緩やかなドル高・実質金利上昇で軟調
- MRA商品市場レポート
2023年1月30日 第2380号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「緩やかなドル高・実質金利上昇で軟調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて下落した商品が目立った。米国の個人所得・消費・デフレータはほぼ市場通りであり、米経済の緩やかな減速と緩やかなインフレ抑制観測を受けて、やや金利が上昇、ドルもジリ高となったことに価格は下押しされた。
上昇した商品は自国通貨建て商品とその他農産品、畜産品など。典型的な「景気循環系商品価格が売られるが、その他の景気に連動し難い商品は買われる」の動きになったと言える。
【本日の見通し】
週明け月曜日は、まず、中国勢が市場に復帰することから景気循環系商品(エネルギーや金属など)は上昇からスタートすると考えられる。
ただ、春節後も製造業の工場などが通常の稼働に戻るかどうかは、まだ現時点では不透明であり、特に工業金属に関しては「春節前の駆け込み需要」だった可能性も排除できず、週明け月曜日の動きは今後を占う上では重要になってくる。
ただ、教科書的には世界景気の減速の可能性は高く、金融引締めも継続する方針であることからリスク資産価格に下押し圧力が掛りやすい地合にあることは変わりはない。
月曜日の注目統計は以下の通り。
Q422独GDP 市場予想 前期比±0.0%(前期+0.4%)、前年比+0.8%(+1.2%)
【昨日のトピックス】
昨日発表された米個人消費・支出・PCEデフレータは、米景気の減速とインフレの沈静化期待を高める内容だった。
個人所得は前月比+0.2%(市場予想+0.2%、前月+0.3%)、個人支出も▲0.2%(▲0.2%、▲0.1%)とほぼ市場通りだった。米金融政策動向を占う上で重要なPCEデフレータは前月比+0.1%(±0.0%、+0.1%)、前年比+5.0%(+5.0%、+5.5%)、コアデフレータは前月比+0.3%(+0.3%、+0.2%)、前年比+4.4%(+4.4%、+4.7%)とこちらもほぼ予想通り。
FRBが望む景気の減速とインフレの減速が確認されている。恐らく2月のFOMCでは事前予想通り25bpの利上げが決定されると考えられる。
一方、その後発表されたミシガン大学消費者マインド指数の改定値は64.9(64.6、64.6)と上方修正された。先行指標が62.7(+0.7)と大幅に上方修正されたことによる。
このままだと明確なリセッションがない中で景気が回復する可能性が出てくる。この場合「下期はむしろ利下げではないか」と期待している市場の思いとは裏腹に、下期に追加で金融引締めが行われる可能性もゼロではない。
いずれにしても、金融引締めや脱炭素の推進によってインフレを根治するための「供給能力の増強」が行われていない状況下、「景気底入れのリスク」も同時に高まっていると考えるべきではないか。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は下落した。米統計のほどよい失速が価格を押し上げていたが、ここしばらくテクニカルポイントとなっている100日移動平均線が抵抗線となり、水準を切下げる動きとなった。ややテクニカルな値動きだったと言える。
基本は景気の循環減速や米国の金融引締めによる景気減速で製品出荷が減速しており、価格は需給面では下押しされやすい。
しかし、Chevronの決算でも明らかなように、記録的な利益の使い道として750億ドルの自社株買いを発表した。これに対して2023年度のCAPEXは総額前年比+25%の140億ドル、うち20億ドルが低炭素向けの投資となった。
金額は増えているが「脱炭素の枷」が上流部門投資を踏みとどまらせており、余剰資金では自社株買いを行うことが株主還元になる、と判断しているようだ。これは恐らくExxonなど、その他のメジャーでも同じ動きになると予想される。
結局、上流部門の開発が加速する、という感じではないため原油供給が制限され、OPECプラスの価格支配力が増し、価格は下支えされることになりそうだ。これはこれまでの原油価格高騰局面とは異なる動きである。
なお、2月のOPEC(JMMC)は報道ベースでは新たな提言などは行われず、現状の▲200万バレルの減産継続を確認する程度に止まる見込み。
今後の原油相場を占う上では、ドル指数の動向と原油価格の動向をクロスオーバーして見ていく必要がある。早晩、金融政策(どちらかと言えば緩和的なバイアス)を受けて原油価格が底入れし、ドルよりも先に上昇を始めると予想される(景気の転換点・底入れのサイン)が、それはまだ先だろう。
ロシアは欧米の制裁に対して、原油価格上限設定国に対する原油・石油製品輸出を禁止する大統領令に署名した。原油輸出は2月1日から5ヵ月間禁じられ、石油製品に関しては別途、政府が通達するとしている。
石油製品の制裁はあと3週間で始まるが、現状、まだ4割近くのディーゼルやガスオイルを欧州はロシアから調達しており、それを代替するのは不可能だろう。
中国やインド、中東からの中間留分の迂回供給の可能性はあるものの、実際には難しい。2月以降、再び製品主導でBrentなどの中間留分リッチな原油の価格が上昇する可能性があるが、より懸念されるのが、石油製品価格の上昇に伴うインフレの再燃ではないか。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。
現在は3.の状態。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を禁輸、ロシアが報復措置を厳正に行った場合(ないしはOPECプラスの減産)Brent 75-100ドル
2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)するBrent 70-95ドル/75-100ドル
3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 70-90ドル
4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)Brent 65-85ドル/75-95ドル
5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下
(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)
6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル
7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
中期的な視点では、景気循環の影響で需要が減速するため価格は基本的には下落し、今年のQ323頃に景気が底入れするため、年後半に掛けては再度上昇するとみる。
しかし、ここに来て景気の減速が想定ほどではないかもしれない、との見方が徐々に出始めている。この場合、明確な調整がないまま原油価格が上昇に転じる展開も想定される。
この場合は年後半に再びインフレが意識されるため、追加利上げで年後半に景気が急減速、と言うことも有り得る状況。
より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。
しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まりする可能性が高い。
Q123~Q123 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッションの場合(↓)
Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期(↑)
2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)
※矢印の向きは価格の方向性。
週明け月曜日は特段目立った材料がない中、50日~100日移動平均線のレンジでもみ合うと予想する。ただし、休み明けの中国勢の市場復帰で、まずは上昇余地を試す動きか。
しかし、2月1日のFOMC、週末のOPECプラス(JMMC)の結果を見てからでないと、なかなか方向性は出難い地合と考える。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は小動き。目立った手掛かり材料に乏しい中、気温上昇予想とノルウェーからの供給減少が相殺しあった。
なお、先日ICEが2月20日からロンドンでTTFを平行上場することを発表した。現在、EUが持ち込んだ「上限価格設定ルール」の中では取引所の機能が阻害され、価格リスクヘッジの場としての有効性が低下することを恐れての動きである。
英国はBrexitによってEUの「縛り」から開放されているため、今後、ヘッジ市場としてはこちらの市場の方が利用される可能性が高いと考えられるため、市場参加者の判断を中止する必要がある。
欧州の天然ガス在庫の水準は高い。暖冬と再生可能エネルギーからの電力供給回復が背景にある。
そのため改めてガス在庫動向をシミュレーションをしてみると今のところ▲10%の需要削減が可能であれば2023年のガス調達には問題がなさそうだ
しかし、需要削減が▲5%程度に止まったり、現在20%程度の稼働となっているロシアからのガス供給が完全に停止する事態になればガス供給は不足することが予想される。
足下、価格が下落しているため問題になっていないが、EUが合意しているTTFの価格上限設定は、今後の市場メカニズムを歪めるため適切な価格上昇に伴う増産を阻害したり、市場を無視した低価格が欧州向けのカーゴを減じる可能性があったりと、問題が多い。
TTFはガスやLNGの取引の国際指標として現物契約に用いられている価格であるだけに、その他のガス市場への影響も小さくないと考える。
足下のガス在庫の水準は高いが、今年は年初からロシア産ガスの供給が期待できないため、2023-2024年のガス調達は困難な状況が続くだろう。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)
「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。
ドイツは浮体式のLNG受入ターミナルの整備を進めているが、こうした取組みも脱ロシア達成には5年程度かかると考えている。
2.に関して、米Freeport社のLNGターミナルは稼働を再開(フル稼働は3月頃か)、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。
Freeportの再開予定は1月後半よりも早いことはないとされ、場合によると3月以降の再稼働となる可能性がある。ナイジェリアは徐々に状況の改善が伝えられているが、洪水前からナイジェリアのLNG輸出は減少していたが、まだ回復していない。
3.4.は顕在化している。
5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは2023年1-3月に50%、2-4月は71%の確率で正常化すると予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。
LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも低下しているが、スエズ以西の低下圧力が強い。このことは記録的な暖冬とこれまでの在庫積み上げで、足下の欧州の調達需要が減速していることを示唆するもの。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米国天然ガス先物は期近が上昇、期先はほぼ変わらず。米北東部の気温低下見通しが価格を仕上げたが、米国の景気減速や欧州向けの需要減速が域内需給を緩和するとの期待が高いことが価格上昇を抑制している。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物は小幅に下落。欧州の気温上昇によるガス価格低下の影響。ただし本当に小動き。
12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲11.8%の1,028万トン(前月▲3.8%の1,032万トン)と前年比での減少幅を縮小した。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。
12月のLNG輸入は前年比▲13.5%の659万6,000トン(前月▲7.0%の642万トン)と前年比のマイナス幅が拡大。
12月のパイプラインベースの輸入は前年比▲8.5%の368万トン(前月+1.7%の389万トン)と輸入の伸びが前年比マイナスとなった。
中国の天然ガス生産は12月は+5.7%の1,500万トン(前月+7.4%の1,389万7,000トン)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。
12月の中国の発電料ははまだゼロコロナ政策を堅持していたタイミングであるため、消費電力は前年比▲4.6%の7,784億kwh(+1.6%の6,828億kwh)と低迷していたこと、中国の国内生産増加が影響し、輸入量が減少したとみられる。
今後、集団免疫を獲得して正常化が進む中、石炭などは豪州に対して増産要請が出されるなど、今後、国内需要回復の可能性は高い。結果、天然ガス価格を下支えすることになるだろう。
※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。
サハリン2は、欧州がLNGタンカーに対する付保を一部引き受けているが、保険料を8割引き上げている。また、ロシアに対する制裁や軍事的な緊張の度合いによってはこの水準は随時見直さされることになるため、LNG価格の上昇要因となる。
ただ、付保のLNG価格に占める比率は高くないため、そこまで価格に影響はないと言えるが、それ以上に付保自体が認められなくなり、輸入自体が途絶するリスクの方が小さくないと考える。この場合、スポット調達にシフトせざるを得ない可能性があること、からJKMの上昇要因となる。
また、サハリン2も欧米企業がメンテナンスから撤退しているため、中長期的な供給途絶のリスクは無視できない。
1月22日時点の日本の発電用LNG在庫は257万トン(前年同月末180万トン、2018~2022年平均205万4,500トン)と過去5年レンジを上回っている。
しかし、冬はまだ続いており例年あるように気温次第で来年の2月頃にガス供給が不足して価格高騰、ということも有り得る。
さらに、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。
週明け月曜日は目立った手掛かり材料に乏しい中、欧州の再生可能エネルギーからの電力供給状況や気温上昇に神経質な展開になると予想されるが、基本、冬場であるため大幅な下落にはならないと考える。
なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、ロシアからのガスフローが事実上途絶していることを考えると、下値も堅かろう。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル=46MMBtu 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル
◆石炭
豪州石炭スワップ先物は小幅に上昇。こちらも材料に乏しかったが、この数日の下落もあり割安感からの買いが入ったと考えられる。
なお、直近限月と第2限月の価格差は100ドル近いが、昨日が取引最終日であり、月曜日から100ドル近く直近限月の価格が下落することになる。
しかし過去、限月交代後は「窓埋め」の動きで急騰しているため、足下の豪州炭供給が制限されている状況だと今まで通り再び価格は上昇して350ドル程度になるのではないか。
足下の需給が緩和していないことは期間構造を見ても明らかである。中国が豪州炭の輸入を再開、この価格水準でもカロリーや性状を考えると豪州炭の方がメリットがあるようだ。
また、日本も中国とも同様に石炭種の変更は困難であるため、輸入は高い水準を維持している。
期先の価格の下落は生産者側のコスト削減などの影響が大きいと考えられるが、豪州側の供給の問題(人手不足、ストライキ、異常気象など)はまだ残存していると考えられ、期先の価格動向は引き続き注視する必要がある。
12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲0.1%の3,090万8,000トン(前月▲7.8%の3,231万トン)と前年比マイナス幅を縮小した。中国の経済活動再開を睨んだ在庫の積み上げと考えられ、過去5年レンジの上限での推移となっている。
国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、豪州に対する制裁を解除しており、今後輸入は増加が予想される。やはりカロリーや炭種の違いによる使い勝手から、豪州炭が選好されると考えられる。
12月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の4億269万トン、1,299万トン/日(前月+5.5%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と、同じ時期の過去最高水準を上回っている。
海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが、豪州に増産要請を行うなど、国内炭はスペック的に不充分と考えられ、今後さらに増産があるかと言えば、環境面への配慮(住民への配慮をせざるを得ない)から難しいのではないか。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
現在、ロシア炭の輸入は西側諸国で制限されており、代替となる高カロリー炭を求める動きは継続している。
通常、石炭先物の期先の価格は現在の生産コストの上限に近づきやすいが、ロシア問題発生前は120ドル前後だった水準は、200~230ドルに上昇している。これはコストカーブ上からロシア炭が抜け落ちていることによるもの、といえる。
恐らくロシア炭はいろいろなルートを通じて海上輸送炭市場に流入するため、徐々にこの水準は切り下がるとみているがまだそれには時間が掛かるだろう。
なお、ロシアに対する制裁とは関係なく、冬場が終了し、かつ、ラニーニャ現象が収束すると見られる4月以降、石炭価格は下落するとみているが、その後、夏場に向けた日中の石炭需要で再び上昇に転じるだろう(Q223の後半ぐらいからか)。
週明け月曜日は中国勢の市場復帰と、限月交代の影響もあり、NEWCスワップ先物価格は上昇すると考える。
◆非鉄金属
LME非鉄金属市場は大幅に下落した。米国時間の後場に原油価格が及落、非鉄金属価格に対する説明力が高い期待インフレ率が低下したことで、週末を控えた利益確定売りの動きがみられた。
直近のCOTレポートでは、投機筋は顕著に非鉄金属市場で買いを入れている。中国のリオープンや不動産セクターテコ入れ、といった事象を材料にしている可能性は高いが、年初1月の動きは「投機筋の1年の動き」を象徴することも多く、今年1年のテーマを非鉄金属を含む工業金属に定めたことも充分考えられる。
この場合後述する中期的な価格下落がなく、このまま高値を維持するリスクが高まることになる。注目は月曜日に休日明けで復帰する中国勢が「割安感から買いを入れるのか、景気の先行き見通しを受けて売りから入るのか」である。
昨年末に発表された中国製造業PMIが悪化しており、需給ファンダメンタルズは緩和、この価格上昇は春節前の在庫積増しの動きであり、さらにコロナの感染拡大から帰郷した労働者が休みを長く取る、という可能性もあるためまだ現時点においては一時的な上昇、と整理すべきと考えている。
なお、コロナの感染拡大による免疫獲得を材料に、早期に中国の経済活動が再開すれば話は別で、1月の製造業PMIが改善、新規受注在庫レシオも上昇する可能性はある。
この場合、足下の価格上昇が投機だけではなく、需給ファンダメンタルズ面で肯定されることを意味する。
しかし、1.海外景気は減速すること、2.足下の上昇は期待先取りの可能性が高いこと、3.直近の新規受注在庫レシオは少なくとも需給がタイト化していないことを示唆していること、を考えるとやはり価格の方向はまだ下向きである。
今後は、春節後、2月までに相場がどう動くか。ファンド筋が「今年のテーマを工業金属」にフォーカスしているのであれば、この間価格は下落せずにさらに上昇余地を試す展開が予想されるが、今のところ中期的な景気減速の影響が顕在化すると見ており、調整するのではないか。
なお、ペルーで発生した暴動が沈静化しておらず、銅生産への影響が顕在化している。ペルーは世界2位の銅鉱山生産量を誇り(2021年実績)、この国の問題長期化は銅供給への影響が小さくない。
暴動の背景は、2021年に誕生した左派カスティジョ政権が、コロナの影響による国内混乱を沈静化できず、首相が5回も交代、カスティジョ自身も汚職の問題が指摘され、弾劾に至った。
後任のボルアルテ大統領はカスティジョ前大統領と共に大統領選を戦った朋友だが、政権安定のために議会の多数派を占める右派と協調したことで国民の反発が強まる形となっている。
結果、2024年4月に大統領選挙を2年前倒しする憲法改正を実施、事態の沈静化に注力しているが、今のところまずこの大統領選挙問題を乗り切らなければ事態の沈静化は難しいかもしれない。
この状況を受けてボルアルテ大統領は、今年12月に選挙をさらに前倒しすることを議会に提案している。
弊社はもう少し早期に収束の道筋が見えるのでは、と考えていたが現状を整理すると先行きの不確定要素は多く、今後、銅供給制限が長期化して価格を押し上げる可能性が高まった。
中期的には景気の循環によって、恐らくQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移を予想する。
世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。
リスクとしては、想定よりも景気が減速せず回復基調に入り非鉄金属価格も上昇するケース。現在、投機筋が積極的に非鉄金属を購入しており、「今年の投資テーマ」になっている可能性も、価格のアップサイドのリスクを高めている。
また逆のリスクとしては、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。
また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きとなる。
長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。
早ければ2023年後半から、こうした構造的な需要増加が顕在化する可能性があると見ている。
価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。
11月の中国の非鉄金属生産は、ほとんどの金属の生産が高い水準を維持、過去5年レンジを上回る水準となっている。ゼロコロナの解除、不動産セクターのテコ入れ策(主に資金繰り策)、それに伴う生産活動の再開が影響しているとみられる。
コロナの感染爆発と集団免疫獲得のための時間はかなり大きな混乱をもたらすと予想されるが、「中国の報道が正しいならば(その可能性は低いが)」想定因りも早く感染が進んでおり、逆説的であるが正常化のタイミングは早いかもしれない。
12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+14.6%の51万4,049トン(前月+4.0%の53万9,902トン)と過去5年平均は維持した。
一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+2.1%の210万3,029トン(前月+10.0%の241万トン)と過去5年の最高水準で推移している。
11月の中国の精錬銅生産は+22.5%の111万5,000トン(前月+8.1%の92万3,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。
生産と輸入を合計した供給量は11月が前年比+16.5%の165万5,000トン(前月+5.0%の132万7,000トン)と過去5年の最高水準を上回っており、今後、ゼロコロナ解除、不動産セクターのテコ入れに備えた動きが起きていると考えられる。実際、中国の取引所銅在庫の水準は季節的に見ても低く、LME在庫の水準も低いことから、国内生産を増加させていると考えられる。
11月の銅スクラップの輸入は前年比▲1.9%の16万1,619トン(▲15.2%の11万2,857トン)と過去5年平均は下回っている。景気減速に伴い、スクラップの供給も減少していると考えられる。
銅地金の輸入の回復、国内生産の増加を考えると中国の需要は政策的なテコ入れによって一時的に急回復していると考えられる。
ただし、世界景気の減速やこれ以上、住宅バブルを発生させることはさすがに回避すると考えられることから、中期的な見通しは引き続き弱気だ。
週明け月曜日は、休み明けの中国勢の買いで上昇すると予想される。しかし、中国政府の経済対策遂行余力や、欧米の景気減速に伴う貿易量の減少観測が上値を抑えよう。
ただし、全人代を控えて景気を作りたい中国共産党政権の思惑や、「3つの脱」を材料にした足の長い買いが継続する可能性も否定できず、明日の動向には注目したい。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は休場、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は休場、上海鉄筋先物は休場。
12月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が44.3(前月40.1)と改善した。不動産セクターの資金繰り支援策やゼロコロナの解除に伴う生産活動の再開期待が高まってることが背景にある。
内訳を見ると新規受注が38.9(34.5)と改善、それに伴い生産も43.4(39.3)と改善している。政策効果が一定程度見られているようだ。
鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは54.4(55.4)と前月から小幅に減速。中国政府が不動産業界向けの資金繰り支援策を打ち出したが、コロナの感染拡大や国内の循環的な景気減速の影響から脱していないことを示唆している。
ゼロコロナ政策の継続、不動産業界向け支援策の効果が出るまでは時間がかかると思われることを考えると、鉄鋼市場の需給は緩和した状態が続き、鉄鋼原料価格の頭を重くしよう。
12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲30.0%の69万9,620トン(前月▲47.2%の75万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。
12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+7.4%の540万1,000トン(+28.2%の559万トン)と過去5年平均を上回り高井水準を維持している。
12月の中国粗鋼生産は前年比▲9.6%の7,789万トン(前月+7.5%の7,454万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った。
中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画であるが、累計で10億2,524万トン(前年10億3,856万トン)と前年を下回った。
粗鋼生産は抑制気味で、国内製品が海外に流出する状態になっている。しかし、中国の鉄鋼製品在庫はこれまでのゼロコロナ政策の影響で減少しており、在庫水準は高くない。そのため、季節的な要因もあるが今後、中国の不動産セクターのてこ入れ策を背景に在庫の積増しが起きると考えられ、鉄鋼原料輸入は増加圧力が掛かると考える。
しかし、中期的には世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないだろう。
週末発表の在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+123万3,000トンの1,248万3,000トン(過去5年平均 977万8,000トン)。
鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲90万トンの1億3,430万トン(過去5年平均 1億4,083万6,000トン)、在庫日数は33.3日(▲0.2日、過去5年平均32.7日)。日数ベースでは充分だが、今後、鉄鋼製品在庫の積増しが行われることを考えると充分とは言えない。
原料炭在庫は+12万トンの222万トン(156万トン)、在庫日数は+0.6日の10.3日(過去5年平均 6.7日)とかなり積み上がってきた。
週明け月曜日は、休み明けの中国勢の買いえ上昇すると考える。しかし、中国政府の経済対策遂行余力や、欧米の景気減速に伴う貿易量の減少観測が上値を抑えよう。
ただし、全人代を控えて景気を作りたい中国共産党政権の思惑や、「3つの脱」を材料にした足の長い買いが継続する可能性も否定できず、明日の動向には注目したい。
◆貴金属
昨日の金価格は下落した。米長期金利が上昇したことや、原油価格の下落による期待インフレ率の低下が実質金利を押し上げたため。
金の基準価格は前日比▲8ドルの942ドル、リスク・プレミアムは+7ドルの986ドル。
銀は金とほぼ同じ値動きとなり下落、PGMも売られた。
金価格に対する説明力は引き続き実質金利が最も高い。しかし、米金融引締め加速によってこの構造に変化が見られ、実質金利で説明可能なポーションは50%を下回っている。
現状はクレジットリスクが強く意識されていると考えられることから、期間1年程度の北米CDSとリスク・プレミアム(実質金利で説明できない部分)の回帰分析を行うと、リスク・プレミアム中、600ドル程度が安全資産需要と見做され、残りがドル指数などのその他の要因、ということになる。
また、世界の情勢変化や「通貨に対する信用の低下」もあり、特に新興国で金準備を積み上げる動きが出ていることも新たな動きといえ、金価格の上昇要因となっている。
なお、基本的に金準備の積み上げがどの程度金価格を押し上げるか、はデータの即時性がないため分析が難しいが、仮にETFと同じインパクトがあると仮定すれば、100トンの積み上げで40ドル程度の価格上昇要因となる。
なお、この分析が機能するのは「安全資産需要が高まっている間」と考えられ、恐らく利上げが続く夏頃までは参考になるのではないか。
銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。
米国での太陽光パネル設置が脱中国の中でも進展しそうな感じであること、EV車へのシフトに伴い、工業品としての銀需要の増加も見込まれることが、金銀レシオを押し下げながら銀価格を押し上げている。
週明け月曜日は、米FOMCを2月1日に控えて様子見気分強く、もみ合うものと考える。
◆穀物
シカゴ穀物市場はトウモロコシが小幅に上昇、大豆と小麦が下落した。いずれも週末を控えたファンド勢のポジション調整の影響とみられる。
なお、降雨不足が懸念されていたアルゼンチンでは降雨が見られ、供給への懸念はやや後退している。
なお、昨年の降雨の影響でアラビア半島でのバッタ発生リスクを懸念していたが、今のところサバクトビバッタの群生発生は確認されておらず、供給へのリスクは低下している状況。
週明け月曜日は、中国勢の市場復帰で大豆などの価格は上昇するが、基本的にはドル指数の変動要因となり得るFOMCを控えて様子見でもみ合いを予想。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。
日銀総裁の交代後に進むと期待される金融正常化が、極端な円高(ドル安)を誘発し、商品価格にプラスに作用するリスク。
・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。
そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまう場合(価格下落要因)。
また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。
インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。
・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。
中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。
一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。
・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。
台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。
また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。
◆本日のMRA's Eye
「有事の金買い発生か~過去に学ぶ」
弊社は金価格に対する説明力が最も高い指標として米国の10年実質金利(10年国債利回り-10年期待インフレ率)を用いてきた。足下、米国が利上げを行い、景気減速で原油価格が下落する中では実質金利が上昇するため金価格が下落する、と予想していたが実際はそうなっておらず、むしろ価格は上昇しており、実質金利で説明可能なポーション(金基準価格)は50%を下回る状態になっており、その他の要因(リスク・プレミアム)の方がポーションが大きくなっている。
いったい何が起きているのか。実は過去に似たような状態になったことがある。1971年8月15日のニクソンショックからアジア危機までを振り返ってみたい。1つめのグラフはニクソンショック前後の基準価格とリスク・プレミアムの推移だ。
この頃の金市場を取り巻く環境を整理すると、第一次大戦中に金本位制が導入され、その後、第二次大戦以降は貿易を促進する通貨制度の整備が必要との考え方から、金とドルを基軸通貨に据える方針が採られた。
これは第二次大戦の戦費調達のために、各国が大量に米国に金を売却していたことによる。これをブレトン・ウッズ体制と呼び、1オンス35ドルでドルと金を交換することができた。
その後、欧州の戦後復興支援の「マーシャル・プラン」が実行される中で輸出が増加、ドルが大量に市場に流出した。このとき、金とドルの交換レートが1オンス35ドルで一定だったため、米国の金準備が急速に減少することになる。
結局、1971年8月13日に英国が30億ドル(2,666トン相当)の支払いを米国に要求するが、米国はこれに応えることができず、1971年8月15日に米ニクソン大統領はドルと金の固定レートでの交換を停止した。これがいわゆるニクソンショックである。
この後、金の価格は上昇するが、基準価格以上にリスク・プレミアム(このときは物価連動債がないので、消費者物価と国債利回りを元に算出した数値で分析している)が上昇している。
これは「ドルが減価」することが明らかな中、「物質としての価値が変わらない金の名目価格の修正」が起きたためと考えるのが適当だろう。この頃のリスク・プレミアムは「ドル減価」によるものと整理できる。よく、金市場でのキャリアが長い方がいう「ドル不振による金需要」がこの頃起きた訳だ。
2つめの次のグラフはオイルショック以降だ。オイルショックは各国に急激なインフレをもたらし、各国中央銀行に急速な金融引締めを促して景気を悪化させ、各地で戦争や紛争が勃発する切っ掛けとなった。
この1978年から2000年12月までの金価格に占める金基準価格の水準を見ると平均で36.9%に過ぎない。即ち「インフレ以外の要因」「リスク・プレミアム部分」が金価格を動かしていたと考えるのが妥当だ。
では、ニクソンショックの時のようにドル指数か?と考えるとこの間の金価格とドル指数の間の相関性は▲0.14とほとんど無相関で、実質金利(10年国債から消費者物価指数を引いたもの)の相関も0.65と、高いけれどもそこまでではない。何より、金価格の構成要素に占める比率が低かった。
なお、この分析は1977年1年間の金と実質金利の関係を用いて分析しているため、1977年に近いほど実質金利で説明可能なポーションは大きいのは当たり前だ。
しかし、価格との関係性が維持されているならば、2000年になっても金基準価格の説明力は高いままのはずだがそうはなっていない。これは、金融引締めによる混乱の結果、地政学的リスク顕在化が懸念され、それに備える動きが強まったためと考えるのが妥当だろう。即ち「有事の金買い」が価格を押し上げていた。
ここで注目すべきは、リスク・プレミアムの説明力が増した後、2000年にかけてりスク・プレミアムの説明力が低下している点、イベントリスク発生時の金価格のアップサイドへの反応幅が小さくなっている点だ。
確かに有事は金の需要を高めるものの、主要先進国が破綻して資金決済ができなくなるほどのリスクと見なされなくなってきたためと考えられる。
現在に戻って見ると、恐らく米国の金融引締めの影響、あるいは人口動態がピークアウトした中国での不動産バブルの崩壊リスク、ロシアの戦争、台湾有事への懸念、といったリスクが意識され、まずは信用リスク回避のための安全資産需要が高まっていると考えられる。
実際、こうした有形無形のリスクに備えるため、中国を筆頭に外貨準備に占める金が増加しており、これが構造的に金の絶対水準を押し上げていると見られる。
少なくともこのリスク・プレミアムの増加は、米国の利上げや米中対立、中国の不動産市場悪化を乗り切るまでは継続する可能性が高いのではないか。
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