中国懸念で軟調も米引締め減速観測が下支え
- MRA商品市場レポート
2022年10月25日 第2310号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「中国懸念で軟調も米引締め減速観測が下支え」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて軟調な推移となったが、米天然ガスや石油製品などは冬場を控えて上昇した。
中国で習近平指導部の新しい体制が発表され、全て習派で固められたことを受けて中国の景気の先行き不安が強まったことが、リスク回避姿勢を強めた。
なお、米国時間にサンフランシスコ連銀総裁が金融引締めペースの見直しについて言及したことで株価は上昇したが、商品市場全体への影響は限定された。
昨日最も上昇したのが欧州排出件。EUが24日の環境相会合で地域の温暖化ガス排出削減目標引き上げを来年実施することで合意した、と伝えられたことが材料となった。
関連法案では2035年までにガソリン車の新車販売を禁止するなどの法案が含まれる。
中国では習近平国家主席による独裁体制がほぼ固まった。しかしこれによりトウ小平が構築した「相互チェック機能」が働かなくなり、不合理な政策も習氏への忖度で実施される可能性がある。
この場合、習氏がこれまで行ってきた経済政策(一帯一路、ゼロコロナ政策など)は成果を上げていないため、他派閥が指導部に入ることによるチェック機能が働くなることは経済面でマイナス要因となる。
また、習氏が崇拝するとされる毛沢東と同様のことをするのであれば、国有化された企業の下にプライベート・カンパニーがぶら下がる体制に中国が移行していく(時計の針が逆回転する)と予想される。
全ての情報は国有化企業を通じて共産党に吸収される体制になるともいえるが、この場合、中国のSNSなどのサービスを用いている公的セクターや企業、個人は習近平政権が成立させた国家情報保護法などの法的な理由を背景に、情報を中国共産党に取得されるリスクが以前よりも格段に高まることになる。
また、SNSのみならず風力発電や太陽光発電など、設置時に海流や地形の調査を行うような契約を中国企業と締結することは、日本の安全保障面で非常に大きなリスクとなる。
バッテリーも中国製を導入するケースが散見されるが全て中国製になれば、故障時に「意図的に交換してくれない」ということも起こり得るだろう。
たとえその企業が普通の企業で、担当者が良い人であったとしても、中国の体制が変わっている以上、そのリスクは無視できない。今後、そういったリスクに対する対応は重要になるだろう。
【本日の見通し】
本日は、中国の景気先行き懸念と米国の金融引締めペース鈍化観測が相殺される形で現状水準でのもみ合いを予想する。
本日は経済統計よりも、欧米主要企業の決算と今後の業績見通しに注目したい。
【昨日のトピックス】
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、単月ベースで+6.3%(前月+4.2%)と伸びが加速、1-9月累計でも前年比+3.9%(1-8月期+3.6%)と小幅ながら伸びが加速した。
ロックダウン後の景気刺激のための金融緩和策の実施や、公共投資などのテコ入れ柵が奏功したとみられる。
ストック需要の指標である固定資産投資は、1-9月期が前年比+5.9%(1-8月期+5.8%)と小幅に伸びが加速した。しかし公的セクターが+10.6%(+10.1%)と加速したものの、固定資産投資に占めるシェアが大きい民間セクターは+2.0%(+2.3%)とむしろ低下しており、工業活動が回復したといっても党大会を睨んだ実績作り目的の公的需要に牽引されるものである可能性が高い。
住宅販売は年初来前年比▲28.6%の7兆5,288億元(1-8月期▲30.3%の6兆6,329億元)とやや前年比マイナスが縮小したものの回復にはほど遠い。
不動産開発投資も年初来で前年比▲8.0%の10兆3,559億元(1-8月期▲7.4%の9兆809億元)と減速が続いている。
中国のGDPに占める個人消費の比率も高まっているが、個人消費の指標である小売売上高は年初来累計で前年比+0.7%の32兆305億元(1-8月期+0.5%の28兆2,560億元)と小幅に回復したが、単月では前年比+2.5%の3兆7,745億元(+5.4%の3兆6,258億元)と減速している。
やはり、不動産市況の混乱やコロナの影響から脱し切れていないことを示唆している。習近平は今回の党大会でほぼ独裁体制を固め、経済通といわれる人間が常務委員会メンバーから外れた。結果、ゼロコロナ政策などの不合理な政策が続く可能性は高く、中国経済は混乱が予想される。
9月の中国の貿易統計は輸出が前年比+5.7%(市場予想+4.0%、前月+7.1%)と回復、中国国内の経済活動動向を判断する上で重要な輸入は+0.3%(±0.0%、+0.3%)と伸び率は前月と変わらなかった。
世界的な景気の減速はあるが、人民元安が輸出を促進し、輸入を阻害していると見られる。また輸入の低迷は国内情勢が不安定であることを示唆している。
経済対策の金額は年末に向けて増加するため今後持ち直しが期待できるものの、2023年にかけては李克強首相を含めた経済通の団派が失脚したため、対策への手腕は未知数である。
実際、李克強首相在任中も、習近平国家主席は経済政策の権限を李克強首相から取り上げ、一帯一路や双循環、ゼロコロナなどの政策を推進したがいずれも不発どころか現在問題となっている。今後の経済対策効果による、景気下支えはそれほど期待できないのではないか。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は下落後上昇し前日比マイナスで引けた。中国共産党の習近平独裁を受けた中国景気への失望から売られたが、米国時間に発表された米PMIの悪化を受けて、サンフランシスコ連銀総裁が金融引締めペースの減速に関してコメントしたことが材料となった。
なお、昨日発表された中国の貿易統計では、原油輸入は前年比▲2.0%の4,024万トン、993万バレル/日 (▲9.4%の4,035万トン、963万バレル/日)と前月から前年比マイナス幅を縮小した。
経済活動再開の影響に因るものと考えられるが過去5年平均は下回っており、中国の調達意欲は旺盛ではない。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。
現在はOPECの減産により、1.の状態に戻った。しかし11月頃から米国の増産が始まると予想されるため、早晩、2.に移行すると考えられる。また11月の米中間選挙で共和党が勝利した場合、化石燃料の増産には弾みが付くだろう。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル
2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル
3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル
4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル
5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下
(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)
6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル
7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
中期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。ただし徐々に供給面の障害が緩和しつつある状況。
より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。
しかし、脱ロシアを継続する一方で、脱炭素も、ということになれば供給面の制限は続くため、原油価格は高止まりする可能性が高いと考える。
足下の脱炭素のための化石燃料採掘制限は、「今を生きる人々」の生活にマイナスに作用していると言わざるを得ない。100年後よりも今である。
Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓) 想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (→) グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)
※矢印の向きは価格の方向性。
本日は、米金融引締め減速観が強まったことが株価を押し上げ、リスクテイク再開となることが価格を押し上げるものの、PMIの減速は景気減速を示唆しており、両者相殺しあう形となり現状水準でもみ合うと考える。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は下落、特に期近が下落した。ガス在庫が満杯になりつつある中、さすがに現物調達ができなくなっていると考えられる。しかし期先に関してはロシアの供給問題、気温低下問題が解消していないため、高止まりしたまま。
欧州がガス価格にカラー(コリドー)を設定することで合意、と伝えられたことが価格を押し下げている。
欧州のガス在庫は、仮に欧州が需要を▲15%削減することができれば、この冬は仮にロシアからの供給が停止したとしても充分な状況。
とはいえ、ナイジェリアでLNGプラントの輸出がフォースマジュールを宣言するなど、ロシア以外の国からの供給も不慮の途絶のリスクがある上、さらに想定を上回る厳冬となった場合、供給は必ずしも充分とはいえない。
4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想され、足下のガス調達への懸念は後退しているといえる。
しかし2023年の春先のガス在庫の水準が非常に低くなった場合、ノルドストリーム1・2が不稼働のままの可能性が高いことを考えると、2023年のガス調達は2022年よりも厳しい状態になると予想される。
欧州がこの冬を乗り切れそうな状況にあるため、長期にわたってロシアが無理をすることがなかなか厳しくなってきた。
ロシアの月次財政収支は、今年の6月から赤字に転じている。そのためロシアもこの冬までに勝負を片付けたいと考えている可能性は高い。
プーチン大統領は、ノルドストリームのパイプライン攻撃を「(ロシア以外の国の)テロ」と断定し、「全てのインフラにテロ行為の危機がある」、と発言した。
このことは、「(それをロシア以外の国のテロ行為として)ロシアが全てのインフラを攻撃する意図がある」といっているに等しい。
今後、ロシアが自国のインフラを破壊して供給懸念を煽るより、より直接的にロシア以外の国のインフラへを攻撃し、恒久的に供給ができない状態にして、強制的にロシアの資源への依存度を高めさせる戦略が採用されるリスクは高まっていると考えるべきだろう。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。
仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。
また、ドイツ政府はガス国内大手の国有化を検討、企業破綻を回避して夏冬のシーズンに供給懸念が顕在化しないよう手を打ち始めた。
ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。
1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光、石炭、原発)3.需要の削減
また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。
化学世界最大手のBASFは緊急時には原料用のガスを一般消費用に開放する方針も表明している。
現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)
「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。
現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスク、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。
Freeportの再開予定は11月上旬から中旬、ナイジェリアは未定。あとは既述であるが、ノルドストリームの稼働が当面見込めなくなったことが挙げられる(これは3.に当たるか)。
3.は欧州で顕在化している状況で、ノルドストリームを巡るロシアの対応をみるにサハリン2も冬場に稼働を停止する可能性もある。
今回のノルドストリーム1・2の破壊は、ロシアの攻撃とした場合、以下がその背景となる。
・9月27日に開通した「バルティック・パイプライン(ノルウェー→デンマーク→ポーランド→欧州域内)」も「破壊可能である」との脅し。
・米国の圧力で開通していなかったノルドストリーム2は、パイプラインが1本残っているためこれを開通させる。
4.はもはやリスクではなく、顕在化している。
5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。
LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西ともさらに急騰しており、スエズ以西に関しては記録的な水準までタンカーレートが上昇した。
ロシアからの供給が細る中、冬場に向けた調達が本格化していることを示唆している。
10月10-16日のLNGトレードは、740万トン(前週745万トン)と減少、スポットLNGカーゴのシェアは20%(23%)と低下した。日中台韓向けのカーゴは10万トン増加したが、南アジア向けの供給が減少した。
欧州向けのLNGカーゴは、北西報酬向けが190万トンと前月から+58%の増加となった。米国、カタール、「ロシア」からの供給増加で。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米国天然ガス先物は上昇。売られ過ぎによる割安感から買い戻しが入った形。気温上昇で需要が減少していたが、ガス在庫の水準は決して高くないため、調達需要は衰えていない。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物はほぼ全ゾーンパラレルに下落。EUが価格上限設定で合意したことを受けて水準が切り下がった。
しかし、9月の中国の天然ガス輸入は前年比▲4.4%の1,015万トン(前月▲15.2%の885万トン)と前年比での減少幅を縮小させており、調達が増加している。マイナス幅の縮小は主にパイプラインでの輸入増加に起因する。
とはいえLNG輸入は前年比▲12.6%の590万トン(前月▲29.0%の472万トン)と前年比のマイナス幅を縮小させながら、冬場に向けた調達増加が確認されている。
パイプラインベースの輸入は前年比+9.7%の425万トン(+9.0%の413万トン)と輸入の伸びが増加。
中国国内の天然ガス生産は9月は+4.1%の164億立方メートル(前月+7.0%の169億8,000万立方メートル)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。
中国の経済活動は鈍化し、発電向けの需要は減少しているとみられたが、気温の低下もあり需要が増加している可能性が高まっている。
実際、ロシアなどから取得したLNGの転売を制限するなどの措置が取られているため、想定よりも中国国内の需給がタイト化し、スポットLNG価格などの押し上げ要因となる可能性ができてきた。
※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。
サハリン2中長期的な観点では以下の2点が意識すべきリスクとなる。ただ、ノルドストリームの破壊工作報道をみるに、「欧州と米国に協力するならば、日本にもLNGを供給しない」という可能性も残るため、短期的なサハリン2リスクは上昇している。
1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える
2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう
10月16日時点の日本の発電用LNG在庫は252万トン(前年同月末207万トン、2017~2021年平均239万6,800トン)と減少、過去5年水準を上回っているが減少傾向が強まっている。
日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため調達に問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。
また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。
本日は、目立った新規材料に乏しい中、期近は在庫スペースの不足から軟調であり、期先は高止まりという状態が続くと考える。
今年の冬は、どれだけ欧州が需要を削減できるかどうかがポイントだが、ガスの供給元の1つである米国の気温が平年よりも高いことは、欧州のガス調達の助けとなる。
とはいえ、▲15%~▲20%の需要削減ができなければ、来年の春のガス在庫の水準はかなり低くなることが予想され、2023年のガス調達はより厳しい状態になるリスクがある。引き続き、冬場の気温次第だ。
なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、上述の理由から下値も堅かろう。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル
◆石炭
豪州石炭スワップ期近が小幅に下落した。欧州がガス価格にレンジを設定することで合意したことで、発電燃料価格にやや下押し圧力が掛っている。
この数週間、石炭価格とガス価格の間にはそこまで明確な価格の相関性は確認されていない。
しかし、脱ロシア問題は来年も続き、ロシア産以外の高カロリー炭を求める動きが続くため、価格の絶対水準が切り上がっている状況。
ロシアの体制変更があり、より穏健で、西側諸国が付き合うに足る国にならない限り、ロシア炭が市場の需給を緩和する方向には働き難い。
9月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+0.5%の3,304万8,000トン(前月+5.0%の2,945万6,000トン)と高水準を維持し、過去5年レンジを上回った。
国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、冬場に備えた調達の再開、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。
9月の中国の石炭生産は、前年比+15.7%の3億8,672万トン、1,289万トン/日(前月+10.5%の3億7,000万トン、1,195万トン/日)と大幅に増加、同じ時期の過去最高水準を上回っている。
海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが輸入が増加しており中国国内の需給がタイト化している可能性が出てきた。
もしくはロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。
現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。
期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は270~300ドルであり、これが低下するには需要の減少か鉱山生産の増加が必要条件となる。
10月に入ってからの水準切下げは期近のみではなく期先が下落得しているため、景気が減速するなかでの石炭需要減速を織り込み始めたと考えられる。
しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。
仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。
異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。
本日は、新規手掛かり材料に乏しい中、現状の高値水準を維持すると考える。
ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了した場合にはラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。
ただし、恐らく来年も発電燃料調達を巡り、厳しい状況は続くと予想されるため下落しても余地は限定されるとみる。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は総じて軟調な推移となった。中国で習近平3期目が確定し、常務委員会のメンバーが全て習派で固められたため、「習近平に忖度する構造」となったことから共産党がトウ小平以降維持してきた、集団管理体制(チェック機能)が低下する、と見られたこと、経済に精通したメンバーが選ばれている訳ではないことから、景気の先行きへの懸念が強まったことが背景。
米国時間の金融引締め減速観測は期待インフレ率を押し上げたが、影響は限定された。
9月の中国の貿易統計では、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+25.6%の50万9,954トン(前月+26.4%の49万8,189トン)と前年比では高い伸びを維持し、過去5年平均を上回った。
一方、銅鉱石の輸入は前年比+7.7%の227万3,426トン(前月+20.1%の226万9,858トン)と過去5年の最高水準を上回る状態が続いている。
中国政府の経済対策期待や電力供給障害の解消、TCが高止まりしていることなどが材料になったとみられる。
8月の銅スクラップの輸入は前年比+19.1%の15万4,636トン(+3.9%の15万5,169トン)と低迷、過去5年平均は上回っていない。
精錬銅の輸入の水準が過去5年平均を回復、鉱石輸入も増加していることから中国国内の需要が回復していると考えられる。実際、工業生産や固定資産投資は前年比での上振れ幅を拡大している。
しかし、固定資産投資の伸びはその多くが公的需要であり、政策の支援がなければ回復持続は困難といえるだろう。
また、3期習近平政権はイデオロギー重視で経済通がおらず、恐らく習近平国家主席が掲げるゼロコロナ政策を堅持すると予想され、さらには台湾問題などの対応を優先する可能性が高いことから、2023年以降の銅需要は落ち込む可能性があり、需要・価格のリスクは下向きだ。
今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。
短期的に非鉄金属価格が上昇するには、
1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)
2.株価が上昇すること
3.期待インフレ率が上昇すること
が必要となるが、現在、1.は中国の経済統計をみるに、これまで党大会のために遮二無二行ってきた経済対策の効果が顕在化していることが、統計で確認された。
しかし、習近平独裁で同国の経済政策への期待は低下しており、党大会も終了したことから1.は今後剥落が予想される。
2.については米金融引締め減速観測が強まったことでプラス、3.も同様である。しかし1.の期待剥落の影響が大きいため、結局非鉄金属価格は現状水準を維持となる。
中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。
世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。
ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。
また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。
長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。
早ければ来年後半から、再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。
価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。
本日も、中国の景気先行き懸念が台頭していることが価格を下押しするが、下落局面では安値拾いの買いも入るため、結局レンジワークになるのではないか。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅に下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は小幅に上昇した。
最大消費国である中国は習近平の独裁が進み、景気先行きへの懸念が強まったが、貿易統計がやや強気の内容であり、公共投資などの実施期待が価格を支えた。
9月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲29.3%の89万82トン(前月▲15.7%の89万3,460トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。そもそも中国国内の粗鋼生産能力が高く、粗鋼生産の回復が輸入を阻害したと考える。
9月の中国粗鋼生産は前年比+17.9%の8,695万トン(前月+0.8%の8,387万トン)と回復し、過去5年平均を上回った。中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画。
9月の鉄鋼製品の輸出は前年比+1.2%の498万トン(前月+21.8%の615万2,910トン)と前年ベースでの伸びが急減速した。政府の経済対策期待と、国内製品在庫水準の低さが輸出を鈍化させているとみられる。
9月の鉄鉱石の輸入は前年比+4.3%の9,971万トン(前月▲1.3%の9,621万トン)と前年比でプラスに転じ、過去5年平均を維持した。
ロックダウン解除後も経済活動の回復は緩慢だが、中国政府の対策期待や製品在庫の低さから、先々の鉄鋼製品在庫積み増しに備えた動きが見られているためと考えられる。
週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比+100万トンの1億3,120万トン(過去5年平均 1億3,634万トン)、在庫日数は28.9日(+0.2日、過去5年平均31.3日)。
鉄鋼製品在庫は▲42万2,000トンの1,151万トン(過去5年平均1,174万7,000トン)、原料炭在庫は▲17万トンの125万トン(118万8,000トン)、在庫日数は▲0.7日の5.1日(過去5年平均5.0日)。
鉄鉱石、原料炭ともやや在庫はタイトな状態になっている。
中国の不動産セクターは低迷しており、人口動態的に中長期的に成長ペースが鈍化する可能性は高い。
直近発表された不動産販売・開発などの統計は同国の不動産市場が回復していないことを示唆している。
不動産セクターが不調だと中国地方政府の重要な財源である不動産関連収入が減少するため、何らかの対策を行わなければ、中国経済がスパイラル的に悪化する可能性が出てくる。
この状況で不動産セクターのテコ入れをすることは非常に議論が割れるだろうが、現状は対策実施は不可避の状況と整理するのが適切だろう。
なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。
基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では75ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。
本日は、習近平の独裁が進んでいることが景気の先行きに暗い影を落すものの、鉄鋼原料関連は中国以外のプレイヤーの影響を受け難いため、貿易統計が強気な内容だったこと、その他の重要統計がやや強気であったことを材料に、現状水準を維持すると見る。
◆貴金属
昨日の金価格は小幅に下落した。米FOMCメンバーが金融引締めペースの見直しに言及したことから株価が続伸、ややリスク回避的な動きが弱まったことがリスク・プレミアムを押し下げたため。
銀価格は金の下落を受けて小幅に下落、PGMは株価上昇はあったが調整売りに押された。
金の基準価格は+4ドルの785ドル、リスク・プレミアムは▲12ドルの867ドル。
仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば260ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,000ドル程度までの下落余地があることになる。
ETFの管理残高と金価格の間には高い相関性が見られるが、過去10年のデータを元にするとここまでの下落の場合、現在のETFの管理残高の凡そ半分に当たる金が流出する必要がある。
現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、異常なペースで進む政策金利の上昇によるものであり、恐らく来年のはる頃には利上げペースが減速、実質金利も低下して基準価格は切り上がり、リスク・プレミアムは低下すると見られるため、1,000ドルまでの下落は恐らく起きないと考えられるが、1,200ドル程度までの下落リスクは有り得るのではないか。
大規模プレイヤーの金市場からの退場は、ETFの他、各国中央銀行の金準備売却のいずれかとなるが、後者が戦争や制裁による国の資金繰り悪化で金を売却せざるを得ないときに恐らく限定されることを考えると、引き続きETFの動向が重要になる。
足下、金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率そのものであり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。
Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。
銀価格は、10月3日の上げで上回ったレジスタンスラインを再び全て割り込んだ。銀は供給過剰にあるため、投機的な動きに価格が左右されやすく、テクニカル分析が比較的有効に機能する。
景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。
やや緩和的なスタンスにシフトしたかと思われた金融政策は、再び引締め気味にシフトしていることが実需減速懸念を高めており、銀価格を下押ししている。
再び50日移動平均線を割り込んだため、当面はこの水準が上値として意識されることになろう。
本日は、金融引締め観測がやや後退したことがリスク・プレミアムを押し下げるが、実質金利に低下圧力が掛ることがこれを相殺するとみられ、結局現状水準を維持の見込み。
◆穀物
シカゴ穀物市場は下落した。原油価格が下落したことを受けてそれに連れる形となった。
昨日発表された9月の中国の大豆輸入は前年比+12.2%の772万トン(前月▲24.5%の716万6,000トン)と急回復したが、過去5年平均は下回っている。
現在、中国の輸入大豆の港湾在庫水準は604万8,650トンと、過去5年レンジを下回る水準であり、調達意欲が旺盛とみられる。国内の豚肉価格が上昇していることも生産増加の必要があり、大豆輸入増加に寄与していると考えられる。
今後は秋~冬にかけてのラニーニャ現象の発生もあり、さらに、冬場のラニーニャ現象がアラビア半島周辺に降雨をもたらし、バッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性がある。
また、ロシアのウクライナ侵攻は終了の気配が見えず、なりふり構わないプーチン大統領が穀物輸出停止に踏み切るリスクヘの懸念は拭い切れて居ないことから、中・長期的なリスクは引き続き上向きと考えている。
なお、今のところ中東・北アフリカ地区でのサバクトビバッタの大量発生は確認されていないが、ナイジェリアでは大規模な洪水が発生しており、農業国である同国の生産下振れリスクは、穀物、特に小麦価格を押し上げよう。
本日は、原油価格が軟調に推移していることから同様に軟調な推移が予想される。しかし需給ファンダメンタルズはタイトな状況が続くことから、下値余地も限定されるとみる。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は極めて低いリスク)。
・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。
追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。
インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。
・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。
2022年の中国党大会を経て、ゼロコロナ政策継続の可能性が高まったことからロックダウン発生の可能性は排除できず、中国景気がハードランディングするリスク(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。
・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。
台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
◆本日のMRA's Eye
「中国党大会を受け非鉄金属価格のリスクは下向きに」
銅価格は最大消費国である中国の消費動向に左右されるが、2022年はロシアのウクライナ侵攻以降のエネルギー供給問題が価格を押し上げていたが春先から水準を切下げ、夏以降にさらに大きく水準を切下げている。
価格下落要因は大きく3つ。
1.中国政府による不動産バブル抑制策推進2.中国政府によるロックダウンによる経済活動の強制停止3.米国の金融引締め加速
1.は米中対立の中で景気が減速するなかでコロナが発生したため、不動産取得を促すなどの対策が取られた結果、2021年にはプチバブルが発生している。
この間、銅はコロナの影響による供給制限が顕在化したため、住宅市況から乖離して上昇した(供給面の要因)。
しかし、中国政府による3つのレッドライン(中国版総量規制、三条紅線。1.前受金控除後の総負債比率が70%以上、2.純負債資本比率が100%以上、3.現金短期負債比率が100%以下、に抵触した場合借り入れができなくなる制度)が導入されてから急速に不動産市況が悪化、今もその状態は改善していない。
2.は住宅セクターが苦境の中で3月末から2ヵ月間、コロナ感染拡大防止を目的とするロックダウンが行われ、経済活動が強制停止され、銅価格の押し下げ要因となった。
3.そして存外に影響が大きかったのが、6月から米国が「想定以上のペースで利上げ」を行ったこと。
これらの複合要因で銅価格は下落しているわけだが、景気刺激のためのインフラ投資を中国政府は行っているため、それが価格を支えている状況。
しかし、中国の地方政府の歳入の3割程度が不動産の使用権の売却に因るものであり、中国政府に景気をさらに刺激する体力は限られているため、世界景気が循環的に減速するなかでは恐らく2023年の銅需要も減少し、価格は下落する可能性が高い。
なお、脱炭素やインドの近代化投資、半導体向けの需要の増加で長期的に銅価格は上昇すると予想されるため、2023年後半からは上昇に転じるというのがメインシナリオとなる。
しかし今回、中国で党大会が開催され、想定外だったが常務委員会メンバーが全て習近平派で占められたことは、銅価格見通しのリスクを下向きにすると考えられる。
というのも今回の人事で経験豊富な経済通の李克強首相を追い落とし、引退させるなど政治的な駆け引きが経済活動に優先したためである。
李克強首相の後任は習近平国家主席の側近である李強氏が就任する見通しだが、通常、首相ポストは副首相経験者が就くものの、李強氏は中央政府での実務経験がなく、実力は未知数。
さらに、同氏は上海共産党委員会書記を務めているが在任期間中にロックダウンによって上海市の住民の数千万人が食料不足に陥り、経済活動も停止して、中国のみならず世界景気に悪影響を及ぼす問題を引き起こした人物。
もちろん、習近平国家首席の要望を忠実に行った結果であり、彼1人の問題ではないのだが、限りなくイエスマンであり、習近平が良しとすればそれが経済にとってマイナスであっても遂行するだろう。
また、習主席の経済ブレーンである劉鶴氏も退任し、何立峰国家発展改革委員会主任が着任する見通しだが、実力についてはこちらも未知数(劉鶴氏も大した実績は上げていないが...)。
現政権が常務委員会を習派で押え、政治的に盤石な体制を敷いたとしても、経済を無視して支配体制を維持することは困難である。
そのため、来年以降も経済維持のために様々な対策を打ってくると思われるが、経済通と言われる李克強などのブレーンを排除し、自身の権力維持のために子飼いを重用し、さらには台湾への野心をむき出しにする人事も断行していることも考えると、景気減速や不動産バブルヘの対応などの景気下振れリスクにどの程度対応ができるかは非常に不透明な状況と言わざるを得ない。
そのため、銅を始めとする工業価格のリスクは下向きと考えられる。
主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について