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根強い米金融引締め観測とドル高で景気循環系商品売られる
  • MRA商品市場レポート

2022年8月15日 第2260号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「根強い米金融引締め観測とドル高で景気循環系商品売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は景気循環系商品が売られ、その他農産品などが物色された。米金融引締めは今後も継続すると見られ、短期金利が上昇したことでドル高が進行したことが材料となった。

また最近ではこのパターンが多いが、金融引締め加速が長期的な景気の減速を促すとして長期金利が低下、実質金利が低下する中で貴金属などのインフレ資産が買われる、というややいびつな値動きとなっている。

ただ、昨日発表された米国の輸出入物価は前月から減速が確認されており、価格高騰が1年経ったからということもあるが、一応前年比上昇率は鈍化を始めている状況。価格の絶対水準は高いため、まだ消費者にとっては厳しい状況が続くことになろう。

なお、足下懸念し始めているのが、中国政府による不動産セクターの調整が上手くいっていないこと。恐らく金融不安にはならないと見るが、不動産セクターの減速が広く信用市場を収縮させるため、2023年の中国景気の減速リスクは小さくないと考えられる(詳しくは昨日のトピックをご参照ください)。

【本日の見通し】

週明け月曜日は米金融引締め継続観測を受けたドル高が景気循環系商品価格を下押しすると考える。

注目材料は中国の重要統計と米ニューヨーク連銀製造業指数。中国の統計は景気刺激策の影響で工業生産と固定資産投資が回復の見込みだが、加熱沈静化が継続している不動産投資は減速ペースが加速することが予想されている。

また、この状況において中国の中期貸出制度(MLF)で若干の資金吸収が見込まれている。想定通りであれば工業金属価格の下押し要因となろう。

7月中国工業生産 市場予想 前年比+4.3%(前月+3.9%) 年初来 +3.5%(+3.4%)

7月中国固定資産投資 年初来 +6.2%(+6.1%)

7月中国小売売上高 前年比+4.9%(+3.1%) 年初来 +0.1%(▲0.7%)

7月中国不動産投資 年初来 ▲5.7%(▲5.4%)

8月ニューヨーク連銀製造業指数 5.0(11.1)

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国のファイナンス関連統計は、中国の不動産市況の低迷や、消費者や企業の活動鈍化が需要を低迷させ、経済活動が回復していないことを示唆する内容だった。

7月の中国の総ファイナンス規模は7,561億元(前月5兆2,700億元)と前月の7分の1程度に減少している。マネーサプライM2も前年比ベースでは+12.0%と増加しているが、前月からは減速しておりやはり経済活動は回復していないとみられる。

中国政府は景気刺激のために金融緩和を行っているが、恐らく個人や企業ではなく国債や高格付債などの運用に回されており、実体経済に回っていない可能性が高い。

この中で、人民銀行は15日、中期貸出制度(MLF)の期限を迎えるが、今月満期を迎える6,000億元に対して4,000億元程度のロールオーバーに止まり、▲2,000億元の資金吸収を行うと多くのアナリストは予想している。

緩和資金がレバレッジの効いた債券などの運用に回り、そのポジションが積み上がることを回避するためだ。ただ、今回の資金吸収が「流動性供給の終了」と見做されると債券市場の暴落を招くため、大半をロールオーバーするとみられる。

中国政府は不動産市況の低迷を受けた資金供給を継続する必要がある一方、緩和マネーが中国政府が企図するところに行き渡っていない。

先々の金融バブル崩壊を回避するために資金吸収を大規模に行うと、中央銀行が流動性吸収を始めたと捉えられ、リスク資産市場価格が急落して市場が混乱するため非常に難しい舵取りを迫られている。

今年は習近平が3期目を目指すため遮二無二景気を作りに行くと予想されるが、来年の中国経済はかなり厳しい状況に陥るのではないだろうか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。米金融引締めは継続すると見られる中でドル高が進行したことが、週末を控えた利益確定の売りを加速させたため。

今回の下落で再びBrent原油は200日移動平均線のサポートラインを割り込んだため、当面90ドル~99ドルがレンジとして意識される。

Uralなどのロシア産原油からBrentなどのその他の原油へのシフトは続いており、現在の「原油価格の実力値」の指標である「BrentとUralの平均値」は84.72ドル(前日比+0.39ドル)。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は3.の状態にある。

今後の需給緩和には、米国の増産が需給緩和には必要になってくるが、ヒト・モノの確保が困難なこと、クラックスプレッドが空前の水準に達しており、増産せずとも利益が確保出来ること、脱炭素派の強い牽制の動きを受けて製油所のキャパシティの拡大にも慎重になっていることから、なかなか増産が始まらない。

米DOEの見通しではたまたまかもしれないが、中間選挙が終る11月以降の増産が見込まれている。奇しくもDOEの予想でも、環境面に厳しくオイル・メジャーを目の敵にしてきたバイデン大統領率いる民主党が「中間選挙で敗北した後に」増産に転じる予想となっている。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 95-120ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 85-115ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 80-110ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-100ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め加速(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      グローバル・リセッションの場合 (↓↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (→)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日もテクニカルな売買に終始し、レンジワークを継続すると考える。

ただし、ニューヨーク連銀製造業指数が減速の見込みであり、利上げペースの鈍化が意識されドル安が進行する可能性があり、ファイナンシャルな面で価格は下支えされるのではないか。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小幅に下落。特段新規の材料に乏しい中、方向感に欠ける展開。

欧州は猛暑、渇水、風力低下などのエネルギー不足に喘いでおり、ロシアのガス供給停止は欧州域内に、「我々の生活を犠牲にしてまでロシアを制裁する必要はないのではないか」という世論を形成しやすい。

ウクライナのザポロジエ原発の攻撃も「原発を稼働指せるとこうなるぞ」という脅しとも取れる。

EUの一部では、原油に対する保険禁止の規制を緩和する動きがみられており、ロシアの「嫌がらせ策」は奏功している。

そのため、少なくともウクライナでの戦闘が続き、それに対する制裁が続く以上、ガスを「武器」として使い続けることは確実といっても言い過ぎではない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州全体のガス在庫は8月11日時点で73.6%(前日73.2%)と増加した。

LNGの輸入は高水準だが、輸入キャパシティ一杯まで輸入が行われている国も多く、仮に本当にロシアがパイプライン供給を▲80%減らし続けた場合、単純計算で、来年2月初には欧州の天然ガス在庫は枯渇することになる。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。2.で石炭火力の使用を許可する方向に舵を切っているが、冬場に向けて決断が遅かったといわざるを得ないだろう。

また、域内の電力供給が一番に取り上げられて報じられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。

BASFは緊急時には原料用のガスを一般消費用に開放する方針も表明している。

こうなると恐らく原発を早期に稼働させる必要が出てくる。原発の稼働が仮に過去5年平均程度まで回復すれば、同国のガス発電のシェアを、机上の計算では半分に減らせることになる。

最早、この選択を排除して脱ロシアを考えることは相当厳しい状況にいるといえる。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化しているが、10月で解消の見込み。

3.は欧州・日本で顕在化している状況で、4.のリスクも高まっている。

5.に関して欧州で記録的な熱波となっており、さらに厳しい状況に陥っている。さらに、渇水の影響で燃料が種別を問わず運べない、という事態も発生している。

現在、欧州は冷房設備を持たない地域も多く、これによって電力消費量が大幅に増加するということにはならない(逆に言えば、猛暑で亡くなる方も出てくる可能性がある、ということ)。やはり本番は冬である。

LNGのタンカーレートはスエズ以東が低下したが、以西が急騰している。

このことは欧州は、ロシアの供給が回復しない中、LNGでの調達を急いでいることを示唆している。実際、欧州のLNGネット輸入量は季節性を無視して増加している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は下落。週末を控えた利益確定のヘッジ売りが入ったと見られる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は下落。特段新規の材料がない中で、恐らく生産者側(売り手側)のヘッジ売りが入ったためと考えられる。

JKM先物はほぼ全てのゾーンが50ドルを超えており、市場が恒常的な需給タイト化を「受入れ」始めたと考えられる。過去、このような価格上昇があった場合は構造的な変化となり、期先水準上昇が定常化することが多い。

ただ、現在の価格水準では電力会社も上限価格に達するところが多く、持続可能な価格ではない。とはいえ、構造的なガス不足は景気の急減速や冷夏・暖冬がない限り簡単に解消するものではないため、結局、夏場~冬場にかけての価格リスクは上向きとなる。

先日発表された中国の7月の天然ガス輸入は前年比▲6.9%の870万トン(前月▲14.6%の872万トン)と前年比での減少幅は縮小したが、過去5年平均を上回る水準を維持した。

中国の天然ガス生産は6月時点で+0.5%の173億立方メートル(前月+4.9%の177億立方メートル)と、伸びが鈍化している。今後、中国経済が経済対策の効果で回復する中では、JKM価格の上昇要因となり得る。

サハリン2は日本政府としては権益維持方針を強調しているが、今後どうなるかは分からない。ロシア側もLNGプラントのメンテナンスの観点から、欧米(+日本)の技術は不可欠であり、本音はそのまま契約を継続したいのではないか。

懸念としては、1.契約が不可能になった場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は1兆円/年を超えることになること、2.仮に契約が継続したとしても欧米からの部品がなければLNGプラントのメンテナンスが困難であり、生産量が自然に減少してしまうこと、だろう。

8月7日時点の日本の発電用LNG在庫は230万トン(前年同月末243万トン、2017~2021年平均185万トン)と昨年の水準を上回った。

弊社の集計では過去5年平均に漸く到達しつつある状況で、在庫状況はやや緩和している。

今年の夏は猛暑で電力供給不足のリスクは高いが、ロシア政府によるサハリン2の扱いがよく分からないことから、冬場のリスクは高い状況が続く。

7月25-31日のLNGトレードは、674万トンと先週の737万トンから減少。主にスポット調達の減少が影響した。

スポット調達は20%と先週の26%から低下。日中台韓向けのスポットカーゴが▲40万トン減少したことが影響した。主に日本と韓国のスポット調達減少に因るもの。

ターム契約は先週とほぼ変わらない水準だった。

週明け月曜日も、状況に大きな変化がない中で高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップは上昇した。特段目立った手がかり材料はないが、欧州が石炭火力発電に舵を切っていること、その中でドイツは自国の石炭を増産する意思は今のところないこと、それにより代替となる高カロリー炭の需要が高まること、豪州炭の輸出が減少していることなどが材料となっている。

7月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲22.1%の2,352万3,000トン(前月▲33.1%の1,898万2,000トン)と急回復した。

6月の中国の石炭生産は、前年比+17.4%の3億7,931万トン・1,264万トン/日(前月+12.7%の3億6,783万トン、1,187万トン/日)と、生産は急増し、政府目標を上回っている。

中国政府は2022年の石炭生産目標は1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

中国の国内生産増加で輸入需要が減少していたが、ロックダウン解除や夏の気温上昇を受けて発電向けの需要が増加したためと考えられる。まだ中国の主力熱源は石炭である。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼす可能性は高い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことはできないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況。

期先の価格をみるに、年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、これが250ドル程度まで上昇してしまった。これが解消するには需要の減少か、鉱山生産の増加が必要条件となる。

恐らく景気が減速するなかで石炭需要も減少が見込まれるものの、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。

需給ファンダメンタルズの前提条件が変わってしまった、ということだ。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は250ドルではなく、125ドル程度になるが、現状それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

週明け月曜日も特段新規の材料(特に供給面の需給緩和材料)に乏しい中、高値維持の公算。

なお、景気の先行きへの懸念は強まっており恐らく2022年後半以降、いずれかのタイミングでリセッション入りすると予想されるため、先行きの見通しはその他のエネルギーと同様、弱気。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。米国の金融引締めは今後も継続すると見られ、実質金利の上昇とドル高進行を受けて、インフレ・トレードの巻き戻しと週末を控えた利益確定の売りに押された。

ここまでの価格上昇は、米国の過剰な金融引締め懸念の後退と、中国政府の経済対策の効果が一部顕在化し始めたことを材料とする、ファンドの買い戻しの影響が大きいが、その状況ではドル高が急速に進行する中では利益確定の売りに押されやすい。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的には、米金融引締め加速観測は根強いこと、中国政府の経済対策期待の綱引きで、現状水準でもみ合うと考えられる。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.2.が満たされているが、3.はQT継続で基本的には下向きである。結果、高値は維持しようが、上昇余地も限定されると考える。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323(当初見通しよりもやや後ろ倒しした)あたりが景況感の底になると考えられ、当面調整圧力が掛かることになる。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなる。

この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される(欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているところが多い)。

2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、といった材料を考えるとやはり鉱物資源需要は増加し、価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

恐らく来年後半から再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。ただしその価格上昇の発射台となる価格が、例えば銅で6,000ドル台になるのか、7,000ドル台になるのかは、今年から来年に掛けての中国の景気減速度合いに依拠するため、まだなんともいえない。

週明け月曜日も、中国の経済対策期待による買い戻しから底堅い推移になると考える。工業生産(3.9%→4.3%)、固定資産投資(6.1%→6.2%)とフロー、ストック両指標とも改善が見込まれることも価格を押し上げよう。

ただし、中国の中期貸出制度で若干の資金吸収が見込まれることが上昇余地を限定すると考える。

また、ニューヨーク連銀製造業指数が減速する見込みであり、金融引締めペース鈍化期待による短期金利低下、長期の景気減速不安の後退による長期金利上昇で逆にインフレ・トレードの巻き戻しが入る可能性があり、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は小幅上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

中国政府の経済対策の効果で自動車販売が前年比で大幅に増加するなど、経済活動の再開観測が強まる中、鉄鋼製品在庫水準が低下して鉄鋼製品価格が上昇したことが、鉄鋼原料価格を押し上げた。

週次の鉄鋼製品在庫は、前週比▲33万1,000トンの1,367万3,000トンと、過去5年平均(1,266万6,000トン)を上回っているが、過去5年レンジに突入しており、過剰感は解消しつつある。

鉄鉱石在庫は+200万トンの1億3,860万トンと、過去5年平均の1億3,104万トンを上回っており、在庫は潤沢。ただ、在庫日数は28.2日(前週比+0.4日、過去5年平均 28.9日)とまだ過去5年平均を下回っており、実質的にはタイトな状態。

原料炭の京唐港在庫は前週比▲14万トンの175万トンと、過去5年平均(169万8,000トン)を上回っているが、鉄鉱石同様、日数ベースでは6.6日(前週比▲0.5日)と過去5年平均(6.8日)を下回っており、需給はタイト。

現状、鉄鋼製品価格を元にした回帰分析では、鉄鉱石は112.6ドル、原料炭は183.5ドル程度が適正価格。原料炭価格はこの水準から50ドル程度高いが、流動性プレミアムと考えられる。

今後、10月の党大会に向けて政治のシーズンとなり、中国政府による景気刺激策が鉄鋼需要を押し上げ、鉄鉱石価格も押し上げると考えられるが、中国中央政府・地方政府とも、不動産市場の減速によって土地使用権の売却による財源が大幅胃減少していることから、対策を打ったとしても余地は限られる。

恐らく、政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられることから、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは大きくない(ゼロではない)。

ただし、不動産市況が急速に悪化した場合、鉄鋼製品需要が減少して鉄鉱石価格も下落が想定される。

この場合、期先の価格が参考になるが、鉄鉱石では100ドル、原料炭は230ドル程度となる。しかし、既に両者とも限界生産コスト近辺まで価格修正が終っていることから、コスト面から価格は下支えされると見る。

週明け月曜日も、現状は中国政府の経済対策効果の顕在化から上昇余地を試す展開を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。米国の金融引締めは継続するとの見方は変わらず、9月75bp利上げの可能性が38.5%から45.0%に上昇、短期金利の上昇を受けた景気の減速観測から長期金利が低下、結果、実質金利が低下したことが材料となった。

金の基準価格は前日比+16ドルの1,213ドル、リスク・プレミアムは▲3ドルの589ドル。

金価格は過去の例を見ると相場上昇局面の最終局面でリスク・プレミアムが大きく上昇するが、その後沈静化する局面ではリスク・プレミアムが縮小する傾向が強い。

仮に過去5年平均程度への回帰があるとすれば230ドル程度が現在の平均であるため、あと▲360ドル程度の下落余地があることになり、金価格は1,430ドル程度までの下落が有り得ることになる。

銀価格はバイデン大統領が太陽光パネル計画を発表する前の水準まで低下しており、今後、コロナ前の15~20ドルのレンジに戻る可能性があったが、

1.太陽光パネルの設置は恐らくまだ増えること2.IOTの進捗によって銀の需要は構造的な増加が続くと考えられること

からレンジは18~23ドル程度まで切り上がったと見られる。

とはいえ、金のリスク・プレミアムが剥落し、過去5年平均程度まで収れんすると今から▲360ドル程度の下げ余地があるため、銀価格を▲4.0ドル程度押し下げると考えられる。

逆に言えば、現状、銀の下値は最も下がったとしても16.3ドル程度まで、ということだろう。この下値の目処は切り上がっている。

PGMは金銀価格に連れる動きとなり、プラチナは前日比プラス、パラジウムは株価の上昇もあったが、この1週間の上昇が大きかったため、週末を控えた利益確定の売りに押された。

週明け月曜日は、価格に影響を与えやすい米国の経済統計の発表がニューヨーク連銀指数程度であり、減速が見込まれており、恐らく短期金利低下・長期金利上昇の組み合わせになるため、軟調推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。米需給報告でトウモロコシは在庫見通しが下方修正されたことが買い材料となったが、大豆、小麦は在庫見通しが上方修正され、需給緩和期待が高まったことが売り材料となった。

ただし、秋~冬にかけてのラニーニャ現象の発生もあり、中期的なリスクは引き続き上向きである。

昨日発表のCONAB需給見通しは以下の通り。

・8月米単収見通し実績(市場予想、前月)トウモロコシ 175.4Bu/エーカー(175.982、177.0)大豆 51.9Bu/エーカー(51.04、51.5)小麦 47.5Bu/エーカー(NA、47.3)

・8月米生産見通しトウモロコシ 143億5,900万Bu(143億9,734万Bu、145億500万Bu)大豆 45億3,100万Bu(44億7,300万Bu、45億500万Bu)小麦 17億8,300万Bu(17億9,618万Bu、17億8,100万Bu)

・8月米輸出見通しトウモロコシ 23億7,500万Bu(NA、24億Bu)大豆 21億5,500万Bu(NA、21億3,500万Bu)小麦 82億5,000万Bu(NA、8億万Bu)

・8月米在庫見通し(市場予想/前月)トウモロコシ 13億8,000万Bu(14億6591万Bu、14億5,050万Bu)大豆 2億4,500万Bu(2億2,452万Bu、2億3,000万Bu)小麦 6億4,972万Bu(6億1,000万Bu、6億3,900万Bu)

週明け月曜日は、需給報告の内容はまちまちだったものの、やはり中期的な供給リスクを背景に買い戻されて引けているため、月曜日も買い戻しが入って上昇すると考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

それに伴う各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「銅価格は上昇も年後半から調整へ」

LME銅価格は一時6,000ドル台まで水準を切下げていたが、ここに来て買い戻しが入り、再び8,000ドルを上回るに至った。

これまでLME指定倉庫在庫と銅価格の間には高い相関性が見られていたが、今回の下落でこの関係性は完全に崩壊し、指定倉庫在庫の水準にかかわらず水準が大きく低下することとなった。

このことだけでも、今回の下落が需給ファンダメンタルズを背景とするものではなく、投機などの実需ではない取引に主導されたものであることを示唆している。

LME銅価格の急落は特に7月以降のファンド筋の下期にかけての投資戦略変更の影響が大きかったと考えられる。忘れられがちだが欧米では7月は下期の開始月であり、投資戦略を変更してくるタイミングともいえる。

過去3年データを元にすると銅価格に対する説明力が高いのがS&P500であり、次いでフィラデルフィア半導体株指数、欧米の製造業PMIとなり、足下の価格行動は需給ファンダメンタルズというよりは株価動向が左右している可能性が高い。

投機筋は下期の戦略を、これまでの「インフレ・トレード」からFRBの利上げやQT加速による「ディスインフレ・トレード」に変更したと考えられる。

実際、LMEのCOTレポートでも6月のQT開始から「新規の売りポジション」の増加が始まり、7月の下期入り以降、新規のファンド筋の売りポジションの積み上がりが加速している。

その中で金融引締めが市場の懸念していたほどのペースではないのでは、との期待から株価が上昇を始めたため、今度は新規の「買いポジション」が積み上がり、さらに価格を押し上げたとみられる。

景気減速に喘ぐ中国政府は、今後、10月の党大会までにメンツを保つための経済対策の実施・執行を急ぐと考えられるため、今後、公的需要に牽引される形で銅価格が上昇、その中で投機のショートの巻き戻し(損出しを含む)が予想されることから、やはり年末にかけて価格が上昇する可能性は高い。

実際、足下の現物プレミアムは各地で上昇しており、中国政府の経済対策の効果が顕在化し始めていることを示唆している。

しかし、米国の金融引締め加速観測が後退したと言っても、米国の利上げとQTは今後も継続する可能性が高い。

さらに、2023年に掛けては世界的に循環的な景気減速が見込まれることから、精錬銅需給も供給過剰が見込まれる。

また、中国も2022年の景気の体裁作りのための2023年度予算前倒し執行(あるいはそれを余儀なくされるほど、中国の足下の景況感は悪化している、ともいえる)による、「財政の崖」に苦慮すると見られることからやはり2023年には再び銅価格は下落余地を探る可能性が高い。

ただしその後は、脱炭素や脱ロシアによる構造的な需要増加と、構造的な需要増加を背景とする資源国の資源ナショナリズムの高まりから供給面の制約も顕在化するため、長期的に価格が上昇するとの見通しを現時点で変更する必要はないと考える。


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