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中国統計改善と米引締め継続観測でまちまち
  • MRA商品市場レポート

2022年9月19日 第2285号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国統計改善と米引締め継続観測でまちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はまちまち。想定外の中国経済統計の改善を受けて総じて工業金属セクターが堅調に推移する中、これまで異常な高値で取引されてきた発電燃料価格が下落した。

全体として、世界景気の循環的な減速、それが充分でないとして行われている欧米の金融引締めの継続が景気循環系商品の価格を押し下げているものの、供給面で問題がある商品の価格は総じて堅調な推移となっている。

供給面に障害が生じている商品は主に発電燃料(ガス、LNG、石炭)であり、こちらは景気というよりは冬場の需要期の「季節性・気温」による供給不足のリスクが強く意識されてきた。

しかし、ガス・電力に関しては欧州当局が価格高騰に関する規制・監督を強化する方針であり(それが長期的にプラスとは思えない。過去、取引所に政府が介入した場合、市場の機能が失われてさらなる混乱をもたらしたケースが特に商品市場では多いのだが)、市場介入への意思を示していることから価格は下落している。

特に、市場介入して価格を下げようとしているのなら、価格上昇リスクヘッジを行っている消費者の「マージンコールが増加」するため、下げを助長することになる。ただしここでヘッジを外す、ということは冬場が本当に寒くなった時に高い価格でガスを購入せざるを得なくなるため、別のリスクを取らざるを得なくなっている、ともいえる。

ただ、現時点ではガスタンクの容量が冬場の遙か前にして一杯になりつつあり、在庫を詰めなくなっている国が出始めていることもあって、短期的な需要の減速が見られていることも価格を下押ししていると考えられる。

結局、11月以降のロシアの供給、気温、ロシアとウクライナの交戦状況に価格は左右されるため、価格のリスクは上向きである。

また、ガス供給・電力供給に障害が発生する可能性が高い以上、工業金属生産や工業活動に支障が出る可能性は高く、欧州景気の減速感はさらに強まるのではないか。

春にラニーニャ現象が終了する見通しであることを考えると、発電燃料価格の高騰はこの冬が正念場であり、景気の減速と相まってここを過ぎれば一息付けると予想される。

【本日の見通し】

週明け月曜日は目立った材料がないことから、週末の下落を受けた買い戻しが優勢になるのではないか。

なお、エリザベス女王の国葬が執り行われるため英国市場は休場だが、市場への影響は大きくないと考える。ただし、各国要人が英国に集まる中でテロの発生、というリスクは考えたくないが、全くない話ではない。

【昨日のトピックス】

昨日中国の重要統計が発表された。予想外の回復が目立つ内容だったが、依然として国内の回復は緩慢であることを示唆する内容。

工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、単月ベースで+4.2%(前月+3.8%)と伸びが加速、1-8月累計でも前年比+3.6%(1-7月期+3.5%)と小幅ながら伸びが加速した。ロックダウンは続くものの景気刺激のための金融緩和策の実施や、公共投資などのテコ入れ柵が奏功したとみられる。

ストック需要の指標である固定資産投資はで、1-8月期が前年比+5.8%(1-7月期+5.7%)と加速した。しかし公的セクターが+10.1%(+9.6%)と加速する一方でシェアの大きい民間セクターは+2.3%(+2.7%)と減速傾向が続いており、工業活動が回復した、といっても公的需要に牽引されるものである可能性が高い。

住宅販売は1-8月期で前年比▲30.3%の6兆6,329億元(1-7月期▲31.4%の5兆7,683億元)とやや回復したものの回復にはほど遠い。不動産開発投資も前年比前年比▲7.4%の9兆809億元(1-7月期▲6.4%の7兆9,462億元)と減速している。

しかし、中国のGDPに占める個人消費の比率も高まっているが、個人消費の指標である小売売上高は年初来累計で前年比+0.5%の28兆2,560億元(1-7月期▲0.2%の24兆6,302億元)と漸くプラス圏に回復、単月では前年比+5.4%の3兆6,258億元(+2.7%の3兆5,870億元)と伸びが加速しており、遅ればせながら個人消費にも明るさが見えてきた。

とは言っても、習近平政権はゼロコロナ政策を堅持しており、今後も急に経済活動が鈍化する可能性はある。強めの指標であったが依然として景気の先行きは下向きのリスクが小さく無い。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。特段目立った材料に乏しい中、ドルが小幅安となる中でポジション調整と思しき買いが入ったため。しかし、チャートのローソク足の上ひげは長く、徐々に上値が重くなってきている、という印象である。

米国国内の石油製品出荷は鈍化しており、金融引締めや循環的な景気減速の影響が顕在化しつつある状況で、このままであればやはり原油価格は下落する可能性が高い。

前回コロナ・ショック時以降の価格上昇は、

1.大規模経済対策で景気が回復基調にあったこと2.想定よりもかなり早くワクチン開発に成功し、経済活動が早期に回復したこと2.減産を渋っていたロシアをサウジアラビアが押さえ込み、OPECプラスが大幅減産を成功させたこと

が価格上昇に寄与した。

しかし今回は景気が減速する局面であり、3.が達成できたとしても効果が減じられ、最終的にはOPEC諸国が外貨獲得競争に陥り、OPECプラスが増産に踏み切るという展開はありえる。この場合価格は大きく下落することが予想される。

価格は供給よりも需要の動向、景気動向が左右するため、最大消費国である米国が強い意志を持って金融引締めを継続している以上、基本的に価格は中期的に下落すると予想される。

現在の「原油価格の実力値」の指標である「BrentとUralの平均値」は79.86ドル(前日比▲3.52ドル)と下落、Brentの実力ベースとの価格乖離は10.88ドルと10ドル台で安定してきた。

なお、引き続き脱ロシアの動向が価格に影響を与えることも間違いがない。G7はロシア産原油に上限価格を設定し、上限を超える石油の海上輸送に保険会社が保険を提供することを禁止する方針を決定した。

これによってロシア産原油は回避されることになるが、そうなるとその他の原油価格が代替品需要で上昇することが予想される。

具体的にはマーカー原油で言えば、BrentやWTI、ドバイの価格に上昇圧力が掛ることになるだろう。しかし、エネルギーの安定供給に指標がでる場合は例外としている。

しかし、こうした良いとこ取りをロシア側が認めるかどうかは不透明であり、ロシアとの取引を断絶していない中立国(中国やインド、OPECプラスメンバーである中東諸国など)経由で西側諸国が原油を購入するルートはまだ残ると考えられる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は3.の状態にある。しかし、エネルギー不足に喘ぐ欧州がロシア産原油を容認する動きがみられ始めており(ギリシャ沖での「瀬取り」も然り)、4.に移行する可能性が出てきた。

この場合、BrentとUralのスプレッドが縮小することになり、Brent価格の下げ要因となる(逆にUralは上昇)。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこず、非OPECプラスも増産しない Brent 110-140ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行される(ないしはOPECプラスの減産)Brent 85-110ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 80-110ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 75-105ドル

5.4.の状態で産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 75-100ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 85-100ドル

7.6.に加えて産油国(非OPECプラス)が増産するBrent 65-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び減速・供給制限継続・金融引締め継続(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      グローバル・リセッションの場合 (↓↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (→)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しく、現状水準でのもみ合いを予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。総括のところでも比較的詳細にコメントしているが、ガスタンクのキャパシティが一杯になりつつある中、不需要期の現時点でさらなる在庫積増しの需要が抑制されていること、VWがガス備蓄を放出したこと、冬場に向けた需要の削減(▲15%など)見通し、欧州金融引締め加速に伴う景気の悪化見通しによる需要見通し下方修正が価格を下押ししている。

しかし、実際に需要の削減が成功し、価格上昇を抑制できるかどうかは、結局の所冬場の気温とロシアのガス供給の意思に依拠するため、ガス供給フローの減少リスクがある以上、価格のリスクは上向きである。

なお、欧州全体の在庫水準が95%まで積み上がった場合、仮にロシアのガスが現状の▲80%でLNGの輸入が現状程度であれば、100日程度で在庫が払底、▲100%であれば90日であり、まだガス供給への不安は拭い切れていない。

欧州の先物市場で取引をしている市場参加者は、価格高騰と高変動性に伴うマージンコール(証拠金)の引き上げを受けて市場参加者の資金繰りが極端に悪化しており、クレジット・クランチに繋がるのではないか、との懸念が広がっている。

ただし、取引所に当局が介入して価格をゆがめた場合、その市場で取引する参加者が減少して、市場が機能不全に陥るリスクがある。

また、実勢と乖離して電気やガスの市場価格を変更した場合、価格上昇による需要減少が起きず、却ってエネルギー不足が発生するリスクも高まることになる。

フォンデアライエン委員長は、欧州が購入しているLNGの指標をTTFからJKM(など)に変更することを主張している。パイプライン経由ベースのTTFとLNGでは市場が異なる、という主張のようだ。

脱炭素も、脱ロシアも全て欧州の理屈で進められ、昨年からの大混乱を招いているが、ウクライナ情勢などと合わせて考えると、欧州の理屈としては極東も応分の協力は不可避、ということなのだろう。

これにより、TTFの価格は下落し、JKMが上昇する可能性が出てくる。しかし、指標を変更したとしても、この冬の供給リスクは変わらない。

ガス価格の下落があるとすれば冬場を乗り切り、かつ、景気の循環的な減速が見込まれる来年の春頃になるのではないか。

このときの状況によるが、ゴールドマンなどは、TTFは今年の春先に付けた100ユーロ程度まで、JKMは20ドル程度までの下落を想定している。

しかし恐らく来年の冬も程度の差こそあれ同様の供給懸念は継続するため、この価格に下落するのはロシアの代替調達とLNG受入インフラの整備が必要条件であり、材料不足と考える。

なお、ロシア安全保障理事会でメドベージェフ副議長(議長はプーチン大統領)が欧州のガス価格が年末までにスポットで5,000ユーロ/1,000立方メートルに達する可能性がある、と発言している。

TTFベースに換算すると474ユーロ/Mwh、JKMに換算すると137ドル/MMBtu。これはロシアが今後もガスを供給するつもりがないことを示唆している。

欧州は猛暑、渇水、渇水に伴うエネルギー輸送能力の低下、水力不足による冷却水の不足で原発の稼働が低下していること、風力低下などのエネルギー不足に喘いでおり、ロシアのガス供給停止は欧州域内に、「我々の生活を犠牲にしてまでロシアを制裁する必要はないのではないか」という世論を形成しやすい。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

LNGの輸入は高水準だが、輸入キャパシティ一杯まで輸入が行われている国も多く、仮に本当にロシアのガス供給が停止した場合、ドイツはLNGでの輸入手段を持たないため2ヵ月半で在庫が尽きると予想されている。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

また、ドイツ政府はガス国内大手の国有化を検討、企業破綻を回避して夏冬のシーズンに供給懸念が顕在化しないよう手を打ち始めた。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は以下の対応が必要になる。

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

また、ガス供給の不足が原料としてのガス供給不足につながり、化学製品の供給途絶を通じて世界のサプライチェーンに影響を及ぼすリスクは小さくない。

化学世界最大手のBASFは緊急時には原料用のガスを一般消費用に開放する方針も表明している。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、脱ロシア完了後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化している。再開予定は11月上旬から中旬。

3.は欧州・日本で顕在化している状況で、4.のリスクも高まっている。

5.に関しては、今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであり(米NOAAは9-11月が91%、2023年1-3月に54%を予想)しばらく気象状況はガス価格にプラスに作用することが予想される。

LNGのタンカーレートはスエズ以東・以西とも急上昇しており、冬場に向けた調達が本格化していることを示唆している。なお、タンカーレートの上昇タイミングは例年よりも早い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は続落。鉄道ストライキの回避で石炭供給の回復観測が強まったことが、ガス需要の増加見通しを後退させたため。

しかし、米ガス在庫の水準は過去5年の最低水準であり、ある意味欧州よりも需給はタイトであり、冬場のリスクはやり上向き。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は欧州ガス価格の下落を受けて下落した。しかし期先の価格は40ドルを超える水準を維持しており、下がったとはいえ高い水準。市場参加者は構造的な需給タイト化の状況がまだ数年続くとみているようだ。

世界的な構造的ガス不足は景気の急減速や冷夏・暖冬がない限り簡単に解消するものではないため、結局、夏場~冬場にかけての価格リスクはこの状況においても上向きとなる。

中国の8月の天然ガス輸入は前年比▲15.2%の885万トン(前月▲6.9%の870万トン)と前年比での減少幅が拡大はしたが、過去5年平均を上回る水準を維持した。

中国の国としてのガスへの転換は進んでいるが、ロックダウン後の経済活動の回復が遅れていることを示唆している。また、中国国内の天然ガス生産が増加していることも輸入の伸びが鈍化している背景にある。

中国の天然ガス生産は7月時点で+8.2%の170億6,000万立方メートル(前月+0.5%の173億立方メートル)と、伸びが鈍化しているが過去5年の最高水準だった前年を上回っている。

※中国のガス統計は、データソースや単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

中国はサハリン2プロジェクトからLNGのスポットカーゴを、現在のスポット価格の半額で購入した、と報じられている。当面、「親ロシア国」は有利な水準でエネルギーをロシアから確保できることになる。

割安で輸入したLNGは「生産地ロンダリング後」欧州やその他の地域に転売される可能性もあろう。

なお、サハリン2中長期的な観点では以下の2点が強く意識すべきリスクとなる。

1.ロシアが契約を一方的に履行しない場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍に上昇し、コスト増加は1兆円/年を超える

2.仮に契約が継続したとしても欧米からのメンテナンスのための部品がなければ、LNGプラントの稼働が困難になり、生産量が自然に減少してしまう

9月11日時点の日本の発電用LNG在庫は240万トン(前年同月末246万トン、2017~2021年平均194万トン)と減少。まだ過去5年平均を上回っているため「足下の」在庫は充分。

しかし欧州と同様で、冬場のフローの確保が重要になる。日本の場合長期契約の比率が高いため問題ないと考えるが、欧州・ロシア情勢次第でロシアが嫌がらせをしてくる可能性は排除できない。

9月5日-11日のLNGトレードは714万トン(先週682万トン)と増加、スポット取引のシェアは22%(前週25%)と低下した。

スポット需要は日中台韓で増加(+20万トン)、主に日本の輸入増加によるもの。ただし欧州の輸入が合計▲40万トン減少したことがスポット調達の比率を低下させた。ターム契約は日中台韓の調達が増加している。

週明け月曜日は、現在は不需要期であり価格が下落するのは不自然なことではないが、週末の下落を受けた実需家の買いで上昇すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の数値を使用している。 1トン=1,360立方メートル 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは下落。競合燃料である欧州ガス価格が下落したことを受けて、調達意欲がやや後退したため。

この間、欧州の石炭輸入・石炭生産とも顕著に増加はしていない。一方で豪州炭の輸出は低迷しており、恐らく足下の価格上昇はガスとある意味同様だが、供給ソースの不足が影響しているとみられる。

この場合、景気が減速する、ないしは冬場が終了、ないしは暖冬の時に価格は下落することが予想されるが、需要のピークである冬はまだ始まってもいない。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+5.0%の2,945万6,000トン(前月▲22.1%の2,352万3,000トン)と急回復し、過去5年平均を上回った。

価格水準は高いが、国内の供給が低迷している、ないしはロシアを支援するために輸入を増加させていると考えられる。

7月の中国の石炭生産は、前年比+18.6%の3億7,266万トン、1,202万トン/日(前月+17.4%の3億7,931万トン・1,264万トン/日)と、生産は前年比では高い水準を維持したが、海外からの輸入がほぼ不用になる政府目標(1,260万トン/日)は下回った。

中国の国内生産増加で輸入需要が減少していたが、ロックダウン解除や夏の気温上昇を受けて発電向けの需要が増加したためと考えられる。まだ中国の主力熱源は石炭である。

現在は中国国内と海上輸送炭市場は分離しているが、中国が経済対策を実行し、冬場のリスク回避姿勢を強めた場合、海上輸送炭市場に影響を及ぼすリスクは無視できないだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

現在、ロシア炭を西側諸国が使うことは(建前上)できないため、いわゆるコストカーブの「低価格帯」がごっそり抜け落ちた形となっている。そのため、ロシアを抜いた需給バランスが豪州炭価格を押し上げている状況であり、ロシアの石炭輸出も週次ベースで減少を続けている。

期先の価格をみるに、2022年初の限界生産コストは125ドル程度だったが、これが300ドル程度まで上昇してしまった。これが解消するには需要の減少か、鉱山生産の増加が必要条件となる。

恐らく景気が減速するなかで石炭需要も減少が見込まれるものの、「脱ロシア」を進める中では高カロリー炭の需要は継続する見込みであり、かつ、欧州は石炭活用に舵を切っていること、欧州がこれまで行ってきた脱石炭への強制的な取組みにより、供給能力は制限されていることから、下がっても250ドル程度が基準となってしまう。

需給ファンダメンタルズの前提条件が変わってしまった、ということだ。

仮にロシアへの制裁が解除されれば、下落時の価格は300ドルではなく、125ドル程度になるが、当面それは見込み難い。

異常気象に伴う事故も多く、少なくとも今年の冬のピークシーズンの間は流動性リスクが高い状態が続きそうだ。

週明け月曜日は、ガス価格が割安感からの買いで上昇すると予想されることから、石炭価格も買い戻しで上昇すると予想。。

この冬が終了した場合、基本は景気減速とラニーニャ現象収束(期待)を受けた需要の減少で下落すると見ているが、ラニーニャ現象は54%の確率で、1-3月も継続の見込みであり、下落があるとすれば4月以降か。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格はアルミ、鉛、亜鉛が下落したが、その他の商品は上昇した。

この数週間、欧州燃料価格とアルミ・鉛・亜鉛の動きは連動している。欧州はアルミ・亜鉛の生産シェアが高いことからガス価格の下落が生産コストの低下に繋がるため価格が下落に繋がりやすく、鉛に関しては冬場のエネルギー供給懸念が後退すると、バッテリー向けの需要減少するとの連想から値動きが連動しやすくなっている。

その他の金属は中国の工業生産、固定資産投資などの予想外の改善を受けて堅調な推移となった。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

短期的には、米金融引締め長期化観測が強まっていること、中国の電力不足やロックダウン、洪水・地震、足下の欧州のガス価格の下落による生産回復期待の影響で軟調な推移になると考える。

ただし同時に、中国政府の経済対策と、電力不足による金属供給減少が価格を下支えすると予想する。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が必要となるが、現在、1.は中国の重要統計をみるに回復基調にあり、2.3.が満たされていない。

この状況を勘案すると、やはり上値は重く、公共投資の実施期待が価格をある程度下支えする程度に止まるのではないか。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ223~Q323あたりが景況感の底になると考えられ、当面調整圧力が掛かることになる。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わなかった場合(自然体の場合)、景気後退入りはQ323からとなるため、Q323~Q423が景気の底になる可能性も否定しない。

この場合はQ124~Q224に回復基調に戻る展開が想定される(欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているところが多い)。

2023年は最大消費国である中国で「財政の崖」が発生するリスクがあるため、いずれにしても2023年の価格のリスクは下向きである。

長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、といった材料を考えるとやはり鉱物資源需要は増加し、価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

来年後半から再び長期的な上昇トレンドに入ることになると予想している。

ただしその価格上昇の発射台となる価格が、例えば銅で6,000ドル台になるのか、7,000ドル台になるのかは、今年から来年に掛けての中国の景気減速度合いに依拠するため、まだなんともいえない。

週明け月曜日は、特段目立った材料に乏しい中、オープンしている市場は中国統計の改善を受けて堅調な推移になると予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は下落した。

中国東部を襲った台風の影響で経済活動が一時的に停滞したことが鉄鋼製品価格を押し下げ、鉄鋼原料価格を押し下げた。

週次の在庫統計は鉄鉱石が前週比▲180万トンの1億4,030万トン(過去5年平均1億3,049万トン)、鉄鋼製品が▲2万3,000トンの1,203万3,000トン(1,253万5,000トン)、原料炭が▲9万トンの143万トン(139万トン)と比較的在庫は潤沢な状況。

中国の不動産セクターは低迷しており、恐らく人口動態的に中長期的に成長ペースが鈍化する可能性は高い。

直近発表された不動産販売・開発などの統計は同国の不動産市場が回復していないことを示唆している。不動産セクターが不調だと中国地方政府の重要な財源である不動産関連収入が減少するため、何らかの対策を行わなければ、中国経済がスパイラル的に悪化する可能性が出てくる。

この状況で不動産セクターのテコ入れをすることは非常に議論が割れるだろうが、現状は対策実施は不可避の状況と整理するのが適切だろう。

なお、中国政府は不動産業を救済するよりは信用不安の拡大にならないよう、金融機関の支援(資本注入)を優先すると考えられ、リーマン・ショックのような信用不安の連鎖的な拡大リスクは「今のところ」回避できると見ている。

基本は鉄鋼製品価格で説明可能なブレーク・イーブン価格程度までの下落はあろうが、相場がオーバーシュートすることも多いため、その場合、期先の価格が参考になる。足下、鉄鉱石では80ドル程度、原料炭は230ドル程度となる。

週明け月曜日も、経済対策実施期待と各地の天災の影響による経済活動の強制停止の綱引きとなり、現状水準を維持すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。実質金利が上昇したことが基準価格を大きく押し下げたが、リスク・プレミアムが上昇したことが価格を押し上げた。

銀は金価格の上昇を受けて大きく水準を切り上げ。プラチナも同様。パラジウムは株価の下落を受けて水準を切下げた。

金の基準価格は▲19ドルの978ドル、リスク・プレミアムは+29ドルの697ドル。

仮に過去5年平均程度にリスク・プレミアムが回帰するとすれば240ドル程度が現在の平均であるため、あと▲400~▲450ドル程度の下落余地があることになり、金価格は1,300ドルを割り込む可能性が出てくる。

ETFの管理残高と金価格の間には高い相関性が見られるが、過去10年のデータを元にするとここまでの下落の場合、現在のETFの管理残高の凡そ3分の1に当たる金が流出する必要が出てくる。

荒唐無稽なレベル、と思われるかもしれないが2016年のETFはこの水準であり、このときの金価格は1,100ドル台だったことを考えるとない話ではない。

大規模プレイヤーの金市場からの退場は、ETFの他、各国中央銀行の金準備売却のいずれかとなるが、後者が戦争や制裁による国の資金繰り悪化で金を売却せざるを得ないときに恐らく限定されることを考えると、引き続きETFの動向は重要。

なお、足下、金価格に対して説明力が高いのは期待インフレ率であり、金融政策動向、原油価格動向、QTの動向が影響していることが分かる。

Q422の弊社予想原油価格を元に期待インフレ率・金価格の推定を行うと1,640ドル程度が予想され、金融引締めがあっても下げ余地は比較的限定されることになる。

しかしこの水準は既に目前に迫っており、これまで説明力が高かった期待インフレ率単体での分析は、再び機能しなくなる可能性が出てきた。

銀価格はバイデン大統領が太陽光パネル計画を発表する前の水準まで低下していたが、コロナ前の15~20ドルのレンジに戻ったようだ。

1.太陽光パネルの設置は歳入歳出法(インフレ抑制法)成立で今後も増えること(2030年までに9億5,000万枚の太陽光パネル設置)

2.IOTの進捗によって銀の需要は構造的な増加が続くと考えられること

からレンジは切り上がっていると考えられる。上記の期待インフレ率を元にした分析の結果、金価格は2023年1,640ドル程度になると予想されることから、金銀レシオを仮に90倍とすれば、銀価格は18.2ドル程度となる。

仮に金のリスク・プレミアムが剥落して1,300ドルまで下落すれば、銀価格は14.50ドル程度までの下落余地があることになる。

週明け月曜日は目立った新規材料に乏しい中、金融引締め継続と期待インフレ率の低下見通しで軟調な推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。トウモロコシと大豆は鉄道ストライキの回避報道と原油価格の上昇が相殺しあい、小幅安。小麦は上昇したが、週末を控えて前日の下落の反動と考えられる。

トウモロコシは米国ではその需要の4割がエタノール向けであり、輸送燃料に用いられている。そのため、これまでは景気と価格が連動しない商品だったが、この10年で「準景気循環系商品」になっている。

そのため、米国が金融引締めを行い、世界的にも景気が循環的な減速をするなかではトウモロコシを初めとする穀物価格は下落しやすい。

しかし、秋~冬にかけてのラニーニャ現象の発生もあり、さらに、夏場~冬場のラニーニャ現象発生はアラビア半島周辺に降雨をもたらし、バッタの大量越冬を可能にするため、2023年にかけて穀物供給リスクが来年まで継続する可能性があること、ロシア・ウクライナの穀物輸出が継続する保証はないことから、中・長期的なリスクは引き続き上向きと考えている。

週明け月曜日も材料変わらず、現状水準でもみ合うと予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

それに伴う各地での暴動発生。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

台湾有事の発生(リスク資産価格の下落要因)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・日本政府の財政規律感の欠如による、実質的な日銀による財政ファイナンスにより海外からの信認が低下、円が暴落して先進国市場に混乱をもたらす場合(今のところ角度の低いリスク要因)。

◆本日のMRA's Eye


「アラビカ豆価格は年内は高値維持か」

コーヒー価格は高値圏で推移している。前回5月に高値での推移継続を予想していたが、その状態が続いている。やはり昨年から続くラニーニャ現象の影響で2021年6月・7月の霜害の影響を受けたブラジルの生産が回復していないことなどに伴う供給不足が影響している。

現在の価格水準は、ラニーニャ現象を背景に農産品の生産が世界的に影響を受けて価格が高騰した2011年、1972年から始まったラニーニャ現象、その後のエルニーニョ現象の影響で霜害の影響を受けた1977年、ICE認証在庫がやはり天候の影響で減少した1997年に次ぐ価格水準である。

なお現在のICE認証在庫の水準は、弊社がデータ取得可能な1995年以降で見た場合、価格が高騰した1997年の最低水準に迫る水準に低下している。

また、ロシアのウクライナ軍事侵攻により化学肥料の原料となるガスの供給減少や、肥料そのものの供給が制約を受けていることで肥料価格が高騰していることも、各地で生産性の低下をもたらし、供給制限に拍車を掛けている。

仮に肥料が使用可能だとしても、使えば生産コストの上昇を通じてコーヒー豆の価格押し上げに寄与していることは無視できない。また、肥料を使わなければ単収が減少し、単位あたりのコストが上昇してしまうため、コーヒー農家が置かれている状況は厳しい。

今後については、2021-2022年は最大生産国であるブラジルが生産の裏年に当たるため、自然体でも生産量は減少しやすい。

米農務省の試算ではブラジルの世界生産シェアは34.7%であるが、ブラジルの生産量は5,810万袋(前年比▲1,180万袋)と過去5年の最低水準となる見通しである。

2022-2023は表年に当たるため、生産量は前年比+620万袋の6,430万袋に増加が見込まれ、世界全体で見ても前年比+781万6,000袋の1億7,495万袋に増加すると予想されている。

しかし、表年としては2020-2021年の1億7,363万1,000袋、2018-2019年の1億7,595万6,000袋を下回るため、決して生産が劇的に回復して供給不安が解消するとは言い難い状況だ。

一方、需要は+336万8,000袋の増加の見通しだが、供給ほどは回復しないため需給バランスは前年から+601万6,000袋増加の+791万袋の供給過剰と需給緩和の見通しであり、価格に対する説明力が高い需給率は89.9%(前年比▲0.5%)に低下が見込まれていることから、来年はアラビカ豆の価格には下押し圧力が掛かると予想される。

多くの商品の「需給バランスのリアルタイム指標」の1つである期間構造は直近限月と第2限月を比較した場合、現在大幅なバックワーデーションとなっている。

2000年以降のデータを元にすると、期間構造がバックワーデーションになったのは、実は全体の3.7%に過ぎず、現在の需給の期間構造のタイトさはある意味異常値ともいえる。

そのため、生産の回復があれば上述の需給見通しも考慮すると期近の価格は下落する可能性が高いが、それは次作物年度(最大生産国であるブラジルは7月以降、ベトナムやコロンビアは10月以降)に持ち越されることになろう。

その際、どこまでの下落があるかを過去10年のデータを元にした簡単な回帰分析で推定すると、2023年のアラビカ豆価格は156.5セント程度までの下落の可能性がある。今年の冬一杯、ラニーニャ現象が継続する見通しであることを考えると、価格の下落は年明け以降になるのではないだろうか。


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