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強めの米統計を受けて下落
  • MRA商品市場レポート

2022年10月17日 第2305号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「強めの米統計を受けて下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は自国通貨建て商品が上昇したが、その他の商品は軒並み水準を切下げた。

米ミシガン大学消費者マインド指数が予想外の改善となり、インフレ予想も引き上げられたため「米国経済が堅調」とみられたことが、金融引締め観測を強め、多くの商品価格の下落要因となった。

そもそも昨年後半に世界景気は循環的にピークアウトしているが、ロシアのウクライナ攻撃に伴う供給制限、欧州がこだわり続ける脱炭素戦略、異常気象といった材料が重なり、供給面の影響(人為的に作った供給制限の影響も小さくない)が価格を高止まりさせている。

これも繰り返し言われている様に、供給面の問題が解消すれば価格は大きく下落する。しかし10年単位で構造的に作られた供給制限は1年や2年では解消しない。そのため、価格が下落した、といっても資源価格の水準は高いままと考えられる。

物価上昇を飲み込める国は良いのだが、さすがに8%を超える物価上昇に耐えられる国があるとは考え難く、やはり来年に掛けて景気は調整するとみるのが妥当だろう。

一番の懸念は、景気が減速しているにも関わらず物価が高止まりするリスクだが、むしろそれはメインシナリオかもしれない。

【本日の見通し】

週明け月曜日は目立った手がかり材料がないが、EU首脳会議でロシア対策やエネルギー関連で議論があるかどうかに注目している。

アジェンダでは、ロシア・ウクライナ問題、中国とEUの関係について議論される予定である。

また、COP27についても議論するようだが、誤解を恐れずに言えば脱炭素は一時棚上げし、同盟国内で化石燃料の充分な調達能力を確保し、その上で平行して再生可能エネルギーも進め、それらが達成してから脱炭素をどの順番で行うことができるか、といった手順での議論であるべきではないか。

そもそもEU主導の持続可能な社会を目指した脱炭素戦略は、そのやり方自体が持続可能ではない、と思っていたがそこをロシアに突かれた訳である。100年後の未来も当然重要だが、今日・明日の命が掛っていることも忘れてはならない。以上を踏まえ、どのような議論が行われるか注目している。

【昨日のトピックス】

昨日発表されたミシガン大学消費者マインド指数は59.8(市場予想58.8、前月58.6)と市場予想m前月とも上回った。

現況指数が65.3(59.6、59.7)と大幅に改善したことが指数全体の改善に繋がった。しかし先行き指数に関しては56.2(58.3、58.0)と悪化の見込みであり、金融引締めや世界的な景気の循環減速を、個人も懸念していることを確認する内容。

インフレに関しても1年期待インフレ率が5.1%(4.6%、4.7%)、5年後5年インフレ率が2.9%(2.8%、2.7%)と上昇しており、インフレが長期化し、かつ、水準が上がると考える人が多いことを示唆している。

これを受けて金融引締め加速観測が強まった形。

しかし、ミシガン大学消費者マインド指数は、文字通りミシガン大学がアンケート調査して集計している統計だが、サンプルはわずか300人~500人程度であり、全米4億人の「代表」として用いられるサンプルとしては決して大きく無い。

もちろん、統計上の有意性は確保されていると考えられるものの、この統計のみを持って判断するのはやや危険だろう。しかし、その速報性の高さもあって市場参加者が注目していることもまた事実である

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。アジア時間からドル高が進行しており、それに合わせて水準を切下げた。前営業日に株価が大きく上昇し、それに伴う買いが価格を押し上げていたが、景気の減速は循環的で代わりはないこと、株価もミシガン大学消費者マインド指数を受けて調整したことから、週末を控えたポジション調整が入ったためと考えられる。

まだ原油生産への影響は出ていないとされているが、ナイジェリアで大規模な洪水が発生しており、治安が悪化する可能性が高いことを考えると、今後、原油供給のリスクとなる。

結果、テクニカルなサポートラインである50日移動平均線を割り込んだ。

10月のDOE月報を受けて原油価格見通しをリバイスした結果、2023年の平均価格はBrentが89ドル、WTIが81ドルになると試算される。

なお、弊社が50%の減産遵守率で計算した場合の予想はBrentが83ドル、WTIが75ドルであるため、今回の減産で各々6ドル程度価格が切り上がったことになる。

しかし、景気減速局面で価格に下落圧力が掛かりやすいなか、歳入の減少に直接的に繋がる減産をOPECプラスが維持し続けることができるかどうかは不透明だ。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在はOPECの減産により、1.の状態に戻った。しかし11月頃から米国の増産が始まると予想されるため、早晩、2.に移行すると考えられる。また11月の米中間選挙で共和党が勝利した場合、化石燃料の増産には弾みが付くだろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。ただし徐々に供給面の障害が緩和しつつある状況。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、脱炭素も、ということになれば供給面の制限は続くため、原油価格は高止まりすることになるだろう。

足下の脱炭素のための化石燃料採掘制限は、「今を生きる人々」の生活にマイナスに作用していると言わざるを得ない。100年後よりも今である。

Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しく、一旦テクニカルに50日のレジスタンスラインを試して上昇するとみる。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。欧州のガスタンクが満杯になりつつある中、足下の調達圧力が後退していることが背景。

欧州のガス在庫は、仮に欧州が需要を▲15%削減することができれば、この冬は仮にロシアからの供給が停止したとしても充分な状況になってきた。

4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想されるが、2023年の春先のガス在庫の水準が非常に低くなった場合、ノルドストリーム1・2が不稼働のままの可能性が高いことを考えると、2023年のガス調達は厳しい状況が続くことが予想される。

しかし、▲15%の在庫が削減できなければ3月頃には在庫は枯渇することが予想され、2023年のガス調達環境は、恐らく2023年よりも厳しくなる。

欧州がこの冬を乗り切れそうな状況にあるため、長期にわたってロシアが無理をすることがなかなか厳しくなってきた。

ロシアの月次財政収支は、今年の6月から赤字に転じている。そのためロシアもこの冬が「勝負」と考えている可能性は高い。

プーチン大統領は、ノルドストリームのパイプライン攻撃を「(ロシア以外の国の)テロ」と断定し、「全てのインフラにテロ行為の危機がある」、と発言した。

このことは、「(それをロシア以外の国のテロ行為として)ロシアが全てのインフラを攻撃する意図がある」といっているに等しい。

今後、ロシアが自国のインフラを破壊して供給懸念を煽るより、より直接的にロシア以外の国のインフラへを攻撃し、恒久的に供給ができない状態にして、強制的にロシアの資源への依存度を高めさせる戦略が採用されるリスクは高まっていると考えるべきだろう。

欧州の先物市場で取引をしている市場参加者は、価格高騰と高変動性に伴うマージンコール(証拠金)の引き上げを受けて市場参加者の資金繰りが極端に悪化しており、クレジット・クランチに繋がるのではないか、との懸念が広がる。

ただし、取引所に当局が介入して価格をゆがめた場合、その市場で取引する参加者が減少して、市場が機能不全に陥るリスクがある。

また、実勢と乖離して電気やガスの市場価格を変更した場合、価格上昇による需要減少が起きず、却ってエネルギー不足が発生するリスクも高まることになる。

フォンデアライエン委員長は、欧州が購入しているLNGの指標をTTFからJKM(など)に変更することも主張している。パイプライン経由ベースのTTFとLNGでは市場が異なる、という主張のようだ。

これにより、TTFの価格は下落し、JKMが上昇する可能性が出てくる。しかし、指標を変更したとしても、この冬の供給リスクは変わらない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

また、ドイツ政府はガス国内大手の国有化を検討、企業破綻を回避して夏冬のシーズンに供給懸念が顕在化しないよう手を打ち始めた。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

化学世界最大手のBASFは緊急時には原料用のガスを一般消費用に開放する方針も表明している。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化している。再開予定は11月上旬から中旬。あとは既述であるが、ノルドストリームの稼働が当面見込めなくなったことが挙げられる(これは3.に当たるか)。

3.は欧州で顕在化している状況で、ノルドストリームを巡るロシアの対応をみるにサハリン2も冬場に稼働を停止する可能性もある。

今回のノルドストリーム1・2の破壊は、ロシアの攻撃とした場合、以下がその背景となる。

・9月27日に開通した「バルティック・パイプライン(ノルウェー→デンマーク→ポーランド→欧州域内)」も「破壊可能である」との脅し。

・米国の圧力で開通していなかったノルドストリーム2は、パイプラインが1本残っているためこれを開通させる。

4.はもはやリスクではなく、顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西ともさらに急騰しており、過去5年レンジを遙かに上抜けした。ロシアの供給が細る中、冬場に向けた調達が本格化していることを示唆している。

10月3-9日のLNGトレードは、745万トン(前週709万トン)と増加、スポットLNGカーゴのシェアは23%(21%)と上昇した。主に欧州向けのターム契約が増加したことによる。

スポットカーゴはスペイン向けの増加を、日中台韓向けの減少を相殺した。日本と韓国の欧州向けカーゴが減少したことが影響している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は下落。米国の在庫積み上がりと、特に西部だが、気温が温暖であることが暖房向けの需要を減じたため。

これまで米全土の「Gas Heating Degree Days」は過去5年平均を上回ってきたが、見通しでは10月19日頃まで上昇した後、10月末には例年を下回ると予想されている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物はまちまち。欧州が「足下の」調達が一巡したことが期近の価格を弱含ませている。

しかし、下落したとはいっても欧州のガス価格は供給制限の問題からまだ高値を維持しており、ロシア・ウクライナの軍事的な緊張も緩和していないことからLNGスポットカーゴの需要は冬場を通じて旺盛と考えられ、さらに2023年の調達が2022年よりも厳しくなる見通しであり、期先の価格はまだ高止まりが予想される。

中国の8月の天然ガス輸入(パイプライン+LNG)は前年比▲15.2%の885万トン(前月▲6.9%の870万トン)と前年比での減少幅が拡大はしたが、過去5年平均を上回る水準を維持した。

パイプラインベースの輸入は+9.0%の413万トンと過去5年レンジを上回り、LNGは▲29.0%の472万トンと過去5年平均を下回っている。

中国の天然ガス生産は8月時点で+7.0%の169億8,000万立方メートル(前月+8.2%の170億6,000万立方メートル)と、伸びが鈍化しているが過去5年の最高水準だった前年を上回っている。

中国は国内生産増加とパイプラインからの供給増加、景気減速に伴う需要の減少でLNG需要が減少しているとみられる。当面、JKM価格は抑制された状態が続くことになろう。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2中長期的な観点では以下の2点が意識すべきリスクとなる。ただ、ノルドストリームの破壊工作報道をみるに、「欧州と米国に協力するならば、日本にもLNGを供給しない」という可能性も残るため、短期的なサハリン2リスクは上昇している。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

10月9日時点の日本の発電用LNG在庫は249万トン(前年同月末207万トン、2017~2021年平均239万6,800トン)と減少、過去5年水準を上回っているが減少傾向が強まっている。

日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため調達に問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。

また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

週明け月曜日は、目立った新規手がかり材料に乏しい中、目先の調達が一巡したことから期近の価格上昇は抑制された状態が続く一方、期先は高値を維持すると考える。

また、弊社のシミュレーション結果も▲15%~▲20%の需要削減ができなければ冬場の欧州の天然ガス調達は不充分であり、本当に在庫がゼロ近傍になれば来年の調達圧力が高い状態は続くことから、期先は下げ難いと考える。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、上述の理由から下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは小幅に上昇、期先も上昇した。南アフリカの港湾・鉄道ストライキの影響で石炭供給が制限される、との見方が強まったことが背景。

欧州とロシアの対立激化に伴うガス・石炭供給の制限観測の強まりが価格を押し上げた。

Glencoreと東北電力の「石炭チャンピオン交渉価格」が締結された。期間は2022年10月~2023年9月で395ドル(FOB)。前回契約は2021年6月から2022年5月で109.97ドルだったため、200ドル以上の上昇に。

脱ロシア問題は来年も続き、ロシア産以外の高カロリー炭を求める動きが「シーズン入り前から」続くため、価格の絶対水準が切り上がっている状況。

ロシアの体制変更があり、より穏健で、西側諸国が付き合うに足る国にならない限り、ロシア炭が市場の需給を緩和する方向には働き難い。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+5.0%の2,945万6,000トン(前月▲22.1%の2,352万3,000トン)と急回復し、過去5年平均を上回った。

価格水準は高いが、国内の供給が低迷している、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。

8月の中国の石炭生産は、前年比+10.5%の3億7,000万トン、1,195万トン/日(前月+18.6%の3億7,266万トン、1,202万トン/日)と、生産は前年比では高い水準を維持したが、海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)は下回った状態が続く。

ロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は270~300ドルであり、これが低下するには需要の減少か鉱山生産の増加が必要条件となる。

10月に入ってからの水準切下げは期近のみではなく期先が下落得しているため、景気が減速するなかでの石炭需要減速を織り込み始めたと考えられる。

しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

週明け月曜日は、南アフリカのデモの影響で海上輸送炭市場がタイトな状態が続くと考えられ、水準を切り上げる展開。ただし、足下はガス調達に目処が立っているためえ、上値も限定か。

なお、ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了した場合にはラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。

ただし、恐らく来年も発電燃料調達を巡り、厳しい状況は続くと予想されるため下落しても余地は限定されるとみる。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。昨日発表された米ミシガン大学消費者マインド指数が改善したことで、金融引締め加速観測が強まったことが、週末を控えた利益確定の売り圧力を強めた為。

また、ベンチマークである銅やアルミとの連動性が高い株価の下落も価格を下押しした。

昨日も、需給ファンダメンタルズを起因とする下落ではなく、ファイナンシャルな面での相場変動だったといえる。

今後も世界的な金融引締めが先進・新興国を問わず継続すると見られること、循環的な景気の減速から、この利上げが落着くまでは価格のリスクは下向きとなる。

しかし、「今のところ」米国の利上げ打ち止めが来年の春頃とみられているため、非鉄金属価格は来年春~夏頃に底入れするのではないか。

ロシア産の金属受入禁止は、LMEブランドであるアルミやニッケルに関しては影響が大きいがその他の金属への影響は限定されるだろう。

仮に制裁が強化されてロシア産の金属が禁止となれば、LMEが「ラストリゾート」としてロシア産金属の搬入が駆け込み的に加速し、LME価格が急落する可能性がある。

また、受入が停止となれば今度はLMEヘの金属供給が減少するため、ショートの買い戻しが加速して上昇する展開が予想される。結局、ロシアに対する制裁有無で、アルミ、ニッケルなどのロシアの生産シェアが高い金属価格は乱高下を余儀なくされるだろう。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.は中国のファイナンス関連統計をみるに、中国の需要はやや持ち直している。

しかし、2.3.に付いては再びFOMCメンバーがタカ派的な発言を繰返しているため、1.の効果を相殺している状況。当面、現状水準でのもみ合いが予想される。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ来年後半から、再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。

週明け月曜日は材料に乏しい中、一旦、昨日の下落の反動で買い戻しが入ると考える。しかし、景気の循環や米国の金融引締め維持方針には抗えず、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月が上昇、中心限月が下落した。

特段新規の材料に乏しい中、現状水準を維持しているという印象。

先週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比▲170万トンの1億3,020万トン(過去5年平均 1億3,429万トン)、在庫日数は28.6日(▲0.4日、過去5年平均30.8日)。

鉄鋼製品在庫は▲17万トンの1,193万2,000トン(過去5年平均1,217万トン)、原料炭在庫は▲26万トンの142万トン(126万4,000トン)、在庫日数は▲1.1日の5.8日(過去5年平均5.3日)。

鉄鉱石・鉄鋼製品の在庫水準は低く、原料炭の在庫はやや積み上がり気味の状態。

中国の不動産セクターは低迷しており、恐らく人口動態的に中長期的に成長ペースが鈍化する可能性は高い。

直近発表された不動産販売・開発などの統計は同国の不動産市場が回復していないことを示唆している。

不動産セクターが不調だと中国地方政府の重要な財源である不動産関連収入が減少するため、何らかの対策を行わなければ、中国経済がスパイラル的に悪化する可能性が出てくる。

この状況で不動産セクターのテコ入れをすることは非常に議論が割れるだろうが、現状は対策実施は不可避の状況と整理するのが適切だろう。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では75ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。

週明け月曜日も、中国の党大会が継続しておりその内容を見極めたいとして、現状維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。米ミシガン大学消費者マインド指数が想定外の改善で、インフレ率見通しも引き上げられたことで金融引締め観測が強まったことが背景。リスク・プレミアムに関してもドル高が進行したため下落した。

銀は金価格の下落を受けて大幅に下落、PGMは株価の下落もあり、特にパラジウムが大きく下落している。

金の基準価格は▲5ドルの803ドル、リスク・プレミアムは▲17ドルの842ドル。

仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば250ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,000ドル程度までの下落余地があることになる。

ETFの管理残高と金価格の間には高い相関性が見られるが、過去10年のデータを元にするとここまでの下落の場合、現在のETFの管理残高の凡そ半分に当たる金が流出する必要が出てくる。

現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、異常なペースで進む政策金利の上昇によるものであり、恐らく来年のはる頃には利上げペースが減速、実質金利も低下して基準価格は切り上がり、リスク・プレミアムは低下すると見られるため、1,000ドルまでの下落は恐らく起きないと考えられるが、1,200ドル程度までの下落リスクは有り得ると考えている。

大規模プレイヤーの金市場からの退場は、ETFの他、各国中央銀行の金準備売却のいずれかとなるが、後者が戦争や制裁による国の資金繰り悪化で金を売却せざるを得ないときに恐らく限定されることを考えると、引き続きETFの動向が重要になる。

足下、再び金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率であり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。

しかしこの水準は既に目前に迫っており、これまで説明力が高かった期待インフレ率単体での分析は、再び機能しなくなる可能性が出てきた。

銀価格は、10月3日の上げで上回ったレジスタンスラインを再び全て割り込んだ。銀は供給過剰にあるため、投機的な動きに価格が左右されやすく、テクニカル分析が比較的有効に機能する。

景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。

やや緩和的なスタンスにシフトしたかと思われた金融政策は、再び引締め気味にシフトしていることが実需減速懸念を高めており、銀価格を下押ししている。

再び50日移動平均線を割り込んだため、当面はこの水準が上値として意識されることになろう。

週明け月曜日は、まずは買い戻しが入ると考えるが、インフレが沈静化していないことで利上げペース加速観測が強まり、戻りも限定か。

実際、Fed Watchで確認すると12月の75bp利上げ観測は、前日の61.6%から69.8%に上昇している(前週は23.4%だった)。

銀は金価格の下落で軟調、PGMは株価の調整が続くとみられより水準を切り下げる公算。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。原油価格が下落したことと米金融引締め観測でドル高が進行したことがトウモロコシを押し下げ、その他の穀物価格も押し下げた。

今後は秋~冬にかけてのラニーニャ現象の発生もあり、さらに、冬場のラニーニャ現象がアラビア半島周辺に降雨をもたらし、バッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性があること、ロシアの穀物輸出停止リスクヘの懸念は拭い切れて居ないことから、中・長期的なリスクは引き続き上向きと考えている。

なお、今のところ中東・北アフリカ地区でのサバクトビバッタの大量発生は確認されていないが、ナイジェリアでは大規模な洪水が発生しており、農業国である同国の生産下振れリスクは、穀物、特に小麦価格を押し上げよう。

週明け月曜日も、米金融引締め加速観測が根強い中、軟調地合ながらも需給ファンダメンタルズ面が価格を下支えするため、現状水準でもみ合うと考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は極めて低いリスク)。

・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。

追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

それに伴う各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・日本政府の財政規律感の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(徐々に顕在化している可能性があるリスク要因)。

◆本日のMRA's Eye


「日本の人口動態のリスク(その3)」

◆これからの10年は重要な10年に

必要なエネルギーを確保するだけの資金を確保するには逆説的だが、さらにエネルギーが必要になるはずだ。労働力が増加しないことを前提にすると、ロボットなどの活用は必須条件になるだろう。

しかしそのロボットも駆動するためにエネルギーが必要であり、このとき他国に「買い負けずに」エネルギーを確保できるかどうかは非常に重要な問題になってくる。

円安がこれ以上進んだ場合、海外から高価なエネルギーを購入することが困難になるかもしれない。

また、円安が加速すれば海外から一時的に労働者を確保することも困難になる。場合によるとより労働条件の良い国を求めて、日本国内の労働者が海外に流出する可能性もある。

資源を買い負けないようにするためには、稼ぐ手段を確保しなければならないし、そのためにはやはり労働力が必要になってくる。そもそも日本がどのような産業で外貨を獲得していく国になるのかも大きな問題になるのではないか。

海外からエネルギーを取得せず、水力や太陽光、風力といった再生可能エネルギーを用いることもこれまで議論されてきた重要な選択肢である。また、既にエネルギーとして燃料を国内に確保できている原子力を用いることも選択肢だろう。

しかし、太陽光や風力などは必要な部材や原料を特定の国が確保しており、安全保障の観点から他の調達ルートを確保しておく必要があり、これも安定的とはいえない。また、原子力に関してもその安全性に付いては大きな論点となるのは明らかだ。

このまま労働力の減少が続いた場合、海外から移民を受け入れようという議論も出てくるだろう。しかし、意図的に移民を送り込んで世論を動かそうとする国もあり、問題点は少なくない。

また、国内で子育てがしやすい環境を整えて人口を増やそう、という議論も当然出てくると予想されるが、これこそ1~2年でどうにかなる話ではなく、数十年単位で腰を据えて取り組むべき課題である。

国家の安全保障面をどのように担保していくかも重要な論点となる。今回のロシアのウクライナ軍事侵攻を受けて、もはや、侵略戦争が起こり得るという前提で考える必要が出てくる。

「米国の国内世論はどうなるのか」「中国の不動産市況はどうか」といった海外情勢に目が移りちだが、実は日本が抱えている人口問題はこの数十年変わっていない。

もちろん、人口の減少に伴い経済規模が縮小していくことを容認するのであれば、それはそれも1つの選択である。

しかしそうではなく労働力不足の問題や、それに起因するエネルギー問題を解決しようとするならば、1年~2年といった短い期間の対策でどうにかなるものではなく、少なくとも今後10年を見据えた対策が必要になってくる。

このとき、市場の変化に伴うリスクに企業や個人が晒される可能性は高く、国や企業の体力が落ちているところで、現在世界が見舞われているような市場リスクが顕在化した場合、企業経営や経済活動が持続不可能になることも有り得る。

地政学的リスクが高まり、パワーバランスの変化、エネルギーの安全保障、戦略物資の変化が起きる可能性が高まっている今こそ、全ての条件をテーブルに載せ、今後のリスクと日本の進む方向性を議論するべき時なのではないだろうか。


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