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景気循環銘柄売られ
  • MRA商品市場レポート

2023年3月27日 第2420号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気循環銘柄売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は穀物・農産品セクターが総じて堅調な推移となった。細かく見ていくと価格が上昇している景気循環系商品も有るが、典型的な「景気減速時に景気の影響を受け難い商品を物色する流れ」となった。

セクター別の騰落率を見て見ると、エネルギー(発電燃料なども含む)の年初来上昇率が▲22.3%と最も大きく下落しており、次いで原油(▲14.2%)、穀物(▲7.7%)、LME非鉄金属(▲4.3%)、畜産(▲3.8%)、貴金属(▲3.1%)、その他ソフト(+4.6%)となっている。

景気減速局面では、このうち、原油・LME非鉄金属が売られ、畜産・穀物・その他ソフト・貴金属、などが物色されやすい。

ただし今年はエルニーニョ現象の発生が見込まれているため、農産品セクターの買い圧力は例年ほど強くないだろう。

そのように整理すると、畜産やその他ソフト・コモディティのパフォーマンスがその他のセクターに比べて大きな下落になっていないことは頷ける。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、大きな予定された手掛かり材料の発表がない中、引き続き、欧米の金融機関の経営問題に対する当局の対応動向に左右され、神経質な推移が予想される。

現状、これまでたびたび経営危機問題が指摘されてきたドイツ銀行が次の市場のターゲットにされているが、この数年でかなりリストラも進めているため、サドンデスはあり得ない。ただ、預金者が銀行を信じず、預金引き出しに走った場合健全行でも破綻は起こり得る。

さらに言えば、他行送金であれば(契約にもよるが)ネット上でもできてしまう。これを防ごうとした場合更なる憶測を呼び、やぶ蛇になるため経営陣は淡々とこれを否定していくしか方法はない。

基本、景気は循環的に悪化する局面にあるため、いろいろなマイナスの事象が顕在化してもある意味それは自然なことだ。ここに来て「リーマン・ショックを超えるクライシスが来る」とネット上で断言しているアナリストも出始めた。

これは後で危機が顕在化したときに「当たった」、と言うための目的のものだろうが、こうした情報は景気が悪化した時に出てきやすく、かつ、現在はSNSで光速で拡散する世の中であるためこうしたコメントは冷静に受け止める必要がある。

しかし、そのような発言が取り付け騒ぎに繋がることも有り得るため、今のうちに万一の信用収縮発生時のシミュレーションをしておくことは必要ではないか。

【昨日のトピックス】

昨日発表された欧米のPMIは製造業の減速が続き、サービス業の回復が続くという内容であり、世界の経済状況がまだらな状態になっていることを確認する内容だった。

景気に対して先行性があるとされる製造業PMIは閾値の50をほとんどの地域で下回った一方、サービス業は好調を維持している。

サービス業は雇用・賃金の変更を通じて消費に影響が及ぶ、という波及経路を経るため製造業に比べると遅効性がある。この結果、財の価格は低下圧力が掛るものの、サービス価格は高止まりする可能性が高く、結果、各国中央銀行は利上げないしは政策金利の高止まりを継続せざるを得なくなる。

一方、市場は5月以降のFOMCでの利上げの確率をほぼゼロと見込んでおり、早ければ6月から利下げの可能性があるとしている。この市場とFRBの判断の乖離が再び市場を混乱させるだろう。

イエレン議長は預金保険の柔軟な運用を示唆したが、仮に以前のS&Lの経営危機が問題視されたときと同様の取り付け騒ぎが発生すれば、予算的に預金の全額保護は不可能であり、追加的に財政出動が必要になるため、更なる救済に及び腰なのは当然だろう。

しかしながら米国の金融危機を背景とした流動性の緊急供給の影響で、FRBのバランスシートは拡大しておりQTが形骸化している。目先は流動性の問題の方が大きいが、この流動性がこれまでインフレをもたらしてきたことも動かしがたい事実だ。

結局、これで6月頃から利下げに転じるのなら、昨年3月頃から始まった一連の金融引締めの流れが逆転することになり、再び望まないインフレが訪れることになる。

以上を考えると、1.インフレ抑制のための高金利は継続する、2.その間に破綻する金融機関が発生した場合は規模に応じて是々非々で対応、3.インフレ沈静化ないしは景気の顕著な悪化が見られる局面で利下げに転じる(FRBの発言を鵜呑みにするなら、来年1月のFOMCか)、4.その間、リスク資産価格には下押し圧力が掛かりやすい展開(場合によってはクライシスのリスクも)、という整理になろうか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は続落した。市場の「次の生け贄探し」の動きで、これまで何回か経営危機が取り沙汰されていたドイツ銀行が対象となりリスク回避のドル高が進行、それを受けて急速に値を下げた。

その後、独当局がドイツ銀行の経営に問題はないとの発言や、セントルイス連銀ブラード総裁の発言を受けて過度な不安感が後退し、リスク回避のドル安が進行するなかで買い戻しが入った。結局行ってこいで前日比マイナスの引け。

足下、OPECプラスは追加減産を否定、ロシアの自主減産も想定よりも規模が実は大きくなかったことから「価格下落時のOPECプラスの価格防衛の意思」はそこまで強固なものではないことが確認されたこと、米国のSPR再積増しも否定的な発言が当局者から出ていることから、供給面の価格下支え効果は後退している。

FRBは年内、政策金利を高止まりさせる方向だが、銀行救済のための流動性供給でFRBのバランスシートは再び拡大している。政策金利はインフレ抑制で年内高止まりだが、この流動性供給が下落余地を限定させるのではないか。

弊社は年後半に景気が底入れして原油価格もそのタイミングから上昇、と見ていたが、Q224頃までずれ込む可能性が出てきた。米当局の金融機関対策の状況にもよるが、見通しはそれに従って変更の可能性が高い。

直近のWTI投機筋のポジションは3月21日時点でWTIがロングが前週比+8132枚、ショートが+22,691枚と新規ショートポジションが増加している。

Brentは3月21日付けのCOTレポートで、ロングが▲42,890枚と大幅に減少、しかしショートが+13,431枚も増え、こちらも新規にショートポジションが取られている。

ファンド筋は基本、受け渡すべき現物を保有しないため、これらのショートポジションはいずれかのタイミング(相場の反転、四半期末)で買い戻しが入り、価格を一時的に押し上げる可能性が高い。

さらに言えば、リーマン・ショックのような市場の機能不全を投機筋はまだ織り込んでいる訳ではない。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 2.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落。欧米金融危機の影響もあり、景気底入れのタイミングはQ124~Q224に後ろ倒しした。

H224以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、米大統領選挙を受けた米政府の対応に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q223~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日も、欧米金融機関の経営問題を背景とするリスクオン・オフの展開が予想され、神経質な推移となろう。

ただ、景気の見通しは下向き(ある意味景気循環通り)がコンセンサスとなりつつある中、売られすぎからの買い戻しは期待できるものの、総じて軟調な推移か。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。気温低下予想はあるものの、需要のもう1つ重要なファクターである景気の先行き懸念が強まっていることが背景。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、過去5年平均比で需要を削減せず、過去5年の最高水準のガス消費量になったとしても、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は足りるとの結果になった。逆に、過去5年平均よりも+5%程度需要が増加すれば、今年の冬も足りないことになる。

また、ロシアからの供給が停止した場合も、かなり早い夏の前の段階でガスは大幅に不足することが予想される。この場合、需要を過去5年平均の水準から▲20%以上削減することが必要となる。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

足下のガス在庫の水準は高いが、ロシア産ガスの供給の完全回復は現状あり得ないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「欧州が完全に」ロシア産ガスを排除できるのは2027年頃。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開。ただし安定稼働になるかどうかは半年程度、稼働状況を確認する必要がある。

ナイジェリアは2月25日に大統領選挙が行われたが、その結果を巡って混乱が見られている。

また北部ではイスラム過激派勢力と政府の対立も続いているうえ、物価高騰、新紙幣導入による混乱が、国内情勢不安に拍車を掛けている状況。供給はしばらく不安定な状態が続こう。

3.4.は顕在化している。

5.はしばらく「凪」のシーズンに入る。

3月13-19日のLNGトレードは、輸出量が前週比+169万トンの908万トンとなった。スポット取引のシェアは21%(前週22%)に低下。

スポットカーゴは北欧とイタリア向けが▲20万トンの減少、その他の欧州は+60万トンの増加。日中台韓は韓国の輸入減少で▲30万トンの減少。

LNGのタンカーレートはスエズ以東が横這い、以西が低下した。季節的に需要が減少する時期に入ったため、と見られる。

しかし、例年と異なりロシアの供給が事実上停止しているため、北欧は不需要期であるにも関わらず、春先から夏にかけてもLNG調達が必要になることから、タンカーレートの水準は昨年よりも高い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は小幅に上昇。特段目立った材料はなかった。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は欧州ガス価格が下落したことを受けて水準を切り下げた。

JKMは中国のリオープンの遅れや季節的に北アジアが穏やかなシーズンに突入することもあり、恐らくQ223は一年を通じて発電燃料が割安な時期になると考えられる。

2月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+0.9%の866万トン(1月▲17.8%の927万トン)と前年比で増加したが、1-2月で見ると、▲9.7%と低迷している。

2月のLNG輸入は前年比+7.1%の521万1,000トン(前月▲24.4%の590万8,000トン)と1月の春節時よりも回復した。

2月のパイプラインベースの輸入は前年比▲7.1%の345万トン(前月▲3.27%の336万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。ロシアからの輸入は増加したが、ウズベキスタン・トルクメニスタンからの輸入が減少した。

1-2月の中国の天然ガス生産は前年比+7.0%の2,926万5,000トン(12月+5.7%の1,500万トン)と増加している。

2月の中国の電力消費量は前年比+11.5%の6,950億kwh(12月▲4.6%の7,784億kwh)と回復したものの、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はないと言えるが、それ以上に付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくないと考える。この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

3月19日時点の日本の発電用LNG在庫は256万トン(前年同月末163万トン、2018~2022年平均2,489万9,000トン)と過去5年平均を上回り、在庫は潤沢。

冬場が終了していることから、供給不足が発生するリスクは低下している。しかし、ロシア問題が継続する以上、今年の夏以降の調達懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

また、今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

週明け月曜日も、気温の見通しが多少価格を動かすものの、基本、ピークシーズンが終了していること、景気の先行き懸念が強まっていることから軟調推移を予想。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は期近が上昇した。特段材料はなかったが、割安感空の買いが入ったと見られる。

来冬の危機は完全に去っておらず、夏場の気温上昇によるアジアの需要増加、中国の回復、冬場の気温低下があれば、豪州の供給が制限されていること、豪州も国内供給を優先する方針であることを考えると、上振れのリスクは残存する。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

2月の中国の石炭輸入は前年比+159.8%の2,917万トン(前月+30.3%の3,148万トン)と減速。リオープンの遅れが影響した。

石炭輸入はモンゴルからの輸入増加が顕著であり、ロシアからの輸入も高い水準を維持している今後はカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

1-2月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不要になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、一時250ドルに迫った期先の価格は160~180ドルに低下している。豪州炭の価格上昇や供給面の問題から、安価な石炭へのシフトが進んでいるためと考えられる。

これは構造的な需給緩和期待が高まっていることの証左、とも言えるだろう。

ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を一段切下げるとみているが、その後、北半球の夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

JKM価格を基準に石炭価格の回帰分析を行うと、150ドル(±70ドル)程度であり、現在の価格水準は0.5標準偏差程度上振れしている。別の言葉を使うと、現在の材料では80ドル~220ドルのレンジを下抜け/上抜けするのは難しい環境にある、と考えられる。

週明け月曜日も、割安感からの買いは入ろうが、ピークシーズンの終了による需要減少と、景気の減速への懸念から売買材料が交錯するため、現状水準を維持するとみる。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場はまちまち。中国の貿易統計、非鉄金属生産統計が発表されたが総じて大幅な増加を示唆するものが多く、同時に中国の取引所在庫の減少も確認されていることから、足下の需給が堅調と見られたことや、一時的にドル安が進行したことが材料となった。

基本的にはペントアップ需要の顕在化による短期的な上昇、という整理。

今後は金融市場・欧米市場の混乱により、欧米の景気は年後半に向けて減速するという「想定されていたパス」に復帰が見込まれることから、中期的には景気の循環で下落すると予想される。

今のところ金融危機が伝染・拡大し、クレジットクランチが発生するリスクは、中銀の流動性供給策で回避されるとみているため、まだ、リスクシナリオの位置づけ。

しかし米国の政策金利高止まりが続く中では、想定しているより米金融環境は不安定な状態が続くと見られる。

直近のCOTレポートは全ての金属がロングポジションを解消し、新規にショートポジションを積み増している。投機筋は基本的に受け渡す現物を保有していないため、ショートポジションは将来の買い戻し・上昇圧力となり得るため、要注意だ。

2月の中国製造業PMIは52.6(市場予想 50.6、前月 50.1)と市場予想、前月とも上回り、中国のリオープンが始まっていることを確認する内容だった。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が1.069(1.078)、原材料が1.086(1.026)と比較的小幅な上昇に止まっており、先月から需給環境は大きく変わっていないことを示唆している。

規模別の製造業PMIを見てみると、大企業が53.7(52.3)、中堅企業が52.0(48.6)、中小企業が51.2(47.2)と全ての規模で回復、閾値の50を上回った。

今回の回復は政府のテコ入れ策とペントアップ需要の影響に因るものと考えられ、その持続性には疑問符が付くが足下、景況感が回復している可能性は高いといえる。

ペルーで発生した暴動は沈静化の兆しを見せており、銅の生産障害は徐々に取り除かれている。Glencoreはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを見せ、MMGも銅の輸送再開が見込まれている。

ペルーは世界2位の銅鉱山生産量を誇り(2021年実績)、この国の問題長期化は銅供給への影響が小さくない。

暴動の背景は、2021年に誕生した左派カスティジョ政権が、コロナの影響による国内混乱を沈静化できず、首相が5回も交代、カスティジョ自身も汚職の問題が指摘され、弾劾に至った。

後任のボルアルテ大統領はカスティジョ前大統領と共に大統領選を戦った朋友だが、政権安定のために議会の多数派を占める右派と協調したことで国民の反発が強まる形となっている。

結果、2024年4月に大統領選挙を2年前倒しする憲法改正を実施、事態の沈静化に注力しているが、今のところまずこの大統領選挙問題を乗り切らなければ事態の沈静化は難しいかもしれない。

この状況を受けてボルアルテ大統領は、今年12月に選挙をさらに前倒しすることを議会に提案している。

かなり厳しい生産状況にあるが、Glencoreなどはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを強めており、緩慢では有るが生産は回復すると予想される。しかし、本格的な生産回復には暴動の収束が必要条件であるため、まだ先行きは不透明だ。

懸念していた米国の景気が過熱するリスクだが、欧米金融危機問題を受けた信用不安が意識され、一方で、その信用不安が「個別事案」と整理できる状況になりつつあることから、景気は循環的な減速パスに戻ったと考えられる。

ただし、まだ市場は「次の獲物探し」を行っているため、価格リスクは当面、下向きとみている。

景気底入れのタイミングの判断は難しいが、FRBは政策金利を高止まりさせる見通しであり、Q124~Q224にずれ込む可能性が出てきた(従来見通しを後ろ倒し)。それまでは、ペントアップ需要の顕在化があっても頭重いのではないか。

同時に、銀行救済のためにFRBのバランスシートは拡大しており、下落余地も限定されると予想される。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトが経済的な不利益をもたらす場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

1-2月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲9.2%の88万トン(12月+14.6%の51万4,049トン)と前年比の伸びが減速した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+11.3%の464万トン(12月+2.1%の210万3,029トン)と過去5年の最高水準で推移している。

1-2月の中国の精錬銅生産は+4.4%の194万5,000トン(12月+▲0.1%の96万2,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は1-2月が前年比+5.8%の282万4,000トン(12月 前年比▲4.8%の147万6,000トン)と伸びが加速した。

2月の銅スクラップの輸入は前年比+58.3%の17万3,825トン(前月▲20.3%の12万9,756トン)、年初来累計でも前年比+11.3%となっており、リオープンの動きで在庫積増しの動きが強まっていると見られる。

週明け月曜日は、引き続き欧米金融機関の経営問題と中国のリオープンが材料となり、現状水準でのもみ合いが続くと予想される。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国の鉄鋼製品先物市場に海外の金融不安が影響することは余りないのだが、今回は材料視されているようで鉄鋼製品価格は下落している。

うがった見方をすると、今回、米国で金融不安が起きた場合、最も影響を受けると思われるのが不動産とITセクターと考えられるが、不動産セクターには大量のチャイナ・マネーが流入しているとみられ、それを引き上げる(損を出す)動きが、国内の不動産セクターの重石になっている、という可能性も有り得る。

ただ、鉄鋼製品在庫は例年よりも早く減少して、同じ時期の過去5年レンジを下回り、鉄鉱石在庫も過去5年平均を割り込んだ。原料炭は過去5年レンジを上回っている。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲53万8,000トンの1,613万5,000トン(過去5年平均 2,040万3,000トン)と減少、例年と異なり在庫の取り崩しがかなり早いペースで進み、水準は過去5年レンジを下回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲60万トンの1億3,700万トン(過去5年平均 1億4,447万6,000トン)、在庫日数は31.6日(▲0.1日、過去5年平均36.5日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでもタイトな状況。

原料炭在庫は▲11万トンの224万トン(169万2,000トン)、在庫日数は▲0.5日の9.6日(過去5年平均 7.9日)と在庫は積み上がっている。

2月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が50.1(前月46.6)と改善。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。

内訳を見ると新規受注が48.9(43.9)と改善、それに伴い生産も51.1(50.2)となった。政策効果が顕在化しているようだ。

ただし、新規受注完成品レシオは0.87(0.83)と閾値の1を下回っており、本格的な回復には至っていない。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは60.2(56.4)と大幅に回復、2021年8月以来の高水準となった明らかに中国政府の不動産セクターテコ入れ策の効果だろう。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲44.1%の123万トン(12月▲30.0%の69万9,620トン)と大幅に減速した。

1-2月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+48.1%の1,219万トン(+7.4%の540万1,000トン)と高い水準を維持している。

2月の中国粗鋼生産は前年比+6.9%の8,010万トン(前月▲2.7%の7,950万トン)と回復している。

中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、例年よりも早く在庫は減少している。中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

週明け月曜日は、鉄鋼製品価格が世界の金融不安の影響を受けて軟調な推移となっているが、鉄鋼原料の不足から鉄鉱石価格には上昇の、原料炭には低下の圧力が掛ると考えられる。

◆貴金属

昨日の金価格は乱高下した結果、前日比マイナスで引けた。実質金利が米当局担当者や欧州銀行の新たな経営危機問題などで乱高下したことが材料。銀は結局前日比プラスで引け。

PGMも同様の推移となったが、前日比マイナスで引けた。固有の材料に乏しく、米金融政策と期待インフレ率に振らされる展開。

金価格の構成要素に占める「実質金利のシェア」は低下しているが、まだ金価格に対する説明力は実質金利が最も高い。

金のリスク・プレミアム上昇要因の主なところは、1.ドル決済停止などの米国の将来的な制裁を反米勢力が意識し始めた、2.ロシアの戦争長期化を受けて台湾などの軍事侵攻への懸念が強まった、3.米金融引締め継続による企業破綻・新興国破綻懸念、あたりだろう。

基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるか、はデータの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しを変更する必要はないと考えている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはほぼボリンジャーバンドの中心(移動平均)程度で推移しているがトレンド的には上昇方向にある。

現在のボリンジャーバンドの上限は94倍で、この水準までの上昇があると19ドルまで価格は下落することになる。

週明け月曜日も、欧米金融機関の経営問題と、それを受けた景気動向、原油価格動向に左右され、現状水準でもみ合うものと考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場はセントルイス連銀ブラード総裁が金融ストレスの解消に自信を示したことなどでリスクテイクが回復、ドル安が進行したことが広く買い戻しの材料となった。

週末のニュースでは、米国が中国向けに17万8,000トンのトウモロコシを売却したと報じられた。小麦はロシア政府が農家に販売を抑制するよう推奨する可能性がある、との報道で物色された。

週明け月曜日も、ロシア動向、欧米の金融機関の経営危機問題を材料に神経質な推移となり、もみ合うものと資料。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは結局顕在化した)

低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「石炭見通し」

日本の石炭価格の指標である、豪州ニューキャッスル炭価格は大きく下落し、競合発電燃料であるガス価格で説明可能な水準まで価格水準を切下げた。

NEWCはガス価格が下落する中でも高値を維持していたが、冬が終了に近づき、最大輸入国である日本も低カロリ ー炭やその他の炭種ヘの変更を進めたことが、ガス価格との差を埋めることに寄与したと考えられる。

現在の価格は概ねガス価格で説明可能な水準まで調整が進んでおり、過去5年データを元にした回帰分析の結果は、概ね、回帰直線上まで現在の石炭価格が調整していることを示唆している。

回帰分析の結果をもう少し詳しく見ると、現在のガス価格から類推される石炭価格は150ドル±70ドル(1標準偏差)であり、統計的には約68%の確率で、80ドル~220ドルの間でNEWC価格が推移することを示唆している。

このことは、言葉を換えると、発電燃料価格が上昇し難い不需要期の4~6月の価格は特段供給面の問題が顕在化しなければ、220ドルを超えるのは難しい、と言うこと。

さらに、流動性の問題で直近限月・第二限月のスプレッドは不安定な推移となるため、直近限月vs12ヵ月先渡し価格とのスプレッドの水準を見ると、NEWCスワップ先物が上場されてから最も期近と期先のスプレッドがコンタンゴ化している。

このことは、価格水準はまだ高いが、足下の需給バランスがかなり緩和していることを示唆している。

一方、豪州の燃料炭輸出はじりじりと水準を切下げているが、これは消費国である日本や中国の輸入が景気や季節性の影響で減速しているためと考えられ、しばらく石炭価格は下押し圧力が強まる可能性が高い。

しかし、中国のリオープンが緩やかに進み、輸入が増加する可能性が高いこと、中国の水不足は続いており、水力発電量の低下で、化石燃料への需要が高まる可能性はある。

実際、中国は真剣に脱炭素を進めるつもりはないと考えられ、今年も新規で石炭火力発電所を増加させる計画である。この状況も勘案すると、北アジアの夏場に石炭需要が増加し、価格が上昇するリスクはないではない。

なお、今年は夏から秋にかけてエルニーニョ現象発生が見込まれており、予想通りとなれば冷夏となる可能性があり、石炭・ガス価格の上昇を抑制することになろう。

一方、冬場のガス調達体制はまだ十分ではなく、今年の冬が「例年通りの冬」となるならば、昨年から今年にかけて欧州が記録的な暖冬だったことを考えると、逆に今年~来年の冬はこの冬よりも気温が低下する可能性がある。

このことも冬場の発電燃料価格を上振れさせるため、引き続き脱ロシアが完了するまでは、上振れリスクを意識しておく必要はあろう。


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