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変化の兆しに後押しはあるか
  • MRA外国為替レポート

2022年10月31日号

◆先週の市場総括


先週はFRBの利上げペースダウンが意識されるなか始まった。利上げ幅縮小期待で総じて株価は堅調。米国企業決算で比較的良好な内容が続き株価を支えた。ただ一部ハイテク企業の不芳な決算で下落する場面もあった。

ドル円相場は前週末のNY市場で日本の当局が円買い介入を実施し152円近くから147円台半ばに下落した状態で始まった。

月曜日の朝は早々に149円台に上昇したところで再度介入が実施され145円台後半に下落。その後は利上げ幅縮小期待を背景とする米長期金利の低下でドル円相場の上値は重く146円台を中心にもみ合い。

週末にかけて開催された日銀金融政策決定会合で現状維持が決定され、黒田総裁が会見であらためて超金融緩和策の継続、イールドカーブコントロールへの固執、円安の原因としての金融緩和を否定すると投機的な円売りが強まった。

週末の引けは147円40銭近辺。ユーロドル相場は一時1.00パリティを回復する場面もあったが概ね0.99台を中心に上下。

日経平均は米国株の底固さに支えられ、中国共産党指導部の新体制に対する懸念が燻るなかでも27,000円の大台は維持して引けた。

月曜日の東京市場では早朝に為替市場が乱高下。急速に円安が進んだあと、円買い介入で円高に大きく振れた。ドル円相場は147円50銭で始まり、早朝に149円50銭台に急騰。再び150円を窺う動きをみせた。

ユーロ円相場も145円60銭から147円台に。そのタイミング、朝8時半に日本の当局が円買い介入を実施した。

ドル円相場は145円台後半へ、ユーロ円相場は143円台へ急落。しかしすぐに円売りが入りそれぞれ149円手前、146円台半ばへ急反発した。

その後は149円ちょうどを目前に介入警戒感から小動きもみ合い。ユーロ円相場は146円台半ばで推移した。

日経平均は前週末にFRBが利上げペースの縮小を検討へとの報道で米国株が大きく上昇したことから一時前週末比+400円高。しかしその後は中国新指導部への警戒感、中国株・香港株の大幅安を受けて上げ幅を縮めた。引けは+84円高の26,974円。

中国では共産党大会が終了し、指導部が習近平派一色となったことや台湾政策への強硬姿勢、硬直的な経済政策への懸念で中国に対する不安感が強まった。

欧州市場では円安がさらに進んだ。イギリスでスナク前財務相が新首相に就任し健全財政路線がとられるとの見方から市場の混乱が鎮静化。リスク選好が回復し株価を押し上げた。

ドル円相場は149円50銭へ、ユーロ円相場は146円台後半で推移。ただ発表された欧米のPMI景況感指数が弱く円安に歯止めをかけた。ドル円相場は一時148円台前半に下落したあと戻して引けは149円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は147円ちょうど近辺で引けた。ユーロドル相場は東京市場では0.9880で始まったあと0.98台半ばを中心に上下し欧州市場にかけて0.98近辺に下落。ただ米国市場では持ち直し0.99に迫ったあと引けは0.9870近辺。

発表されたPMIは、ユーロ圏は製造業が前月48.4から46.6へ、サービス業が48.8から48.2へ悪化。米国は製造業が52.0から49.9へ、サービス業が49.3から46.6へ悪化。米国の悪化幅が大きく、いずれも景況感の分かれ目である50を割り込んだ。

米国株は利上げ幅縮小期待から上昇。NYダウは前週末比+417ドル高の31,499ドル、ナスダックは+92ドル高の10,952ドル。米10年債利回りは4.247%へ、2年債は4.509%へ小幅上昇。リスク選好回復・株高で債券が売られた。

火曜日の東京市場では日経平均は上昇。米国株高や中国のハイテク株が一転して反発したこと、良好な決算も支えとなった。

ただ中国経済への警戒感、米金利高止まりで慎重な見方も残った。一時+360円高となったが引けは+275円高の27,250円。

ドル円相場は149円ちょうどで始まり、その後は終始148円80銭~149円ちょうどの狭い範囲で小動きもみ合い。介入警戒感が上値を抑えた。ユーロ円相場は147円10銭近辺で始まり40銭に上昇したものの夕刻にかけては下落して欧州市場では146円70銭~147円10銭で上下。

ユーロドル相場は0.9870で始まり0.99ちょうどに上昇したあと押し戻され、欧州市場では0.9850~70で上下した。為替市場では中国の経済政策への不安から人民元安が続いた。

欧州市場ではユーロが上昇。米国市場に入るとドルが下落。

ドイツIFO景況感指数(10月)は前月84.3から悪化の予想に対して横ばい。米国のケースシラー住宅価格指数(8月)は前年同月比+13.1%と前月+16.1%から予想より大きく上昇率が低下した。

消費者信頼感指数(10月)は前月108.0から102.5へ予想105.1を下回り悪化。期待指数は80を割り景気後退を示した。

リッチモンド連銀製造業指数(10月)も前月0から予想▲5を下回り▲8に悪化した。

ユーロドル相場は0.9980に上昇したあと0.99台後半で上下し引けは0.9970。ユーロ円相場は147円50銭に上昇。ドル円相場は147円50銭に下落したあと、147円50銭~148円10銭で上下し引けは147円90銭。

ドルインデックスは110.90に下落した。

米長期金利は低下。10年債利回りは4.095%。2年債は4.474%。弱い経済指標を受けて利上げペースダウンを織り込んだ。

株価は長期金利低下と悪化予想よりも旅行な決算が支え。NYダウは前日比+337ドル高の31,826ドル。ナスダックは+246ドル高の11,199ドル。

水曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。米長期金利上昇一服、米株高、でグロース株中心に買われた。香港株が堅調に推移したことも安心感をもたらした。ただアジア時間の米国株先物が軟調。

米市場時間外に発表されたアルファベット社、マイクロソフト社の決算が冴えなかった。日経平均は伸び悩み、引けは前日比+181円高の27,431円。

ドル円相場は147円90銭で始まり朝方148円40銭に上昇。その後も上下しながら底固く推移し午後は148円20銭近辺。

ユーロ円相場は147円50銭で始まり147円台半ばで上下し夕刻は60銭近辺でもみ合い。

ユーロドル相場は0.9970で始まりやや押されて0.9950~60で推移した。

夕刻から欧州市場にかけて米10年債利回りが4.04%に低下。ドル売りが強まった。

ドル円相場は146円80銭に急落。ユーロドル相場は1.0040へ急騰。その後ドル安は一服し、ドル円相場は147円を挟んで上下、ユーロドル相場は1.0020~50で上下し1.00ちょうどに下落。

ただ米国市場で米10年債が一時4%割れに低下しドルは一段安となった。ドル円相場は146円30銭台でもみ合い引け。

ユーロドル相場は1.0080に上昇してもみ合い。ドルインデックスは110ポイントを割り109.75で引け。

米国株は前日引け後の大手ハイテク決算が不芳だったことからハイテク中心に下落。長期金利低下も支えにならなかった。

NYダウは前日比+2ドル高の31,839ドル、ナスダックは▲228ドル安の10,970ドル。発表されたユーロ圏消費者信頼感(10月)は前月79から82に上昇。

カナダ中銀はこの日利上げを実施。3.25%から3.75%へ。利上げ幅は市場予想0.75%より小幅の0.50%にとどまった。会合を追うごとに利上げ幅は1.00%、0.75%、0.50%と3会合連続で縮小している。

マクレム総裁はなおも利上げの必要性を認めつつも、金利上昇が景気の重石となりつつあり、終了に近づいたとの認識を示した。これもFRBの利上げ幅縮小観測を強めた。

木曜日の東京市場では日経平均は小幅反落。米ハイテク株安、円安一服、で売り優勢となった。一方、米長期金利低下、金利先高感の後退でグロース株には買い。米国株先物がアジア時間に堅調だったことも支えとなった。引けは前日比▲86円安の27,345円。

ドル円相場は146円30銭~40銭で始まり146円ちょうど~40銭で上下。午後になると円買い戻しが活発となり145円10銭まで円高が進んだ。

ユーロ円相場も147円60銭で始まり146円30銭に下落。日銀金融政策決定会合が始まりひとまず円売りを手仕舞う動きが活発となった。

ただ欧州市場から米国市場朝方にかけては円安に。ドル円相場は146円90銭へ、ユーロ円相場は147円40銭へ反発した。

欧州ではECB理事会が開催され、予想通り0.75%の利上げが実施された。政策金利は1.25%から2.00%へ。ただ量的引き締めの開始は見送られた。

ラガルド総裁は会見で、インフレは依然として高く引き続き利上げを実施する、と述べた。ただ欧州景気は明確に下振れがみられ景気後退の確率も上昇した、とした。

欧州長期金利は低下。米長期金利もつれて低下した。

ユーロは反落。ユーロドル相場は東京市場では1.0080で始まり1.0100~1.0060で上下し欧州市場では下落して0.9970。

ユーロ円相場もECB理事会後に145円90銭に反落。ただ米経済指標に弱い数字もみられドルが下落。ドル円相場は145円70銭へ下落、ユーロドル相場は1.0040へ反発した。

ただドルは底固くドル円相場は146円30銭に反発して引け。ユーロドル相場も0.9960台とパリティを割れて引けた。

ユーロ円相場は145円台後半で上下して引けは145円80銭。米国株はまちまち。

NYダウは朝方+500ドルと大きく上昇して始まった。GDPが強めの数字となり、長期金利の低下も支え。

ただ前日時間外に発表されたメタ社(旧フェースブック社)の決算が悪く失望売りで大きく下落するとハイテク関連が軟調。ナスダックは▲178ドル安の10,792ドルで引け。NYダウも上げ幅を縮めて+194ドル高の32,033ドル。

発表された米国のGDP(7-9月期)は前期比年率+2.6%と前期▲0.6%から3四半期ぶりにプラスに転じ予想+2.3%を上回った。ただ個人消費は+2.0%から+1.4%に減速。

インフレ指標である消費支出デフレーター(コア)は+4.7%から+4.5%に鈍化した。また住宅需要の失速も続いた。

耐久財受注(9月)は除く輸送機器ベースで前月比▲0.5%と前月+0.3%から減少に転じ予想+0.2%を下回った。

週次の失業保険申請件数は、新規が217千件と前週214千件から微増、継続受給者数は前週1,383千件から1,488千件に大きく増加した。

金曜日の東京市場では日経平均は続落。前日の米ハイテク株安、香港株安、中国懸念が上値を抑えた。一方業績期待で下値には買いも。引けは前日比▲240円安の27,105円。

日銀金融政策決定会合の2日目が開催され、結果は予想通り政策変更なし。金融政策のフォワードガイダンスも変更なし。

ただ公表された展望レポートでは物価見通しが上方修正され今年の見込みは7月時点の2.3%から2.9%となった。

為替市場では黒田総裁の会見後に大幅に円安が進行した。ドル円相場は146円30銭で始まり午前中に70銭に上昇。

日銀会合の結果公表後は一時146円を割ったが総裁会見前に146円40銭に反発した。

総裁が会見であらためて現状の超金融緩和政策、イールドカーブコントロールに固執する姿勢をあらためて示すと、欧州市場にかけてドル円相場は147円90銭までドル高円安が進んだ。

ユーロ円相場は145円70銭~80銭で始まり午前中に146円50銭へ上昇。結果公表後に反落して145円90銭~146円ちょうどでもみ合いとなったが、会見後は147円20銭へ大幅にユーロ高円安が進んだ。

欧州市場から米国市場朝方にかけては円安一服。ドル円相場は147円20銭~80銭で方向感なく上下を繰り返した。引けは147円50銭近辺。

ユーロ円相場は146円60銭に反落、147円40銭に急反発と荒れ相場となり、引けにかけてじり高、147円ちょうど近辺で引け。

ユーロドル相場は東京市場では0.9960台で始まり1.00ちょうどに上昇したあと夕刻にかけて0.9930に下落して下げ止まり。その後欧米市場を通じて方向感なく上下動。NY引けは0.9960台と東京市場朝方と同水準。米長期金利は上昇。

発表された経済指標がやや強めでインフレ指標も高止まり、金利先高感が維持された。10年債利回りは4.01%へ、2年債は4.41%台へ。

発表された米国の個人所得(9月)は前月比+0.4%で予想通り、消費支出は同+0.6%と強め、いずれも前月が上方修正された。個人消費支出価格指数(コア)は前年同月比+5.1%と前月+4.9%から上昇が加速した。

ミシガン大学消費者信頼感指数(10月確報)は速報59.7から59.9へ上方修正。期待インフレ率は1年が速報5.1%から5.0%に低下したが、5-10年は速報と同様に2.9%で不変。

米国株は大幅高。アップル社が好決算を受けて大幅高。他のハイテク株にも買いが広がりマイクロソフトやインテルも上昇。業績期待から幅広い銘柄に買いが入った。NYダウは前日比+828ドル高の32,861ドル、ナスダックは+309ドル高の11,102ドルで週末の取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)

1日火曜日、2日水曜日の2日間にわたりFOMCが開催される。結果は日本時間3日の未明3:00。終了後、パウエル議長が定例会見を行う(同3:30から)。

今回は0.75%の利上げが予想されている。FF金利誘導目標レンジは3.00%~3.25%から3.75%~4.00%へ。このところ利上げ幅の縮小、利上げペースダウンを検討すべき、との意見が散見される。

12月会合に向けて具体的な議論がなされるか。景気物価認識、インフレと景気のリスクバイアスをどう判断しているか。そろそろ景気失速リスクに配慮して手綱を緩めようという意見が大勢となるか。あるいはインフレ抑制を重視するタカ派がなお主流か。

2.米国の経済指標

今週は重要指標の発表が相次ぐ。景気配慮に傾きつつあるFRBの背中を押す弱い指標が示されるか。

火曜日 製造業PMI(10月改定値、速報49.9)、ISM製造業景気指数(10月、予想49.9、前月50.9)

水曜日 ADP雇用報告(10月、雇用者数前月比、予想+195千人、前月+208千人)

木曜日 貿易収支(9月、予想▲670億ドル赤字、前月▲644億ドル赤字) 米週間新規失業保険申請件数 サービス業PMI(10月改定値、速報46.6) ISM非製造業景気指数(10月、予想56.0、前月56.7) 製造業新規受注(9月、前月比、予想+0.4%、前月+0.0%)

金曜日 雇用統計(10月、非農業部門雇用者数前月比、予想+200千人、前月263千人、失業率、予想3.6%、前月3.5%、平均時給、前年同月比、前月+5.0%)

3.日本当局の介入実施額(10月)

31日月曜日に財務省から10月の外国為替平衡操作の実施状況(為替介入実施額)が公表される。9月22日に介入を実施、9月の実施額は2兆8千億円だった。

その後も円安は止まらず、10月下旬には152円目前までドル高円安が進み、再び10月21日のNY市場、週明け24日東京市場の朝方に介入が実施されたとみられる。

10月の介入総額がいくらだったのか。為替需給には着実に影響を与えるとみられるが、そのボリュームインパクトは注目される。

ほか、火曜日にはオーストラリア準備銀行が金融政策決定会合を開催。政策金利を2.60%から2.85%へ0.25%引き上げる見込み。

また水曜日・木曜日の2日間、イギリス中銀が金融政策決定会合を開催。政策金利を2.25%から3.00%へ0.75%引き上げるとみられる。

◆今週のMRA's Eye


変化の兆しに後押しはあるか

ドル高円安を促してきた状況に変化が生じつつある。ドルサイドの要因としてはFRBの利上げペースダウン検討開始。円サイドの要因としては円買い介入の継続的実施だ。

FRB当局者のなかに急速な利上げ継続による景気失速リスクへの配慮に触れる発言が目立ってきた。金融政策の効果が顕在化するには時間を要する。

とくに雇用や物価は遅行指標であり、実際にかなり景気が悪くなってから雇用が悪化し、インフレも鎮静化する。そうしたタイムラグを考慮して、利上げをペースダウン、あるいは停止して様子見する時期にきているのではないか、との考えだ。

米国の企業景況感は着実に悪化。最新のPMI景況感指数(10月)では製造業が49.9、サービス業が46.6、総合指数が47.3、といずれも景況感の分かれ目である50を割った。

消費者信頼感指数(10月)も前月108.0から102.5へ大きく悪化。3ヵ月ぶりに低下した。期待指数は80を割り景気後退を示している。

原油価格が調整し価格が安定。物流停滞が解消していることは企業の景況感にはプラスだが、その効果は全体の景気悪化の流れに押されたとみられる。

足元の個人所得・消費支出は底固いが企業業績や雇用スタンスが今後悪化しないか留意を要するところ。物価に目を転じれば、インフレ率は川上から鈍化している。

輸入物価、生産者物価の上昇率鈍化が際立つ。遅れて消費者物価も総合指数では上昇率鈍化が見え始めた。ただ当局が気にする食料品とエネルギーを除いたコア指数は上昇率がなお高止まり。

住宅価格の下落にかなり遅行する家賃の上昇率が鈍化していないことも要因だ。ただ住宅販売は金利急騰の影響で失速しつつある。

今週は米国で重要指標の発表が相次ぐ。変化の兆しがさらに確認され、市場が景気先行き不安や金利ピークアウト予測を強めるか。さらにFOMCが開催され利上げ幅縮小が具体的に議論されるか。重要な週となる。

ISM景気指数は製造業が50を割り込むか、非製造業は55近辺まで想定以上に低下するか。週末の雇用統計ではなお雇用情勢の悪化はさほど顕在化しないとみられている。

そうしたなかでも非農業部門雇用者数の増加が予想200千人増を下回るようなら弱気派の背中を押すだろう。

FOMCは雇用統計に先んじるが、利上げ幅縮小への議論のあとの弱い数字となればなおさらだ。

足元の数字が仮に強いままでも、タイムラグは依然として考慮すべきとの見方は残る。金利先高感・先安感いずれが強まるかのリスクバイアスは、金利低下サイドにやや傾いている。FRBメンバーによる予測、とくにFF金利予測はこのところ当てにならない。

ここまでは上方修正に次ぐ上方修正で水準が引き上げられてきた。しかし、景気見通しもまた見誤るリスクがある。ここまではインフレのリスクを重視してきたが、そろそろリスクバランスは均衡、ないし景気悪化リスクに傾く可能性に留意が必要か。

円サイドの要因としては、継続的な円買い介入の実施がある。日銀は現状の超金融緩和策、イールドカーブコントロールの継続、10年債金利の0.25%の上限設定、実質的固定、を続けることを決定した。

黒田総裁は金融緩和が円安の要因ではないとのスタンスを崩さず。こうした頑なな態度が再び投機的な円売りを招いている。政府が円安抑止の介入に動く傍らで整合性がないとして、それに対抗する投機的円売りを招いている点は否めない。

もっとも介入実施によって為替需給は確実に大幅な円余剰から均衡に修正されている。まさに「外国為替平衡操作」だ。

10月の介入実績は31日月曜日の夜に発表となる。市場の推測では5兆円に達したとの見方もある。貿易赤字2か月分だ。それに伴う円売りが吸収されたことになる。

投機筋が介入に乗じて売買し収益を上げたとしても、売買手仕舞いで結果的にポジションは中立、市場への需給インパクトはゼロとなる。

残りは日本人投資家、FX投機筋の円売りがどこまで続くかということになる。150円接近でドル売り円買いポジションが勝っていたが、145円に近づくとドル買い円売りが増加したようだ。

そうした日本人の円先安感が解消されることが重要。現時点では150円の上値が重くなったことは確かのようだ。

一方で根本的には貿易赤字の縮小が円安圧力減退には不可欠だ。資源価格調整による顕在化、外国人旅行者の増加による多少の円買い効果、エネルギー政策の修正・原発再稼働によるエネルギー輸入金額の縮小が待たれる。これらはまだ細波程度の兆しに留まる。

当面は介入による為替需給調整を続ける必要があろう。金利動向にかかわらず大規模な為替需給調整を行えば金利との相関は崩れると考えられる。

ここにドル金利先安感の台頭が後押しするか。米国景気後退が重石となるか。日銀黒田総裁が交代となり金融政策の調整が始まるか。

岸田政権が財政拡大を伴う経済対策を発表したが、通常は景気刺激、長期金利上昇、円高要因となる。

しかし日銀が長期金利上昇を抑制する限りその効果は削がれる。様々な政策の整合性がとられれば、あるいは円債市場の機能を回復させれば、自ずと円安には歯止めがかかるが、当面は人為的な介入に頼るしかなさそうだ。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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