を高止まりさせると考える。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲44.1%の123万トン(12月▲30.0%の69万9,620トン)と大幅に減速した。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+48.1%の1,219万トン(+7.4%の540万1,000トン)と高い水準を維持している。

2月の中国粗鋼生産は前年比+6.9%の8,010万トン(前月▲2.7%の7,950万トン)と回復している。

中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、例年よりも早く在庫は減少している。中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、中国当局の介入観測や、原油価格高騰による金融引締め再加速懸念を背景に水準を切下げる展開を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は下落。米雇用統計を受けた金融引締め観測と原油安を背景に、実質金利に上昇圧力が掛ったことが背景。金価格の下落を受けて、銀、PGMとも水準を切下げた。

足下、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇している。金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、

1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めたこと2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念4.米国の債務上限問題を受けた格下げないしはデフォルト懸念

あたりだろう。基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

仮にこの在庫積増しがなければ現在の価格は1,800ドル程度、と言うことになる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

しかし、リスク回避の安全資産需要の増加が見込まれること、(安全資産ではないが)G7諸国がマネーロンダリングや、金融機関の新たなリスクとなっている仮想通貨を規制・廃止にする方針であることを考えると、弊社が想定していた1,600ドル台への下落は難しくなった。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。

現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。

本日も、米金融引締め観測が価格を下押しするが、金融引締め下での信用リスクの高まりを意識したリスク・プレミアムの上昇で金価格は高値を維持、その他の貴金属は株が堅調に推移していることから買い戻しで上昇と予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシと小麦が上昇。ロシアのラブロフ外相が、ロシアの穀物と肥料の輸出に関する障害が、現在の60日の延長期間中に解消されない場合、ウクライナとの輸出協定を破棄する可能性がある、と指摘したことが材料となった。

大豆はドル高が価格を下押し。

本日は、基本的には異常気象(ラニーニャ現象)の終了とドル高で軟調も、ロシアからの供給不安などを材料に現在の水準を維持の公算。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「原油価格は年末に向けて調整~残る中東有事のリスク」

原油価格は欧米の金融機関の経営問題を背景に下落、その後、80ドルを下回るあたりから下げが加速した。プットオプションの建玉が積み上がったところが攻防ラインとなり、ここを下抜けたことが大きかった。

オプションの売り手はプットオプションの行使価格以上に価格が下落した場合、損失を回避するために先物に売りを入れていわゆるデルタ・ヘッジを行う。

コールオプションが積み上がっていた場合、この水準を上抜けするとオプションの売り手は逆に先物に買いを入れる必要が出てくるため、価格が高騰することが多い。

今回、OPECプラスは減産枠を維持しつつ、「自主減産」を決定した。これまで年内の追加減産はないと繰り返し主張していたため、この減産はサプライズとなり、オプションの権利行使と相まって大幅な上昇となった。この間にチャート上の重要なポイントを上抜けしたため、しばらく高い水準での推移となりやすい。

しかし、中長期的な見通しに関しては、弊社はDOEの推計しているOECD在庫の水準を参考にすると、2023年・2024年の原油価格はこれからさらに低下が見込まれている。

エネルギー価格を占う上では最大消費国である米国の需要動向が重要になるが、直近の米週間石油統計では需要の疑似的な指標である出荷は過去5年平均(2020年を除く5年、直近5年とも)を下回った状態だ。

1.原油価格下落も、ガソリン・ディーゼルオイルともまだ同じ時期の過去5年最高水準に近い水準で推移していることから、景気減速下で徐々に「レーショニング」が意識され始めていること、2.純粋に景気の減速が始まっていること、3.1.2.の両要因が背景と考えられる。

ウクライナ危機以降、米国の原油・石油製品輸出は増加しており、季節的にも過去5年レンジを大きく上回って推移している。しかしこれは構造変化による輸出の増加であるため、景気動向とは余り関係がなく、むしろ、欧州の景気減速を考えると、今後、輸出も鈍化することが想定される。

原油価格の前年比上昇率、原油価格、ISM製造業指数などの景況感指数の間には相関性があり、原油価格(絶対価格水準)は概ね景況感から6ヵ月程度、前年比上昇率は4ヵ月程度の時間差を以て変動することが過去データを用いた分析では確認されている。

いずれの場合もISM製造業指数の方が先行しているため、景況感がピークを迎えた後に下落、底入れした後に上昇する傾向が強い。

ISM製造業指数の過去の水準と現在の水準を比較すると、リーマン・ショック、コロナ・ショックが発生した時を除けば、47近辺が「底」となっているケースが多く、先日発表されたISM製造業指数は46.0まで低下しているため、水準のみを考えればそろそろ底入れしてもおかしくないが、現実的にはまだ底入れは先になるだろう。

ドル指数と原油価格の動向を見ると、一時、「ドル高・原油高」という、米国の景気が良好な時に発生する値動きになりかかった。

このため、FRBも利上げを加速せざるを得ないかとの見方が強まったが、この見方が強まったことで金融危機と景況感悪化ヘの意識が強まり「従来から弊社が想定していた年後半に向けての景気減速と原油価格の調整」のパスに戻ったと考えられる(しばらくドル安・原油安に)。

以上を勘案すると、OPECプラスの減産もあってしばらく価格は上昇する可能性があるが、景気の減速で年後半から来年に掛けて原油価格は下落すると予想される。

ただし、OPECプラスの減産の影響で3月末にリリースした見通しは多少上方修正せざるを得ない。「仮にOPECプラスが8割程度の自主減産を遵守するならばBrentは3月末予想比+1.4ドルの80.41ドル、WTIは+1.6ドル上回る74.46ドルになると予想する。

2024年の弊社予想は、2024年はQ224頃に底入れし、循環的な回復基調に入ると予想されることから2023年からの景気回復で価格は上昇するとみている。

リスクとしては、下落リスクが現在の価格上昇を受けてレーショニングが発生、金融政策もタカ派的にならざるを得ず景気減速し、弊社の想定以上に下落する場合。

上昇リスクはさらにOPECプラスが減産を行う場合と、中東有事発生だろう。中東ではトランプ政権が一方的に核合意を離脱して以降、加速度的に核開発が進んでいる。そして今回イランとサウジアラビアは国交を回復した。イランが核兵器を保有した場合、サウジアラビアも核兵器を保有、UAEなども保有する可能性がある。ムほぼ公然の秘密だがハンマド皇太子パキスタンに対して核開発の援助を行ってきたからだ。

これまでサウジアラビアとの和平を進めてきたイスラエルは、極右連立政権が誕生して以降、パレスチナへの異常な弾圧を続けておりイランのみならず、アラブ諸国の反感を買っている。今回の一連のサウジ・イランの動きを受けてイスラエルはこの地域で孤立してしまった(自業自得であるが)。この状況を打破するために、域内で軍事行動を起こす可能性はゼロではない(ただし、米国がこれに協力するとは思えない)。オバマ政権時代から加速した長きにわたる中東政策の失策の影響が顕在化するリスクが高まっていることは意識する必要が出てきた。


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