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先週末の流れを受けて軟調
  • MRA商品市場レポート

2023年2月7日 第2386号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「先週末の流れを受けて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は総じて軟調な推移となった。先週末の米雇用統計、ISM非製造業指数を受けた米国の利上げ長期化観測を背景とする、ドル高進行が価格を下押しする形となった。

価格が上昇したのは、割安感が出ており、まだピークシーズン中であるため発電燃料と、景気に循環し難い畜産品・その他農産品が物色された。

市場は先週発表された雇用統計をまだ消化仕切れずにいると考えられる。雇用統計が単月の改善ではなく、12月分も上方修正されており、FRBや市場が想定しているよりも特にサービス業の景況感が悪くなかったからだ。

こうなると、昨日アトランタ連銀ボスティック総裁が発言したように、ターミナルレートのピーク水準の見直しは必要になるだろう。今晩のFRBパウエル議長の発言には注目が集まる。

しかし、循環的な景気の減速や米国の石油製品出荷の減速を見ると、やはり米景気は減速していると考えるのが妥当であり、インフレ率も鈍化していることもまた事実であるため、今のところ「利上げ期間の延長」の可能性が高いが、微修正、といった所だろうか。

今のところは期待インフレ率の低下に伴い、政策金利を高止まりさせると実質金利上昇で金融引締めとなってしまうため、その調整のための利下げが11月・12月頃にあるかもしれない、という状況だが、粘着質なインフレが続くようだと、FRBが主張するように年末に掛けてターミナルレートを引き下げない、ということは充分に有り得る話だろう。

なお、今回の一連の価格下落局面では、「脱炭素の枷」「金利引き上げによるコスト上昇」に充分な上流部門投資が行われていない。原油生産者のCAPEX予想を見ても今後3年、横這いである。

となると、景気が底入れすれば再び商品価格が上昇してインフレ、それを抑制するための金融引締めが...という展開が想定される。商品価格は中期的に下落、長期的に上昇とみているが、想定因りもボラタイルな展開になるリスクは小さく無いと見ている。

【本日の見通し】

本日は複数の企業決算の発表が予定されているが、恐らく注目はFRBパウエル議長の発言だろう。

1月の強い雇用統計を受けて「ハト派」の発言をする理由は余り見当たらないことから、恐らく今日の商品価格はドル高進行で軟調な推移になる商品が目立つと考えられる。

この他の注目材料は、米バイデン大統領の一般教書演説や、米3年債入札動向などだろうか。

【昨日のトピックス】

中国が民間のものと主張している観測気球が、バイデン大統領の命令で大西洋上で撃墜された。気球の移動経路を見ると、アラスカ半島から侵入し、米国の主要な軍事基地を通過している。

これを以て「民間機が誤って侵入した」と主張されても納得できるものではない。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000286296.html

ニュースで経緯を見ると

2月1日バイデン大統領 中国の気球が米国上空を飛行していると報告を受ける。オースティン国防長官は「米国の戦略拠点を監視する目的で中国が使用」と指摘。

ブリンケン国務長官訪中延期を発表。

2月3日王毅政治局委員兼中央外字工作弁公室主任、ブリンケン国務長官に架電、「冷静にプロフェッショナルな態度で突発事象に対処することが大切だ。中国は一貫して国際法を守る」と伝達。

2月4日中国外交部報道官、「偏西風の影響で自身の制御に限界があり、当初予定していた航路を大きく外れた」「気象研究が目的だ」

2月5日中国外交部・国防部、「強烈な不満と厳正な広義」「米国が武力を行使して民間の気球を打ち落としたやり方は過剰反応」「より一層の必要な対応を行う権利を保留する」「必要な手段を用いて、同じような状況に対応する権利を保留する」

この場合、権利を保留は「権利を有する」となるわけだが、平たく言えば「米国が類似のことをすれば撃墜しますよ」ということになる。

ここで解せないのが、ブリンケン国務長官の訪中がキャンセルになる可能性が高い事案であるにもかかわらず、民間の気球と主張するならば、航路を逸れた時に詳細な説明があって然るべきだが、それがなかったことだ。

つまり、航路が想定より逸れたかもしれないが、邪な意図で放たれた気球である可能性が高い。共産党政権中枢が把握していなかった可能性もゼロではないが、習近平の独裁が進む中で後者は考え難い。

結局、米国がどのように反応するかを確かめていると考えるのが妥当だ。しかしここまで経済状況が悪化し、米国との関係修復が重要になる中で、あえて自国に不利な選択をした理由は何か。

ここに関しては憶測の域を脱しないが、台湾問題を巡り、台湾を攻撃するにあたり「米国が中国に対してこうしたから」という口実作りに使われたと考える方がしっくりくる。となると、台湾有事の可能性が上がった、ともいえる。

今後、米中がどのようにこの問題を解決していくかに注目が集まるが、いずれにしても事態は1ヵ月前よりも改善する方向には向かっていない、と言えるのではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米国の経済統計が改善していることから、ドル高はあったものの消費回復期待が価格を押し上げた。ほぼ予想通りの展開。

しかし、米国の石油製品出荷は恐らく景気の減速の影響と考えられるが既に減速しているため、この数日の下落で割安感が出たことからのテクニカルな買い戻し、と整理するのが妥当だろう。

基本は景気の循環減速や米国の金融引締めによる景気減速で製品出荷が減速しており、価格は需給面では下押しされやすい。

しかし、Chevronの決算でも明らかなように、記録的な利益の使い道として750億ドルの自社株買いを発表した。これに対して2023年度のCAPEXは総額前年比+25%の140億ドル、うち20億ドルが低炭素向けの投資となった。

金額は増えているが「脱炭素の枷」が上流部門投資を踏みとどまらせており、余剰資金では自社株買いを行うことが株主還元になる、と判断しているようだ。これは恐らくExxonなど、その他のメジャーでも同じ動きになると予想される。

結局、上流部門の開発が加速する、という感じではないため原油供給が制限され、OPECプラスの価格支配力が増し、価格は下支えされることになりそうだ。これはこれまでの原油価格高騰局面とは異なる動きである。

また、米国の雇用環境がタイトな状態が続き、このまま仮にリセッションがない、と言うことになれば年後半の原油価格の上昇を受けて再び利上げが行われ、原油価格が急落というシナリオも有り得る。

そもそもインフレは供給能力の改善で解消されるべきだが、今回は様々な「枷」がはめられているため、その理屈通りとならないリスクが常につきまとうことになる。

今後の原油相場を占う上では、ドル指数の動向と原油価格の動向をクロスオーバーして見ていく必要がある。早晩、金融政策(どちらかと言えば緩和的なバイアス)を受けて原油価格が底入れし、ドルよりも先に上昇を始めると予想される(景気の転換点・底入れのサイン)が、それはまだ先だろう。

ロシアは欧米の制裁に対して、原油価格上限設定国に対する原油・石油製品輸出を禁止する大統領令に署名した。原油輸出は2月1日から5ヵ月間禁じられ、石油製品に関しては別途、政府が通達するとしている。

石油製品の制裁はあと3週間で始まるが、現状、まだ4割近くのディーゼルやガスオイルを欧州はロシアから調達しており、それを代替するのは不可能だろう。

中国やインド、中東からの中間留分の迂回供給の可能性はあるものの、実際には難しい。2月以降、再び製品主導でBrentなどの中間留分リッチな原油の価格が上昇する可能性があるが、より懸念されるのが、石油製品価格の上昇に伴うインフレの再燃ではないか。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を禁輸、ロシアが報復措置を厳正に行った場合(ないしはOPECプラスの減産)Brent 75-100ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル / 75-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 70-90ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 65-85ドル / 75-95ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落し、今年のQ323頃に景気が底入れするため、年後半に掛けては再度上昇するとみる。

しかし、ここに来て景気の減速が想定ほどではないかもしれない、との見方が徐々に出始めている。この場合、明確な調整がないまま原油価格が上昇に転じる展開も想定される。

この場合は年後半に再びインフレが意識されるため、追加利上げで年後半に景気が急減速、と言うことも有り得る状況。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まりする可能性が高い。

Q123~Q123 需要の伸び減速・生産調整 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、経済統計などよりもFRBパウエル議長が前回の雇用統計を受けて、どのような発言をするかに注目が集まる。単月の影響であるかを見極める、といった趣旨の発言になると予想されるが、その場合でも利上げ期間の延長で軟調な推移になるのではないか。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小動き。

欧州の天然ガス在庫の水準は高い。暖冬と再生可能エネルギーからの電力供給回復が背景にある。

そのため改めてガス在庫動向をシミュレーションをしてみると今のところ▲10%の需要削減が可能であれば2023年のガス調達には問題がなさそうだ

しかし、需要削減が▲5%程度に止まったり、現在20%程度の稼働となっているロシアからのガス供給が完全に停止する事態になればガス供給は不足することが予想される。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

TTFはガスやLNGの取引の国際指標として現物契約に用いられている価格であるだけに、その他のガス市場への影響も小さくないと考える。

足下のガス在庫の水準は高いが、今年は年初からロシア産ガスの供給が期待できないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

ドイツは浮体式のLNG受入ターミナルの整備を進めているが、こうした取組みも脱ロシア達成には5年程度かかると考えている。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開(フル稼働は3月頃か)、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

ナイジェリアは徐々に状況の改善が伝えられているが、洪水前からナイジェリアのLNG輸出は減少しており、まだ回復していない。

3.4.は顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは2023年1-3月に50%、2-4月は71%の確率で正常化すると予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

1月23日-29日のLNGトレードは、761万トン(前週793万トン)と減少した。スポット取引のシェアは18%(19%)と低下した。

北欧とイタリア向けのスポット取引はが▲40万トンの減少、一方でターム契約は+30万トンの増加となった。日中台韓のスポット取引は+30万トンの増加、主に韓国と日本向けの増加によるもの。1月の中国の輸入は春節の影響で緩慢だった。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも低下しているが、スエズ以西の低下圧力が強い。このことは記録的な暖冬とこれまでの在庫積み上げで、足下の欧州の調達需要が減速していることを示唆するもの。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物はほぼ変わらずだが、小幅に上昇。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は小幅に下落した。中国の需要回復の遅れやアジアの気温低下が一服したことが材料。

12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲11.8%の1,028万トン(前月▲3.8%の1,032万トン)と前年比での減少幅を縮小した。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。

12月のLNG輸入は前年比▲13.5%の659万6,000トン(前月▲7.0%の642万トン)と前年比のマイナス幅が拡大。

12月のパイプラインベースの輸入は前年比▲8.5%の368万トン(前月+1.7%の389万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。

中国の天然ガス生産は12月は+5.7%の1,500万トン(前月+7.4%の1,389万7,000トン)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。

12月の中国の発電料ははまだゼロコロナ政策を堅持していたタイミングであるため、消費電力は前年比▲4.6%の7,784億kwh(+1.6%の6,828億kwh)と低迷していたこと、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。

今後、集団免疫を獲得して正常化が進む中、石炭などは豪州に対して増産要請が出されるなど、今後、国内需要回復の可能性は高い。結果、天然ガス価格を下支えすることになるだろう。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直さされることになるため、LNG価格の上昇要因となる。

ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はないと言えるが、それ以上に付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくないと考える。この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

1月29日時点の日本の発電用LNG在庫は253万トン(前年同月末180万トン、2018~2022年平均205万4,500トン)と過去5年レンジを上回っている。

しかし、冬はまだ続いており例年あるように気温次第で来年の2月頃にガス供給が不足して価格高騰、ということも有り得る。

さらに、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

本日は新規手掛かり材料に乏しい中、現状水準でのもみ合いを予想する。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、ロシアからのガスフローが事実上途絶していることを考えると、下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は大幅に上昇した。中国の経済活動が緩慢なことなどを受けて、限月交代後も低水準で推移していたが、さすがに割安感があることから買い戻しが入ったようだ。ただ、期先の価格は200ドルを回復していない。

これから冬場が終了に向かう中、さらに全体の水準が切り上がる、というのは考え難いが、期近は供給面の影響でも価格が変動するため神経質な推移になろう。注目は2023年-2024年に掛けてはコンタンゴに転じている点だ。

豪州炭の主要な買い手は日本であるが、主要電力会社が豪州炭価格の上昇を背景に炭種の変更や低カロリー炭への変更を次年度から行う方針を示しており、徐々に欧州炭と豪州炭の価格差は縮小することが予想される。

しかし、結局のところ欧州炭価格は欧州のガス価格に左右されるため、まだ冬が終らず、夏場が猛暑、今年の冬の厳冬、といったリスクは残るため「脱ロシアが完全に完了すると期待される2027年頃」までは、上振れリスクは小さくないとみている。

12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲0.1%の3,090万8,000トン(前月▲7.8%の3,231万トン)と前年比マイナス幅を縮小した。中国の経済活動再開を睨んだ在庫の積み上げと考えられ、過去5年レンジの上限での推移となっている。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後輸入は増加が予想される。やはりカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

12月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、一時250ドルに迫った期先の価格は180~200ドルに低下している。豪州炭の構造的な需給緩和期待が高まっている、と言えるだろう。

なお、ロシアに対する制裁とは関係なく、冬場が終了し、かつ、ラニーニャ現象が収束すると見られる4月以降、石炭価格は下落するとみているが、その後、夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

本日は、目立った材料に乏しい中、現状水準を維持すると考える。

◆非鉄金属

LME非鉄金属市場は大幅に続落した。中国の経済活動再開が遅れていること、先週末発表された米経済統計の改善を受けたドル高進行、気球問題を背景にした米中対立の激化が、中国の輸出の回復を遅らせるのではとの見方が価格を押し下げた。

やはり、中国のリオープンや例年よりも早い春節入りの影響で駆け込みの在庫積増しの動きが顕著だったと考えられ、この間に積み上がった投機筋の買いポジションの利益確定の売りの動きでしばらく軟調な推移になると予想される(中期的な材料がより意識されている)。

引き続き、投機筋の動向は注視する必要があるが、長期的な材料(3つの「脱」)で買いを入れたのならば、中期的な景気減速に伴う価格下落はその余地が限定されることを示唆している。

1月の中国製造業PMI急速に改善している。ゼロコロナ解除と不動産セクターのテコ入れの影響によるものだ。しかし、PMIは「前月と比較したときの景況感」をヒアリングしているため、「政治的に強制的に経済活動が稼働・停止」を繰返している状況下では、統計の連続性が担保されていない。

今後の動向はやはり2月のPMIを待たなければならないだろう。ただ、中国の財政余力、海外経済の減速を考えると2月も高水準の回復は余り期待するべきではないだろう。さらに改善があるならば、中国が3月の全人代を睨んで追加的な対策を行った場合、だろう。

なお、ペルーで発生した暴動が沈静化しておらず、銅生産への影響が顕在化している。ペルーは世界2位の銅鉱山生産量を誇り(2021年実績)、この国の問題長期化は銅供給への影響が小さくない。

暴動の背景は、2021年に誕生した左派カスティジョ政権が、コロナの影響による国内混乱を沈静化できず、首相が5回も交代、カスティジョ自身も汚職の問題が指摘され、弾劾に至った。

後任のボルアルテ大統領はカスティジョ前大統領と共に大統領選を戦った朋友だが、政権安定のために議会の多数派を占める右派と協調したことで国民の反発が強まる形となっている。

結果、2024年4月に大統領選挙を2年前倒しする憲法改正を実施、事態の沈静化に注力しているが、今のところまずこの大統領選挙問題を乗り切らなければ事態の沈静化は難しいかもしれない。

この状況を受けてボルアルテ大統領は、今年12月に選挙をさらに前倒しすることを議会に提案している。

弊社はもう少し早期に収束の道筋が見えるのでは、と考えていたが現状を整理すると先行きの不確定要素は多く、今後、銅供給制限が長期化して価格を押し上げる可能性が高まったと考える方が妥当だろう。

中期的には景気の循環によって、恐らくQ323~Q423あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移を予想する。

リスクとしては、想定よりも景気が減速せず回復基調に入り非鉄金属価格も上昇するケース。現在、投機筋が積極的に非鉄金属を購入しており、「今年の投資テーマ」になっている可能性が否定できず、価格のアップサイドのリスクを高めている。

また逆のリスクとしては、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きとなる。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

12月の中国の非鉄金属生産は、銅が過去5年の最高水準を下回ったが、その他の金属は過去5年の最高水準を上回った。ゼロコロナの解除期待、不動産セクターのテコ入れ策(主に資金繰り策)、それに伴う生産活動の再開が影響しているとみられる。

12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+14.6%の51万4,049トン(前月+4.0%の53万9,902トン)と過去5年平均は維持した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+2.1%の210万3,029トン(前月+10.0%の241万トン)と過去5年の最高水準で推移している。

12月の中国の精錬銅生産は+0.1%の96万1,000トン(前月+22.5%の111万5,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は12月が前年比▲4.8%の147万6,000トン(前月+16.5%の165万5,000トン)と過去5年の最高水準を下回った。生産・輸入とも、ゼロコロナ政策堅持が影響したとみられる。

しかし、2月以降はリオープンの動きが始まるため回復(前々年程度の回復が上限か)が予想される(1月は中国正月の影響で営業日数が少ない)。

12月の銅スクラップの輸入は前年比▲13.9%の13万9,174トン(前月▲1.9%の16万1,590トン)と過去5年平均を下回った状態が続いている。景気減速に伴い、スクラップの供給も減少していると考えられる。

本日も、これまでの下落幅が大きかったことから特に実需筋の安値拾いの買いが入ると考える。夜間のパウエル議長の発言は恐らく利上げ早期終了を示唆する内容にはならないと考えられるため、結局は前日比マイナスで引けるのではないか。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物はまちまちだった。

中国の経済活動再開期待を受けた鉄鋼原料在庫積増しの動きが、鉄鋼製品在庫水準の高さを背景にいったん鈍化したことが影響したとみられる。

1月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が46.6(前月44.3)と改善。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。

内訳を見ると新規受注が43.9(38.9)と改善、それに伴い生産も50.2(43.4)と2022年1月以来の50超えとなった。政策効果が一定程度見られているようだ。

ただし、新規受注完成品レシオは0.83と在庫の積み上がりで先月(0.94)から低下。原材料レシオは1.00(0.89)と上昇しているが、製品需要増加に前倒し対応した結果在庫に低下圧力が掛かったためと考えられる。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは56.4(54.4)と回復、明らかに中国政府の不動産セクターテコ入れ策の効果だろう。

しかし、これらの数値も中国政府主導のテコ入れ策が奏功すれば改善しようが、あくまでゼロコロナ状態が通常状態に戻るだけ、ともいえ今後も回復が継続するかどうかは2月のPMIを待つ必要がある(アンケートの取り方的に、「先月との比較」で調査を行うため、ゼロコロナのような経済に不連続をもたらす施策が採られた後の統計は1ヵ月だけで判断するべきではない)。

12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲30.0%の69万9,620トン(前月▲47.2%の75万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+7.4%の540万1,000トン(+28.2%の559万トン)と過去5年平均を上回り高井水準を維持している。

12月の中国粗鋼生産は前年比▲9.6%の7,789万トン(前月+7.5%の7,454万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った。

中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画であるが、累計で10億2,524万トン(前年10億3,856万トン)と前年を下回った。

粗鋼生産は抑制気味で、国内製品が海外に流出する状態になっている。しかし、中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、在庫水準は高くない。そのため、季節的な要因もあるが今後、中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

週末発表の在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+204万5,000トンの1,610万1,000トン(過去5年平均 1,133万1,000トン)。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+305万トンの1億3,650万トン(過去5年平均 1億3,953万6,000トン)、在庫日数は29.2日(▲2.4日、過去5年平均30.1日)。生産回復を受けて在庫は日数ベースでも、数量ベースでも不足の状態に。

原料炭在庫は+5万トンの210万トン(138万トン)、在庫日数は▲0.7日の8.4日(過去5年平均 5.6日)と日数ベースでの減少が見られている。

本日は、鉄鋼製品在庫は積み上がっているものの、生産回復に伴う原料在庫の日数ベースの水準が低いため、在庫積み圧力は継続し上昇すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格はもみ合った結果、前日比プラスで引けた。米国の統計改善を受けた実質金利の上昇が金の基準価格を押し下げた(前日比▲26ドル)が、安全資産需要(米金利引き上げによる各国経済混乱、基軸通貨ドルへの反米勢力の挑戦、気球問題など)がこれを相殺した。

銀価格はもみ合ったが小幅に下落、プラチナも同様。パラジウムは株価の下落もあって大きく水準を切下げている。

金価格に対する説明力は引き続き実質金利が最も高い。しかし、米金融引締め加速によってこの構造に変化が見られ、実質金利で説明可能なポーションは50%を下回っている。

現状はクレジットリスクが強く意識されていると考えられることから、期間1年程度の北米CDSとリスク・プレミアム(実質金利で説明できない部分)の回帰分析を行うと、リスク・プレミアム中、600ドル程度が安全資産需要と見做され、残りがドル指数などのその他の要因、ということになる。

また、世界の情勢変化や「通貨に対する信用の低下」ロシアに対する「ドル決済停止」を受けて有事に備えて金準備を積みます動きが、新興国・反米諸国で見られていると考えられ、金価格の上昇要因となっている。

基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるか、はデータの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

なお、この状況にあっても実質金利が上昇する中で、金価格には下押し圧力が掛かりやすいため、年末に向けて水準を切下げるという見通しを変更する必要はないと考えている。

ただ、その価格水準は弊社が想定していた価格(1,650ドル程度)よりは高い水準になる可能性が出てきた。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオは81倍と、ボリンジャーバンドの下限である73倍で反発している。今後、米景気が減速することを考えると、むしろ金銀レシオは上昇する可能性が高い。

足下は12ヵ月移動平均となる83.8倍が意識される。ただ、米国での太陽光パネル設置が脱中国の中でも進展しそうな感じであること、EV車へのシフトに伴い、工業品としての銀需要の増加も見込まれることから、ボリンジャーバンドの上限である94倍までの上昇はないのではないか。

本日はパウエル議長の発言待ちだが、1月の統計を受けてハト派的な発言をする可能性は低いとみられ、総じてタカ派的な解釈をする市場参加者が多いと考えられることから、貴金属セクターは軟調な推移を予想。

ただし、金に関しては安全資産需要が見込まれることから、高値維持の公算。

◆穀物

シカゴ穀物市場はドル高の進行もあって総じて軟調、トウモロコシは原油価格の上昇もあって前日比小幅高で引けた。

現在、市場は新規手掛かり材料待ちの状態だが、今晩、CONABの、明晩はUSDAの需給報告が発表される。現在取得可能な市場予想は以下の通りと、ややベア目な内容になると予想される。

・2月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,276万ha(2,232万ha)大豆 4,354万ha(4,346万ha)

・2月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億2,685万トン(1億2,506万トン) 単収 5,577kg/ha(5,604kg/ha)大豆 1億5,328万トン(NA) 単収 3,523kg/ha(3,514kg/ha)

・2月米在庫見通し(市場予想/前月)トウモロコシ 12億7,340万Bu(12億4,200万Bu)大豆 2億1,124万Bu(2億1,000万Bu)小麦 5億7,464万Bu(5億6,700万Bu)

昨年の降雨の影響でアラビア半島でのバッタ発生リスクを懸念していたが、今のところサバクトビバッタの群生発生は確認されておらず、供給へのリスクは低下している状況。

本日は、FRBパウエル議長の発言に注目だが、恐らくハト派にはならないと考えられるためドル高が進行して軟調な推移になると予想される。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

日銀総裁の交代後に進むと期待される金融正常化が、極端な円高(ドル安)を誘発し、商品価格にプラスに作用するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気の先行きを楽観した市場の買いで資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク)

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「ロシアのウクライナ侵攻と中東情勢~その1」

資源価格の高騰と乱高下の可能性

2022年は激動の1年だった。2019年に中国で感染例が報告された新型コロナウイルスが世界中に拡大、それに伴う景気悪化や信用不安の拡大を回避するために行われた金融緩和や財政出動を契機に景気回復とインフレが進行した。

そして、かねてから進んでいた脱炭素の動きが化石燃料供給を制限していたことで世界中がエネルギーや調達コストの上昇への対応に苦慮、このタイミングでロシアがウクライナに対する軍事侵攻したことでさらに化石燃料供給が制限されインフレも加速、各国中央銀行はインフレ抑制のために金融引き締めを加速せざるを得なくなった。

この一連の脱炭素の流れ、コロナ対応、ロシアの軍事侵攻への対応の結果発生している脱ロシアの動きは、「第3次オイルショック」に分類すべきものと考えている。この結果、化石燃料を含む資源価格は今後、高値で乱高下する可能性が高まると予想される。

第3次オイルショック?

そもそも原油市場における「ショック」の定義は曖昧であるが、経済合理性を度外視して供給・調達構造の変化を余儀なくされることが、恐らくショックの定義としては適切だろう。

今回のロシアのウクラナ侵攻を受けて、現在使用しているエネルギーを再生可能エネルギーを含む他のエネルギー源にシフトする動きが強まっている。これが経済合理性を担保しながら起きるならばショックとはいえない。

経済合理性をある程度犠牲にしても、「エネルギー供給に関わる構造変化」を経済合理性に因らず強制的に起こさねばならない可能性がある点で、今回の一連の動きは過去2回のオイルショックと同等のショックといえるのではないか。

ではこのショックの後、エネルギー市場の環境はどのように変化するか。これを考えるうえでは前回のオイルショックが参考になる。

第1次オイルショックは1973年10月6日に第4次中東戦争が勃発、アラブ産油国(OAPEC)が1973年10月17日に親イスラエル国と見做される国に対して原油輸出の禁止や販売価格の引き上げを決定した。

この突如発生した供給途絶と供給条件の一方的な変更は、世界経済に大きな衝撃を与えた。我が国もこの影響を免れず、消費者物価の上昇率は20%を超え市民生活にも大きな支障が生じた。

第4次中東戦争は11月11日にエジプトとイスラエルが停戦で合意したことで、短期の戦争で終了したが、原油供給を巡る中東諸国と西側諸国の対立は景気減速による石油需要の減少、その結果発生したOPECの価格支配力の低下で徐々に対立はトーンダウンした。

第1次オイルショックの結果、西側諸国は有事発生の緊急時の備蓄や相互融通の必要性を認め備蓄制度を整え、消費国で結束して産油国と対峙するために国際エネルギー機関(IEA)を経済協力開発機構内に設置することが決まった。

しかし原油に関する価格支配力は、欧米メジャーから中東産油国に移転することとなった。その後、しばらく原油市場は落着いた状況が続いたが、1978年10月のイランの製油労働者のストライキ発生をきっかけに原油輸出が停止、OPECは原油価格を4段階に分けて14.5%値上げすることを決定した。

さらに1979年には親米だったイランのパーレビ政権が倒れイラン革命が起きる。イラン革命自体は1978年1月に亡命中だったホメイニ師を担ぎ上げて始まった活動の結果、起きたものである。

この2回のオイルショックを受け1979年6月の東京サミットでは、1.省エネの推進、2.石油輸入目標の設定、3.その他のエネルギーの開発促進、が決議され翌年のベネチアサミットでは、一次エネルギー全体に占める石油の比率を40%程度に引き下げることが決議された。

また、1981年に米国の大統領となったドナルド・レーガンは、「国外へのエネルギー依存の高さ」がエネルギーの安全保障上の重要なリスクになると判断し、エネルギー政策を変更して国内生産を増加させる方向に舵を切った。

こうした流れを受けて第1次オイルショック時の1973年のエネルギー消費に占める石油シェアは49.4%(熱量換算ベース)であったが、湾岸戦争前の1989年には39.7%まで低下した。原油市場におけるOPECシェアも1973年は50.6%だったが、1989年には34.4%まで低下している。

これにより原油価格は引き下げを余儀なくされ、一連のオイルショックは終了した。

この2つのショックを通じて言えることは、中東への原油依存度を低下させるために自国や同盟国内での原油を増産し、石炭やガス、原子力などの代替エネルギーを求める動きが強まったことだ。

言葉を換えれば、エネルギー調達を通じて中東の混乱は、消費国経済に顕著な悪影響があることが分ってしまったため「強制的に供給能力、調達手段の変更が行われた」とも言える。

これを現在に当てはめるとどうか。今回のウクライナ危機は中東ではなくロシアのエネルギーを巡るリスクを低下させることが目的で、EUは2027年頃までにロシア産のエネルギー(ガス、原油、石炭)依存脱却を目指すとしている。脱ロシアが終了すれば、過去のオイルショックの時と同様に化石燃料の供給増加で、価格は下落することが予想される。

しかし、原油に関しては2014年11月にOPECがスウィングプロデューサーの立場を放棄した「OPECショック」の影響で価格が急落したため、10年近く充分な上流部門投資が行われていない。

そのため、ロシアの依存を減らし、代替供給源の確保ができるまでは原油・ガス・石炭の価格は高値で推移することが予想される。代表的なものがガスで、欧州はロシアからのガス供給減少分を、米国や中東からのLNGで賄う必要が出てくるが米国の投資が完了して十分なキャパシティを確保できるのは2027年頃になると見られている。

米国がLNGの供給能力を増加させるためには、恐らく随伴ガスの増産に繋がる原油も増産に舵が切られるだろう。

そしてロシアの重要な外貨獲得手段である原油やガスの生産は継続し、中国やインドなどの中立スタンスを維持する国や新興国向けに販売は継続するだろう。

こうしたメカニズムを通じても化石燃料の国際市場需給は緩和することになる。長期的には原油・ガス市場の需給バランスの緩和が予想され、価格下落の可能性が出てくる。

上記は化石燃料の上流部門投資に制限がなかった場合のシナリオだが、前回のオイルショック時と今回で大きく異なるのは、先進国が「脱炭素」に舵を切っている点だ。

国際エネルギー機関の長期見通しでは、温室効果ガスの排出に関して、2050年までに実質ゼロエミッション(NZE)を達成しようとした場合、バッテリービジネスがエネルギーセクター最大の業種になると予想している。

NZEの条件下、特に需要が増加すると見られているのが銅で1,000万トンの増加となる。その他、リチウムや正極材に用いるコバルト、ニッケル、マンガン、負極財に用いる黒鉛の需要も急増すると予想される。また駆動に用いるモーター(磁石)に用いられるレア・アースの需要も増加することが予想されている。

しかし、脱炭素に必須の資源は生産地が偏在しており、価格に対する支配力が高く、ごく少数の資源国がこれを独占しているものが多い。ハーフィンダール・ハーシュマン指数(占有率が高い場合10,000、占有率が低い場合は0)が高い資源への依存が高い。

2022年11月に開催されたCOP27でも脱炭素の方針に変わりがないことが確認され、脱ロシアのためにも脱炭素の継続の必要性が主張され、IEAは再生可能エネルギー普及のために年間4兆ドルの投資が必要と提言している。

このことは、再生可能エネルギーの投資加速で必要資源の価格が高騰する可能性が高いことを示唆している。

脱炭素に必要な資源価格が上昇した場合、経済合理性の観点から化石燃料が再び見直される可能性がある。逆説的だが、脱炭素を進めることが脱炭素推進の障害になり得ると言うことだ。

また、今回のロシアのウクライナに対する軍事侵攻を契機に、特に欧州を中心に軍事力の強化に舵を切る動きが強まっている。このことは国家や国民の負担が重くなることを意味しており、コストを払ってまで直ちに再生可能エネルギーに移行する、というインセンティブを削ぐことも想定される。

そのため、化石燃料の上流部門投資が制限される中で、市場の小さな再生可能エネルギー市場に資金が流入するとコスト面で割が合わなくなり、思ったほど脱炭素が進まない可能性があると言うことである。この場合、化石燃料の価格は高止まりが予想される。

万難を排して再生可能エネルギーが普及したとしても、再生可能エネルギーや自然エネルギーは天候要因に左右され「世界で同時に供給が途絶するリスク」があることは、2021年から始まった異常気象の影響で実際に欧州で顕在化しており、有事に備えて化石燃料のバックアップが必要であることは自明となった。

IEAの現行政策維持シナリオでも、2030年の原油需要は10,240万バレル/日と現在の9,450万バレル/日から790万バレル/日、増加すると見られている。

この増加分の大半を中東と北米の増産が埋めることになるが、西側諸国が脱炭素で上流部門投資を手控えると予想される一方、歳入確保の重要性から一定の増産を継続すると考えられるのはやはりOPEC諸国であり、中東地区の重要性は増すことが予想される。

自由主義国・専制主義国の中に「中東産油国」という第三局が生まれるとも言えるだろうか。また、NZEシナリオだと原油需要は2050年に2021年比で5分の1までの減少を見込んでいるが、この推計通りであればOPECプラスのシェアは52%に達すると考えられ、仮に販売量が5分の1に減るならば、OPECプラス諸国の歳入確保の観点から原油価格を引き上げてもおかしくない。

これまで西側諸国は価格が上昇すれば経済合理性の観点から化石燃料の増産をする選択ができたが、脱炭素の方針を堅持する中では増産は困難と考えられる。

これまで見てきたように、東西の分裂に中東諸国が第三局として台頭する可能性があること、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、中東のパワーバランスにも変化が生じる可能性があることを考えると、エネルギー市場を巡る中東のプレゼンスはより高まることが予想され、エネルギー調達を巡り、中東の地政学的リスクを消費国は引き受けざるを得なくなると予想される。


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