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米CPIを控え調整 中国問題は都合よく売り材料に
  • MRA商品市場レポート

2022年12月13日 第2346号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米CPIを控え調整 中国問題は都合よく売り材料に」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は液体系エネルギーが上昇し、その他は総じて軟調な推移となった。ドル指数が再度上昇したことや、これまでかなり積極的に材料視されてきた「中国のゼロコロナ政策見直し」が「行き過ぎ」との見方が強まり、中国の感染は再拡大して経済活動が停滞する、との見方が強まったことが背景。

ただしこれらは「都合良く材料にされている」という印象は否めず、基本的には欧米のクリスマス休暇を控えたポジション調整の動きが主体だった、と考えるのが妥当だろう。

ただ、今のところ世界景気が減速して2023年は調整の年、という見方がコンセンサスとなるなかで、基本的に景気循環系商品価格には下押し圧力が掛りやすい地合が続き。これまでドル建て資産価格を押し下げてきたドル高が修正される中では、ファイナンシャルな面での買い戻しが入り結局下値は堅い、と言うのが現在の弊社の見立てである。

【本日の見通し】

本日は米国のCPI待ちでアジア時間は小動きになるだろう。ただ市場予想通りであればやや弱めの内容になることが予想されるため、ドル指数は調整してドル建て資産価格はファイナンシャルな面で物色されることになるだろう。

今のところ景気の減速に伴う需給ファンダメンタルズの緩和が景気循環系商品価格を押し下げているが、このまま景気が悪化し多くの商品が供給過剰に転じれば金融政策の動向が価格を左右しやすくなる「金融相場」に戻るため、2023年の中頃の景気後退→底入れのタイミングでの高騰リスクは今から意識しておく必要があろう。

本日予定されている材料で注目は以下の通り。

EUエネルギー臨時理事会で今後のガス・エネルギーを巡る会合では、一時的なガス市場の調整メカニズムに関して議論が行われる見通し。

EUは欧州のインフラストラクチャーのボトルネックによって、TTF、国内ガス価格、LNG価格の間に不均衡(裁定が働かない。結局流動性の問題)が発生しており、価格に一時的に制限を設けることで安定化させることを検討している。

11月米CPI 市場予想 前月比+0.3%(前月+0.4%)、前年比+7.3%(+7.7%) コア 前月比+0.3%(+0.3%)、前年比+6.1%(+6.3%)

12月独ZEW景況感指数 期待指数 ▲26.4(▲36.7) 現況指数 ▲57.0(▲64.5)

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本の企業物価指数は前年比+9.3%と上昇、物価指数は118.5と8ヵ月連続で過去最高を上回った。

寄与度が大きかったのは電力・ガスなどの光熱費であり、前年比+49.7%上昇している。日本の場合、エネルギー価格の上昇が価格に反映されるまで時間差があるため、7月から始まった国際価格の下落や、円安の修正の効果がまだ顕在化していないと考えられる。

これまでの価格上昇は景況感の沈静化が遅れていることによるドル建て資源価格の上昇と円安によるものであるため、今後この価格上昇は沈静化が予想される。

しかし、物価指数自体が過去最高を上回っているのは事実であり、仮に物価上昇率が沈静化したとしても、日本が輸入する商品や原料の絶対価格の水準は高いままと考えられる。

その場合、物価上昇に耐えられるだけの賃金上昇が起きていないため、国内消費に影響が出る可能性は高い。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米キーストンパイプラインの再開の目処が立っていないことが材料となり、米CPI発表前のポジション調整の動きが強まったためと考えられrう。この1週間で▲10%以上価格が下落しているため、買い戻しも入れやすかったと考えられる。

カナダ アルバータから米中西部とメキシコ湾の製油施設に原油を輸送する重要なインフラであるキーストンパイプライン(62万2,000バレル/日)のオイル流出事故が発生したのは先週のこのコラムで説明したとおりだが、まだ再稼働について目処が立っていない。

現在のクッシング在庫の水準は2,394万2,000バレルであり、キーストンパイプラインが停止したままであれば、単純計算で38日でクッシング在庫は枯渇する(注:他からの運び込みもあるためここまでの減少にはならない)。

WTIはクッシングで受け渡される原油の価格であるため、クッシング在庫動向の影響を受けやすい。そのため、世界の原油需給とは余り関係なく、WTIの価格が上昇する可能性は現状高いと考えられる。

弊社はDOEの需給見通しを前提に価格を予想しているが、直近の月報では2023年の需給見通しが大幅に緩和されており、弊社の見通しも2023年のBrent平均価格は84.65ドル、WTIは78.77ドルになる。

仮に、ロシアの原油が「世界のサプライチェーンに組み込まれたまま」の状態であれば、この見通しはBrentが74.86ドル、WTIが69.71ドルとなる。

ロシアは今回の制裁に対して報復措置を検討しているが、これが発動されても恐らく上記の「ロシア産原油の供給が制限されている状況」の見通しより、来年の予想価格は低くなる可能性が出てきた。

ロシアは、今回の制裁に対して、

1.上限価格を設定した国への販売を禁止、仲介者を通じた販売も禁止2.どこが受取り可能国であっても価格上限の条件を含む契約下での輸出を禁止3.ウラル原油のベンチマーク原油に対する最大割引額を設定して販売する

という3つの選択肢を検討しており、12月中の対応を目指している。この結果、ロシア原油の輸出量は減少することが予想されるが「限定的(ノバク副首相)」と見られ、現時点ではやはり価格の下落要因となる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は3の状態。仮にDOEの見通し通り米国などの増産が始まったり、OPECプラスが歳入確保のために減産を見送った場合、4.に移行する可能性はあるが今のところはリスクシナリオの位置づけ。

中国が極左の政権になったことから台湾有事のリスクは高まり、中東から日本への航路も旅程が長くなり、コスト増となってFOBとCIFの乖離を拡大する恐れがあるため(JCCとドバイ・オマーン、Brentなどとの乖離幅拡大)、今後の中国・台湾情勢はより注意が必要であり、ビジネスリスク・市場リスクを回避する意味で、米国などの同盟国からの調達を増加させる必要が出てくると考えられる。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で水準を切下げるが、景気底入れ(恐らくQ323あたりか)を受けて再度上昇すると考える。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、COP27で確認されたように脱炭素も継続、する見通しであるため当面供給面の制限は続き、原油価格は高止まりする可能性が高いと考える。

足下の脱炭素のための化石燃料採掘制限は、「今を生きる人々」の生活にマイナスに作用していると言わざるを得ない。100年後よりも今である。

Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・生産調整 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米CPI発表待ちだが、今のところ市場予想では弱めの数字が見込まれているため、ドル安進行が期待されること、これまでの価格調整ペースと幅が大きかったことから、いったん買い戻しが入ると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。特段手掛かり材料があった訳ではないが、今のところガス供給に問題が発生していないこと、冬が始まり需要増加観測が強まっていることの綱引きとなった。

欧州はガス問題に取り組むため、▲15%の需要削減を目指しているが、これは日割り換算すれば、12ヵ月中、2ヵ月分のガスの使用を削減することを意味し、週間ベースでは丸一日、日次ベースでは4時間近くガスを使わないことを意味する。これは簡単なことではない。

省エネ技術の積極的な導入がなければ、この需要削減は難しいだろう。省エネを進めるにせよ時間が掛るため、結局の所当面は「寒さを我慢する」しかない。そのためやはり年明け以降の需給は厳しくなるというのがメインシナリオだ。

ロシアに対する制裁はガスよりも原油の方が金額的にも影響が大きいが、10月はガスプロムが価格高騰を背景に4,160億ルーブルの納税をしたと報じられており、ロシア政府の財政状況はエネルギー価格の高騰の恩恵を受けている。

ゼレンスキー大統領が主張するように、様々な抜け道が用意されているため、ロシアはそれほど困っていない、というのが事実だろう。

なお、4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想され、足下のガス調達への懸念は後退しているといえる。

ただし、今年は例年と異なり、夏場も欧州はLNG輸入を高い水準に維持したため在庫調達が進んだが、輸入キャパシティが劇的に増加している訳ではないことから、やはり年初からロシアからのガス供給が期待できない2023年のガス需給はまだひっ迫した状態が続くと予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州最大のガス消費国であるドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光、石炭、原発)3.需要の削減4.浮体式ターミナルの活用

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。今のところ脱ロシア達成には5年程度かかると考えている。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスク、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

Freeportの再開予定は来年以降、ナイジェリアは未定。

3.4.は顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも急低下しており、足下のLNG調達需要が低下していることを示唆している。しかし、足下の気温低下で今後、再び上昇する可能性は高いとみている。

11月28日-12月4日のLNGトレードは、800万トン(前週850万トン)と減少、スポットLNGカーゴのシェアは22%(17%)と上昇。

スポットカーゴは北欧・イタリア向けが横這い、日中台韓の輸入は+30万トンの増加。主に台湾と韓国の増加によるもの。ターム契約による調達は気温の影響などで減少。

なお、洋上在庫(直近20日の洋上タンカーの積載量合計)は前週比横這いだが、過去5年平均の2倍以上の在庫水準を維持。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は続伸。寒波襲来で北米の気温が例年を大幅に下回る見通しが示されたことで、暖房向けの需要が増加すると見られたことが材料。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物はパラレルに下落した。欧州のガス価格の下落が材料となった。しかし北半球の冬が始まったこともあり、高値を維持している状況。

11月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲3.8%の1,032万トン(前月▲18.9%の761万トン)と前年比での減少幅を縮小、前月比では大幅な輸入増加となった。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。

10月のLNG輸入は前年比▲34.6%の403万トン(前月▲12.6%の590万トン)と大幅に減少している。

10月のパイプラインベースの輸入は前年比+11.6%の358万トン(前月+9.7%の425万トン)と輸入の伸びは減速している。

中国国内の天然ガス生産は10月は+12.3%の184億8,000万立方メートル(前月+4.1%の164億1,000万立方メートル)と生産は増加した。

天然ガス輸入量の減少を見ると、1.石炭生産が高水準であり電力向けのガス需要がさほど旺盛ではない、2.中国国内の天然ガス生産の増加、3.中国景気の減速、のいずれかないしは複合要因と考えられるが、1~3全てが該当すると考えられる。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2は、以下が意識すべきリスクとなる。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える(今のところこのリスクは後退)

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

3.ロシア側が日本に対する嫌がらせで販売を渋る(ただし、歳入確保のため、ロシアは積極的にカードを切る可能性は低い)

12月4日時点の日本の発電用LNG在庫は263トン(前年同月末234万トン、2017~2021年平均223万9,900トン)と増加、過去5年の最高水準であり在庫は潤沢。

ただし日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。気温次第で来年の2月頃にガス供給が不足して価格高騰、ということも有り得る。

また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

本日も気温動向に一喜一憂の展開だが、冬が始まっていること、中国の経済活動再開期待に伴う電力向け需要の増加期待もあり高値維持の公算。

欧州は▲15%~▲20%の需要削減ができなければ、来年の春のガス在庫の水準は例年を下回ることが予想され、2023年のガス調達はより厳しい状態になるリスクがある。引き続きこちらも冬場の気温次第。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、ロシアからのガスフローが事実上途絶していることを考えると、下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは全ゾーンパラレルに下落している。欧州ガス価格の下落が影響したとみられる。

2022年の豪州炭価格を俯瞰すると年初は上昇していたが、夏場以降は下落に転じている。これは欧州がガスや電力の価格の上限設定について言及したことや輸入の一巡の影響が大きいと考えられる(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

発電燃料としての石炭を、これまでつ買っていた物から違うものにシフトすることが容易ではないことを考えると、石炭価格は少なくとも春先まで高止まりするのではないか。

11月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲7.8%の3,231万トン(前月+8.3%の2,918万トン)と高水準に迫ったが、前年比ではマイナスの状況。国内生産の増加やゼロコロナ政策の影響による国内の電力需要の低迷もあって昨年ほど輸入需要は旺盛ではない。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、冬場に備えた調達の再開、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。

10月の中国の石炭生産は、前年比+3.6%の3億7,009万トン、1,194万トン/日(前月+15.7%の3億8,672万トン、1,289万トン/日)と減速したが、それでも同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが輸入が増加しており中国国内の需給がタイト化している可能性が出てきた。

もしくはロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は250~300ドルとなっている。この水準がさらに低下するには需要の減少か鉱山生産の増加が必要条件となる。

しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250~300ドル程度が基準となってしまう。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

本日も、冬本番であり石炭在庫積み上げの動きはまだ続くと考えられ、高値維持の公算。

なお、ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了する3~4月以降はラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。中国のゼロコロナ解除によって逆にロックダウンの動きが強まるのでは、との懸念やドル指数が上昇したことが材料となった。

中国製造業PMIの内数である新規受注や完成品・原材料在庫の水準から推定される中国国内の需給は緩和していると考えられるものの、中国政府のゼロコロナ政策の(今度は)強硬な見直しと、不動産セクターの資金繰り支援策の影響が過剰に市場で意識されており、価格を押し上げている、という印象は否めない。

そして昨日に関しては「ゼロコロナ解除による感染拡大で、再びロックダウンや暴動が発生か」といった見方が強まったことが価格を押し下げている。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

コロナ禍の初期は明確に需給動向が価格を左右していたが、今年の7月以降は「ディスインフレ」をテーマに投機筋が非鉄金属を売り、足下は中国の景気先行きを過剰に楽観した投機の買い戻しや新規の買いが相場を押し上げていたが、あと1週間程度えクリスマス休暇が始まることもあり、新規買いポジションの解消が進んだとみられる。

短期的には各国の経済統計や、最大消費国である中国の経済対策動向、コロナ対策動向が価格の方向性を決めると考えられる。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

10月の中国の非鉄金属生産が発表されたが、ほとんどの金属の生産が大幅に増加し、過去5年レンジを上抜けている。ゼロコロナ政策の一部解除(再びロックダウンが始まってる地区があるようだが)、エネルギー供給不足の解消などが影響していると考えられる。

今後、不動産開発業者の支援が進む中では需要の回復が期待されるため、生産も増加が予想される。

なお、長期の構造的な需要増加による価格上昇は、来年後半からと考えており、今回の上昇は11月末のファンド決算を意識した買い戻しと考えられること、米国の金融引き締めが継続する見通しであることから、12月以降は調整圧力が強まるのではないか。

なお、リスクとしてはファイナンシャルな影響で、米利上げ打ち止め直後から価格が上昇する場合だ。恐らく早ければ3月、遅くとも6月のFOMCで利上げは打ち止めになるとみられ、Q223から景気回復を先取りして価格が上昇する可能性はあろう。

11月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+5.8%の54万トン(前月▲1.5%の40万4,414トン)と過去5年平均を回復した。銅価格の下落もあったが、中国政府が不動産セクターの資金繰り支援策を打ち出したことで需要増加への期待が高まったことが影響したとみられる。

一方、銅鉱石の輸入は前年比+10.1%の241万1,691トン(前月+3.8%の186万8,751トン)と過去最高水準となった。政府の対策に伴う国内需要の回復期待、上海在庫が過去5年の最低水準を遙かに下回る水準で推移していることなどから、さすがに在庫積増し需要が顕在化していると考えられる。

この中国の在庫積増しの動きは、銅以外の非鉄金属にも当てはまり、足足下、急速に水準を切り上げているスズを除けば全て過去5年の最低水準~過去5年平均を下回る水準、での推移となっている。

仮に中国政府が不動産セクターやその他の工業セクターのテコ入れ策を打ち出せば、在庫不足を材料に価格が上昇する可能性はある。ただ、そこまで積極的な対策を打てる財政的なゆとりが中国中央・地方政府にあるわけでは無いため、影響は限定されるだろう。

10月の中国の精錬銅生産は+11.5%の95万3,000トン(前月+6.9%の94万6,000トン)と過去5年の最高水準を上回っている。

生産と輸入を合計した供給量は前年比+7.3%の135万7,000トン(前月+12.8%の145万6,000トン)と過去5年平均を上回っており需要は堅調だが、前年比増加幅が減速している。

10月の銅スクラップの輸入は前年比▲15.2%の11万2,857トン(前月+24.2%の16万6,988トン)と前月からは前年比の伸びが減速、過去5年平均は下回った状態。

銅地金の輸入の急減速、スクラップ輸入の低迷を見ると中国国内の需要の回復は緩慢と見られる。前月までは回復感が強かったが、やはりゼロコロナ政策堅持の方針が重石となっているようだ。

また、3期習近平政権はイデオロギー重視で経済通がおらず、経済以上に体制維持に力を注ぐと考えられ、台湾問題などの対応を優先する可能性が高いことから、2023年以降の銅需要は落ち込む可能性があり、需要・価格のリスクは下向きだ。

本日は、昨日の下落の反動でいったん買い戻しが入るが、米CPI発表を控えて調整的な取引が主体となり方向感が出難い展開を予想する。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落。大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月が大幅な下落、中心限月が上昇した。

中国政府がゼロコロナ政策の方針を変更したが、今度は修正しすぎで感染が拡大し、経済活動が再び厳しくなるとの見方が強まったことが価格を押し下げた。

11月の中国鉄鋼業PMIは総合指数40.1(前月44.3)と悪化した。コロナの影響に伴う経済活動の停止に加え、資金繰り懸念が解消していないことが背景と考えられる。

内訳を見ると新規受注が34.5(43.4)と大幅に減速)、輸出向け新規受注も45.8(47.7)と減速を余儀なくされている。人民元安はあるものの、中国の外も米国を除けば景気が減速している、ということだ。

在庫は完成品が37.4(36.1)、原材料が36.0(37.0)と完成品が増加、原材料が減少している。生産が増加(38.8→39.3)したことで完成品在庫が増加、原材料在庫が取り崩されたようだ。

価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは完成品が0.92(1.20)と緩和、原材料が0.96(1.04)とこちらも緩和した。需要の減速が影響していると見られる。

鉄鋼製品の主要用途先である住宅セクターの指標である建設業PMIは55.4(58.2)と前月からさらに減速。中国政府が不動産業界向けの資金繰り支援策を打ち出したが、その影響はまだ顕在化していないとみられる。

ゼロコロナ政策は修正されているがそれでも継続、不動産業界向け支援策の効果が出るまでは時間がかかると思われることを考えると、鉄鋼市場の需給は緩和した状態が続き、鉄鋼原料価格の頭を重くしよう。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では90~95ドル程度、原料炭は220~230ドル程度となる。

11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲47.0%の75万2,290トン(前月▲31.7%の77万2,270トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。そもそも中国国内の粗鋼生産能力が高いうえ、ゼロコロナ政策の影響で国内の経済活動が停滞していることが輸入を阻害している。

10月の中国粗鋼生産は前年比+11.4%の7,976万トン(前月+17.9%の8,695万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画。

10月の鉄鋼製品の輸出は前年比+15.2%の518万4,380トン(前月+1.2%の498万トン)と前年ベースでの伸びが回復、過去5年平均を復帰した。人民元安が輸出を加速させているとみられる。

11月の鉄鉱石の輸入は前年比▲5.9%の9,880万トン(前月+3.7%の9,500万トン)と前年比でプラスを維持、過去5年平均も維持した。

中国政府が徐々にゼロコロナ政策を見直ししていること、鉄鋼原料在庫水準の低さから在庫積増しの動きがみられているため、と考えられる。

週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比▲115万トンの1億3,635万トン(過去5年平均 1億3,802万4,000トン)、在庫日数は31.5日(▲0.3日、過去5年平均33.5日)。

鉄鋼製品在庫は▲8,000トンの934万2,000トン(過去5年平均877万1,000トン)、原料炭在庫は+8万トンの150万トン(166万8,000トン)、在庫日数は+0.3日の6.5日(過去5年平均 7.4日)と少ない。

鉄鉱石、原料炭とも在庫はタイトな状態が続いている。仮に中国がゼロコロナ政策を撤回の方針であるため、調達圧力は高まることになろう。

本日も、中国のゼロコロナ政策の修正が継続していること、鉄鋼原料・鉄鋼製品在庫の水準が低いことから年末・年始に向けて在庫積増しの動きが強まると予想され水準を切り上げる展開を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。米長期金利上昇とドル高の進行が価格を下押しした。銀も下落、PGMは株価の上昇はあったものの大幅な調整となった。

金の基準価格は▲9ドルの894ドル、リスク・プレミアムは▲6ドルの887ドル。

金価格は仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば280ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,200~1,300ドル程度までの下落余地があるが、この場合、ETFの管理残高は半分減少することになる。

現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、各国の政策金利の上昇継続観測によるものであるが、リスク・プレミアムは上昇ペースの鈍化でターミナルレートの低下を織り込み、構成要素中のドル安の影響が大きくなっている。

恐らく来年の春頃(初夏)には米国の利上げが打ち止めとなり、実質金利も低下して基準価格は切り上がると予想される。

一方、金融引き締めの打ち止めで信用リスクが低下するため、リスク・プレミアムは低下すると予想されるが、仮にリスク・プレミアムの剥落があっても1,200ドル程度が限界と考えている。

足下、金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率そのものであり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる(なお、ロシア産原油の禁輸の影響が殆どないとした場合、この予想価格は1,630ドル程度に低下)。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。

しかし、米国内の太陽光パネル供給・設置は民主党政権下で継続の見込みであり、徐々に金銀レシオには低下圧力が掛る展開が予想される。

本日は、米国のCPI発表待ちでアジア時間~欧州時間に掛けては昨日の反動で買い戻しが入ると考える。米CPIは緩やかな減速となる見通しであり、米国の金融引締めペースの緩和は変わらないとみられるため、発表後は上昇に転じると考えられる。

◆穀物

シカゴ穀物市場は小麦とトウモロコシが上昇、大豆が下落した。

小麦とトウモロコシの上昇は、ロシアによるウクライナ南部オデーサの攻撃により主要港が一時閉鎖されたことが供給懸念を想起させたこと、原油価格の上昇が材料。

大豆は最近中国のコロナの動向が価格を左右しているが、ゼロコロナ解除に伴う感染拡大が再び需要を鈍化させ、豚向けの需要が減少するとみられたことが材料となったようだ。

11月の中国の大豆輸入は前年比▲14.2%の735万トン(前月▲19.1%の413万6,000トン)と回復している。

中国の大豆港湾在庫は559万3,900トンと、過去5年の最低水準に近いため在庫積増しの動きがあったと考えられる。また、ゼロコロナ政策の見直しの中で在庫積増しの動きは今後強まるのではないか。

今後は冬場のラニーニャ現象がアラビア半島・北アフリカ周辺に降雨をもたらしており、サバクトビバッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性がある。

なお、今のところバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、米CPIを受けた為替動向が重要になるが、今のところやや弱めな内容になると予想されているためドル安進行で価格は上昇余地を探る動きに。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・日本政府の財政規律の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(アジア危機ならぬ、日本危機のリスクだが経常収支黒字の間は顕在化し難いリスク)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。

追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「豪州石炭価格は高止まりか」

2022年の石炭価格はロシアの軍事侵攻開始とそれに伴う制裁実施以降、世界中で価格が上昇したが、8月末のEUによる電力・ガス価格上限規制の話が出てから急に下落に転じ、欧州の石炭価格は下落しており、現在API2石炭価格は200ドル程度と、NEWCの半分程度の価格で取引されている。

極東の石炭価格の指標であるNEWCの高止まりは、豪州鉱山での人手不足や降雨、鉄道ストライキなどの影響で供給が滞っていることが影響していると考えられる。

実際、豪州の燃料炭輸出は直近10月の輸出が1,362万トンと、昨年の10月の1,642万トンから▲17.1%も減少している。

豪州炭の輸入シェアが最も大きいのが日本だが直近は50.1%(昨年10月は43.7%)と上昇している。しかし輸入量は▲16.1%の682万トンに止まっている。これはその他の地区の輸入が+12.8%の357万トンに増加、シェアも26.2%(19.2%)に上昇したことによる。

これはロシア炭の輸出制限によって高カロリー炭を求める動きが強まったことによるものであり、同時に生産国である豪州の供給面の問題が影響していると考えられる。

記録的な高値にあるものの生産や輸出が増加していないのは、やはり生産面での障害の影響が大きいため、と考えられ、人手不足などの構造的な問題も無視できないこと、来年3月までは域内に洪水を発生させる可能性が高まるラニーニャ現象が続くことを考えると、しばらく豪州炭の供給は制限された状態が続くだろう。

では欧州の石炭調達需要が後退、中国も増産する中で代替品を使えば良いかといえば、性状の異なる石炭を使用することがそれほど容易ではないことを示唆している。

これは同じ原油であっても製油所の能力によっては処理ができないため何でもかんでも原油ならばいい、という問題ではないのと類似している。

基本的には同じ発電燃料であるガス価格と石炭価格は連動する可能性が高いのだが、LNGなど(カロリー調整の必要はあるものの)基本的に性状が同じであるものは欧州や日本で価格の裁定が働くが、石炭など生産する鉱山によって性状が異なる場合、代替の融通が利き難いことが影響しているとみられる。

よって豪州炭価格は冬場が終了するまではやはり高値を維持すると考えるのが適切ではないか。


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