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中国の駆け込み需要一巡で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート

2023年1月23日 第2375号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国の駆け込み需要一巡で高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は中国の駆け込み需要の一巡で高安まちまちとなった。タカ派なスタンスのFOMCメンバーの発言はあったものの利上げが終盤に差し掛かっている、との解釈で株価が上昇したことが広くリスクテイク意欲を回復させたことが価格を押し上げたが、中国勢の買い一巡が上値を重くした。

ドルは乱高下し、一時上昇していたが終盤に掛けて調整したため、結局ファイナンシャルな面で価格の下支え要因となった。

下落した商品は非鉄金属・貴金属の一角とその他農産品が主体だったが総じて新しい材料に乏しく、中国の買い一巡、週末を控えた調整的な取引が主体だったと考えるのが妥当だろうか。

年初から中国のリオープンをテーマとする買いが広く商品価格を押し上げて北が本日から中国が春節休み入りし、さらには1月一杯、感染防止(あるいは感染拡大で労働者が工場に戻らない)の観点から工場の稼働が止まる可能性があるため、特に工業金属セクターの方向性が出るのは、2月以降になると考えている。

【本日の見通し】

週明け月曜日は手掛かり材料に乏しく、現状水準でのもみ合いになると考える。ただ、工業金属に関しては最大の買い手である中国勢が不在のため買い手がいなくなることから、調整売りに押される展開を予想。

経済活動が中国で一旦鈍化することから、リオープンを材料に買われてきた原油価格も調整が予想される。

【昨日のトピックス】

昨日のトピックスではないが、帝国データバンクのレポートで2022年の倒産件数が3年ぶりに前年を上回ったと報じた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3bca1a64454ed6ba2eeb37c105ae72b8f71498a6

さらに、仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できずに倒産する「物価高倒産」は過去最高を記録したとしている。このことは日本は最終需要が弱い中、価格転嫁が充分に行えない、販売先との力関係で価格転嫁が難しい、と言うことが現実のものであることを示唆している。

この30年、日本は物価も賃金も上昇せずそれに馴れてしまった。もちろん他国と同様に物価が上がればそれが必ずしも正しいと言うわけではない。

しかし、日本はほとんどの商品を海外からの輸入に頼るため、海外市況の変化に晒される確率が米国等の資源国に比べて高いのは事実だ。

これまでこうしたリスクにはコスト削減などで日本は乗り切ってきた。仕入商品について言えば、数量の削減(デルタリスクの低減)がその対策の主体だった。

費用は「数量×価格」によって決まるが、この数量部分を減らす戦略である。これは2000年よりも前の「供給過剰時代」には非常に有効に機能した。なぜならば、この頃の価格はさほど変動しなかったからだ。

このとき、価格が上昇するのは何かしら大規模な不正が行われていたが、あるいは戦争などで一時的に供給が減少する時などに限られていた。

つまり、この頃の「価格リスクマネジメント」はマル秘情報を有している人(多くの場合サプライヤーや、生産者・消費者の間をつなぐブローカーなど)から優先的に情報を取ることだったと言っても恐らく言い過ぎではない。

しかし、価格変動が比較にならないぐらい大きくなった昨今、この方法では変動リスクを低減することは難しい。

帝国データバンクの調査では、全国の企業に2023年の懸念材料をヒアリングしたところ

原油素材価格(の上昇)(選択率72.7%)為替(円安)(同43.5%)物価上昇(インフレ)(33.3%)人手不足(26.1%)

となっている。恐らくこれらは景気減速の中で低下すると予想されるものの、米国の景気や中国が(その可能性は高くないとみているが)現在の不動産危機を乗り切り、回復基調を強めれば、その下落は仮初めのものとなるだろうし、脱炭素、脱ロシア、脱中国、これに加えてインドの人口ボーナス期入りを考えると、長期的にはやはり上昇圧力が強まる可能性が高い。

価格の上昇、変動リスクヘの対応は、引き続き焦眉の急と考えられる。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米金融当局者が利上げが終盤に差し掛かっていることを示唆する発言を繰返したことでドルが結局売られたことが材料となった。

週末を控えて50日移動平均線のサポートラインを試す動きになるとみていたが、逆にレジスタンスラインである100日移動平均線を試す動きとなり、その水準を抜けきれずに引けた。

今後の原油相場を占う上では、ドル指数の動向と原油価格の動向をクロスオーバーして見ていく必要がある。早晩、金融政策(どちらかと言えば緩和的なバイアス)を受けて原油価格が底入れし、ドルよりも先に上昇を始めると予想される(景気の転換点・底入れのサイン)が、それはまだ先だろう。

ロシアは欧米の制裁に対して、原油価格上限設定国に対する原油・石油製品輸出を禁止する大統領令に署名した。原油輸出は2月1日から5ヵ月間禁じられ、石油製品に関しては別途、政府が通達するとしている。

石油製品の制裁はあと3週間で始まるが、現状、まだ4割近くのディーゼルやガスオイルを欧州はロシアから調達しており、それを代替するのは正直不可能だろう。

中国やインド、中東からの中間留分の迂回供給の可能性はあるものの、実際には難しい。2月以降、再び製品主導でBrentなどの中間留分リッチな原油の価格が上昇する可能性があるが、より懸念されるのが、石油製品価格の上昇に伴うインフレの再燃ではないか。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を禁輸、ロシアが報復措置を厳正に行った場合(ないしはOPECプラスの減産)Brent 75-100ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 70-90ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 65-85ドル/75-95ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落する。しかし、楽観的なメインシナリオでは今年のQ323頃に景気が底入れするため、年後半に掛けては再度上昇するとみる。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まりする可能性が高い。

Q123~Q123 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッションの場合(↓)
Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は、手掛かり材料に乏しい中、米国の利上げ終了期待を受けたドル安が価格を押し上げ、100日移動平均線のレジスタンスラインを試す展開に。ただし、米景気の減速観(少なくとも石油製品出荷は回復していない)を受けて、この水準を上抜けるにはやや材料不足か。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。気温低下見通しやここまでの下落で追加調達需要が増加したため。またGazpromがウクライナ経由のガス供給を削減する見通しを示したことも価格の上昇要因となった。

欧州の天然ガス在庫の水準は高い。気温上昇と再生可能エネルギーからの電力供給回復が背景にある。

そのため改めてガス在庫動向をシミュレーションをしてみると今のところ▲10%の需要削減が可能であれば2023年のガス調達には問題がなさそうだ。

しかし、需要削減が▲5%程度に止まったり、現在20%程度の稼働となっているロシアからのガス供給が完全に停止する事態になればガス供給は不足することになる。

足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。

TTFはガスやLNGの取引の国際指標として現物契約に用いられている価格であるだけに、その他のガス市場への影響も小さくないと考える。

足下のガス在庫の水準は高いが、今年は年初からロシア産ガスの供給が期待できないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

ドイツは浮体式のLNG受入ターミナルの整備を進めているが、こうした取組みも脱ロシア達成には5年程度かかると考えている。

2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開(フル稼働は3月頃か)、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

Freeportの再開予定は1月後半よりも早いことはないとされ、場合によると3月以降の再稼働となる可能性がある。ナイジェリアは徐々に状況の改善が伝えられているが、洪水前からナイジェリアのLNG輸出は減少していたが、まだ回復していない。

3.4.は顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは2023年1-3月に50%、2-4月は71%の確率で正常化すると予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

1月9日-15日のLNG貿易は、766万トン(前週827万トン)と前週から減少、スポット調達の比率は18%(22%)とこちらも低下した。

北西欧州・イタリア向けのスポットカーゴは▲50万トンの大幅な減少、ただしその他の欧州の調達は+20万トンの増加となった。日中台韓は▲10万トンと小幅に減少。ターム契約はほぼ変わらず。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも低下しているが、スエズ以西の低下圧力が強い。このことは記録的な暖冬とこれまでの在庫積み上げで、足下の欧州の調達需要が減速していることを示唆するものだ。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は小幅に下落。米国の気温低下見通しがやや緩和したことが材料となった。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は上昇。欧州ガス価格が上昇したことを受けて買いが入った。

12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲11.8%の1,028万トン(前月▲3.8%の1,032万トン)と前年比での減少幅を縮小した。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。

11月のLNG輸入は前年比▲7.0%の642万トン(前月▲34.6%の403万2,000トン)と前年比のマイナス幅が縮小、冬場に向けた調達が増加している。

11月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.7%の389万トン(+11.6%の358万トン)と輸入の伸びが鈍化している。

パイプラインの国別輸入内訳は金額ベースのみの開示となった。各々の契約条件が異なるため数量と同じ比較ができないが、ロシアが前月比+1億5,670万ドルの増加となっており、次いでトルクメニスタン(+1億4,290万ドル)となった。ウズベキスタンとカザフスタンは減少。

中国国内の天然ガス生産は12月は+5.7%の1,500万トン(前月+7.4%の1,389万7,000トン)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。

天然ガス輸入量の減少を見ると、ゼロコロナの影響による経済活動の停滞、国内生産の増加の影響が小さくないと考えられるが、ゼロコロナは解除され、石炭などは豪州に対して増産要請が出されるなど、今後、国内需要回復の可能性は高い。結果、天然ガス価格を下支えすることになるだろう。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を断ったため供給懸念が強まったが、英再保険会社が従来の半分では有るが付保を承諾したため、目先の調達懸念は後退している。

しかし、付保が撤廃される可能性はあること、付保額が半分以下に(保険引き受け能力は国内損保が80億円、海外再保険会社が220億円)なっているため、このままではスポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。

また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。

1月15日時点の日本の発電用LNG在庫は262万トン(前年同月末180万トン、2018~2022年平均205万4,500トン)と過去5年レンジを上回っている。

しかし、冬はまだ続いており例年あるように気温次第で来年の2月頃にガス供給が不足して価格高騰、ということも有り得る。

さらに、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

週明け月曜日は、欧州・アジアの気温低下見通しと在庫水準の高さから現状水準でもみ合うものと考える。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、ロシアからのガスフローが事実上途絶していることを考えると、下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は小幅に下落。期近は350ドル台まで低下した。

しかし、足下の需給が緩和していないことは期間構造を見ても明らかである。中国が豪州炭の輸入を再開、この価格水準でもカロリーや性状を考えると豪州炭の方がメリットがあるようだ。

また、日本も中国とも同様に石炭種の変更は困難であるため、輸入は高い水準を維持している。

期先の価格の下落は生産者側のコスト削減などの影響が大きいと考えられるが、豪州側の供給の問題(人手不足、ストライキ、異常気象など)はまだ残存していると考えられ、期先の価格動向は引き続き注視する必要がある。

12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲0.1%の3,090万8,000トン(前月▲7.8%の3,231万トン)と前年比マイナス幅を縮小した。中国の経済活動再開を睨んだ在庫の積み上げと考えられ、過去5年レンジの上限での推移となっている。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後輸入は増加が予想される。やはりカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。

12月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭の輸入は西側諸国で制限されており、代替となる高カロリー炭を求める動きは継続している。

通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、ロシア問題発生前は120ドル前後だった水準は、200~230ドルに上昇している。これはコストカーブ上からロシア炭が抜け落ちていることによるもの、といえる。

恐らくロシア炭はいろいろなルートを通じて海上輸送炭市場に流入するため、徐々にこの水準は切り下がるとみているがまだそれには時間が掛かるだろう。

なお、ロシアに対する制裁とは関係なく、冬場が終了し、かつ、ラニーニャ現象が収束すると見られる4月以降、石炭価格は下落するとみているが、その後、夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。

週明け月曜日は、欧州、アジアの気温低下見通しを受けて堅調な推移になると予想される。

◆非鉄金属

LME非鉄金属市場はまちまち。春節を控えた中国勢の買いが恐らく一巡したと考えられ、調整圧力が強まったが、同時に米国の金融引締め緩和観測が価格に対する説明力が高い株価や期待インフレ率が高止まりしていることが価格を下支え~押し上げた。

昨年末に発表された中国製造業PMIが悪化しており、需給ファンダメンタルズは緩和、この価格上昇は春節前の在庫積増しの動きであり、さらにコロナの感染拡大から帰郷した労働者が休みを長く取る、という可能性もあるためまだ現時点においては一時的な上昇、と整理すべきと考えている。

なお、コロナの感染拡大による免疫獲得を材料に、早期に中国の経済活動が再開すれば話は別で、1月の製造業PMIが改善、新規受注在庫レシオも上昇する可能性はある。

この場合、足下の価格上昇が投機だけではなく、需給ファンダメンタルズ面で肯定されることを意味する。

しかし、1.海外景気は減速すること、2.足下の上昇は期待先取りの可能性が高いこと、3.直近の新規受注在庫レシオは少なくとも需給がタイト化していないことを示唆していること、を考えるとやはり価格の方向はまだ下向きである。

今後は、春節後、2月までに相場がどう動くか。ファンド筋が「今年のテーマを工業金属」にフォーカスしているのであれば、この間価格は下落せずにさらに上昇余地を試す展開が予想されるが、今のところ中期的な景気減速の影響が顕在化すると見ており、調整するのではないか。

なお、ペルーで発生した暴動が沈静化しておらず、銅生産への影響が顕在化している。ペルーは世界2位の銅鉱山生産量を誇り(2021年実績)、この国の問題長期化は銅供給への影響が小さくない。

暴動の背景は、2021年に誕生した左派カスティジョ政権が、コロナの影響による国内混乱を沈静化できず、首相が5回も交代、カスティジョ自身も汚職の問題が指摘され、弾劾に至った。

後任のボルアルテ大統領はカスティジョ前大統領と共に大統領選を戦った朋友だが、政権安定のために議会の多数派を占める右派と協調したことで国民の反発が強まる形となっている。

結果、4月に大統領選挙を2年前倒しする憲法改正を実施、事態の沈静化に注力しているが、今のところまずこの大統領選挙を乗り切らなければ事態の沈静化は難しいかもしれない。

弊社はもう少し早期に収束の道筋が見えるのでは、と考えていたが現状を整理すると先行きの不確定要素は多く、今後、銅供給制限が長期化して価格を押し上げる可能性が高まった。

中期的には景気の循環によって、恐らくQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

リスクとしては、米利上げ打ち止め直後から価格が上昇する場合。現在、6月のFOMCで利上げは打ち止めになると予想されており、Q223から景気回復を先取りして価格が上昇する可能性はある。

また逆のリスクとしては、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きとなる。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

11月の中国の非鉄金属生産は、ほとんどの金属の生産が高い水準を維持、過去5年レンジを上回る水準となっている。ゼロコロナの解除、不動産セクターのテコ入れ策(主に資金繰り策)、それに伴う生産活動の再開が影響しているとみられる。

コロナの感染爆発と集団免疫獲得のための時間はかなり大きな混乱をもたらすと予想されるが、「中国の報道が正しいならば(その可能性は低いが)」想定因りも早く感染が進んでおり、逆説的であるが正常化のタイミングは早いかもしれない。

12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+14.6%の51万4,049トン(前月+4.0%の53万9,902トン)と過去5年平均は維持した。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+2.1%の210万3,029トン(前月+10.0%の241万トン)と過去5年の最高水準で推移している。

11月の中国の精錬銅生産は+22.5%の111万5,000トン(前月+8.1%の92万3,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は11月が前年比+16.5%の165万5,000トン(前月+5.0%の132万7,000トン)と過去5年の最高水準を上回っており、今後、ゼロコロナ解除、不動産セクターのテコ入れに備えた動きが起きていると考えられる。実際、中国の取引所銅在庫の水準は季節的に見ても低く、LME在庫の水準も低いことから、国内生産を増加させていると考えられる。

11月の銅スクラップの輸入は前年比▲1.9%の16万1,619トン(▲15.2%の11万2,857トン)と過去5年平均は下回っている。景気減速に伴い、スクラップの供給も減少していると考えられる。

銅地金の輸入の回復、国内生産の増加を考えると中国の需要は政策的なテコ入れによって一時的に急回復していると考えられる。

ただし、世界景気の減速やこれ以上、住宅バブルを発生させることはさすがに回避すると考えられることから、中期的な見通しは引き続き弱気だ。

週明け月曜日は、最大の買い手である中国勢が休暇入りするため、買い手不在の中で調整売りに押されると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は小幅に下落した。

中国の春節前の駆け込み需要で原料価格が上昇していたが、本日から春節入りするため製品価格は小幅に調整している。

12月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が44.3(前月40.1)と改善した。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。

内訳を見ると新規受注が38.9(34.5)と改善、それに伴い生産も43.4(39.3)と改善している。政策効果が一定程度見られているようだ。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは54.4(55.4)と前月から小幅に減速。中国政府が不動産業界向けの資金繰り支援策を打ち出したが、コロナの感染拡大や国内の循環的な景気減速の影響から脱していないことを示唆している。

ゼロコロナ政策の継続、不動産業界向け支援策の効果が出るまでは時間がかかると思われることを考えると、鉄鋼市場の需給は緩和した状態が続き、鉄鋼原料価格の頭を重くしよう。

12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲30.0%の69万9,620トン(前月▲47.2%の75万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+7.4%の540万1,000トン(+28.2%の559万トン)と過去5年平均を上回り高井水準を維持している。

12月の中国粗鋼生産は前年比▲9.6%の7,789万トン(前月+7.5%の7,454万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った。

中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画であるが、累計で10億2,524万トン(前年10億3,856万トン)と前年を下回った。

粗鋼生産は抑制気味で、国内製品が海外に流出する状態になっている。しかし、中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、在庫水準は高くない。そのため、季節的な要因もあるが今後、中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。

しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。

週末発表の在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+123万3,000トンの1,248万3,000トン(過去5年平均 977万8,000トン)。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲90万トンの1億3,430万トン(過去5年平均 1億4,083万6,000トン)、在庫日数は33.3日(▲0.2日、過去5年平均32.7日)。日数ベースでは充分だが、今後、鉄鋼製品在庫の積増しが行われることを考えると充分とは言えない。

原料炭在庫は+12万トンの222万トン(156万トン)、在庫日数は+0.6日の10.3日(過去5年平均 6.7日)とかなり積み上がってきた。

週明け月曜日は、最大の買い手である中国勢が不在であることから、下落を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。欧州でドイツ国債が下落したことなどを材料に、米国債も下落、長期金利が上昇したことが実質金利を押し上げたため。

ただし、安全資産としての金需要はまだ旺盛と考えられ、実質金利の上昇を相殺する形でリスク・プレミアムが上昇、小幅な下落に止まった。

金の基準価格は前日比▲26ドルの924ドル、リスク・プレミアムは+20ドルの1,002ドルと、リスク・プレミアムは1,000ドルを超えた。

銀は金とほぼ同じ値動きとなったが結局前日比小幅高。プラチナも小幅高。パラジウムは下落したが、どちらかと言えば週末を控えたテクニカルな売り、と考えるのが適当だろうか。

金価格に対する説明力は引き続き実質金利が最も高い。しかし、米金融引締め加速によってこの構造に変化が見られ、実質金利で説明可能なポーションは50%を下回っている。

現状はクレジットリスクが強く意識されていると考えられることから、期間1年程度の北米CDSとリスク・プレミアム(実質金利で説明できない部分)の回帰分析を行うと、リスク・プレミアム中、600ドル程度が安全資産需要と見做され、残りがドル指数などのその他の要因、ということになる。

また、世界の情勢変化や「通貨に対する信用の低下」もあり、特に新興国で金準備を積み上げる動きが出ていることも新たな動きといえ、金価格の上昇要因となっている。

なお、基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるか、はデータの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。

なお、この分析が機能するのは「安全資産需要が高まっている間」と考えられ、恐らく利上げが続く夏頃までは参考になるのではないか。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

米国での太陽光パネル設置が脱中国の中でも進展しそうな感じであること、EV車へのシフトに伴い、工業品としての銀需要の増加も見込まれることが、金銀レシオを押し下げながら銀価格を押し上げている。

週明け月曜日は新規材料に乏しく、現状水準でのもみ合いを予想する。

◆穀物

シカゴ穀物市場は小動き。原油価格の上昇やドル安といった周辺材料は価格の上昇要因となったが、アルゼンチンの降雨予報がトウモロコシ・大豆価格の押し下げ要因となった。

小麦は上昇。特段材料があったというよりは、週末を控えて割安感からの買い戻しが入ったと考えられる。

なお、昨年の降雨の影響でアラビア半島でのバッタ発生リスクを懸念していたが、今のところサバクトビバッタの群生発生は確認されておらず、供給へのリスクは低下している状況。

週明け月曜日は新規手掛かり材料に乏しく、現状水準でのもみ合いを予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまう場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「ドクター・カッパー~足下上昇も中期的には下落を予想」

今年は年初から非鉄金属セクターの推移が堅調だ。今のところ中国の不動産市況の回復がない中で銅価格が急騰している。

中国の経済活動を判断する上で参考になる貿易統計をみると、12月の中国の貿易統計では、銅地金・製品輸入は前年比+14.6%の51万4,049トン(前月+4.0%の53万9,902トン)と過去5年平均を維持している。好不況の判断基準はコモディティの場合過去5年平均との比較が多いため、この水準を「ゼロコロナ解除前」に上回っていると言うことは、それなりに中国の原料調達需要が旺盛であることを示唆している。

一方、精錬銅の原料である銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+2.1%の210万3,029トン(前月+10.0%の241万トン)と過去5年の最高水準で推移している。精錬銅生産は11月が直近のものとなるが、+22.5%の111万5,000トン(前月+8.1%の92万3,000トン)、生産と輸入を合計した供給量は11月が前年比+16.5%の165万5,000トン(前月+5.0%の132万7,000トン)と過去5年の最高水準に達している。

銅地金の輸入の回復、国内生産の増加を考えると中国の需要は政策的なテコ入れによって一時的に急回復していると考えられる。

こうした中国の「リオープン」「リスタート」が前提となる中、昨年決定した不動産セクターの資金繰り支援を中心としたテコ入れ策の実施(不動産バブルを解消するためにも、逆に不動産業の生産・販売活動がある程度回復する必要がある)による期待需要の増加、米国の金融引き締めペースの鈍化を受けたドル高修正によるドル安新高、コロナ・ウクライナ危機によるエネルギー供給制限の影響で供給が長らく不充分だったことで「有事のバッファ」である取引所在庫が歴史的低水準であること、例年よりも早めの春節入りを受けた在庫積増しの動き、といった材料が重なり足下の価格高騰になっていると考えられる。言葉を換えるとある意味これらは短期的な相場の上げ材料、と言えるだろう。

また、直近のCOTレポートを見るに、投機筋は昨年4月以降中国のロックダウンを材料に積み上げてきた売りポジションを解消し、新規に買いポジションを積み上げている。これは上述の買い材料が複数重なったことを材料にしたもので、価格上昇に拍車を掛けることになった。

ではこのまま価格は上昇するのか。直近12月の中国製造業PMIを参考に、足下の中国の状況を確認すると総合指数が47.0(前月48.0)と前月を下回り、好不況の閾値である50も下回っている。サブインデックスも前月と同様、全て閾値の50を下回っており、決して製造業の状況が良いとは言えない。

また、中国の「貿易相手」である欧米も景気は減速方向にあるため、輸出需要の鈍化が予想される上、「加工するための原料を輸入する需要」も鈍化が予想されることも、中期的な銅価格の下押し要因となり得る。恐らく春節が終り、2月頃までは調達圧力が鈍化すると予想されるため、価格は秋頃に向けて循環的な調整局面入りすることになるだろう。

その後は、脱炭素、脱ロシア、脱中国といった構造的なインフラ投資需要の増加を長期的なテーマとして銅を含む工業金属セクターの価格は上昇することになると予想される。


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