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中国ゼロコロナ緩和期待・米CPIショック続き総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2022年11月14日 第2325号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国ゼロコロナ緩和期待・米CPIショック続き総じて堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は総じて堅調な推移となった。CPIショックの影響で急速にドル高調整の動きが強まっている中で、中国がコロナによる待機期間の短縮など、厳しいゼロコロナ政策の見直しに動いたことが、同国の経済活動再開期待を高めたことが背景。

上昇率上位はLME非鉄金属がほとんどを占め、エネルギーがこれに続いた。

これまで、米国の金融引き締め加速によるオーバーキル、「メンツ」にこだわる中での中国のロックダウン、ロシアとウクライナの戦争とそれに伴う制裁と報復制裁の動きが市場を支配してきたが、これらの材料は一巡した感がある。

そのため、市場参加者のリスクテイク意欲は回復し、リスク資産価格を押し上げやすい。

しかし、冷静に考えると循環的な景気減速は続いており、先日発表になった米ミシガン大学消費者マインド指数も悪化している。中国も規制緩和といっても足下はロックダウンの動きを強めている。また、米国の中間選挙の結果はまだでておらず、不透明感は強い。

場合によるとソフトランディングが可能ではないか、との楽観と、11月末のファンド決算までに7月以降に取られてきた「インフレ調整ポジション」の解消が進んでる、と考えるのが妥当ではないか。

【本日の見通し】

週明け月曜日は週末に上昇した商品が多く、一旦反動売りに押される展開が予想される。ただし、足下はドル安トレンドであるため、ドル建て資産価格は下支えされよう。

市場は一度トレンドになるとそれをひっくり返すには追加の材料が出てこない限り難しい。特に、ドル建て商品価格への影響が大きいドル指数動向は今後、商品価格を占う上では重要になるが、当面、ドル指数は大きなサポートラインである104.80を目指す動きになるのではないか。

ドル円の場合は132.75円あたりが大きなサポートとなるが、現在一目均衡表の雲の下限でサポートされており、短期的にはココ尾を下抜けるかどうかが重要になる。

7月末にもこの一目均衡表の雲の下限はトライしているが、このときはサポートされ大幅上昇に繋がった。

その他、注目材料は米中首脳会談が行われる点。しかし、米国は12月の中間選挙の決戦投票(ジョージア州)を控えていることを考えると、安易に中国に対して融和的なメッセージを出すとは考え難く、中国もまた同様だろう。

ただ、米国はインフレの継続、中国は景気の鈍化で国内の舵取りが困難であるため、米中の対立が深まる、というよりは「交渉のチャネルが確保される」ことをアピールするのではないか。このことは緩やかに価格を下支えする。

【昨日のトピックス】

米中間選挙は民主党が想定以上に善戦しており、上院を死守できる可能性が出てきた。妊娠中絶問題がことのほか有権者の間で意識された、というトーンが比較的左派寄りとなりがちな新聞紙面では強調されているが、有権者の関心は景気とインフレが最も高いため、ガソリン価格の下落や株価の持ち直し、といった中間選挙直前の「閉店間際の駆け込み」がサポート材料となったと考えるのが妥当だろう。

木曜日に発表された米CPIはこれを裏付けるものといえ、総合指数が前月比+0.4%(市場予想+0.6%、前月+0.4%)、前年比+7.7%(+7.9%、+8.2%)、コア指数が前月比+0.3%(+0.5%、+0.6%)、前年比+6.3%(+6.5%、+6.6%)と市場予想ほどの上昇にはなっていない。

これを受けて「これ以上の金融引き締め加速は不要なのではないか」との見方が急速に広まり、Fed Watchでも12月会合での50bp利上げの可能性が80.6%(前週61.5%と上昇している。

しかし、金融引き締めの方向性は「想定していたよりも」緩和的と判断して良いかもしれないが、CPIの内訳を見ると必ずしもそうとは言いきれない。

FRBはPCEコア指数をより重視しているため必ずしも適切ではないが、CPIの寄与度内訳をみると、最も高いのが住宅関連で32.6%、ついでサービス(除くエネルギー・住居関連)で24.6%、食品13.7%、エネルギー8.1%、コモディティ(除くエネルギー・食品)13.3%。新車4.0%、中古車・トラック3.8%、となっている。

この中で寄与度が高い住宅関連は前年比+6.9%(前月+6.6%)と伸びが加速しており、エネルギーや食品を除くコアCPIの低下にはまだ金融引き締めの継続が必要であることが確認されているためだ。

ただ、頑なだった中国もゼロコロナ政策を若干修正しており、供給途絶への懸念が後退する可能性が出てきていることもCPIを押し下げるだろう。

整理すれば、1.米国の金融引き締めはまだ続く、2.ただしこれまで懸念されていたような75bp利上げが継続する訳ではない、3.住宅セクターの減速が明確でない中、パウエル議長が主張するように利上げの期間は長くなり、ターミナルレートも高くなる、4.結果、リスク資産価格には下押し圧力がかかる展開には大きな変化はない、ということであり、足下の商品価格の上昇は下落局面での綾戻しと考えるのが適切、と弊社は考えている。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は続落した。最大消費国である米国のCPIの上昇沈静化観測が強まってきたことを受けた金利低下、株上昇に伴うドル安進行が広くドル建て資産価格の押し上げ要因となる中、中国のゼロコロナ政策が一部緩和される(同時に感染が拡大してロックダウンは拡大の見通し)との報道を受けて株式市場などに買い戻しが入ったことが価格を押し上げた。

ただし100日移動平均線のレジスタンスは上回っておらず、下落局面での綾戻しと考えるのが妥当だろう。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在はOPECの減産により、1.の状態に戻った。しかし、直近11月の米石油統計では米国の増産が始まっており、早晩、2.に移行すると予想される。

ただ、そろそろロシア産原油の輸入制限が始まる見通しであり、主要なマーカー原油価格には上昇圧力が掛ることが予想され、景気減速に伴う価格下落を限定し、原油価格の下支え要因となろう。

ロシア産原油の禁輸に伴うタンカーの不足や航路変更の影響で、FOBとCIF価格の乖離(日本の場合JCCとドバイのスプレッド)が広がる可能性がある。

また、中国が強左の政権になったことから台湾有事のリスクは高まり、中東から日本への航路も旅程が長くなり、コスト増となってFOBとCIFの乖離を拡大する可能性が出てくるため(JCCとドバイ・オマーン、Brentなどとの乖離幅拡大)、今後の中国・台湾情勢はより注意が必要であり、ビジネスリスク・市場リスクを回避する意味で、米国などの同盟国からの調達を増加させる必要が出てくると考えられる。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-105ドル

2.1.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-100ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-95ドル

4.3.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 70-90ドル

5.ロシアがウクライナから撤退上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

6. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

7. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

中期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる見込み。

より長期となる2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

しかし、脱ロシアを継続する一方で、脱炭素も、ということになれば供給面の制限は続くため、原油価格は高止まりする可能性が高いと考える。

足下の脱炭素のための化石燃料採掘制限は、「今を生きる人々」の生活にマイナスに作用していると言わざるを得ない。100年後よりも今である。

Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q123~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (→)      グローバル・リセッションの場合 (↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は目立った固有の材料がない中で、テクニカルに売られる展開を予想している。

米中首脳会談では恐らくお互いに手土産を持たせ合うようなことにはならないと思われ、このことも調整圧力が強めると予想する。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は大幅に下落。欧州の気温が温暖で、想定よりもガス需要が増加しないとの期待が高まっていることや、EUが準備している価格抑制策についての期待が価格を押し下げている。

プライス・キャップの概要はまだ示されていないが、実際に導入されれば価格上昇による消費抑制効果が薄れるため、EUが目指す▲15%の需要削減が困難になる。

足下は想定よりも温暖な気候がこの影響を緩和しているようだ。ただし気温は「神のみぞ知る」ところであり、閉鎖のシミュレーションでも欧州のガス在庫の取り崩しで過去5年平均を下回る可能性があるのが年明け以降と予想される。

また、荷揚げ前のLNG船が多数滞留しており、弊社のシミュレーションでも▲15%の需要削減ができ、年明けまでは大きなトラブルがなければ、ガス在庫の水準が過去5年平均を割り込むことはないことを示唆しており、足下のスポット価格の下押し圧力となる。

なお、4月以降はラニーニャ現象収束が期待され、景気の減速から一旦ガス価格は水準を切下げると予想され、足下のガス調達への懸念は後退しているといえる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州最大のガス消費国であるドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光、石炭、原発)3.需要の削減

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

現在の欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスク、ナイジェリアの洪水によるLNG輸出停止が顕在化している。

Freeportの再開予定は11月上旬から中旬、ナイジェリアは未定。

3.は欧州で顕在化している状況で、ノルドストリームを巡るロシアの対応をみるにサハリン2も冬場に稼働を停止する可能性はある。

今回のノルドストリーム1・2の破壊は、ロシアの攻撃とした場合、以下がその背景となる。

・9月27日に開通した「バルティック・パイプライン(ノルウェー→デンマーク→ポーランド→欧州域内)」も「破壊可能である」との脅し。

・米国の圧力で開通していなかったノルドストリーム2は、パイプラインが1本残っているためこれを開通させる。

4.はもはやリスクではなく、顕在化している。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも高い水準でほぼ横這い。

10月31-11月6日のLNGトレードは、773万トン(前週677万トン)と増加、スポットLNGカーゴのシェアは17%(17%)と横這い。

スポットカーゴは北欧向けが減少(▲30万トン)したが、日中台韓向けの輸出が増加(+20万トン)したことが相殺した。

なお、洋上在庫は前週比で+7.7%増加しており高い水準を維持している。米国からのLNG船の滞留が多いが主に欧州向けと考えられ、当面、LNG調達への懸念は後退している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は下落。FreeportのLNGターミナル再稼働の遅れヘの懸念が域内需給を緩和させるとの見方が強まっていること、欧州の在庫積み上がりによりFreeportが再稼働しても輸出がそこまで増加するわけではない、との見方が価格を押し下げているようだ。

しかしガスHDDを見ると気温低下による需要増加が見込まれるため、年末から来年初にかけての価格リスクは上向きである。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期近が変わらず、期先はパラレルに大きく下落した。冬場の気温が懸念と裏腹にまだ温かく、冬を「比較的高い在庫水準で終えることができるのでは」との期待が高まったことが背景。

ただし、気温次第で水準は簡単に変わってしまう。

10月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比▲18.9%の761万トン(前月▲4.4%の1,015万トン)と前年比での増加幅を急速に減少させた。パイプラインガス、LNGどちらが減少したかはまだ詳細が発表されていないため分からない。

9月のLNG輸入は前年比▲12.6%の590万トン(前月▲29.0%の472万トン)と前年比のマイナス幅が縮小、冬場に向けた調達が増加している。

9月のパイプラインベースの輸入は前年比+9.7%の425万トン(+9.0%の413万トン)と輸入の伸びが増加している。

中国国内の天然ガス生産は9月は+4.1%の164億立方メートル(前月+7.0%の169億8,000万立方メートル)と伸びは鈍化したが、過去5年の最高水準を上回る生産が続いている。

天然ガス輸入量の減少を見ると、1.石炭輸入・生産が高水準であり電力向けのガス需要がさほど旺盛ではない、2.中国国内の天然ガス生産の増加、3.中国景気の減速、のいずれかないしは複合要因と考えられるが、貿易統計全体の数値の減速(交易量の減速)を考えると、3.の可能性が高いと考える。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

サハリン2中長期的な観点では以下の2点が意識すべきリスクとなる。ただ、ノルドストリームの破壊工作報道をみるに、「欧州と米国に協力するならば、日本にもLNGを供給しない」という可能性も残るため、短期的なサハリン2リスクは上昇している。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は最大で1兆円/年を超える

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

10月30日時点の日本の発電用LNG在庫は255万トン(前年同月末207万トン、2017~2021年平均239万6,800トン)と増加、この時期の過去5年の最高水準であり、在庫は潤沢。

日本も欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため調達に問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。

また、今年の冬を乗り切れたとしても来年の夏以降の調達への懸念が払拭されている訳ではなく、先物の期先の価格は高値を維持しよう。

週明け月曜日は、米国以外の北半球の気温が比較的温暖で有ることから軟調な推移を予想する。しかし、冬はまだ始まったばかりであり、気温低下リスクは残るため、高値は維持しよう。

また、▲15%~▲20%の需要削減ができなければ、来年の春のガス在庫の水準は例年を下回ることが予想され、2023年のガス調達はより厳しい状態になるリスクがある。引き続き、冬場の気温次第。

なお、冬場の調達がある程度目処が立つ3月頃から、景気や気温、ラニーニャ現象終了を織り込んで水準を切下げるとみているが、上述の理由から下値も堅かろう。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップはパラレルに上昇。中国がゼロコロナ政策を緩和する見通しが示されたことや、この数日の下落が非常に大きかったことから割安感からの買い戻しが入ったことが背景。

日中台韓印欧の石炭輸入は過去5年レンジの最低水準であり、輸出もやや低迷している。冬場に備えた在庫積増しが一巡したことを示唆している。

ロシアの体制が変わり、より穏健で、西側諸国が付き合うに足る国にならない限り、ロシア炭が市場の需給を緩和する方向には働き難いが、足下、景気の減速や北半球の気温が事前予想よりも温暖であることが価格を下押ししている。

しかし、10月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+8.3%の2,918万トン(前月+0.5%の3,304万8,000トン)と高水準を維持し、過去5年レンジを上回っており、中国が「徐々に」海上輸送炭市場に復帰しつつある。

国別の輸入内訳がまだ公表されていないため詳細が不明だが、冬場に備えた調達の再開、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。

9月の中国の石炭生産は、前年比+15.7%の3億8,672万トン、1,289万トン/日(前月+10.5%の3億7,000万トン、1,195万トン/日)と大幅に増加、同じ時期の過去最高水準を上回っている。

海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)を上回っているが輸入が増加しており中国国内の需給がタイト化している可能性が出てきた。

もしくはロシアに対する「応分の協力」で輸入を増加させたため、生産が調整された可能性がある。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、現在は230ドルとなっている。この水準がさらに低下するには需要の減少か鉱山生産の増加が必要条件となる。

しかし、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても230ドル程度が基準となってしまう。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は現在の期先の価格ではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

週明け月曜日は、割安感からの買い戻しで上昇すると見るが、足下、欧州の気温低下が懸念したほどではないことから上値も重いと予想される。

なお、ロシアとの対立やそれに伴うインフレ発生、その抑制のための金融引締めで欧州はスタグフレーションに陥っており、冬場が終了する3~4月以降はラニーニャ現象の収束と合わせて水準を切下げる公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に上昇した。中国政府が「ゼロコロナ政策は維持するものの、待機期間の若干の短縮」に踏み切るなど、ゼロコロナ政策の見直しに「着手した」との期待が高まったこと、米CPIが市場予想を下回ったことで、金融引き締め観測が後退、ドル高の修正が始まったことが材料となった

弊社が想定していたアップサイドのリスクシナリオが、図らずも同時に顕在化した形。

これまで、米金融引き締めと中国ゼロコロナ政策を7月以降、市場は積極的に織り込んで来たが、特に非鉄金属は「新規の」投機売りポジションが積み上がっていた。

そのため、11月末のファンド決算を控えて「そのポジションを巻き戻してクリスマス休暇を迎える、絶好のチャンス」と考えた可能性がある。

しかし、冷静になって考えると、中国のゼロコロナは続いており、香港・マカオを除く全土の新規感染者数が7ヵ月振りに1万人を突破し、北京モーターショーが中止隣、重慶市などは事実上のロックダウンとなっている。

ここまで過剰に価格が上昇するのは、どちらかと言えば金融要因の影響が大きかったと考えるべきだろう(米CPIの評価に関しては昨日のトピックスをご参照ください)。

10月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲1.5%の40万4,414トン(前月+25.6%の50万9,954トン)と過去5年平均を割り込んだ。

一方、銅鉱石の輸入は前年比+3.8%の186万8,751トン(前月+7.7%の227万3,426トン)と過去5年の最高水準で推移している。

中国政府の経済対策期待や電力供給障害の解消、TCが高止まりしていることが鉱石輸入を高止まりさせているが、精錬銅輸入の減少は同国の需要が減速していることを示唆している。

9月の銅スクラップの輸入は前年比+24.2%の16万6,988トン(前月+19.1%の15万4,636トン)と前月からは前年比の伸びを加速させたが、過去5年平均は下回った状態。

銅地金の輸入の急減速、スクラップ輸入の低迷を見ると中国国内の需要の回復は緩慢と見られる。前月までは回復感が強かったが、やはりゼロコロナ政策堅持の方針が重石となっているようだ。

また、3期習近平政権はイデオロギー重視で経済通がおらず、経済以上に体制維持に力を注ぐと考えられ、台湾問題などの対応を優先する可能性が高いことから、2023年以降の銅需要は落ち込む可能性があり、需要・価格のリスクは下向きだ。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.は中国政府がゼロコロナ政策を堅持する方針を示したことで足下はマイナスに作用している。

2.については米CPIの低下で急速に金融引き締め観測が後退しているため、リスクテイク再開でプラス、3.はQT継続であり下向き。結局1~3を総合すると、短期的に非鉄金属価格は反転、上昇しやすい地合となった。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、そのあたりまでは調整圧力が掛かり頭重い推移に。

世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きることを前提とすると、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性もあり、この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される。

ただし、IMFが経済見通しで指摘しているようにインフレ沈静化に時間が掛れば、長期的に引締め的な金融政策が世界で継続、特に財務体力がなく、同時にインフラ向け投資の潜在需要が大きな新興国の需要を減じると見られるため、この場合は価格の回復はさらにずれ込むことがリスクとして意識される。

また新興国の景気のクラッシュがなくとも、2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

早ければ来年後半から、再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。

価格上昇にキャップがかかるとすれば、「脱炭素向け需要の過熱で価格が高騰し、脱炭素シフトができなくなる場合」「資源が足りなくなる場合」が逆説的だが有り得るシナリオ。

週明け月曜日は、週末の上昇の反動で下落すると考える。非鉄金属価格は大幅に上昇したが、足下の中国の経済活動はむしろ悪化しているため、利益確定の動きが出やすいと考えられるため。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

鉄鋼製品価格は中国政府がコロナ対策をやや緩和したことで景気の先行きへの期待が高まったことから上昇、それを受けて鉄鋼原料価格も上昇した。

ただ、冷静に考えると北京モーターショーが中止になるなどゼロコロナ政策は継続しており、経済統計の悪化も続いている。結局「とても酷くなるリスク」が若干緩和した、と整理するのが妥当である。

実際、中国の不動産セクター低迷は続き、人口動態的に同国の成長ペースが鈍化する可能性は高い。

中国の不動産セクターの立ち直りには、政府主導による財政状況悪化企業の国有企業による吸収合併などを含む統廃合の推進と、経済対策の実施が不可欠だ。

しかし、中国の地方政府は税収の4割を土地の利用権の売却で賄っているため、不動産セクター状況に対策余力が左右される。

結果、不動産セクターの立ち直りには時間を要することになり、建材需要の減速は鉄鋼製品・鉄鋼原料価格の下押し要因となる。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では70ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。

10月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲31.7%の77万2,270トン(前月▲29.3%の89万82トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。そもそも中国国内の粗鋼生産能力が高く、粗鋼生産の回復が輸入を阻害したと考える。

9月の中国粗鋼生産は前年比+17.9%の8,695万トン(前月+0.8%の8,387万トン)と回復し、過去5年平均を上回った。中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画。

10月の鉄鋼製品の輸出は前年比+15.2%の518万4,380トン(前月+1.2%の498万トン)と前年ベースでの伸びが回復、過去5年平均を復帰した。人民元安が輸出を加速させているとみられる。

10月の鉄鉱石の輸入は前年比+3.7%の9,500万トン(前月+4.3%の9,971万トン)と前年比でプラスを維持、過去5年平均も維持した。

ロックダウン解除後も経済活動の回復は緩慢だが、人民元安の進行が輸出を促進したとみられる。

週末発表の在庫統計は、鉄鉱石在庫が前週比+1730万トンの1億3,600万トン(過去5年平均 1億3,783万6,000トン)、在庫日数は27.9日(+0.4日、過去5年平均30.8日)。

鉄鋼製品在庫は▲38万3,000トンの1,018万9,000トン(過去5年平均1,027万9,000トン)、原料炭在庫は▲4万トンの62万トン(164万2,000トン)、在庫日数は▲0.4日の2.4日(過去5年平均 6.8日)。

鉄鉱石、原料炭とも在庫はタイトな状態が続いている。仮に中国がゼロコロナ政策を撤回するならば、調達圧力は高まることになろう。

週明け月曜日は、中国のゼロコロナ政策緩和期待や米国の金融引き締め緩和期待から価格は上昇すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。米CPIショックを受けた実質金利の低下と、ドル安進行を受けたリスク・プレミアムの上昇が価格を押し上げている。銀価格は金価格の上昇で上昇、プラチナは小幅安、パラジウムは供給不安や株高で大きく水準を切り上げた。

金の基準価格は±0.0ドルの872ドル、リスク・プレミアムは+16ドルの899ドル。

仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば270ドル程度が過去5年平均でありこの水準までの回帰があれば、金価格は1,000ドル程度までの下落余地があるが、この場合、ETFの管理残高は半分減少することになる。

現在の金基準価格の下落とリスク・プレミアムの上昇は、各国の政策金利の上昇によるものであり、恐らく来年の春頃には米国の利上げが打ち止めとなり、実質金利も低下して基準価格は切り上がると予想される。

一方、金融引き締めの打ち止めで信用リスクが低下するため、リスク・プレミアムは低下すると予想されることから、下落があっても1,200ドル程度が限界と考えている。

足下、金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率そのものであり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,650ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

景況感を材料に金銀レシオが決まり、金融引締めをして景気を減速させようとしている状況だと、基本的には供給過剰で工業向けの金属である銀は、対金で割安に推移しやすい。

週明け月曜日は、ドル高局面の修正が始まっていることからリスク・プレミアムが上昇する形で金価格は上昇、銀・PGMは株のリスクテイク再開で上昇すると考える。

ただし、この数日の上昇が顕著であるため、まずは利益確定の売りからスタートすると見ている。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。米CPIを受けたドル高局面の修正や、原油価格の上昇によるトウモロコシ価格の上昇が材料となった。

ロシアは輸出プログラム再開に合意しているが、基本的に穀物全体の需給ファンダメンタルズはタイトであり、昨日はドル高修正が材料となった。

10月の中国の大豆輸入は前年比▲19.1%の413万6,000トン(前月+12.2%の772万トン)と急減速、過去5年の最低水準を下回った。

現在、中国の輸入大豆の港湾在庫水準は592万6,950トンと、過去5年レンジの下限での推移となっている。

恐らく豚肉価格の上昇に伴う出荷増加のため、多数、豚が屠畜された可能性があり、そのために餌となる大豆(圧搾して大豆ミールを得る)の輸入需要が鈍化した可能性がある。

ただし、大連の大豆ミール先物価格は高止まりしており、中国の飼育頭数が高止まりしていることも、中国の飼料供給が必ずしも充分ではないことを示唆している。

今後は冬場のラニーニャ現象がアラビア半島・北アフリカ周辺に降雨をもたらしており、サバクトビバッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性がある。

なお、今のところバッタの大量発生は確認されていない。

週明け月曜日は、ドル高修正バイアスを背景に買い戻しが優勢になると考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は極めて低いリスク)。

・資源価格(電力価格を含む)の上昇による市場取引のマージンコール上昇で、マージンコールを差し入れられない市場参加者がポジションを外し、市場が機能しなくなる場合(LMEニッケルで見られたような事態が発生して市場が混乱する場合)。

追い証の負担増加に耐えられず、連鎖的にエネルギー企業の倒産が発生する可能性。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性(既に顕在化か)。

インフレ抑制が上手くいかず、スタグフレーション状態が長期化する場合。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

2022年の中国党大会を経て、ゼロコロナ政策継続の可能性が高まったことからロックダウン発生の可能性は排除できず、中国景気がハードランディングするリスク(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・日本政府の財政規律感の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(徐々に顕在化している可能性があるリスク要因)。

◆本日のMRA's Eye


「PGM価格は調整の後上昇へ~2023年見通し」

2022年のプラチナの需給バランスは投機を含む需給バランスも、投機を除いた需給バランスも供給過剰の状態が続いた。

ただし投機の売り圧力が強かったため、投機を除いた需給バランスは投機を含む場合よりも需給はタイトである。プラチナ実需の需給バランスに大きな影響を与えたのは、コロナ以降の半導体不足に伴う自動車販売の減少。

コロナのワクチン開発成功から2年が経ち、徐々に自動車向けの半導体供給不足は解消に向かっており、今後、自動車触媒向けの需要の回復が期待されるため、プラチナ価格の押し上げ要因となり得る。

プラチナ価格に対する説明力は引き続きETFの保有残高、即ち投機筋の動向の影響が大きい状況に変わりはなく、センチメントで価格が動き安いのは事実。

しかし、ETFに次いでプラチナ価格に対する説明力が高いのは、欧米の製造業PMIや中国のGDPといったマクロ経済統計。

製造業PMIは欧米とも2021年後半にピークを迎え、減速基調であり、景気循環(4~5年の在庫投資循環サイクル)が維持されるとすれば、2023年後半までは需要の伸びの減速が予想され、プラチナ価格を下押しすると予想される。

足下の価格が上昇して製造業PMIの動きと若干乖離しているがこれは、新規で積み上がっていた投機の新規売りポジションが、米国の金融引き締めペースの鈍化期待などを材料に買い戻されたことによるテクニカル要因によるものと考えられる。

しかし、インフレ抑制の観点から欧米とも政策金利を引き上げ、量的緩和の解除も実施して実質金利は上昇する見通しであり、プラチナ価格の発射台となる金価格は上述の通り下落する可能性が高い。

このことはファイナンシャルな面でもプラチナ価格に下押し圧力が掛かりやすいことを示唆している。

以上から、プラチナ価格は2023年前半は調整すると考えられるが、ロシア問題やラニーニャ現象発生に伴う南アフリカでの洪水発生や、インフレを背景とするリビングコストの上昇を受けた暴動・ストライキなどの影響で現物需給は統計以上にタイトであり、NYMEXプラチナ先物はバックワーデーションの状態であり、価格下落も需給面が下支えして更なる下落余地は限定されるのではないか。

その後は、自動車向けの需要回復や景気循環の影響から2023年後半に掛けて再び上昇する展開になると予想される。2023年の平均価格は886ドル(10月見通し比+13ドル)、2024年は景気の回復感が強まり1,014ドル(+24ドル)と2023年比で上昇予想。

同じPGMであるパラジウムも同様に、下落余地を探り、年後半以降に回復する展開が予想される。パラジウム価格とその他経済統計の連動性は高くないが、長期の時系列的には、S&P500自動車関連株の前年比上昇率との相関性が高かった。排ガス触媒としての自動車向け需要動向の影響が大きかったためだ。

しかし、米中対立激化とコロナショックの影響で自動車生産が減少すると、その後は半導体株そのものとの連動性が高まった。ロシアからの供給減少によって半導体価格が上昇したためと考えられる。

しかし足下、半導体出荷は巣ごもり需要の一巡でパソコンやスマホの販売減少で減速しており、半導体向けの需要も減速が見込まれる。

2023年の景気は循環的に減速、自動車販売の回復は「ペントアップ需要」の顕在化で底堅いと予想されるものの、ハイテク製品向けの需要が低迷すること、ベンチマークである金価格が金融引締め継続の影響で調整圧力が強まることから、パラジウム価格も低迷が予想される。

2023年のパラジウム平均価格は1,970ドル(10月見通し比▲3ドル)、2024年は景気の回復に伴う需要増加で2,053ドル(▲1ドル)と2023年から水準を切り上げると予想。


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