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強めのCPIも足下の米景気楽観による株高で買い戻し
  • MRA商品市場レポート

2022年10月14日 第2304号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「強めのCPIも足下の米景気楽観による株高で買い戻し」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は液体系エネルギーセクター価格が上昇、発電燃料系エネルギーセクターが下落、非鉄金属は上昇、貴金属は下落でまちまちの展開となった。

米CPI(詳しくは昨日のトピックス参照)が米国のインフレが沈静化していないことを確認するないようだったため金利が急騰、ドル指数も上昇したが、「結局まだ米国の景気は悪くなっていない」として売られすぎ感がある株に買い戻しが入り、リスク選好のドル安が進行したことが背景。

しかし、インフレが沈静化していないことから名目金利の上昇が期待インフレ率の上昇を上回ったため、インフレの影響(実質金利の影響)を強く受ける貴金属セクターは軟調、という形となった。

FOMCメンバー、米バイデン政権ともインフレ抑制でスクラムを組んでいるが、米国の景気はまだ悪くなっておらず、むしろこれまでの価格抑制策で原油やエネルギー価格が下落したため、需要が喚起されているともいえる。

結局、労働力不足にともなう労働市場の需給ひっ迫が継続している中では物価上昇が容認されてしまう、ということだろう。

しかし、9月の米実質賃金は前年比▲3.8%であり、特に低所得者層がこの物価上昇に耐えられるとは考え難い。

G20では他国の状況にも配慮しながら金融政策を実施、という共同声明が採択されたが、8%を超える物価上昇(コアでも6.6%)が続く状態で、米国からすれば金融引締めを見送る選択はない。

結果、財務体力の劣る新興国、ロシアとの対立でスタグフレーションに陥っている欧州、欧州と貿易面で繋がりが強い中国が影響を受けることになるだろう。

日本は円安による物価上昇の影響が時間差を以て反映され始めているため、物価上昇の影響が出るのはこれから、になると予想される。

【本日の見通し】

本日もFOMCメンバーの講演が複数予定されており、恐らくタカ派な発言を繰返すと予想されるため、総じて軟調な推移になると考える。株も昨日の上げが大きく、週末を控えて一旦売られるのではないか。

本日発表予定の統計で注目は、米小売売上高、輸入物価指数、ミシガン大学消費者マインド指数、中国貿易統計。

9月米小売売上高 市場予想 前月比+0.2%(前月+0.3%) 除く自動車・ガソリン ▲0.1%(▲0.3%) 除く自動車・建材 +0.3%(±0.0%)

9月米輸入物価指数 前月比▲1.1%(▲1.0%)、前年比+6.2%(+7.8%) 除く石油 前月比▲0.4%(▲0.2%)

10月ミシガン大学消費者マインド指数速報 58.8(58.6) 現況指数 59.6(59.7) 先行指数 58.3(58.0) 1年期待インフレ率 4.6%(4.7%) 5年後5年期待インフレ率 2.8%(2.7%)

9月中国貿易収支 803億ドルの黒字(793億9,000億ドルの黒字) 輸出 前年比+4.0%(+7.1%) 輸入 ±0.0%(+0.3%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本の企業物価指数は市場予想の前年比+8.9%を大きく上回る前年比+9.7%(前月+9.0%)となった。

企業物価指数は企業間の売買価格であり、特に資源がない日本の場合輸入品価格の変動が企業物価指数に大きく影響してくる。

主に原油価格の影響が小さくないのだが6月以降、原油価格は下落しているものの急速に円安が進行していることに加え、日本の資源調達価格はその資源が何かにもよるのだが、過去の価格を参考に決定されることが多いため、「国際価格は下落していても、日本の調達価格が高い」ということがしばしば発生する。

時間差は概ね1ヵ月~半年程度、長ければ1年程度であるためこれから日本の調達価格はさらに上昇することが予想される。

一方、米国の消費者物価指数は、総合指数が前月比+0.4%(市場予想+0.2%、前月+0.1%)と市場予想を上回り、コアCPIは+0.6%(+0.4%、+0.6%)と前月比横這いだったが、上昇を続けた。

CPIに対する寄与度が大きい帰属家賃が再び上昇(前年比+6.3%→+6.7%)したことが影響している。金利引き上げによって住宅セクターの価格には下押し圧力が掛っているものの、前年比では高い水準が維持されており、CPI減速に至っていない。

この状況だと恐らくFOMCでの利上げは強まりこそすれ、弱まるのはかなり難しいと考えられる。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落後、大幅に上昇した。米CPIが発表されインフレの沈静化が遅々として進んでいないことを受けて急落したが、その後株価が割安感から買い戻しが入って急速に値を上げたため、ほぼこれに追随する形で水準を切り上げた。

ファイナンシャル要因の影響が大きい上昇だったが、米国時間に発表された米石油統計では、減速していた米石油製品出荷が回復している。価格下落による需要喚起と考えられ、主要輸送燃料のうちディスティレートの回復が顕著だった。

結果、テクニカルなサポートラインである50日移動平均線を維持する形となった。

バイデン政権は減産を決定したサウジアラビアを批判しているが、自国内の需要が回復する中、昨日の統計では原油生産は前週比で▲10万バレル減少している。

原油増産を政府が実行できる訳ではないが、「まず自分の国で増産しろ」とサウジアラビアからブーメランが戻ってきそうだ。

DOE月報が発表されたため、OPECプラスの減産効果を改めて試算してみると、DOEは減産遵守率を50%程度とみており、2023年の平均価格はBrentが89ドル、WTIが81ドル程度になると試算される。

なお、弊社が50%の減産遵守率で計算した場合の予想はBrentが83ドル、WTIが75ドルであるため、今回の減産で各々6ドル程度価格が切り上がったことになる。

しかし、景気減速局面でOPECが減産を維持し続けることができるかどうかは不透明だ。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在はOPECの減産により、1.の状態に戻った。しかし11月頃から米国の増産が始まると予想されるため、早晩、2.に移行すると考えられる。また11月の米中間選挙で共和党が勝利した場合、化石燃料の増産には弾みが付くだろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。ただし徐々に供給面の障害が緩和しつつある状況。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。ただし想定よりも景況感の悪化速度が速い様に感じる。

Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は複数のFOMCメンバーの講演が予定されており、恐らくタカ派は発言が続くと予想されることから、昨日の上昇の反動もあって下落を予想。しかし当面は50日移動平均線のサポートラインが意識される展開となり、価格は高止まり。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。ノルウェーのLangeガス田とNyhamna処理施設の不稼働に関する流言のリスクが払拭され、供給懸念が緩和したことが背景。

同時に欧州の景気減速の懸念も強まっているため、上値も重くなっている。

欧州のガス在庫は、仮に欧州が需要を▲15%削減することができれば、この冬は仮にロシアからの供給が停止したとしても充分である。しかし、▲15%の在庫が削減できなければ3月頃には在庫は枯渇することが予想され、2023年のガス調達環境は、恐らく2023年よりも厳しくなる。

欧州がこの冬を乗り切れそうな状況にあるため、長期にわたってロシアが無理をすることがなかなか厳しくなってきた。

ロシアの月次財政収支は、今年の6月から赤字に転じている。そのためロシアもこの冬が「勝負」と考えている可能性は高い。

プーチン大統領は、ノルドストリームのパイプライン攻撃を「(ロシア以外の国の)テロ」と断定し、全てのインフラにテロ行為の危機がある、と発言した。

このことは、「ロシアが全てのインフラを攻撃する意図がある」といっているに等しい。

今後、ロシアのインフラを破壊して供給懸念を煽るより、より直接的にロシア以外の国のインフラへを攻撃し、強制的にロシアの資源への依存度を高めさせる戦略が採用されるリスクは高まっていると考えられる。

4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想されるが、2023年の春先のガス在庫の水準が非常に低くなった場合、ノルドストリーム1・2が不稼働のままの可能性が高いことを考えると、2023年のガス調達は厳しい状況が続くことが予想される。

欧州の先物市場で取引をしている市場参加者は、価格高騰と高変動性に伴うマージンコール(証拠金)の引き上げを受けて市場参加者の資金繰りが極端に悪化しており、クレジット・クランチに繋がるのではないか、との懸念が広がる。

ただし、取引所に当局が介入して価格をゆがめた場合、その市場で取引する参加者が減少して、市場が機能不全に陥るリスクがある。

また、実勢と乖離して電気やガスの市場価格を変更した場合、価格上昇による需要減少が起きず、却ってエネルギー不足が発生するリスクも高まることになる。

フォンデアライエン委員長は、欧州が購入しているLNGの指標をTTFからJKM(など)に変更することも主張している。パイプライン経由ベースのTTFとLNGでは市場が異なる、という主張のようだ。

これにより、TTFの価格は下落し、JKMが上昇する可能性が出てくる。しかし、指標を変更したとしても、この冬の供給リスクは変わらない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

また、ドイツ政府はガス国内大手の国有化を検討、企業破綻を回避して夏冬のシーズンに供給懸念が顕在化しないよう手を打ち始めた。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

化学世界最大手のBASFは緊急時には原料用のガスを一般消費用に開放する方針も表明している。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化している。再開予定は11月上旬から中旬。あとは既述であるが、ノルドストリームの稼働が当面見込めなくなったことが挙げられる(これは3.に当たるか)。

3.は欧州で顕在化している状況で、ノルドストリームを巡るロシアの対応をみるにサハリン2も冬場に稼働を停止する可能性もある。

今回のノルドストリーム1・2の破壊は、ロシアの攻撃とした場合、以下がその背景となる。

・9月27日に開通した「バルティック・パイプライン(ノルウェー→デンマーク→ポーランド→欧州域内)」も「破壊可能である」との脅し。・米国の圧力で開通していなかったノルドストリーム2は、パイプラインが1本残っているためこれを開通させる。

4.はもはやリスクではなく、顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西ともさらに急騰しており、過去5年レンジを遙かに上抜けした。ロシアの供給が細る中、冬場に向けた調達が本格化していることを示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は上昇。ガス統計の在庫注入量が市場予想・先週の水準を下回ったことから。

ただし、米国の天然ガス在庫は徐々に積み上がり始めており、冬場の供給懸念はやや緩和し始めている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期先が大幅に下落した。景気の悪化に伴う需要減少観測が価格を下押ししている状況。特に欧州の景況感は現状のままであれば悪化を免れ得ない状況。

しかし、欧州のガス価格は供給制限の問題からまだ高値を維持しており、ロシア・ウクライナの軍事的な緊張も緩和していないことからLNGスポットカーゴの需要は冬場を通じて旺盛と考えられ、さらに2023年の調達が2022年よりも厳しくなる見通しであり、期先の価格はまだ高止まりが予想される。

中国の8月の天然ガス輸入(パイプライン+LNG)は前年比▲15.2%の885万トン(前月▲6.9%の870万トン)と前年比での減少幅が拡大はしたが、過去5年平均を上回る水準を維持した。

パイプラインベースの輸入は+9.0%の413万トンと過去5年レンジを上回り、LNGは▲29.0%の472万トンと過去5年平均を下回っている。

中国の天然ガス生産は8月時点で+7.0%の169億8,000万立方メートル(前月+8.2%の170億6,000万立方メートル)と、伸びが鈍化しているが過去5年の最高水準だった前年を上回っている。

中国は国内生産増加とパイプラインからの供給増加、景気減速に伴う需要の減少でLNG需要が減少しているとみられる。当面、JKM価格は抑制された状態が続くことになろう。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2中長期的な観点では以下の2点が意識すべきリスクとなる。ただ、ノルドストリームの破壊工作報道をみるに、「欧州と米国に協力するならば、日本にもLNGを供給しない」という可能性も残るため、短期的なサハリン2リスクは上昇している。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

10月9日時点の日本の発電用LNG在庫は249万トン(前年同月末207万トン、2017~2021年平均239万6,800トン)と減少、過去5年水準を上回っているが減少傾向が強まっている。

日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため調達に問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。

また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

本日は、目立った新規手がかり材料に乏しい中、目先の調達が一巡したことから価格は抑制された状態が続くと考えられる。ただし下落幅が大きかった期先に関しては割安感からの買いがはいり、水準を切り上げる展開か。

また、弊社のシミュレーション結果も▲15%~▲20%の需要削減ができなければ冬場の欧州の天然ガス調達は不充分であり、本当に在庫がゼロ近傍になれば来年の調達圧力が高い状態は続くことから、期先は下げ難いと考える。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、上述の理由から下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは下落。天然ガス価格が在庫積増しの一巡や景気の減速観測、ノルウェーの供給懸念の後退から下落したことを受けて。

欧州とロシアの対立激化に伴うガス・石炭供給の制限観測の強まりが価格を押し上げた。290ドル程度まで上昇していた期先の価格も再び280ドルに低下した。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+5.0%の2,945万6,000トン(前月▲22.1%の2,352万3,000トン)と急回復し、過去5年平均を上回った。

価格水準は高いが、国内の供給が低迷している、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。

8月の中国の石炭生産は、前年比+10.5%の3億7,000万トン、1,195万トン/日(前月+18.6%の3億7,266万トン、1,202万トン/日)と、生産は前年比では高い水準を維持したが、海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)は下回った状態が続く。

ロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は280ドルであり、これが低下するには需要の減少か、鉱山生産の増加が必要条件となる。

10月に入ってからの水準切下げは期近のみではなく期先が下落得しているため、景気が減速するなかでの石炭需要減速を織り込み始めたと考えられる。

しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

本日は、昨日の発電燃料価格の下落が大きかったため、安値拾いの買いで水準を切り上げる展開を予想する。ただし在庫積みの一巡や景気への懸念から上値も重いか。

なお、ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了した場合にはラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。

ただし、恐らく来年も発電燃料調達を巡り、厳しい状況は続くと予想されるため下落しても余地は限定されるとみる。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落後上昇した。米CPIを受けて急速にドル高進行して下落したが、米経済がまだ堅調とみて売られすぎ感から株が買われる中、リスクテイクのドル安が進行したため、引けに掛けて大きく水準を切り上げて引けた。

どちらかと言えば需給ファンダメンタルズではなく、昨日はファイナンシャルな面での相場変動だったといえる。

しかし、今後も世界的な金融引締めが先進・新興国を問わず継続すると見られること、循環的な景気の減速から、この利上げが落着くまでは価格のリスクは下向きとなる。

米国の利上げ打ち止めが来年の春頃とみられているため、非鉄金属価格は来年春~夏頃に底入れするのではないか。

なお、LMEのCOTレポートとCFTCレポートでは、CME銅銅、LME鉛・アルミ・ニッケルが売り越しに転じており、やや様相が米中対立が始まった頃の状況に戻りつつある。

このときもスズや亜鉛などはネット売り越しにならなかったが、その他の金属は売り越し幅を拡大して価格が下落している。中国政府の2023年の経済対策がどの程度のものになるのかが注目される。

ロシア産の金属受入禁止は、LMEブランドであるアルミやニッケルに関しては影響が大きいがその他の金属への影響は限定されるだろう。

仮に制裁が強化されてロシア産の金属が禁止となれば、LMEが「ラストリゾート」としてロシア産金属の搬入が駆け込み的に加速し、LME価格が急落する可能性がある。

また、受入が停止となれば今度はLMEヘの金属供給が減少するため、ショートの買い戻しが加速して上昇する展開が予想される。結局、ロシアに対する制裁有無で、アルミ、ニッケルなどのロシアの生産シェアが高い金属価格は乱高下を余儀なくされるだろう。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.は中国のファイナンス関連統計をみるに、中国の需要はやや持ち直している。

しかし、2.3.に付いては再びFOMCメンバーがタカ派的な発言を繰返しているため、1.の効果を相殺している状況。当面、現状水準でのもみ合いが予想される。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ来年後半から、再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。

本日はFOMCメンバーの講演が再び多数予定されており、タカ派は発言が繰返される見通しであること、一方で最大消費国である中国の経済対策が価格を下支えするため、現状水準でもみ合うものと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は小動きだった。

特段新規の材料に乏しい中、現状水準を維持しているという印象。

先週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比▲320万トンの1億3,190万トン(過去5年平均1億3,220万トン)、在庫日数は29.0日(+0.3日、過去5年平均30.3日)。

鉄鋼製品在庫は+67万トンの1,210万9,000トン(過去5年平均1,260万9,000トン)、原料炭在庫は+20万トンの194万トン(127万2,000トン)、在庫日数は+1.1日の8.0日(過去5年平均5.3日)と増加している。

鉄鉱石・鉄鋼製品の在庫水準は低く、原料炭の在庫はやや積み上がり気味の状態。

中国の不動産セクターは低迷しており、恐らく人口動態的に中長期的に成長ペースが鈍化する可能性は高い。

直近発表された不動産販売・開発などの統計は同国の不動産市場が回復していないことを示唆している。

不動産セクターが不調だと中国地方政府の重要な財源である不動産関連収入が減少するため、何らかの対策を行わなければ、中国経済がスパイラル的に悪化する可能性が出てくる。

この状況で不動産セクターのテコ入れをすることは非常に議論が割れるだろうが、現状は対策実施は不可避の状況と整理するのが適切だろう。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では75ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。

本日も中国のゼロコロナ政策と景気刺激といった相反する政策の実行で、現状維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格はもみ合った結果、小幅に下落した。米CPIが米国のインフレが沈静化していないことを示唆する内容だったため長期金利が上昇、実質金利も上昇して金価格は下落したが、その後、逆に、「まだ米国経済は悪くなっていない」として割安感から株に買いが入る中、リスクテイクのドル安が進行、下げ幅を削る展開となった。

銀は金価格に連れ安、PGMは株価の上昇もあってプラチナが前日比比較的大幅なプラスで引けた。

金の基準価格は+1ドルの807ドル、リスク・プレミアムは▲8ドルの859ドル。

仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば250ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,000ドル程度までの下落余地があることになる。

ETFの管理残高と金価格の間には高い相関性が見られるが、過去10年のデータを元にするとここまでの下落の場合、現在のETFの管理残高の凡そ半分に当たる金が流出する必要が出てくる。

現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、異常なペースで進む政策金利の上昇によるものであり、恐らく来年のはる頃には利上げペースが減速、実質金利も低下して基準価格は切り上がり、リスク・プレミアムは低下すると見られるため、1,000ドルまでの下落は恐らく起きないと考えられるが、1,200ドル程度までの下落リスクは有り得ると考えている。

大規模プレイヤーの金市場からの退場は、ETFの他、各国中央銀行の金準備売却のいずれかとなるが、後者が戦争や制裁による国の資金繰り悪化で金を売却せざるを得ないときに恐らく限定されることを考えると、引き続きETFの動向が重要になる。

足下、再び金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率であり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。

しかしこの水準は既に目前に迫っており、これまで説明力が高かった期待インフレ率単体での分析は、再び機能しなくなる可能性が出てきた。

銀価格は、10月3日の上げで上回ったレジスタンスラインを再び全て割り込んだ。銀は供給過剰にあるため、投機的な動きに価格が左右されやすく、テクニカル分析が比較的有効に機能する。

景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。

やや緩和的なスタンスにシフトしたかと思われた金融政策は、再び引締め気味にシフトしていることが実需減速懸念を高めており、銀価格を下押ししている。

再び50日移動平均線を割り込んだため、当面はこの水準が上値として意識されることになろう。

本日もFOMCメンバーの講演が多数予定されており、恐らくタカ派な発言を繰返すと予想されるため、軟調な推移を予想。PGMは株価動向次第だが、週末ということもあって昨日の上昇の反動から一旦売られると予想され、やはり軟調推移か。

◆穀物

シカゴ穀物市場は大豆が小幅安となったが、総じて堅調な推移となった。米CPIが米国のインフレ沈静化が進んでいないことを確認する内容だったが、逆に「まだ米国の景気は良好」として売られすぎ感があった株に買い戻しが入る中で原油価格も上昇、リスクテイクのドル安が進行したことが価格を押し上げた形。

12日発表の米需給報告は以下の通り。

・10月米単収見通し実績(市場予想、前月)トウモロコシ 171.9Bu/エーカー(172.1、172.5)大豆 49.8Bu/エーカー(50.6Bu、50.5)小麦 46.5Bu/エーカー(NA、47.5)

・10月米生産見通しトウモロコシ 138億9,500万Bu(139億379万Bu、139億4,400万Bu)大豆 43億1,300万Bu(43億8,031万Bu、43億7,800万Bu)小麦 16億5,000万Bu(NA、17億8,300万Bu)

・10月米輸出見通しトウモロコシ 21億5,000万Bu(NA、22億7,500万Bu)大豆 20億4,500万Bu(NA、20億8,500万Bu)小麦 77億5,000万Bu(NA、8億2,500万Bu)

・10月米在庫見通しトウモロコシ 11億7,200万Bu(11億2,628万Bu、12億1,900万Bu)大豆 2億Bu(2億4,483万Bu、2億Bu)小麦 5億7,600万Bu(5億6,252万Bu、6億1,000万Bu)

今後は秋~冬にかけてのラニーニャ現象の発生もあり、さらに、冬場のラニーニャ現象がアラビア半島周辺に降雨をもたらし、バッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性があること、ロシアの穀物輸出停止リスクヘの懸念は拭い切れて居ないことから、中・長期的なリスクは引き続き上向きと考えている。

なお、今のところ中東・北アフリカ地区でのサバクトビバッタの大量発生は確認されていない。

本日もFOMCメンバーの講演が多数予定されており、恐らくタカ派な発言が見込まれることから軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は極めて低いリスク)。

・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。

追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

それに伴う各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・日本政府の財政規律感の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(徐々に顕在化している可能性があるリスク要因)。


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