CONTENTSコンテンツ

信頼度が低下したFRBの予測
  • MRA外国為替レポート

2022年12月12日号

◆先週の市場総括


先週はドル安円高が一服。米国の経済指標は週初から予想より強めの数字が続き、金利高止まり観測が強まった。

米長期金利が下げ止まり。ドル買い戻し・円売り戻しが入るなか実需の売買も交錯してドル円相場は乱高下。134円台半ばで始まり早々に137円台に乗せたあとは136円~137円台半ばで上下した。

ユーロ円相場も143円~144円台半ばで上下。ドルインデックスは前週末と同様引けは105割れのまま。

米国株は金利高止まり観測が強まり長期金利低下が一服したことが重石となり上値の重い展開で引けは前週と変わらず。

中国ではゼロコロナ政策の修正、規制緩和の動きがみられ好感されたものの、欧米景気の先行き不透明感は変わらず。原油価格WTI先物は70ドルに迫り軟調となった。

日経平均は米国株の上値の重さに28,000円の大台を前に上下して引け。

月曜日の東京市場では日経平均は小幅反発。前週末の下落のあとで反発狙いの買いが入るも円高を嫌気して輸出関連銘柄に売り。引けは前週末比+42円高の27,820円。

ドル円相場は134円40銭で始まり朝方80銭に上昇したが反落しその後は30銭~40銭でもみ合い推移。東証引け後から欧州市場にかけて円安ドル高が進み135円50銭に上昇。ただ米国市場朝方には135円ちょうど近辺に反落した。

ユーロ円相場は141円50銭で始まり終始ユーロ高円安基調。夕刻には142円70銭に上昇したあと20銭にやや押し戻されたが、米国市場午前中には143円50銭まで上昇した。

ユーロドル相場は1.0530で始まり1.0580に上昇したあとは1.0520~60近辺で上下し、その後1.0590へ一段高となった。

その後発表された米国の経済指標が強め。WSJ紙のFRBウォッチャーが利上げの最終到達水準が5%以上になると報じられ、あらためて金融引き締めの長期化が意識された。

これらを受けてドルは上昇。ドル円相場は136円80銭へ急上昇。ユーロドル相場は1.0480~90へ下落。ユーロ円相場は143円ちょうどに下落したあと反発して143円50銭近辺でもみ合い引けた。

発表されたISM非製造業景気指数(11月)は前月54.4から53.4への悪化予想に反して56.5に改善。製造業新規受注(10月)は前月比+1.0%と前月+0.3%から伸びが加速した。

米10年債利回りは3.579%へ、2年債は4.394%へ上昇。

米国株は大幅下落。金融引き締め長期化懸念、長期金利の上昇、景気悪化・企業業績悪化懸念が重石。NYダウは前週末比▲482ドル安の33,947ドル、ナスダックは▲221ドル安の11,239ドル。

火曜日の東京市場では日経平均は小幅反発。朝方は米国株安で売り先行となったが、その後は円安を好感して輸出関連銘柄がしっかり。

中国でゼロコロナ政策の修正期待が支えとなった。ただ28,000円の大台を前に上値も重く、引けは前日比+65円高の27,885円。

ドル円相場は海外市場にかけて方向感定まらないなか大きく上下した。136円80銭で始まり朝方は30銭~60銭で低迷したが昼前には137円20銭に大きく円安。夕刻にかけては136円70銭~137円40銭台で上下し米国市場朝方には136円ちょうど近辺まで大きく下落した。

ユーロドル相場は東京市場では1.0490で始まり欧州市場から米国市場朝方まで終始1.05をはさんで上下動。ユーロ円相場は143円50銭で始まり、概ね143円台後半で上下し米国市場朝方は143円10銭近辺に円高となった。

米国株は続落。利上げ長期化懸念やインフレによる消費低迷・景気後退見通しが重石となった。ハイテク株、景気敏感株ともに売られ、NYダウは前日比▲350ドル安の33,596ドル、ナスダックは▲225ドル安の11,014ドル。

原油価WTI先物主限月は74.25ドルに下落。米10年債利回りは3.531%へ、2年債は4.369%へ小幅低下した。

米国市場のドルはリスク回避を背景に堅調。ユーロドル相場は1.0490~1.0530で上下したあと下落して引けは1.0470。ドル円相場は上下しながら上昇して137円ちょうど近辺で引け。ユーロ円相場は143円台前半で上下し引けは143円40銭。

水曜日の東京市場では日経平均が下落。前日に米国株が全面安となったことで値がさ株やハイテク中心に売られ下げ幅は一時▲320円に広がった。

ただその後は押し目買いに底固く、中国のゼロコロナ政策修正への期待によりインバウンド関連が買われた。引けは▲199円安の27,686円。

ドル円相場は137円ちょうど近辺で始まり136円80銭~137円40銭で上下。午後は堅調となり137円80銭へ上昇し夕刻から欧州市場では137円30銭~80銭を中心に上下した。

ユーロ円相場は143円40銭~50銭で始まり143円台半ばで上下。その後欧州市場にかけては右肩上がりで144円60銭まで上昇した。

ユーロドル相場は1.0470で始まり小動き、もみ合い横ばい。欧州市場に入るとユーロは堅調となり1.0550まで上昇した。

米国市場に入るとユーロが急反落し円全面高。プーチン大統領が世界で核戦争のリスクが高まっている、と述べたことでリスク回避、欧州懸念が強まった。

ユーロ円相場は143円30銭まで急反落。連れてドル円相場も136円40銭に下落し40銭~80銭で上下し136円20銭近辺まで下落。

ユーロドル相場は1.0490へ下落した。その後ユーロ安円高は一服。ユーロ円相場は143円50銭で引け。ドル円相場は136円60銭に戻して引け。ユーロドル相場は1.05ちょうど近辺。

米長期金利はリスク回避から低下。10年債は3.42%、2年債は4.262%へ下落。

米国株はまちまち。利上げ警戒感が燻るなか長期金利は低下したが景気不安やリスク回避が背景で株価にプラスとならず。NYダウは前日比ほぼ変わらずの33,597ドル。ナスダックは▲56ドル安の10,958ドル。原油価格WTI先物主限月は72ドル近辺まで下落した。この日、カナダ中銀は3.75%から4.25%へ0.50%の利上げを実施した。

木曜日の東京市場では日経平均が続落。米国景気減速懸念、前日の米ハイテク株が軟調だったことで心理が悪化。一時▲200円安となった。ただ中国のコロナ規制緩和が下支え。引けは▲112円安の27,574円。

ドル円相場は136円60銭で始まり早朝に20銭台に下落。ただその後は昼過ぎにかけて137円20銭台までドル高円安が進んだ。ユーロ円相場は143円50銭で始まり午後には144円ちょうどを上回った。

発表された日本の国際収支(10月)が前月9,000億円の黒字から6,200億円の黒字予想に反して640億円の赤字。これを材料に円安が進んだ。

ユーロドル相場は1.05ちょうど近辺で始まり小動きもみ合い。夕刻にかけてはドルが下落。

ドル円相場は136円60銭。ユーロドル相場は1.0530へ上昇。欧州市場に入るとドル円相場は高下。137円10銭台に反発したあと米国市場朝方にかけて急反落し136円30銭まで下落した。

発表された週次の失業保険申請件数が、継続受給者数が1,671千人と前週1,608千人から増加したことで雇用情勢の悪化、利上げ警戒感の緩和につながりドルを押し下げた。

ユーロドル相場は1.0560へ上昇。ただ米国株が持ち直したことで円が軟調。ドル円相場は下げ止まり136円30銭~80銭で上下し引けは136円70銭。ユーロドル相場は1.0550~60で引け。ドルインデックスは105ポイントを割り104.79。

ユーロ円相場は143円60銭~90銭台で上下したあと144円30銭~40銭に上昇。

米10年債利回りはやや上昇し3.48%、2年債は4.313%。米国株は弱めの指標で利上げ警戒感が緩和して上昇。ただ翌日の生産者物価指数発表を前に様子見。

NYダウは前日比+183ドル高の33,781ドル、ナスダックは+123ドル高の11,082ドル。

原油価格WTI先物主限月は、北米のパイプライン故障の報道で一時75ドルに急騰したが景気悪化懸念は根強く急反落し71ドル台、昨年12月以来の安値で引けた。

カナダ中銀は昨日+0.50%の利上げを実施し政策金利を4.25%としたが、この日副総裁は、利上げ幅の議論ではなく利上げを実施するか否かの議論に移行した、と利上げ打ち止めの可能性を示唆した。

金曜日の東京市場では日経平均が上昇。前日の米国株高、香港株・台湾株が堅調に推移したことが支えとなった。引けは前日比+326円高の27,901円。

ドル円相場は136円60銭~70銭で始まり朝方80銭台に上昇したがすぐに反落。大きく下落して昼頃には135円80銭までドル安円高が進んだ。夕刻にかけては136円50銭に反発したが欧州市場では135円60銭まで下落した。

ユーロ円相場も同様の値動き。144円30銭~40銭台で始まり143円90銭に下落。その後夕刻にかけて144円20銭まで上昇し143円20銭に急反落と方向感定まらず大きく高下した。

ユーロドル相場は1.0550~60で始まり80台に上昇したあと欧州市場にかけては押し戻されて1.0550~60でもみ合い。

この日発表された米国の経済指標は総じて予想より強め。生産者物価指数(11月)は前年同月比+7.4%と前月+8.0%から上昇は鈍化したが予想+7.1%は上回った。コア指数は+6.7%から+5.8%への鈍化予想に対し+6.2%。

ミシガン大学消費者信頼感指数(12月)は前月56.8から56.4への小幅悪化予想に反して59.1と改善した。

米長期金利は上昇。10年債は3.59%へ、2年債は4.34%へ。

ドルは急反発。ドル円相場は136円70銭~90銭に上昇し反落したあと引けは136円60銭近辺と東京市場朝方と変わらぬ水準。ユーロドル相場は1.0510に反落したあと1.0560に戻し引けは1.0530。

ユーロ円相場は142円80銭に下落したあと144円80銭に急騰し引けは143円90銭近辺で東京市場よりややユーロ安円高。

米国株は金利高止まり継続観測や長期金利上昇が重石となり下落。NYダウは前日比▲305ドル安の33,476ドル、ナスダックは▲77ドル安の11,004ドル。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)

13日火曜日・14日水曜日の両日、FOMCが開催される。結果は日本時間木曜日未明4:00に公表。4:30からパウエル議長が定例記者会見を行う。

今回の会合では利上げ幅を前回0.75%から縮小して0.50%とし、FF金利誘導水準を3.75%~4.00%から4.25%~4.50%へ引き上げると予想されている。

注目はメンバーによる景気物価金利予測。今後の利上げ、金利のピーク、さらには利下げに転ずるタイミングなど、9月予測に比べてタカ派にぶれるか、逆に利上げ打ち止めが鮮明になるか。

インフレと景気のバランスにおいて景気配慮に傾いた様子がみてとれるか。パウエル議長の会見ともども注目される。

2.ECB理事会、BOE政策決定会合

FOMC結果判明後の15日木曜日、ECB理事会が開催され、終了後にラガルド総裁が会見を行う。今回の会合では政策金利を2.00%から2.50%へ0.50%引き上げるとの見方が市場のコンセンサス。

ラガルド総裁が今後の利上げについてどのようなスタンスを示すか。

また水曜日・木曜日の2日間開催されるBOE(イギリス中銀)の会合結果も木曜日に公表。政策金利は3.00%から3.50%へ引き上げ見通し。

カナダ中銀はすでに利上げ後に打ち止め方針を漂わせたが、同様の利上げ打ち止め姿勢が垣間見えるか。

3.米国の経済指標

先週の指標は予想より強めの数字が多かったが今週はどうか。

火曜日 消費者物価指数(11月、前年同月比、予想+7.3%、前月+7.7%、コア指数、予想+6.1%、前月+6.3%)

水曜日 輸入物価指数(11月、前月比、予想▲0.6%、前月▲0.2%)

木曜日 NY連銀製造業景気指数(12月、予想▲0.5、前月4.5)    小売売上高(11月、前月比、予想0.0%、前月+1.3%)    フィラデルフィア連銀製造業景気指数(12月、予想▲9.7、前月▲19.4)    鉱工業生産(11月、前月比、予想+0.2%、前月▲0.1%)    設備稼働率(予想前月と変わらず79.9%)    PMI景況感指数(12月、製造業、予想48.0、前月47.7)

◆今週のMRA's Eye


信頼度が低下したFRBの予測

この1年、市場はFRBの予測変化に振り回された。経済環境が従来と全く異なる状況となり、景気物価動向が不透明感を増すなか致し方ない。

FRBが何を考えているか、毎回のFOMCで推察することはできるが、一方、そのことと実際にどうなるかは別物。肝心なのはFRBの予測を鵜?みにするのではなく、予測や考え方の前提条件がFRBの見立て通りに進んでいるかをチェックすることが重要となる。

こうした状況では自ずと相場のブレ、想定外の値動きが生じやすい。

変動率の高さがリスクの高さとすれば、当面はなおリスクの高い状況。ドル円相場でいえばドル高円安・ドル安円高いずれにもブレが大きく、落ち着くまでもうしばらく時間がかかりそうだ。

そのうえで、大きな流れを見極め、リスクバイアスの傾きをみていく必要がある。

今週、注目のFOMCが開催される。利上げ実施は確実で、利上げ幅は前回11月の0.75%から0.50%へ縮小するのが確実とみられる。

問題はメンバーによる予測だ。前回予測を示したのは9月会合。FF金利の今年末予測値は中央値が4.4%だった。さらにその前に予測を示した6月時点では3.4%。現在は当局者の発言から5.0%近辺との見方が大勢だ。

単なる予測といえばそれまでだが、少なくともメンバーの予測が将来の金利パスを示していると信じることは到底できない。

同様に、その前提となる景気物価見通しについても、現下の不透明な状況下で正確な見通しができているともいえない。

コロナ禍や資源価格の急騰、物流の混乱、ウクライナ情勢、米国と中ロの対立によるサプライチェーン再構築、など、不確定要因、ないし今までにみられなかった要因がかつてないほど多い。

景気物価を正確に見通せという方が無理であり、それは金融当局にとっても同様だ。

予測は予測として、現状を見極めながら金融政策を漸進的に進めるしかない。かかる状況では予測を示すことの方が市場に混乱をもたらす可能性がある。

足元では、当局が急速な政策金利変更、利上げの効果が顕在化するまでのタイムラグを考慮し始めたこと。FRBがやりたいことを理解したうえで、市場では利上げ打ち止め期待が強まり、さらには将来の利下げも織り込み始めた。

FRBは引き続きこうした過度の市場の期待を抑制するスタンスを示し続けるとみられる。

大きな景気物価動向は急に方向転換することはない。足元では景気悪化・インフレ鎮静化の流れが続くだろう。問題はその速さや程度。市場は先読みするのが常であり、現状では景気後退あるいは深い景気悪化を織り込みやすい。

それを反映した相場におけるリスクは、短期的にはFRBの市場牽制による米金利反発、ドル反発となる。

一方、大きな流れを前提とした中長期的リスクは、景気物価動向に沿ったサイドと同一。景気悪化、インフレ鎮静化、長期金利低下、リスク選好の後退ないしリスク回避の強まりだ。中長期的なドルのリスクバイアスは米国景気金利動向を前提にみればドル安方向で当面は変化がないだろう。

円に関しては、内外金利差の縮小、資源価格の調整に伴う貿易収支の改善が円安圧力を緩和する流れだろう。

ただ相場の織り込みを前提とする短期的なリスクは、ドル高円安サイドも相応にある。不透明感が大きいなか、振れ幅も大きくなりやすい。

現状では135円~140円では上値が重く、年初にかけては130円~135円に定着していく流れ、その先も130円割れを試しにいく流れ、を想定する。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
【MRA外国為替レポート】について