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米PPI強気で軟調~フィラデルフィア連銀製造業指数は悪化
  • MRA商品市場レポート

2023年2月17日 第2394号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米PPI強気で軟調~フィラデルフィア連銀製造業指数は悪化」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は米PPIの伸びが市場予想を上回ったことで金利高・ドル高・株安となり総じて軟調な推移となったが、非鉄金属に関しては、中国新築住宅販売価格の下落が止まったことや割安感から買いが入る形となった。

昨日の米PPIを受けてFOMCメンバーの発言を受けてターミナルレートのピークはやや上昇している。

なお、毎回のFOMCでの利上げ見通しは、3月が25bpの利上げ確率は86.3%(前日87.8%)で変わりがなく、5月も25bpの利上げの可能性を8割以上としている。

6月のFOMCの25bp利上げの可能性は59.5%(39.9%)に上昇、7月の25bp利上げも40.3%(33.5%)と上昇しており、市場はFRBがややタカ派に転じたと受け取っているようだ。

しかし、その後に発表されたフィラデルフィア連銀製造業指数は市場予想・前月を下回る大幅な減速となった。内訳を見ると、新規受注の減速(▲10.9→▲13.6)が目立つ。

一方、仕入価格26.5(24.5)と上昇しているが、販売価格は14.9(29.9)と大幅に低下している。仕入・販売とも上昇していたニューヨーク連銀製造業景況感指数とはかなり様相が違う内容だ。

雇用者数も5.1(10.9)と減速し、先行き見通しも1.7(4.9)と下方修正。これだけを見ると、米国の先行き見通しは決して明るくないことになり「米国のインフレ期待は減速する」という見通しを変更する必要はない、という結論になる。

ただ、米国の景気減速(ないしは拡大)は地域毎、業種毎でまちまちであることは確実であり、かつ、インフレもまだ続いていることを考えるとしばらくは現在のタカ派な金融政策が継続する、と考えられ広く商品価格の下押し要因となろう。

【本日の見通し】

本日は、再びFOMCメンバーの講演や討論会ヘの出席が予定されており、その他の重要な統計はさほど発表されないため、これまでの統計の流れをみるにタカ派的な発言が価格を下押しすると考えるのが妥当だろう。

【昨日のトピックス】

昨日発表された米貿易統計は、前年比+3.5%と前月の+11.5%から伸びが大幅に鈍化した。季節調整後では▲6.3%と3ヵ月連続の減速となっている。

1月の減速は中国正月が昨年よりも早く1月だったことの影響が大きく、中国向けの輸出が▲17.1%の9,675億円(前月▲6.2%の1兆6,178億円)となったことが影響した。

しかし、中国からの輸入製品や通信機器の輸入は増加しており、輸入は前年比+12.3%の2兆3,906億円(+6.4%の2兆194億円)と過去2位の水準、1月では過去最高となった。

全体では輸出は自動車の回復が寄与(金額ベースの伸び率+14.9%、寄与度+1.8)、減少は中国向けの半導体製造装置の減速(▲11.9%、▲0.5%)の影響が小さくなかった。

先行きについては、欧米の景気減速や中国の経済活動の回復の遅れから減速が続くと予想されるが、足下、米国の経済統計の改善が確認されており、円安バイアスも掛っていることから輸出は増加すると期待される。

しかし円安バイアスが強まって居ると言うことは輸入額も高い水準が維持されることを示唆しており、日本にとって厳しい状態は続くことになろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は続落した。注目の米PPIが市場予想よりも強い内容だったことを受けて、米金融引締め観測が強まり、ドル高が進行したことが材料となった。

足下、景気の循環で需要減速、軟調に推移しやすく、金融政策動向などの金融要因の価格に与える影響が大きくなっている。

ドル指数の動向と原油価格の動向をクロスオーバーしてみると、米国の景気の局面が類しできるが、早晩、金融政策(どちらかと言えば緩和的なバイアス)を受けて原油価格が底入れし、ドルよりも先に上昇を始めると予想される(景気の転換点・底入れのサイン)が、この観点からも6~7月が目処となる可能性は高い。

なお、オイルメジャーの決算でも明らかなように、「脱炭素の枷」の影響で上流部門の開発が加速する、という感じではないため原油供給が制限され、OPECプラスの価格支配力が増し、価格は下支えされることになりそうだ。

また、価格が下落すれば記録的な低水準となった米国の戦略備蓄も積増しの可能性があり、価格を下支えしよう。WTIは、一部政府高官が戦略備蓄再積増しの目処として発言したとされる80ドルを下回っている。

しかし、逆にバイデン政権は戦略備蓄の追加放出を決定している。政権側がインフレ再燃を過度に警戒していることの表れ、といえるだろう。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を禁輸、ロシアが報復措置を厳正に行った場合(ないしはOPECプラスの減産)Brent 75-100ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 70-90ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 65-85ドル/75-95ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落し、今年のQ323~Q423頃に景気が底入れするため、年後半に掛けては再度上昇するとみる。

しかし、ここに来て景気の減速が想定ほどではないかもしれない、との見方が徐々に出始めている。この場合、明確な調整がないまま原油価格が上昇に転じる展開も想定される(アップサイドのリスクシナリオ)。

この場合は年後半に再びインフレが意識されるため、追加利上げで年後半に景気が急減速、と言うことも有り得る(ダウンサイドのリスクシナリオ)。

また、年後半の急減速があった場合、景気底入れがQ124にずれ込むリスクシナリオも想定しておいた方が良い状況になってきた。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まり、ないしは自然エネルギー供給不足発生には高騰する可能性が高い。

Q123~Q223 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッションの場合(↓)
Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日も、米連銀総裁の講演や討論会への出席が予定されており、この数日の米統計の流れを受けてタカ派な発言が目立つと考えられ、軟調な推移になると予想する。

ただし、週末ということもあるため、ポジション調整の買い戻しの可能性もあり底堅い推移(50日移動平均線のサポートラインが堅い)になると予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。気温上昇見通しと在庫の積み上がりが材料となっている。

2022年のTTF価格は64.46~345ユーロのレンジだったが、今年のレンジは51.36~81.15ユーロの極めて狭いレンジでの推移となっており、足下の気温上昇やロシアからの供給停止がこれ以上深刻化していないことを背景とした供給過剰感が価格を低迷させている。

直近のガス在庫動向シミュレーションでは、▲5%の需要削減が可能であれば2023年のガス調達には問題がなさそうであり、ガス供給を巡る欧州のリスクは後退している。

しかし、需要削減が行われ無かったり、現在20%程度の稼働となっているロシアからのガス供給が完全に停止する事態になればガス供給は不足することが予想される(外貨を確保したく、かつ、生産停止によるガス生産設備の毀損リスクを)。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

ICEは「価格上限のない」TTFをロンドンに上場することを決めたが、この上場に伴う影響は稼働してみないとまだなんとも言えない。

TTFはガスやLNGの取引の国際指標として現物契約に用いられている価格であるだけに、その他のガス市場への影響も小さくないと考える。

足下のガス在庫の水準は高いが、今年は年初からロシア産ガスの供給が期待できないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

弊社のシミュレーションでは「完全に」欧州がロシア産ガスを排除するのは2027年頃であることを示唆している。このことは、2027年以降のガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向にもよるが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開(フル稼働は3月頃か)、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

ナイジェリアは徐々に状況の改善が伝えられているが、洪水前からナイジェリアのLNG輸出は減少しており、まだ回復していない。

3.4.は顕在化している。

5.に関しては、3月頃までラニーニャ現象が継続する見通しであるが、逆に欧州に暖冬をもたらしている。

2月6日-12日のLNGトレードは。780万トン(前週806万トン)と減少、スポットカーゴの比率は23%(24%)と小幅に低下した。

スポットカーゴは、北欧・イタリア向けが▲10万トンの減少、その他の欧州が+20万トンの増加となった。日中台韓向けのスポットカーゴは▲40万トンと韓国・日本の減少が影響した。

ターム契約のスウリョうは先週からほとんど変わっていない。

LNGのタンカーレートはスエズ以東が上昇、以西は小幅に上昇した。スエズ以東の水準は同じ時期の過去5年レンジを上抜けしており、中国の再稼働や年初からの気温低下による在庫減少を見越した調達が増えていると考えられる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は小幅に下落。米天然ガス統計で在庫の減少が市場予想を下回ったことが材料となった。なお、気温は米北西部で急速に低下の見通しである。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は欧州ガス価格の下落もあって小幅に下落。

JKMの期間構造は今年の冬場の価格は20ドルを超えており、やはり欧州・ロシア情勢の不安定さが需給をひっ迫させる、との見方が大勢を占めているようだ。

ただし同時に、脱ロシアの進捗が需給を長期的に緩和させると見られており、全体の構造はバックワーデーションを維持している。

12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲11.8%の1,028万トン(前月▲3.8%の1,032万トン)と前年比での減少幅を縮小した。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。

12月のLNG輸入は前年比▲13.5%の659万6,000トン(前月▲7.0%の642万トン)と前年比のマイナス幅が拡大。

12月のパイプラインベースの輸入は前年比▲8.5%の368万トン(前月+1.7%の389万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。

中国の天然ガス生産は12月は+5.7%の1,500万トン(前月+7.4%の1,389万7,000トン)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。

12月の中国の発電料ははまだゼロコロナ政策を堅持していたタイミングであるため、消費電力は前年比▲4.6%の7,784億kwh(+1.6%の6,828億kwh)と低迷していたこと、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

今後、集団免疫を獲得して正常化が進む中、石炭などは豪州に対して増産要請が出されるなど、今後、国内需要回復の可能性は高い。結果、天然ガス価格を下支えすることになるだろう。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直されることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はないと言えるが、それ以上に付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくないと考える。この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

2月13日時点の日本の発電用LNG在庫は256万トン(前年同月末169万トン、2018~2022年平均225万7,100トン)と過去5年平均は上回っている。

冬はまだ続いており例年あるように気温次第で、2月~3月に掛けてガス供給が不足して価格高騰、ということも有り得る。

さらに、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

本日も、冬場終了を見越した需要の減少観測で軟調な推移が予想されるが、過去データを元にした回帰分析によるJLCの推計が、2月は18.1ドル、3月は16.7ドル程度に低下することが予想される。

現在のJKMはこの水準を下回っているため、割安感から買いが入ることが予想され、そろそろ下値余地も限定されるとみている。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は大幅に続落し、2023-2024年の価格は、ついに200ドルを下回るに至った。

欧州が記録的な暖冬であること、中国の景気回復の遅れ、ガス価格の下落、価格高騰に伴い、豪州炭から割安な他地域炭へのシフトが起きた可能性があると考えられる。

ただし、欧州のガス危機は完全に去った訳ではなく、夏場の気温上昇によるアジアの需要増加、中国の回復、冬場の気温低下があれば、豪州の供給が制限されていることを考えると、上振れのリスクは残存する。

豪州のNSW州が国内備蓄積増し義務化をしていることなどによる、供給減少もあるだろうが、豪州の週間石炭輸出は減少傾向にある。

特に最大輸入国である日本向けの輸出が減少したほか、日中台韓以外の地域向けの輸出も大幅に減っている。

一方で中国の輸入も回復しているが、小幅な増加に止まっており、豪州炭需給をタイト化させるといった感じではない。

しかし、結局のところ欧州炭価格は欧州のガス価格に左右されるため、夏場の猛暑、今冬の厳冬、といったリスクは残る。

結局、「脱ロシアが完全に完了すると期待される2027年頃」までは、上振れリスクは小さくないとみている。

12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲0.1%の3,090万8,000トン(前月▲7.8%の3,231万トン)と前年比マイナス幅を縮小した。中国の経済活動再開を睨んだ在庫の積み上げと考えられ、過去5年レンジの上限での推移となっている。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後輸入は増加が予想される。やはりカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

12月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、一時250ドルに迫った期先の価格は160~180ドルに低下している。豪州炭の構造的な需給緩和期待が高まっている、と言えるだろう。

冬場が終了し、かつ、ラニーニャ現象が収束すると見られるQ223に石炭価格は水準を一段切下げるとみているが、その後、夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

本日も、発電燃料需要の減速を受けて軟調も、完全に豪州炭を他の石炭にリプレースできる訳でははないこと、ガス価格の下落余地もそろそろ限定されることから、現状水準を維持すると考える。

◆非鉄金属

LME非鉄金属市場は総じて堅調。米PPIの上昇を受けてドル高が進行、米フィラデルフィア連銀製造業指数も悪化するなど、中国の新築住宅販売価格が1年4ヵ月連続の下落に歯止めが掛ったものの、非鉄金属にとって売り材料ばかりでありだったが、ベンチマークである銅が50日移動平均線のテクニカルなサポートラインでサポートされたことなどから、買い戻される非鉄金属が目立った。

ある意味、米国の利上げ加速は月初から織り込まれた材料でもあり、いったん買い戻しが入ったと考える。ただ、中国の回復が緩慢な中で米国が金融引締めを強化する見通しである以上、価格の方向性は下向きだろう。

直近のCOTレポートではスズを除いて全ての金属でネットロング幅は縮小、「ロング解消・新規ショート積増し」の動きがみられている。

中期的な景気減速観測で価格が下落することに賭けるポジションだが、景気が底入れすればこのポジションは急速に巻き戻されることになるが、今はそのときではないと判断しているようだ。

引き続き、投機筋の動向は注視する必要があるが、長期的な材料(3つの「脱」)で買いを入れたのならば、中期的な景気減速に伴う価格下落はその余地が限定されることを示唆している。

1月の中国製造業PMIは急速に改善している。ゼロコロナ解除と不動産セクターのテコ入れの影響によるものだ。しかし、PMIは「前月と比較したときの景況感」をヒアリングしているため、「政治的に強制的に経済活動が稼働・停止」を繰返している状況下では、統計の連続性が担保されていない。

今後の動向はやはり2月のPMIを待たなければならないだろう。ただ、中国の財政余力、海外経済の減速を考えると2月も高水準の回復は余り期待するべきではないだろう。さらに改善があるならば、中国が3月の全人代を睨んで追加的な対策を行った場合、だろう。

なお、インドで問題になっている「アダニ事件」が拡大し、アダニグループ総帥と同郷で繋がりが深いモディ首相にまで影響が及んだ場合、同国の近代化に向けたインフラ投資の障害になることが懸念される。

今のところは比較的冷静な対応になっているが、仮に黄色信号が赤信号になった場合には非鉄金属を含む工業金属需給への影響が大きくなるため、注意しておく必要はあろう。

また、ペルーで発生した暴動が沈静化しておらず、銅生産への影響が顕在化している。ペルーは世界2位の銅鉱山生産量を誇り(2021年実績)、この国の問題長期化は銅供給への影響が小さくない。

暴動の背景は、2021年に誕生した左派カスティジョ政権が、コロナの影響による国内混乱を沈静化できず、首相が5回も交代、カスティジョ自身も汚職の問題が指摘され、弾劾に至った。

後任のボルアルテ大統領はカスティジョ前大統領と共に大統領選を戦った朋友だが、政権安定のために議会の多数派を占める右派と協調したことで国民の反発が強まる形となっている。

結果、2024年4月に大統領選挙を2年前倒しする憲法改正を実施、事態の沈静化に注力しているが、今のところまずこの大統領選挙問題を乗り切らなければ事態の沈静化は難しいかもしれない。

この状況を受けてボルアルテ大統領は、今年12月に選挙をさらに前倒しすることを議会に提案している。

かなり厳しい生産状況にあるが、Glencoreなどはセキュリティを強化して生産を再開させる動きを強めており、緩慢では有るが生産は回復すると予想される。しかし、本格的な生産回復には暴動の収束が必要条件であるため、まだ先行きは不透明だ。

中期的には景気の循環によって、恐らくQ323~Q423あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移を予想する。なお、米景気が想定よりも沈静化していない可能性はあり、景気底入れのタイミングがQ124にずれ込むリスクは想定しておいたほうが良さそうだ。

リスクとしては、想定よりも景気が減速せず回復基調に入り非鉄金属価格も上昇するケース。

また逆のリスクとしては、インフレ沈静化に時間が掛り、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きとなる。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

12月の中国の非鉄金属生産は、銅が過去5年の最高水準を下回ったが、その他の金属は過去5年の最高水準を上回った。ゼロコロナの解除期待、不動産セクターのテコ入れ策(主に資金繰り策)、それに伴う生産活動の再開が影響しているとみられる。

12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+14.6%の51万4,049トン(前月+4.0%の53万9,902トン)と過去5年平均は維持した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+2.1%の210万3,029トン(前月+10.0%の241万トン)と過去5年の最高水準で推移している。

12月の中国の精錬銅生産は+0.1%の96万1,000トン(前月+22.5%の111万5,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は12月が前年比▲4.8%の147万6,000トン(前月+16.5%の165万5,000トン)と過去5年の最高水準を下回った。生産・輸入とも、ゼロコロナ政策堅持が影響したとみられる。

しかし、2月以降はリオープンの動きが始まるため回復(前々年程度の回復が上限か)が予想される(1月は中国正月の影響で営業日数が少ない)。

12月の銅スクラップの輸入は前年比▲13.9%の13万9,174トン(前月▲1.9%の16万1,590トン)と過去5年平均を下回った状態が続いている。景気減速に伴い、スクラップの供給も減少していると考えられる。

本日は、米金融引締め加速観測が再び強まっていること、中国の経済活動の回復の遅れから軟調な推移になると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅に下落、大連原料炭価格は上昇上海鉄筋先物は上昇した。

中国新築住宅価格が1月横這いとなり、1年4ヵ月連続の下落に歯止めが掛ったことが鉄鋼製品価格の押し上げ材料となった。まだ季節的な在庫積み上げの時期にあるため、鉄鋼原料需要も季節的に増加しやすい。

しかし同時に鉄鋼製品在庫は急速に積み上がっており、最終製品である鉄鋼製品の需給が緩和している。このことは、在庫積増しが終る3月頃から再び鉄鋼製品、鉄鋼原料価格が下落する可能性があることを示唆している。

そのようにならず、価格が上昇する場合は、中国政府が足下の不動産不況を乗り切った場合だろう。

週末発表の在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+106万3,000トンの1,716万4,000トン(過去5年平均 1,342万7,000トン)。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+185万トンの1億3,835万トン(過去5年平均 1億4,119万6,000トン)、在庫日数は29.6日(+0.4日、過去5年平均30.0日)。生産回復を受けて在庫は日数ベースでも、数量ベースでも不足の状態。

原料炭在庫は+5万トンの210万トン(138万トン)、在庫日数は▲0.7日の8.4日(過去5年平均 5.6日)と日数ベースでの減少が見られている。

1月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が46.6(前月44.3)と改善。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。

内訳を見ると新規受注が43.9(38.9)と改善、それに伴い生産も50.2(43.4)と2022年1月以来の50超えとなった。政策効果が一定程度見られているようだ。

ただし、新規受注完成品レシオは0.83と在庫の積み上がりで先月(0.94)から低下。原材料レシオは1.00(0.89)と上昇しているが、製品需要増加に前倒し対応した結果在庫に低下圧力が掛かったためと考えられる。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは56.4(54.4)と回復、明らかに中国政府の不動産セクターテコ入れ策の効果だろう。

しかし、これらの数値も中国政府主導のテコ入れ策が奏功すれば改善しようが、あくまでゼロコロナ状態が通常状態に戻るだけ、ともいえ今後も回復が継続するかどうかは2月のPMIを待つ必要がある(アンケートの取り方的に、「先月との比較」で調査を行うため、ゼロコロナのような経済に不連続をもたらす施策が採られた後の統計は1ヵ月だけで判断するべきではない)。

12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲30.0%の69万9,620トン(前月▲47.2%の75万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+7.4%の540万1,000トン(+28.2%の559万トン)と過去5年平均を上回り高井水準を維持している。

12月の中国粗鋼生産は前年比▲9.6%の7,789万トン(前月+7.5%の7,454万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った。

中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画であるが、累計で10億2,524万トン(前年10億3,856万トン)と前年を下回った。

粗鋼生産は抑制気味で、国内製品が海外に流出する状態になっている。しかし、中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、在庫水準は高くない。そのため、季節的な要因もあるが今後、中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

本日も、製品在庫の積み上げの動きが変わらない中で、鉄鋼原料価格は高値を維持すると考える。

今後は住宅問題を中国が解消できれば回復はあるだろうが、そう簡単ではないと考えられ、上値も重いとみる。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅に上昇。米PPIを受けた実質金利の上昇が基準価格を押し下げたが、脱米ドル、準備通貨の配分変更の動きが特に反米国で強まっていることが金価格を高止まりさせていると考えられる。

金の基準価格は▲8ドルの844ドル、リスク・プレミアムは+8ドルの992ドル。銀価格も下落、PGMは株価の下落もあって大幅に下落した。

銀は小幅に下落、PGMは売られ過ぎからの買い戻しで上昇した。

金価格に対する説明力は引き続き実質金利が最も高い。しかし、米金融引締め加速によってこの構造に変化が見られ、実質金利で説明可能なポーションは50%を下回っている。

現状はクレジットリスクが強く意識されていると考えられることから、期間1年程度の北米CDSとリスク・プレミアム(実質金利で説明できない部分)の回帰分析を行うと、リスク・プレミアム中、600ドル程度が安全資産需要と見做され、残りがドル指数などのその他の要因、ということになる。

また、世界の情勢変化や「通貨に対する信用の低下」ロシアに対する「ドル決済停止」を受けて有事に備えて金準備を積みます動きが、新興国・反米諸国で見られていると考えられ、金価格の上昇要因となっている。

基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるか、はデータの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しを変更する必要はないと考えている。

ただ、その価格水準は弊社が想定していた価格(1,650ドル程度)よりは高い水準になる可能性は高まっている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオは81倍と、ボリンジャーバンドの下限である73倍で反発している。今後、米景気が減速することを考えると、むしろ金銀レシオは上昇する可能性が高い。

足下は12ヵ月移動平均となる83.8倍が意識される。ただ、米国での太陽光パネル設置が脱中国の中でも進展しそうな感じであること、EV車へのシフトに伴い、工業品としての銀需要の増加も見込まれることから、ボリンジャーバンドの上限である94倍までの上昇はないのではないか。

本日も、FOMCメンバーの講演・討論会の出席が予定されており、現状、タカ派な発言が予想されるため軟調な推移を予想。ただし金は政府・中央銀行の準備金のアロケーション変更需要の高まりから、高値維持を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は小動き。原油価格下落やドル指数上昇を受けて総じて軟調。大豆はアルゼンチンの生産動向が価格を支えた。

昨年の降雨の影響でアラビア半島でのバッタ発生リスクを懸念していたが、今のところサバクトビバッタの群生発生は確認されておらず、供給へのリスクは低下している状況。

本日も、FOMCメンバーの講演が複数予定されており、現在の米経済統計の内容を見るにタカ派な発言が目立つと考えられ、軟調な推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

日銀総裁の交代後に進むと期待される金融正常化が、極端な円高(ドル安)を誘発し、商品価格にプラスに作用するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク)

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ首相の汚職疑惑が現実の物となった場合の近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「インド近代化遅れのリスク」

現在、インドで発生している「アダニ事件」。インドのインフラ投資の最大シェアを獲得しているアダニグループの不正問題であるが、かなり長い間、モディ首相と関係がある人物が率いているグループでもあり、インフラ投資政策が減速、非鉄金属需要を冷やす可能性も出てきた。今のところ市場は落ち着きを取り戻し、本件のインド経済全体への影響は限定的と見られている。

インドは2018年から人口ボーナス期入りしたため、今後、近代化に向けた投資加速で工業金属需要(ストック需要)が増加することは確実と見られるが、中国のような共産党一党独裁(ある意味、日本も戦後はそうだった)の国ではないため、民意の理解が必要になるため、近代化の進捗ペースは緩やかなものになるだろう。

また、中国のような「製造業中心」の成長(フロー需要の増加)が達成できるかどうかはまだなんとも言えない。

というのは、インドのGDPに締める各産業の比率を見ると、直近Q322時点で最もシェアが大きいのが金融・保険で26.4%、次いで貿易・宿泊・運輸・通信で18.5%、製造業は17.1%であり、モディ政権になってからむしろ製造業の比率は低下している。

モディ首相が「メイク・イン・インディア」と主張していたのは製造業セクターのテコ入れが必要であることを認識していたためと考えられる。この方針は製造業のテコ入れにサポートとなったが、これまで家計消費主導のGDP構造になっていたためサービス業の比率が高く、製造業の「裾野」が広くないことが、製造業の拡大に寄与していない。

即ち、製造業が製品を作るに当たり、部品を海外から輸入することになるため製造業の活動の拡大が経常収支赤字に繋がるといった副作用が小さくないのだ。

今後も外資導入を続け、製造業を誘致していく必要があるが、インドの国内産業を駆逐してしまう可能性がある中国企業の進出を防ぎつつ、いかに製造業セクターを成長させるかは、非常に難しい問題である

今後、インドが安定成長を達成するためにこの点は重要なポイントとなるだろうが、そのために今後インドがどのような国になっていく(何で稼ぐ国になっていく)のかはまだ明らかではない、

また、アダニ事件の問題の広がりも懸念されるところである。富豪のアダニ氏は、モディ首相と同郷で西グジャラート州出身。両者が親密であったことも指摘されており、モディ政権の政策が揺らぐことがあれば、「近代化投資」すらままならない可能性がある。この場合、人口ボーナス期入りしているにも関わらず、汚職や政治不信で全く期待した成長ができていない、南米のような国になるリスクも否定できなくなってくる。

しかし、冒頭でコメントしたとおり、今のところ市場は今回の問題を冷静に判断しており、いったん落ち着きを取り戻している状況。とはいえ、政権に波及した場合の影響が小さくないことから、今後の推移を見守る必要があることに変わりはない。

またインドが経済的に失速した場合、スリランカなどの周辺地域が中国の草刈場になったり、景気優先で外資導入の際に中国が進出してくる可能性もあり、この場合世界のパワーバランスにも大きな影響を及ぼすことになる。

ただ、インドは通常1つの国に1回しかない成長のチャンスのタイミングに有るため、過去の各国の歴史を見ればこれを自ら進んで潰す、という愚は犯さないのではないか。


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