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貴金属セクター堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年4月5日 第2427号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「貴金属セクター堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、その他農産品や貴金属セクターが堅調な推移となったが、その他の商品は総じて軟調な推移となった。

OPECプラスのサプライズ減産を受けて景気が減速したとしても、金融引締めをせざるを得ないのでは、との見方が原油価格の上昇にも関わらず期待インフレ率を押し下げたため、インフレ系資産価格は下落した。

需要の回復に伴う原油価格上昇であれば、期待インフレ率の上昇要因となるが、今回は供給面の影響で原油価格が上昇したため、むしろ景気への懸念から期待インフレ率は低下している。多くの商品はインフレ動向に価格が左右されやすいことから、しばらくは原油価格の変動を起点とする金融政策・インフレ動向が価格を左右することになるだろう。

弊社は景気減速の影響が大きいため、価格はじりじりと水準を切下げるとみているが、原油市場の見方は大手投資銀行は年末に向けて100ドルを目指す展開を予想しているところが多い。

仮にそうなった場合、景気が減速したとしても金融引締めを止める訳には行かなくなるため、レーショニング(価格上昇が需要を減じる)のリスクを意識する必要があるのではなかろうか。

【本日の見通し】

本日は、米求人件数の減少を受けたドル安バイアスが価格を押し上げると考える。しかし同時に、原油価格の上昇がインフレを助長することから金融引締めは継続せざるを得ないと考えられ、上昇余地も限られよう。

仮にこのまま原油や非鉄金属価格が上昇した場合、景気減速下での価格上昇となるため、レーショニングが起きる可能性は高いとみている。中期的な見通しは下向きである。

本日予定されている統計の発表やイベントは以下の通り。ISM非製造業指数は減速ながらも高い水準を維持する見通しであり、景気循環系商品価格の上昇要因に。

なお、一巡してはいるのだが、UBSの年次株主総会の動向にも注目したい。

・台湾総統米下院マッカーシー議長と会談。

・3月米ADP雇用統計 市場予想 前月比+21万人(前月+24.2万人)

・3月米ISM非製造業指数 54.4(55.1)

【昨日のトピックス】

昨日発表されたJOLT求人は、993万1,000人(市場予想1,050万人、前月1,056万3,000人)と市場予想、前月とも下回った。

雇用市場はタイト化しており、インフレの沈静化に向けた取組みの足かせとなっているが雇用市場の過熱が徐々に沈静化していることを確認する内容となった。

統計の内訳を細かく見ると、最も求人数が多いのは専門・ビジネスサービス(会計士や弁護士、コンサルなど)の求人が182万3,000人で前月の210万1,000人から減少、次いで多いのがヘルスケアで168万4,000人(183万4,000人)、宿泊・飲食127万5,000人(140万人)と、雇用者のシェアが大きな業種の全ての求人数が減少している。

しかし、建設業は41万2,000人(前月28万3,000人、前年42万1,000人)とむしろ増加している。CPIの中での帰属家賃が上昇を続けていることから、まだ住宅セクターの加熱は続いているとみられる。

より詳しくは金曜日の雇用統計の発表を待ちたいが、今回のことは、米国の利上げがそろそろ終盤に差し掛かっているものの、物価の高止まりが続く可能性が高いため、FRBが早期に利下げに踏み切る可能性はさほど高くないことを意識させる内容だったのではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は小幅に上昇した。米経済統計の減速を受けたドル安進行が価格を押し上げる一方、イラクのクルド人自治区からの原油輸出45万バレル相当が再開したことが上昇を抑制した。

なお、イラクのクルド人自治区からの原油輸出再開で、5月からの減産は▲110万バレル、7月以降は▲160万バレルの追加減産となる。

しかし、中期的に景気の減速が需要を減じて価格が下落する、という流れは大きく変更する必要はないと考えている。実際、景気が減速する局面で原油価格が高騰するならば、レーショニングが起きる可能性も高まる。

弊社は年後半に景気が底入れして原油価格もそのタイミングから上昇、と見ていたがQ124頃まで、場合によるとQ224まで景気底入れのタイミングがずれ込む可能性が出てきた。

仮に早期に利下げが行われれば、ファイナンシャルな面で価格が押し上げられるため、見通しの上振れリスクとなる。しかし、長短金利が逆転して信用市場のリスクが意識され、かつ、まだインフレが沈静化していない状況を考えると、しばらくは金融政策動向は価格を下押しする方向に作用しやすい。

直近のWTI投機筋のポジションは3月28日時点でWTIがロングが前週比▲13,687枚、ショートが▲40,415枚と期末を控えたポジション解消が進んだ。

Brentは3月28日付けのCOTレポートで、ロングが▲2,932枚と減少、ショートは+5,886枚と増加。

ファンド筋は基本、受け渡すべき現物を保有しないため、これらのショート・ポジションはいずれかのタイミング(相場の反転、四半期末)で買い戻しが入り、価格を一時的に押し上げる可能性が高いと指摘してきたが、OPECプラスの自主減産がその契機となった。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス) Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦 上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合) Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合) Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落。欧米金融危機の影響もあり、景気底入れのタイミングはQ124~Q224に後ろ倒しした。

H224以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米ISM非製造業指数の鈍化見通しによるドル安や、米DOE石油統計で原油在庫が減少する見通し(▲1.6MB)であることなどから価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。

しかし、サプライズによるショート・ポジションの買い戻しは一巡したとみるべきであり、景気減速に伴う需要減少の価格への影響が大きいと考えられるため、上昇余地も限定されるだろう。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。OPECプラス減産のサプライズによる価格上昇の影響が一巡、景気減速やピークシーズンの終了に伴う需要減少観測が価格を押し下げた。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

足下のガス在庫の水準は高いが、ロシア産ガスの供給の完全回復は現状あり得ないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開。ただし安定稼働になるかどうかは半年程度、稼働状況を確認する必要がある。

ナイジェリア北部ではイスラム過激派勢力と政府の対立も続いているうえ、物価高騰、新紙幣導入による混乱が、国内情勢不安に拍車を掛けている状況。供給はしばらく不安定な状態が続こう。

3.4.は顕在化している。

5.はしばらく「凪」のシーズンに入る。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生

LNGのタンカーレートはスエズ以東が横這い、以西が低下した。季節的に需要が減少する時期に入ったため、と見られる。

しかし、例年と異なりロシアの供給が事実上停止しているため、北欧は不需要期であるにも関わらず、春先から夏にかけてもLNG調達が必要になることから、タンカーレートの水準は昨年よりも高い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格はほぼ変わらず。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物も下落。OPECプラスの自主減産の影響一巡で。

JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが穏やかなシーズンに突入していることもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。

2月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+0.9%の866万トン(1月▲17.8%の927万トン)と前年比で増加したが、1-2月で見ると、▲9.7%と低迷している。

2月のLNG輸入は前年比+7.1%の521万1,000トン(前月▲24.4%の590万8,000トン)と1月の春節時よりも回復した。

2月のパイプラインベースの輸入は前年比▲7.1%の345万トン(前月▲3.27%の336万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。ロシアからの輸入は増加したが、ウズベキスタン・トルクメニスタンからの輸入が減少した。

1-2月の中国の天然ガス生産は前年比+7.0%の2,926万5,000トン(12月+5.7%の1,500万トン)と増加している。

2月の中国の電力消費量は前年比+11.5%の6,950億kwh(12月▲4.6%の7,784億kwh)と回復したものの、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はない。しかし、付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくない。

この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

3月26日時点の日本の発電用LNG在庫は229万トン(前年同月末163万トン、2018~2022年平均2,489万9,000トン)と過去5年平均を下回り、在庫は不足。ただしピークシーズンではないため問題がある水準ではない。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日は、ピークシーズンの終了と、OPECプラス減産の影響一巡からやや軟調な推移を予想。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は下落した。OPECプラスの減産によるエネルギーセクター上昇が一巡したことで、戻り売り圧力が強まったため。API2石炭先物価格もほぼパラレルに低下している。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが説明可能なレベルと水準が20ドル切り上がっている。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)で有ることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を切下げるとみているが、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

実際、豪州炭の週間輸出動向を見ると、日本と中国の輸入量が増加し始めており、夏場に向けた動きが出始めたと考えられる。

2月の中国の石炭輸入は前年比+159.8%の2,917万トン(前月+30.3%の3,148万トン)と減速。リオープンの遅れが影響した。

石炭輸入はモンゴルからの輸入増加が顕著であり、ロシアからの輸入も高い水準を維持している今後はカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

1-2月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不要になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

本日は、OPECプラスのサプライズ減産の影響一巡で軟調も、夏場を睨んだ輸入再開の動きが見られること、中国の豪州炭輸入再開から底堅い推移に。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。原油価格の下落や、景気減速でも金融引締めを継続しなければならないのでは、との見方から景気・需要への懸念が強まり水準を切下げる動きに。

中国のペントアップ需要の顕在化が価格を押し上げているが、金融市場・欧米市場の混乱により、欧米の景気は年後半に向けて減速するという、これまで想定していたパスに復帰が見込まれることから、中期的には景気の循環で下落すると予想される。

今のところ、今回の金融危機がシステミックリスクとなるケースはリスクシナリオと位置づけている。しかし1.景気が減速する中で、2.米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られる。

直近のCOTレポートは全ての非鉄金属の買越しポジションが増加、ニッケルを除く全ての金属は「ロング増加・ショート減少」の強気ポジションに転じている。

ニッケルはロング・ショートとも減少したが、ショートの解消圧力の方が強いため、結局強気ポジションに。このコラムで指摘した様に、金融危機の一巡に伴うポジション解消の動きが起きたと考えられる。

3月の中国製造業PMIは51.9(市場予想51.6、前月 52.6)と市場予想、前月とも上回り、中国のペントアップ需要の顕在化が続いていることを確認する内容

需要の指標である新規受注は減速(54.1→53.6)受注残も減少(49.3→48.9)、輸出向け新規受注も閾値の50は上回ったが、50.4(52.4)と大きく減速している。

また、投入価格も50.9(54.4)と急減速、卸価格も48.6(51.2)と減速している。このことは製造業に関しては需要面の回復が遅れていることを示唆している。

結局、ペントアップ需要の顕在化は続いているものの、1月・2月の勢いはなくなった見るべきではないか。

ただし、新規受注在庫レシオは完成品が0.924(0.935)、原材料が1.110(1.086)と完成品は余剰だが、原料が不足していることを示唆。渇水などの影響で国内生産が影響を受けていると見られ、短期的にはペントアップ需要と相まって、非鉄金属を含む工業金属価格を押し上げるだろう。

ペルーで発生した暴動は沈静化の兆しを見せており、銅の生産障害は徐々に取り除かれている。Glencoreはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを見せ、MMGも銅の輸送再開が見込まれている。

懸念していた米国の景気が過熱するリスクは、欧米金融危機問題を受けた信用不安が意識され、一方で、その信用不安が「個別事案」と整理できる状況になりつつあることから、景気は循環的な減速パスに戻ったと考えられる。

ただし、政策金利高止まりが続く以上、類似の事象が発生するリスクは小さく無い。

景気底入れのタイミングの判断は難しいが、FRBは政策金利を高止まりさせる見通しであり、Q124、場合によるとQ224にずれ込む可能性が出てきた。それまでは、中国のペントアップ需要の顕在化があっても頭重いのではないか。

同時に、銀行救済のためにFRBのバランスシートは拡大しており、下落余地も限定されると予想される。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

1-2月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲9.2%の88万トン(12月+14.6%の51万4,049トン)と前年比の伸びが減速した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.3%の464万トン(12月+2.1%の210万3,029トン)と過去5年の最高水準で推移している。

1-2月の中国の精錬銅生産は+4.4%の194万5,000トン(12月+▲0.1%の96万2,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は1-2月が前年比+5.8%の282万4,000トン(12月 前年比▲4.8%の147万6,000トン)と伸びが加速した。

2月の銅スクラップの輸入は前年比+58.3%の17万3,825トン(前月▲20.3%の12万9,756トン)、年初来累計でも前年比+11.3%となっており、リオープンの動きで在庫積増しの動きが強まっていると見られる。

本日は、昨日の下落の反動と中国のペントアップ需要の顕在化期待でいったん上昇すると考える。しかし、原油価格の上昇による金融引締めの継続観測や、それに伴う景気への懸念から上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は続落した。

中国の豪雨の影響で現物市場での取引が広範にわたって停止したことが先物価格を下押しし、鉄鋼原料価格も下押しした。ただし、港湾在庫の水準の低さ(特に在庫日数ベース)が価格を下支えしている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲45万1,000トンの1,568万4,000トン(過去5年平均 1,972万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジを下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲10万トンの1億3,690万トン(過去5年平均 1億4,441万6,000トン)、在庫日数は31.5日(±0.0日、過去5年平均36.4日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状況。

原料炭在庫は▲18万トンの201万トン(117万トン)、在庫日数は▲1.0日の8.4日(過去5年平均 8.5日)と在庫水準はまだ高いものの、日数ベースでは過去5年へ金を下回り、需給はタイトになってきた。

3月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.4(前月50.1)と減速した。しかし、新規受注は50.2(48.9)と増加しているため景況感の悪化というよりは完成品在庫(前月比▲11.7)、原材料在庫(▲13.2)の減少がヘッドラインの数値を下振れさせたと考えるのが妥当。

鉄鋼製品の需給の指標となる新規受注完成品レシオは1.13(0.87)と大幅に上昇、新規受注原材料レシオも1.31(0.95)と大幅に上昇しており、鉄鋼製品・鉄鋼原料の需給がタイトであることを示唆している。

しかし、輸出向け新規受注は42.1(49.8)と急減速しており、今回の需要が国内の需要(ペントアップ需要+地方政府財政を何とかしなければならない中での不動産市場のテコ入れ)に因るものと考えられ、中国の財政状況と、「更なる不動産バブルの発生を容認できるのか」という視点から考えれば、持続可能ではないとみている。

とはいえ、中国の建設業PMIは65.6(60.2)と統計が確認可能な2012年5月以降の最高水準となっており、しばらくはこの建設セクターの戻り需要が鉄鋼製品・鉄鋼原料需給をタイト化させ、価格を高止まりさせると考える。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲44.1%の123万トン(12月▲30.0%の69万9,620トン)と大幅に減速した。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+48.1%の1,219万トン(+7.4%の540万1,000トン)と高い水準を維持している。

2月の中国粗鋼生産は前年比+6.9%の8,010万トン(前月▲2.7%の7,950万トン)と回復している。

中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、例年よりも早く在庫は減少している。中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、中国当局の介入観測や、原油価格高騰による金融引締め再加速懸念を背景に水準を切下げる展開。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。長期金利の低下による実質金利の低下と、リスクテイク再開のドル安進行が価格を押し上げ、2,000ドルを上回った。

銀価格も金価格の上昇を受けて大幅に上昇。金銀レシオも81倍まで低下している。PGMは金銀価格の上昇を受けていずれも水準を切り上げた。

足下、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇している。金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、

1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めたこと2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

あたりだろう。基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

仮にこの在庫積増しがなければ現在の価格は1,800ドル程度、と言うことになる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

しかし、リスク回避の安全資産需要の増加が見込まれること、(安全資産ではないが)G7諸国がマネーロンダリングや、金融機関の新たなリスクとなっている仮想通貨を規制・廃止にする方針であることを考えると、弊社が想定していた1,600ドル台への下落は難しくなった。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。

現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。

本日は、米ISM非製造業指数の鈍化が見込まれドル安圧力が強まると予想されることから、リスク・プレミアムの上昇で金価格は堅調、銀・プラチナも上昇。パラジウムは株の調整圧力の強まりで軟調推移か。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落。米週間輸出検証高がトウモロコシを除いて減少したことが価格を下押ししたが、金利低下を受けたドル安進行を受けて引けに掛けて下げ幅を削った。

また、OPECプラスのサプライズ減産の影響による金融引締め観測が、期待インフレ率を押し下げたことも価格を下押しした。

本日は、景気減速観測を背景としたドル安の進行と、原油価格の上昇を受けて堅調な推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するsカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。


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