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期末を控えて高安まちまち
  • MRA商品市場レポート

2023年3月30日 第2423号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「期末を控えて高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は高安まちまちとなった。銀行の経営危機問題が一巡する中で再び市場は物価動向に注目を始めているが、第一四半期があと2日とういこともあり、ポジション調整取引が主体だったと考えられる。

同様に四半期末を意識した決済資金の確保でドル高となったこともあり、引けに掛けては水準を切下げる商品が目立った。

銀行の経営問題は、SVB、CSとも各銀行固有の問題であり、FRBも結局QTの方針を曲げて実質的にバランスシートの拡大に動いていることから、目先、大きな問題にはならなさそうだ。

しかし、それで有るが故にインフレ抑制目的の利上げは継続の見通し(昨日の「昨日のトピックス」をご参照ください)であり、長短金利が逆ざやの状態は続くため金融機関の体力を削ぎ、融資が低迷するとみられることから年後半の信用収縮のリスクは小さくないと予想される。

また、米国の利上げが継続する中では外貨建て債務の多い新興国の財政問題も意識されるため、景気が底入れするまではリスク資産価格が下振れするリスクは小さくないと考えられる。

【本日の見通し】

本日は、四半期末ということ、市場の関心が物価動向・金融政策動向に移る中で、当局担当者の発言に振らされ、方向感に欠ける展開が予想される。

本日は、リッチモンド連銀、ボストン連銀、ミネアポリス連銀の相殺が講演を予定しており、銀行問題がいったん落ちついた状況の中での金融政策の方向性について手掛かりとなるような発言があるかどうかに注目している。

注目統計は、過去の統計ではあるが米GDP確定と米週間新規失業保険申請件数に注目している。

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 195千件(前週 191千件)・Q423米GDP 前期比年率 +2.7%(改定比±0.0%) 個人消費 +1.4%(±0.0%) 価格指数 +3.9%(±0.0%) コアPCE +4.3%(±0.0%)

【昨日のトピックス】

今日を含めて後2日でQ123が終了、日本企業は年度末を迎えることになる。言わずもがなだが2022年度はロシアの戦争の影響で資源価格が高騰・乱高下し、図らずも市場価格リスクをほとんどの企業が強く意識させられる結果となった。

この中で、価格リスクに対応するため、「価格転嫁」を行う企業が増加した。その実態に関して昨年末時点のアンケート結果を帝国データバンクが公表している。

価格転嫁は7割程度の企業で実施されているが、実際に転嫁できている比率は39.9%に止まっている。これは「100円の仕入価格の上昇のウチ、40円しか価格転嫁できず、残りの60円は企業の負担」になっていることを表している。

結局、この60円分は何らかの方法で対応する必要があるが、自主的にすぐ対応できる方法として、経費削減を選択した企業が6割に上った。

これは、1.納入業者の売上減少、2.場合によると従業員の給与(賞与)カット、などが該当するため、日本全体で見た場合、結局誰かが割を食う話になる。

また、価格転嫁が上手くいった企業のうち、価格転嫁が成功した要因に「原価を開示した交渉」が上げられていた。

しかし、逆に言えば「原価が下がれば価格は下がるのか」ということになるため、都度、かなりタフな交渉を買い手・売り手とも行わなければならなくなる。

もしそうなのであれば、市場で決定されている価格を売買の指標に用いればその負担やリスクは軽減される。また、先物の売買が可能な商品であれば、自社の判断で好きな時に値決めが可能だ。

しかし、市場価格そのものを使うと鞘が薄くなる、と考えるため採用をしていない企業は多い。しかし、原価を開示して交渉をしているのならば、市場で取引されている商品に関してはそちらを参照する価格体系に変更した方が負担は軽い。日経新聞のマーケット欄に開示されている価格など、市場で取引されている訳ではない指標が売買指標に用いられていることも多いが、市場で取引されている指標があるならばそちらを参照するべきだろう。

そもそも先物取引所はこうしたリスクを回避する目的で作られており、日本は世界に先駆けて堂島でコメの取引を始めた国である。今回の一連のイベントを契機に、今一度、国際指標、先物でヘッジが可能な価格体系への移行を検討すべき時期に来ているのではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。米ドルが期末の資金需要の高まりなどで上昇したこともあり、こちらも四半期末を控えたポジション調整的な売りに押された。

昨日発表された米石油統計で米国内の出荷が低迷していたが、構造的な欧州向けの輸出増加などを受けて原油・ガソリンの在庫は市場予想を上回る減少となった。ディスティレート在庫は増加。

FRBは年内、政策金利を高止まりさせる方向だが、銀行救済のための流動性供給でFRBのバランスシートは再び拡大している。政策金利はインフレ抑制で年内高止まりだが、この流動性供給が下落余地を限定させるのではないか。

OPECプラスは追加減産を見送る方針であり、ロシアの自主減産も想定よりも規模が実は大きくなかったことから「価格下落時のOPECプラスの価格防衛の意思」はそこまで強固なものではないことが確認された。

また、米国もSPRをこのタイミングで積み増ししない方針を明確にしている。

しかし、同じ域内のイラク北部のクルド自治政府からの原油(37万バレル/日)と、北部キルクーク油田(7万5,000バレル/日)からの原油輸出を「違法」とするトルコの主張を受けた国際仲裁裁判所の判決を受けて、原油輸出は停止している。

ロシアの▲50万バレルの減産、OPECプラスの▲200万バレルの減産にさらに▲50万バレルの減産が重なるため、価格の下支え要因となる。

弊社は年後半に景気が底入れして原油価格もそのタイミングから上昇、と見ていたがQ124頃まで、場合によるとQ224まで景気底入れのタイミングがずれ込む可能性が出てきた。

米当局の金融機関対策の状況にもよるが、見通しはそれに従って変更される見通し。

直近のWTI投機筋のポジションは3月21日時点でWTIがロングが前週比+8132枚、ショートが+22,691枚と新規ショートポジションが増加している。

Brentは3月21日付けのCOTレポートで、ロングが▲42,890枚と大幅に減少、しかしショートが+13,431枚も増え、こちらも新規にショートポジションが取られている。

ファンド筋は基本、受け渡すべき現物を保有しないため、これらのショートポジションはいずれかのタイミング(相場の反転、四半期末)で買い戻しが入り、価格を一時的に押し上げる可能性が高い。

さらに言えば、リーマン・ショックのような市場の機能不全を投機筋はまだ織り込んでいる訳ではない。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 2.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落。欧米金融危機の影響もあり、景気底入れのタイミングはQ124~Q224に後ろ倒しした。

H224以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、市場の注目が再び物価と金融政策に移る中、利上げ継続観測、期末要因を意識したドル高で軟調な推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小動き。ドイツとフランスでストライキが発生しているが、市場価格への影響はピークシーズンの終了もあり限定されている。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

足下のガス在庫の水準は高いが、ロシア産ガスの供給の完全回復は現状あり得ないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開。ただし安定稼働になるかどうかは半年程度、稼働状況を確認する必要がある。

ナイジェリアは2月25日に大統領選挙が行われたが、その結果を巡って混乱が見られている。

また北部ではイスラム過激派勢力と政府の対立も続いているうえ、物価高騰、新紙幣導入による混乱が、国内情勢不安に拍車を掛けている状況。供給はしばらく不安定な状態が続こう。

3.4.は顕在化している。

5.はしばらく「凪」のシーズンに入る。恐らく今年はエルニーニョ現象が発生

3月13-19日のLNGトレードは、輸出量が前週比+169万トンの908万トンとなった。スポット取引のシェアは21%(前週22%)に低下。

スポットカーゴは北欧とイタリア向けが▲20万トンの減少、その他の欧州は+60万トンの増加。日中台韓は韓国の輸入減少で▲30万トンの減少。

LNGのタンカーレートはスエズ以東が横這い、以西が低下した。季節的に需要が減少する時期に入ったため、と見られる。

しかし、例年と異なりロシアの供給が事実上停止しているため、北欧は不需要期であるにも関わらず、春先から夏にかけてもLNG調達が必要になることから、タンカーレートの水準は昨年よりも高い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は小動き。新規材料に乏しく。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物もほぼ変わらずだった。

JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが穏やかなシーズンに突入することもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。

2月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+0.9%の866万トン(1月▲17.8%の927万トン)と前年比で増加したが、1-2月で見ると、▲9.7%と低迷している。

2月のLNG輸入は前年比+7.1%の521万1,000トン(前月▲24.4%の590万8,000トン)と1月の春節時よりも回復した。

2月のパイプラインベースの輸入は前年比▲7.1%の345万トン(前月▲3.27%の336万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。ロシアからの輸入は増加したが、ウズベキスタン・トルクメニスタンからの輸入が減少した。

1-2月の中国の天然ガス生産は前年比+7.0%の2,926万5,000トン(12月+5.7%の1,500万トン)と増加している。

2月の中国の電力消費量は前年比+11.5%の6,950億kwh(12月▲4.6%の7,784億kwh)と回復したものの、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はない。しかし、付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくない。

この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

3月26日時点の日本の発電用LNG在庫は229万トン(前年同月末163万トン、2018~2022年平均2,489万9,000トン)と過去5年平均を下回り、在庫は不足。ただしピークシーズンではないため問題がある水準ではない。

ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持すると予想される。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

本日も、フランスのストライキ継続、ドイツでのストライキ発生、オランダでもストライキが予定されていることによる経済活動の停滞、エネルギー供給の停止といった強弱材料が混在する中、方向感に欠ける展開が続くと予想される。

ただし、ピークシーズンではないため大きな変動はないと見る。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は小動きだが、小幅に上昇、API2Coalも全ゾーン小幅に上昇した。

注意すべきは今年の7月以降のNEWC先物価格が200ドルを超えている点。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は150ドル、±1標準偏差で80~220ドル程度までが説明可能なレベル。

2023年~2024年は例年と同じ気象見通し(ということは昨冬が暖冬だったため、今冬は昨冬よりも寒い)で有ることを考えると、年後半に向けて価格上昇リスクは小さくないとみる。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を切下げるとみているが、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

2月の中国の石炭輸入は前年比+159.8%の2,917万トン(前月+30.3%の3,148万トン)と減速。リオープンの遅れが影響した。

石炭輸入はモンゴルからの輸入増加が顕著であり、ロシアからの輸入も高い水準を維持している今後はカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

1-2月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不要になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、一時250ドルに迫った期先の価格は160~180ドルに低下している。豪州炭の価格上昇や供給面の問題から、安価な石炭へのシフトが進んでいるためと考えられる。

これは構造的な需給緩和期待が高まっていることの証左、とも言えるだろう。

本日は、欧州のストライキが拡大する中で経済活動が停滞すること、一方でフランスからの電力供給に影響が出ており、代替燃料調達の需要も高まっていること、といった強弱材料が混在する中、オフシーズンでも有ることから結局現状水準を維持するとみる。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇後下落した。四半期末を控えた売りポジションの解消に伴う買い戻しが進んでいると考えられる一方、同様に四半期末を意識したドル資金確保の動きがドル高を誘発したことで、引けに掛けて水準を切下げる動きとなった。

足下、中国のペントアップ需要の顕在化が価格を押し上げているが、金融市場・欧米市場の混乱により、欧米の景気は年後半に向けて減速するという、これまで想定していたパスに復帰が見込まれることから、中期的には景気の循環で下落すると予想される。

今のところ、今回の金融危機がシステミックリスクとなるケースはリスクシナリオと位置づけている。しかし1.景気が減速する中で、2.米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られる。

直近のCOTレポートは亜鉛・ニッケル・スズがネット買越しポジションを縮小させたが、銅と鉛、アルミは買越し幅を拡大した。

個別に見ると、銅・鉛はロングの増加とショートの買い戻し、亜鉛・ニッケルはロング減少・ショート増加、アルミ・スズはロング・ショートとも増加したがアルミは買いが、スズは売りが上回った。

金融市場動向を敏感に受けやすいベンチマークの銅は、金融危機が一巡したことや期末を控えた買い戻しが優勢となった。流動性の大きなアルミはロング・ショートとも増加している。

今のところ市場が「機能不全になるリスク」をLME非鉄金属市場は意識していない。恐らく、4月に入ってからリオープン・ペントアップ需要の顕在化を意識した買いが入り、再び上昇することになろう。

2月の中国製造業PMIは52.6(市場予想 50.6、前月 50.1)と市場予想、前月とも上回り、中国のリオープンが始まっていることを確認する内容だった。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が1.069(1.078)、原材料が1.086(1.026)と比較的小幅な上昇に止まっており、先月から需給環境は大きく変わっていないことを示唆している。

規模別の製造業PMIを見てみると、大企業が53.7(52.3)、中堅企業が52.0(48.6)、中小企業が51.2(47.2)と全ての規模で回復、閾値の50を上回った。

今回の回復は政府のテコ入れ策とペントアップ需要の影響に因るものと考えられ、その持続性には疑問符が付くが足下、景況感が回復している可能性は高いといえる。

ペルーで発生した暴動は沈静化の兆しを見せており、銅の生産障害は徐々に取り除かれている。Glencoreはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを見せ、MMGも銅の輸送再開が見込まれている。

懸念していた米国の景気が過熱するリスクは、欧米金融危機問題を受けた信用不安が意識され、一方で、その信用不安が「個別事案」と整理できる状況になりつつあることから、景気は循環的な減速パスに戻ったと考えられる。

ただし、政策金利高止まりが続く以上、類似の事象が発生するリスクは小さく無い。

景気底入れのタイミングの判断は難しいが、FRBは政策金利を高止まりさせる見通しであり、Q124、場合によるとQ224にずれ込む可能性が出てきた。それまでは、中国のペントアップ需要の顕在化があっても頭重いのではないか。

同時に、銀行救済のためにFRBのバランスシートは拡大しており、下落余地も限定されると予想される。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

1-2月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲9.2%の88万トン(12月+14.6%の51万4,049トン)と前年比の伸びが減速した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.3%の464万トン(12月+2.1%の210万3,029トン)と過去5年の最高水準で推移している。

1-2月の中国の精錬銅生産は+4.4%の194万5,000トン(12月+▲0.1%の96万2,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は1-2月が前年比+5.8%の282万4,000トン(12月 前年比▲4.8%の147万6,000トン)と伸びが加速した。

2月の銅スクラップの輸入は前年比+58.3%の17万3,825トン(前月▲20.3%の12万9,756トン)、年初来累計でも前年比+11.3%となっており、リオープンの動きで在庫積増しの動きが強まっていると見られる。

本日も、四半期末を控え、これまで積み上がってきた売りポジションの解消と、ドル高進行が相殺する形で現状水準でもみ合うものと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は上昇した。

鉄鋼製品先物は在庫水準の低さや、欧米の金融危機問題が一巡したことが材料となった。鉄鉱石は在庫水準の低さを受けた在庫積増しの動き、原料炭は在庫が潤沢であるため水準を切下げた。

鉄鋼製品在庫は例年よりも早く減少して、同じ時期の過去5年レンジを下回り、鉄鉱石在庫も過去5年平均を割り込んでいる。原料炭は過去5年レンジを上回っている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲53万8,000トンの1,613万5,000トン(過去5年平均 2,040万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジを下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲60万トンの1億3,700万トン(過去5年平均 1億4,447万6,000トン)、在庫日数は31.6日(▲0.1日、過去5年平均36.5日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状況。

原料炭在庫は▲11万トンの224万トン(169万2,000トン)、在庫日数は▲0.5日の9.6日(過去5年平均 7.9日)と在庫は積み上がっている。

2月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が50.1(前月46.6)と改善。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。

内訳を見ると新規受注が48.9(43.9)と改善、それに伴い生産も51.1(50.2)となった。政策効果が顕在化しているようだ。

ただし、新規受注完成品レシオは0.87(0.83)と閾値の1を下回っており、本格的な回復には至っていない。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは60.2(56.4)と大幅に回復、2021年8月以来の高水準となった明らかに中国政府の不動産セクターテコ入れ策の効果だろう。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲44.1%の123万トン(12月▲30.0%の69万9,620トン)と大幅に減速した。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+48.1%の1,219万トン(+7.4%の540万1,000トン)と高い水準を維持している。

2月の中国粗鋼生産は前年比+6.9%の8,010万トン(前月▲2.7%の7,950万トン)と回復している。

中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、例年よりも早く在庫は減少している。中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日は、欧米の金融危機問題収束と、在庫水準の低さを背景とした鉄鋼製品・原料在庫積増しの動きで堅調な推移を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。期末を控えたドル資金調達圧力の高まりでドル高が進行したことが、リスク・プレミアムを低下させたことが背景。

銀は前日比変わらず、PGMは株高の影響で前日比小幅プラスで引けた。

足下、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが上昇している。金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、

1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めたこと2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まったこと3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念

あたりだろう。基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるかは、データの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

ちなみに、2021年末から今年1月までの各国の金準備の増加は、先進国が45トン、新興国が337トンであり政府・中央銀行の金準備積増しは382トンとなる。これだけで156ドル程度の価格押し上げ要因。

仮にこの在庫積増しがなければ現在の価格は1,800ドル程度、と言うことになる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しは維持の方針。

しかし、リスク回避の安全資産需要の増加が見込まれること、(安全資産ではないが)G7諸国がマネーロンダリングや、金融機関の新たなリスクとなっている仮想通貨を規制・廃止にする方針であることを考えると、弊社が想定していた1,600ドル台への下落は難しくなったとみている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。

現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。

本日は、金融危機一巡で市場の注目が物価動向にシフトしており、明日31日のPCE価格指数の発表を控えて方向感に欠ける展開が予想される。

しかし、四半期末を控えたドル資金調達圧力の高まりもあり、総じて軟調な推移になるのではないか。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。ラニーニャ現象は収束に向かっているものの、北米の生産地が干ばつに襲われており、播種に影響が出るとの見方が強まっていることが相場の下値を堅くしている。

また、大手穀物商社カーギルとヴィテラがロシア産穀物の輸出業務から撤退する方針を示していることが、ロシア産穀物の供給懸念を高めていることも下値を堅くしている。

本日は、四半期末を控えたドル資金調達圧力の高まりを受けたドル高進行で、価格は下押しされるものと予想。ただし米国やアルゼンチンの生産下振れ観測、ロシアからの供給懸念が価格を下支えすると考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「欧米金融危機の影響」

米国の金融引締めの加速の影響を最も受けるのは、外貨で資金調達を行っている新興国であり、そこが破綻した場合の影響は小さくないとみていたが、今回は金利で破綻することはまずないと考えられていた米国の銀行が3行破綻した。

シリコンバレー銀行は米FRBの金融引締め加速の中で主要預金者であるテック企業の資金繰りが厳しくなり、預金の引き出しが加速。

今回の金融危機は利上げが加速する中でALMの管理が杜撰であり、かつ、体力のない金融機関の経営危機が表面化した形。

これまで世界の半導体販売は指数関数的に増加してきたが、ここに来て急速に減速、これは2000年問題が発生した後のITバブル崩壊の時と状況が似る。

現在はコロナショックを契機に発生したテックバブル(過剰金融緩和、財政出動、リモートワークの定常化、など)に加えて、コロナ・ロシアのウクライナ軍事侵攻によってインフレが発生していることが大きな違いであり、資源価格の高騰や急速な金融引締めの必要性が高まった。

その点に着目すると、オイルショック後にインフレが発生し、その後S&L(米貯蓄貸付組合)の経営問題が表面化し、多くのS&Lが破綻し当局の管理下となった時期とより状況が似る。

また、インフレに着目すれば、原油価格高騰と景気過熱による金利引き上げで発生したパリバ・ショックが発生した頃に近い。

今後、政府管理の下で銀行の買収・不良債権の処理が行われるため、取りあえず問題は一巡したとみられるが、特に規模の小さな金融機関のリスクが顕在化していくと見られる。

3月のFOMCで米FRBはインフレを沈静化する目的で金融引締めを継続する見通しを表明しており、年内の利下げを想定していないことも繰り返し主張した。

仮にこの表明通りであれば状況であれば、長短金利が逆転した逆イールドの状態が長期化することになり、銀行などの金融機関の経営体力を削ぐことになる。

この結果、銀行が貸出を自主的に抑制する可能性は高く、JPモルガンのジェイミー・ダイモンが主張するように2023年後半に「クレジット市場がハリケーンに見舞われる」可能性が出てくる。

Y2K問題発生時、パリバ・ショック発生時には結局景気が悪化して利下げを余儀なくされた。

FRBパウエル議長のコメントを鵜呑みにすると最速で利下げが行われたとしても、それは2024年年明けであり、仮にこのタイミングで利下げが行われた場合、ドットコムバブル崩壊とパリバ・ショックの時は各々、景気が底入れするまで、利下げを始めてから9ヵ月、14ヵ月(間にリーマン・ショックを挟む)掛っている。

今のところ弊社は遅くともQ224頃に景気が底入れするシナリオをメインシナリオとしているが、過去の類似の状況に陥った時の正常化のタイミングを参考にするとと、2024年一杯景気が回復せず、2025年になってからの回復となる可能性も否定できない。

また、金融安定理事会(FSB)の調査では、世界の金融セクターに占めるノンバンクの比率が上昇していることが懸念されている。

今回の一連の金融不安では米銀行は預金全額保護という形で預金者が救済され、銀行は解体される方針となったが、銀行破綻による金融システム崩壊を回避したい、という当局の強い意志が示された。クレディ・スイスも同様。

しかしノンバンクは救済の対象とならず、融資先も保護される可能性は低い。特にコロナ以降の一連の金融緩和で拡大している不動産セクターの資金繰り悪化は懸念されるところだ。今後、金融引締めが継続する中ではシャドーバンキングのリスク顕在化は無視できないリスクになるだろう。


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