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中国コロナ規制緩和期待と居心地の良い米雇用統計で上昇
  • MRA商品市場レポート

2022年11月7日 第2320号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国コロナ規制緩和期待と居心地の良い米雇用統計で上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は軒並み水準を切り上げた。米シティのセミナーで中国の疫学首席科学者を務めた曽光氏が中国のダイナミックコロナ政策について近く、大幅な変更が行われるとの見通しを示したことが材料となり、全市場でリスクテイク意欲が高まったことが背景。

また、米国時間に発表された米雇用統計は失業率が上昇し、米国の金融引き締め策が奏功しつつあることを示す一方で雇用者は増加ペースが加速しており「さほど景気は悪くなく、金融引き締めは継続するがそこまで悲観する状況でもない」といった楽観を強めたことも価格を押し上げる形となった。

ただし、中国のゼロコロナ政策終了はあくまで公式発表ではなく、期待であり、中国のワクチンの有効性が低いこと、これまで強硬に進めてきたゼロコロナ政策の影響で集団免疫を獲得できている訳ではないことから、本当に政策が変更されるか否かについては、まだ眉唾ものではある。

しかし、変更された場合は影響が大きいため、これまで金融引き締め加速やゼロコロナを材料に新規で売りポジションを積み上げてきた市場参加者が「11月の大手ファンド決算月」で有ることも考慮してポジションを解消する動きを強めたことも価格押し上げに寄与したのではないか。

【本日の見通し】

週明け月曜日はFOMC・米雇用統計をこなし、中国のゼロコロナ政策の見直し機運が高まっていることからリスク資産価格は上昇すると考える。

しかし、米国の金融引き締めは継続する見通しであり利上げが終った訳ではないこと、中国のゼロコロナ政策も本当に終ったか否かはなんともいえないこと、11月8日に米中間選挙が行われる見通しで、この結果次第では原油価格が下落する(共和党側の圧勝で米化石燃料生産増加、先々のサウジアラビアとの関係改善期待などを背景とする)可能性もあり、上値も重いと考える。

週明け月曜日はブロックアウト期間を終了したことでFOMCメンバーの講演が予定されており、今回の米統計を受けて何らかのスタンス変化があるか否かに注目したい。

また、昨年から続く「ガスパニック」の引き金の1つとなったCOP27が開催予定であり、今後の脱炭素の方向性について注目している。

恐らく脱炭素を止める、という選択肢はないと考えられるが、同時にその他の化石燃料の使用に関してどの程度の妥協があるかに注目したい。

【昨日のトピックス】

昨日発表の米雇用統計は評価が分かれる内容だったが、失業率の上昇(6.7%→6.8%)を受けて、金融引き締め策の効果が出始めていると判断される一方、雇用者数は前月比+26.1万人と市場予想の+19.3万人を上回り、引き続き雇用市場の需給がタイトであることも確認された。

実際、不完全失業率が6.8%(前月6.7%)と上昇しており、「雇用形態のミスマッチを考慮した失業率」の上昇で、まだ労働者が余っている、という状態ではないことも確認されている。

結局、緩やかに労働市場の加熱が沈静化していることが確認される一方で、まだ景気過熱は続いているとの判断から、米国の金融引き締めを解除することはないだろう、との見方を強める形となった。

今回の統計は景気循環系商品の需要が堅調であることを示唆し、それを沈静化させるための金融引締め加速の必要性を示唆する内容ともいえる。その結果、米10金利は景気の減速観測で低下、2年金利は上昇している。

市場参加者の評価を金融政策変更の可能性で見て見ると、12月FOMCでの75bp利上げの可能性は52.0%(前日51.5%)と小幅に上昇、75bpの利上げの可能性は48.0%(42.2%)と大幅に上昇している。12月会合で大幅な利上げの可能性は今回の統計で高まったと考えられる。

なお、米FRBはインフレを速やかに抑制してインフレの恒常化を防ぐ狙いがあるとしているが、構造的なインフレの抑制には充分な供給側の能力増強が必要であり、同時に進めている脱ロシアも同様、より低利の資金供給が不可欠である。

弊社の見立てでは、金融引き締めによって景気が減速してインフレ沈静化に一時的に成功したとしても、その後の循環的な景気回復と、構造的な需要増加(脱炭素、脱ロシア、インド人口ボーナス期)時の供給が不足し、多くの資源価格がより上昇してしまうのではないか、と見ている。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。ドル指数が軟調に推移する中、中国のゼロコロナ政策の修正観測や、米国時間に発表された雇用統計が失業率の増加を確認する内容であり、米利上げペースの鈍化や需給ファンダメンタルズ(需要面)がタイトであることが意識されたことが背景。

ただ、総じて見ると、米雇用統計が「良くも悪くもなく」という状態だったためリスクテイクのドル安が進行したことが価格を押し上げた、と整理するのが妥当だろう。

また、ロシアに対する原油輸出規制も間近に迫り、世界的に不足してる中間留分の需給がタイト化するとの見方も、足下の価格を供給面から支えている。

しかし、今回の統計でFF金利先物をみるに、金融市場は米国の利上げペースの小幅な加速を想定しており、金融引締めペースの鈍化期待によってリスク資産が買い戻されるとしても一時的、と考えるべきだろう。

当面のレジスタンスラインとして意識されていた100日移動平均線をBrentは上回ったため、今後はこのラインがサポートとして意識されることになろう。ただし中期的に価格が下落する、という見通しを変更する必要はないと考えている。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在はOPECの減産により、1.の状態に戻った。また、米石油統計をみるに期待されていた米国の増産は起きていない。そのためしばらくは1.に止まると考える。

なお、今週の11月の米中間選挙で共和党が勝利した場合、化石燃料が増産され、2.に移行するとみている。

ただ、そろそろロシア産原油の輸入制限が始まる見通しであり、主要なマーカー原油価格には上昇圧力が掛ることが予想され、景気減速に伴う価格下落を限定し、原油価格の下支え要因となろう。

ロシア産原油の禁輸に伴うタンカーの不足や航路変更の影響で、FOBとCIF価格の乖離(日本の場合JCCとドバイのスプレッド)が広がる可能性がある。

また、中国が強左の政権になったことから台湾有事のリスクは高まり、中東から日本への航路も旅程が長くなり、コスト増となってFOBとCIFの乖離を拡大する可能性が出てくるため(JCCとドバイ・オマーン、Brentなどとの乖離幅拡大)、今後の中国・台湾情勢はより注意が必要であり、ビジネスリスク・市場リスクを回避する意味で、米国などの同盟国からの調達を増加させる必要が出てくると考えられる。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる見込み。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、脱炭素も、ということになれば供給面の制限は続くため、原油価格は高止まりする可能性が高いと考える。

足下の脱炭素のための化石燃料採掘制限は、「今を生きる人々」の生活にマイナスに作用していると言わざるを得ない。100年後よりも今である。

Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は米雇用統計がほどほどの内容だったこと、中国のゼロコロナ政策見直し機運の高まりが価格を押し上げると考えるが、同時にファイナンシャルな要因、政治要因を先取りしての週末の上昇だったことも考えると、結局下落すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。仏EDFが年内に再稼働する予定だった原子力発電所4基の再開が来年にずれ込むとの見方を示したことが域内の発電燃料需給をタイト化させるとの懸念があったが、北半球全体の気温が事前予想よりも高く、暖房需要が減少していることが価格を押し下げている。

これを受けて徐々に期先の価格も低下を始めており、2023年のガス調達リスクを軽減している。

しかし、独専門家委員会は電気料金の高騰に対して価格上限設定を提案しており、この通りとなれば価格上昇を背景とする消費減少に歯止めが掛ることになる。

欧州のガス在庫は、仮に欧州が需要を▲15%削減することができれば、この冬は仮にロシアからの供給が停止したとしても充分な状況であり、確かに暖冬になればこの達成も困難ではないだろう。

しかし、補助金などの対策の効果で消費が減らなかった場合は、冬場に在庫が減少して来年度以降の調達にも影響が出ることになる。もちろん気温も「当たるも八卦」であり、神のみぞ知るところで有るため、まだ厳冬に転じるリスクはなくなっておらず、価格リスクは上向きと見るべきだろう。

なお、4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想され、足下のガス調達への懸念は後退しているといえる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

ただし、欧州最大のガス消費国であるドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光、石炭、原発)3.需要の削減

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

現在の欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスク、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

Freeportの再開予定は11月上旬から中旬、ナイジェリアは未定。

3.は欧州で顕在化している状況で、ノルドストリームを巡るロシアの対応をみるにサハリン2も冬場に稼働を停止する可能性はある。

今回のノルドストリーム1・2の破壊は、ロシアの攻撃とした場合、以下がその背景となる。

・9月27日に開通した「バルティック・パイプライン(ノルウェー→デンマーク→ポーランド→欧州域内)」も「破壊可能である」との脅し。

・米国の圧力で開通していなかったノルドストリーム2は、パイプラインが1本残っているためこれを開通させる。

4.はもはやリスクではなく、顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも高い水準でほぼ横這い。

10月24-30日のLNGトレードは、682万トン(前週712万トン)と減少、スポットLNGカーゴのシェアは17%(18%)と低下、追加調達需要が減少していることを示唆する内容。

北欧以外のLNGスポット調達が▲20万トン減少、日中台韓向けのカーゴは10万トン増加。主に韓国と日本からの需要増加によるもの。ターム契約の調達は減少している。

なお、洋上在庫は前週比で+3%増加しており、2017年以降最高水準、過去5年平均の2倍。米国からのLNG船の滞留が多いが主に欧州向けと考えられ、当面、LNG調達への懸念は後退している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は上昇。米西部の気温低下予報と、HDD予測が急速に上昇したことが材料となった。また、比較的「リスク資産価格にとってプラスと判断できる」米雇用統計も価格押し上げに寄与したようだ。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期近が上昇期先が続落。北半球の気温低下が11月中旬以降にずれ込む見通しを受けて、春以降の需給緩和期待が高まっていることが背景。

9月の中国の天然ガス輸入は前年比▲4.4%の1,015万トン(前月▲15.2%の885万トン)と前年比での減少幅を縮小させており、調達が増加している。マイナス幅の縮小は主にパイプラインでの輸入増加に起因する。

とはいえLNG輸入は前年比▲12.6%の590万トン(前月▲29.0%の472万トン)と前年比のマイナス幅を縮小させながら、冬場に向けた調達増加が確認されている。

パイプラインベースの輸入は前年比+9.7%の425万トン(+9.0%の413万トン)と輸入の伸びが増加。

中国国内の天然ガス生産は9月は+4.1%の164億立方メートル(前月+7.0%の169億8,000万立方メートル)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。

中国の経済活動は鈍化し、発電向けの需要は減少しているとみられたが、気温の低下もあり需要が増加している可能性が高まっている。

実際、ロシアなどから取得したLNGの転売を制限するなどの措置が取られているため、想定よりも中国国内の需給がタイト化し、スポットLNG価格などの押し上げ要因となる可能性ができてきた。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2中長期的な観点では以下の2点が意識すべきリスクとなる。ただ、ノルドストリームの破壊工作報道をみるに、「欧州と米国に協力するならば、日本にもLNGを供給しない」という可能性も残るため、短期的なサハリン2リスクは上昇している。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

10月30日時点の日本の発電用LNG在庫は255万トン(前年同月末207万トン、2017~2021年平均239万6,800トン)と増加、この時期の過去5年の最高水準であり、在庫は潤沢。

日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため調達に問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。

また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

週明け月曜日は、北半球の気温低下が遅れる見通しであることから需要減少観測が強まっており、軟調な推移を予想。ただし下落局面では安値拾いの買いが入るため、下げ幅も限定か。

とはいえ、▲15%~▲20%の需要削減ができなければ、来年の春のガス在庫の水準は例年を下回ることが予想され、2023年のガス調達はより厳しい状態になるリスクがある。引き続き、冬場の気温次第。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、上述の理由から下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップはパラレルに低下した。気温上昇予想を背景に天然ガス価格が下落していることが各区を下押ししている。

ロシアの体制が変わり、より穏健で、西側諸国が付き合うに足る国にならない限り、ロシア炭が市場の需給を緩和する方向には働き難いが、足下、景気の減速や北半球の気温が事前予想よりも温暖であることが価格を下押ししている。

9月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+0.5%の3,304万8,000トン(前月+5.0%の2,945万6,000トン)と高水準を維持し、過去5年レンジを上回った。

国別ではインドネシアからの輸入が前月比+296万トンと大幅に増加、モンゴルも+30万トン増加している。一方でロシアからの輸入は▲223トンと減少している。

冬場に備えた調達が再開されたことは、海上輸送炭市場需給のタイト化に繋がる。豪州からは引き続き輸入していないが、巡り巡って海上輸送炭市場のタイト化に寄与しよう。

9月の中国の石炭生産は、前年比+15.7%の3億8,672万トン、1,289万トン/日(前月+10.5%の3億7,000万トン、1,195万トン/日)と大幅に増加、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが輸入が増加しており中国国内の需給がタイト化している可能性が出てきた。

もしくはロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は270~300ドルであり、これが低下するには需要の減少か鉱山生産の増加が必要条件となる。

しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

週明け月曜日は、欧州の発電燃料調達の動きが一巡していることから、上昇圧力が緩和しているが、それでもまだピークシーズンであり、高値を維持の公算。

なお、ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了する3~4月以降はラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に水準を切り上げた。中国政府の疫学首席科学者が米シティグループの講演で「5-6ヵ月以内に中国のコロナ政策が変更される」との見通しを示したとのロイター報道を受けて、主に投機の買い戻しが優勢となった。

また、米国時間に発表された米雇用統計を受けて、金融引き締めは続くことで短期金利は上昇したが、期先の金利が低下したことで市場参加者のリスクテイク意欲が回復、株高・ドル安となったことも価格を押し上げた。

ただし、中国政府が「ゼロコロナ政策を止める」と発言したわけではなく、中国製のワクチンの有効性の低さを考えると、憶測の域をでない。ただし、今月は11月であり、大手ファンドの決算月でもあること、これまでショートポジションが新規で取られている非鉄金属が多かったこと、FOMCを終え、米雇用統計も「比較的FRBの期待している形」になっていることを考えると、買い戻しを入れるには都合の良いタイミング、材料だったといえる。

9月の中国の貿易統計では、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+25.6%の50万9,954トン(前月+26.4%の49万8,189トン)と前年比では高い伸びを維持し、過去5年平均を上回った。

一方、銅鉱石の輸入は前年比+7.7%の227万3,426トン(前月+20.1%の226万9,858トン)と過去5年の最高水準を上回る状態が続いている。

中国政府の経済対策期待や電力供給障害の解消、TCが高止まりしていることなどが材料になったとみられる。

8月の銅スクラップの輸入は前年比+19.1%の15万4,636トン(+3.9%の15万5,169トン)と低迷、過去5年平均は上回っていない。

精錬銅の輸入の水準が過去5年平均を回復、鉱石輸入も増加していることから中国国内の需要が回復していると考えられる。実際、工業生産や固定資産投資は前年比での上振れ幅を拡大している。

しかし、固定資産投資の伸びはその多くが公的需要であり、政策の支援がなければ回復持続は困難といえるだろう。

また、3期習近平政権はイデオロギー重視で経済通・市場経済推進派がおらず、かつ、他派閥が政策メンバーにほぼいないことから政策のチェック機能が低下し、経済合理性に乏しい政策が遂行される可能性があること(ゼロコロナ政策など)、さらには台湾問題などの対応を優先する可能性が高いことから、2023年以降の銅需要は落ち込む可能性があり、需要・価格のリスクは下向きだ。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.は中国政府がゼロコロナ政策を変更する可能性が出てきたため、足下はプラスに作用している。

2.については米金融引締め減速観測が強まったことでプラス、3.も同様である。この結果、短期的に非鉄金属価格は上昇しやすい。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ来年後半から、再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

週明け月曜日は、週末の上げ幅が大きかったことからまずは売られると考えるが、これまで相場の下落要因だったゼロコロナ政策の見直しの可能性があることから、下げ渋ると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

中国政府がコロナの規制解除を検討している旨、ロイターも報じたことで同国の景気先行き懸念が後退したことが鉄鋼製品価格を押し上げ、鉄鋼瀬原料価格を押し上げた。

9月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲29.3%の89万82トン(前月▲15.7%の89万3,460トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。そもそも中国国内の粗鋼生産能力が高く、粗鋼生産の回復が輸入を阻害したと考える。

9月の中国粗鋼生産は前年比+17.9%の8,695万トン(前月+0.8%の8,387万トン)と回復し、過去5年平均を上回った。中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画。

9月の鉄鋼製品の輸出は前年比+1.2%の498万トン(前月+21.8%の615万2,910トン)と前年ベースでの伸びが急減速した。政府の経済対策期待と、国内製品在庫水準の低さが輸出を鈍化させているとみられる。

9月の鉄鉱石の輸入は前年比+4.3%の9,971万トン(前月▲1.3%の9,621万トン)と前年比でプラスに転じ、過去5年平均を維持した。

ロックダウン解除後も経済活動の回復は緩慢だが、中国政府の対策期待や製品在庫の低さから、先々の鉄鋼製品在庫積み増しに備えた動きが見られているためと考えられる。

週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比+230万トンの1億3,430万トン(過去5年平均 1億3,723万4,000トン)、在庫日数は27.6日(▲0.4日、過去5年平均30.7日)。

鉄鋼製品在庫は▲37万トンの1,057万2,000トン(過去5年平均1,0825万2,000トン)、原料炭在庫は▲10万トンの70万トン(151万6,000トン)、在庫日数は▲0.4日の2.7日(過去5年平均 6.4日)。

鉄鉱石、原料炭とも在庫はタイトな状態になっている。

中国の不動産セクターは低迷しており、人口動態的に中長期的に成長ペースが鈍化する可能性は高い。

直近発表された不動産販売・開発などの統計は同国の不動産市場が回復していないことを示唆している。

不動産セクターが不調だと中国地方政府の重要な財源である不動産関連収入が減少するため、何らかの対策を行わなければ、中国経済がスパイラル的に悪化する可能性が出てくる。

この状況で不動産セクターのテコ入れをすることは非常に議論が割れるだろうが、現状は対策実施は不可避の状況と整理するのが適切だろう。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では70ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。

週明け月曜日は、中国のコロナ規制緩和期待に伴う鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鋼原料価格は上昇すると予想。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。米雇用統計を受けて実質金利が低下したほか、中国のコロナ政策緩和期待でリスクテイクが再開、ドルや卯も進行したことが材料となった。

銀価格は金価格の上昇で上昇、PGMは株高も手伝い、大幅な上昇となった。

金の基準価格は+21ドルの780ドル、リスク・プレミアムは+32ドルの902ドル。

仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば270ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,000ドル程度までの下落余地があることになる。

ETFの管理残高と金価格の間には高い相関性が見られるが、過去10年のデータを元にするとここまでの下落の場合、現在のETFの管理残高の凡そ半分に当たる金が流出する必要がある。

現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、異常なペースで進む政策金利の上昇によるものであり、恐らく来年のはる頃には利上げペースが減速、実質金利も低下して基準価格は切り上がり、リスク・プレミアムは低下すると見られるため、1,000ドルまでの下落は恐らく起きないと考えられるが、1,200ドル程度までの下落リスクは有り得るのではないか。

価格の大幅下落には大口の売りが入ることが必要になるが、それは、各国中央銀行の金準備売却かETFの解約、ということになる。

前者は戦争や制裁による国の資金繰り悪化で金を売却せざるを得ないときに恐らく限定されることを考えると、引き続きETFの動向が重要になると考えている。

ワールド・ゴールド・カウンシルの推計では、各国中央銀行はむしろ金準備を積増ししており、Q322の各国中央銀行の金準備積増しは399トンと過去最高水準に達したとされ、金価格の下支え要因となる。

足下、金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率そのものであり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。

週明け月曜日は、FOMC・米雇用統計を控え、金融引き締めは継続される見通しであること、米景気は減速するとの「期待」から長期金利に低下圧力が掛っていることから、堅調な推移を予想。

銀・PGMに関してはリスクテイクの再開から上昇余地を探る展開に。

◆穀物

シカゴ穀物市場は続伸。中国政府がゼロコロナ政策を見直す可能性が出てきたことで、世界的にリスクテイク意欲が強まり、ドル安が進行したことが背景。

9月の中国の大豆輸入は前年比+12.2%の772万トン(前月▲24.5%の716万6,000トン)と急回復したが、過去5年平均は下回っている。

現在、中国の輸入大豆の港湾在庫水準は604万8,650トンと、過去5年レンジを下回る水準であり、調達意欲が旺盛とみられる。国内の豚肉価格が上昇していることも生産増加の必要があり、大豆輸入増加に寄与していると考えられる。

今後は冬場のラニーニャ現象がアラビア半島・北アフリカ周辺に降雨をもたらしており、サバクトビバッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性がある。

なお、今のところバッタの大量発生は確認されていない。

週明け月曜日も、ゼロコロナ政策解除期待を受けたリスクテイクでドル安が進行しやすく、堅調な推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は極めて低いリスク)。

・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。

追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

2022年の中国党大会を経て、ゼロコロナ政策継続の可能性が高まったことからロックダウン発生の可能性は排除できず、中国景気がハードランディングするリスク(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・日本政府の財政規律感の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(徐々に顕在化している可能性があるリスク要因)。

◆本日のMRA's Eye


「亜鉛価格はコスト面が下支え~2023年度見通し」

2022年の亜鉛価格はその他の非鉄金属と同様、3月の米利上げ開始、4月以降の中国のロックダウン、米利上げの加速で急速に価格を切下げ、7月の原油価格急落を切っ掛けにさらに水準を切下げた。足下は中国の経済対策期待を背景にやや持ち直し傾向となった。

なお、上昇を続けてきたTCはやや上値が重くなっており、現物プレミアムも欧米では高止まりしている(中国は回復の遅れからまだ水準は低い)。

しかし、亜鉛価格と中国不動産セクター動向との相関性は高いが、中国の不動産バブル調整がかなり厳しい状況にあるため、不動産販売が回復していないことを考えると2023年はむしろ調整圧力が強まると予想される。

亜鉛価格と各種指標の相関性を見ると、米国の10年期待インフレ率の説明力が最も高い。米金融引締めは継続の公算であり、これを受けた経済活動の鈍化が期待インフレ利率を押し下げているため、亜鉛価格にはファイナンシャルな面で下押し圧力が掛かる展開。

次に説明力が高いのが、投機筋のポジション、製錬コストに大きな影響を与える発電燃料価格となる。

西側諸国は脱ロシアを進める方針であり、石炭も天然ガスも総じて需給がタイトな状況。足下、目先の調達リスク緩和で価格は低下しているが、脱ロシアが完了する、あるいは景気が悪化して需要が減少するまでは高止まりの可能性が高い。

また、冬場の気温やロシアの対応によっては上振れの可能性もあり、軟調ながらリスクは上向き。

2023年4月以降は猛暑・厳冬をもたらしてきたラニーニャ現象の収束が期待される為、景気の循環もあって価格は夏頃までは上値重い。インフラ需要の顕在化による価格上昇はその他の金属と同様、2023年後半以降となるだろう。

以上から、2023年の亜鉛平均価格は冬場は欧州とロシアの対立によるエネルギー価格高止まりで比較的高井水準を維持するが、世界的な景気の循環的な減速と、各国金融引締めの影響で春先に掛けては調整の見込み。

金融引締めは来年春頃には打ち止めが見込まれ景気も夏頃に底入れすると予想されるため、その他の非鉄金属と同様、年後半から上昇に転じると考える。

2023年の価格予想は、3,025ドル/トン(10月予想比▲63ドル)を予想。2024年は中国とインドのW人口ボーナス期入りや、東西新冷戦の中で緩やかなブロック経済圏が形成される中、インフラ投資の鉄鋼向け需要の増加が見込まれることから、構造的な上昇局面入りが予想され3,331ドル/トン(+13ドル)と2023年比で上昇見込み。

上記見通しのリスクは、上昇リスクが米国を初めとする各国の金融引締めのペースが鈍化した場合、ロシア問題・異常気象を背景にエネルギー供給に制限(ガス・石炭)が発生して生産に影響が及ぶ場合(亜鉛の場合、特に欧州の影響は小さくない)。

脱炭素の流れに乗って資源国で資源ナショナリズムの動きが加速する場合(南米・東南アジア・アフリカ)、脱ロシアの流れを受けて電化や再生可能エネルギーインフラ投資が想定以上に加速した場合、反ロシアの流れで同国ブランドの非鉄金属が取引禁止になった場合など。

下落リスクは、各国金融引締めペースが早すぎて経済がオーバーキルになってしまう場合、米金融引締めの影響で需要の牽引役である新興国も金融引締めを余儀なくされ、新興国の需要減少・デフォルトが発生した場合。

中国政府が引き続きゼロコロナ政策を継続し経済活動の強制停止が続く場合、中国の不動産セクターの回復に目処が立たず、中国政府が取り組んでいる秩序ある不動産セクターの調整が上手く行かなかった場合、石炭・LNG価格の急落など。


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