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ピークアウト感強まる円安
  • MRA外国為替レポート

2022年8月1日号

◆先週の市場総括


先週は週末にかけて米国景気後退懸念が一段と強まり、米長期金利が一段と低下するなかドルが軟調。円買い戻しも強まりドル円相場は大幅に下落した。

FOMCでは予想通り0.75%の利上げが実施された。声明文では景気減速を認め、パウエル議長は足元の景気にはポジティブな見方をしつつもソフトランディングは困難とし、いずれ引き締めペースを緩めることが適切となる可能性が高いとした。

米長期金利は逆イールドのまま10年債、2年債とも3%を割り込んだ。

ドル円相場は136円で始まりFOMC前に137円台半ばに上昇したが反落。さらに木曜日に発表された米4-6月期GDP速報が前期比年率▲0.9%と予想を大幅に下回るマイナスとなり、2四半期連続のマイナス成長となってテクニカルにリセッションを示した。

これを受けてドル売り円買いの流れがさらに加速。134円割れとなると、週末の東京市場では132円50銭近辺まで急速にドル安円高が進んだ。

その後134円台半ばまで反発したが、週末米国市場の引けは133円20銭。ユーロ円相場も週初139円から136円近辺に下落。全般的に円買い戻しが進んだ。

ドルインデックスは前週末107ポイントから105.8ポイントに下落。

米国株は決算を無難にこなし、金融引き締めが緩和するとの見方が支えとなって週末にかけて上昇。日経平均も一時28,000円台をつけたが上値重く、週末の引けは27,801円。

月曜日の東京市場は日経平均が8営業日ぶりに反落。欧米の景気悪化懸念が強まり前週末に米国株が下落。ドル円相場が136円台に下落したことで輸出関連株にも逆風。前週末までに7営業日で1,500円の上昇となったことから利益確定売りも強まった。

ただ内需関連株が底固く下げ幅は限定的。引けは前週末比▲215円安の27,699円。

ドル円相場は136円10銭で始まり早々に60銭に上昇したが135円90銭に反落。ただ夕刻にかけては堅調で136円40銭近辺、さらに欧州市場では70銭台まで上昇した。

ユーロ円相場は139円ちょうどで始まり、底固く上下動。欧州市場に入ると139円80銭に上昇。さらに米国市場に入ると一時140円をつけた。

ユーロドル相場は1.0210で始まり1.0180~1.0210のレンジで1.02を中心に上下。米国市場にかけて1.0250に上昇した。

発表されたドイツIFO景況感指数(7月)は弱い数字で前月92.3から88.6に悪化。2020年6月以来の低水準となった。景気後退リスクが一段と強まっていると述べた。ただユーロは下落せず。

米国市場では株価はまちまち。FOMCやGAFAなどハイテク大手決算を前に様子見姿勢が強かった。NYダウは前週末比+90ドル高の31,990ドル。ナスダックは▲51ドル安の11,782ドル。米長期金利はやや上昇し、10年債は2.806%、2年債は3.022%、なお逆イールドのまま。

ドル円相場は136円50銭~70銭で上下し引けは70銭近辺でもみ合い。

ユーロドル相場は1.0220~50で上下して引けは1.0220。

ユーロ円相場は139円50銭~70銭でもみ合い引けは139円70銭近辺。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅続落。世界景気減速懸念、内閣府が成長率見通しを下方修正したことなどで手控え。一時▲160円安もイベントを前に大きく動けず引けは▲44円安の27,655円。

ドル円相場は136円70銭で始まり30銭~40銭でもみ合い、夕刻から欧州市場にかけては50銭~70銭に戻して上下した。

ユーロ円相場は139円70銭から40銭に下落したが持ち直し60銭~80銭で上下。

ユーロドル相場1.0220で始まり夕刻は1.0210~30で上下。欧州市場に入るとユーロが大幅安。ロシアの天然ガス供給制限を受けて、EU各国がガス使用量の15%削減で合意。景気悪化懸念がさらに強まった。

ユーロドル相場は1.0120へ、ユーロ円相場は138円20銭へ大幅下落。

IMFは今年の成長率見通しを4月調査から大きく下方修正。世界全体は3.6%から3.2%へ。米国は3.7%から2.3%へ、中国は4.4%から3.3%へ、日本は2.4%から1.7%へ。

発表された米国の消費者信頼感指数(7月)は前月98.7から95.7へ3ヵ月連続して悪化。新築住宅販売(6月)は季節調整済み年率換算で前月696千戸から590千戸へ減少。

米国株は主要3指数がそろって下落。百貨店・小売決算が弱く個人消費の落ち込みが意識された。NYダウは▲228ドル安の31,761ドル、ナスダックは▲220ドル安の11,562ドル。

米10年債利回りは一時2.71%まで大きく低下したが、引けにかけて反転上昇し2.808%と前日とほぼ変わらず。2年債は3.056%。米長期金利上昇につれドル円相場は引けにかけて上昇し136円90銭台で引け。

ユーロは下げ止まり。ユーロドル相場は1.0120近辺でもみ合い引け。ユーロ円相場は反発して138円60銭で引けた。

水曜日の東京市場では日経平均が小動きのなか小幅高。朝方は米国株安を受けて売り先行で始まったが、ハイテク関連の決算を受けて半導体関連株がしっかり。ただFOMC結果を前に売買は低調だった。引けは+60円高の27,715円。

ドル円相場は137円ちょうどを中心に狭いレンジで上下。ユーロ円相場は138円60銭で始まり139円ちょうど近辺で上下した。

ユーロドル相場は1.0120近辺で始まり1.0130~50で上下。欧州市場にかけてはドル安、円高。ドル円相場は136円60銭割れ。

ユーロ円相場は138円50銭に下落。ユーロドル相場は1.0170へユーロ高ドル安が進んだ。ただその後FOMCの結果を前にドルは堅調。ドル円相場は137円40銭に上昇して結果待ち。

ユーロドル相場は1.0100へ下落。注目のFOMCでは予想通り0.75%の利上げ、FF金利誘導水準は2.25%~2.50%と中立水準に達した。

パウエル議長は会見で、データ次第を強調しつつも次回9月も利上げ幅が大幅となる可能性、0.75%か0.50%、を示唆。いずれ引き締めペースを緩めることが適切となる可能性が高い、とした。

声明文では景気減速を認めた。議長は景気にはポジティブな見方を示し、現在はリセッションではないと述べつつ、ソフトランディングは難しいとした。

米長期金利は低下。10年債は2.783%、2年債は2.980%。ともに3%割れ。これを受けてドルは大幅反落。ドル円相場は136円40銭に下落し、引けは136円60銭。

ユーロドル相場は1.0220に上昇し引けは1.0200近辺。ユーロ円相場は138円80銭~139円ちょうど近辺で上下したあと139円50銭に反発。引けは139円30銭。

米国株は大幅高。パウエル議長の発言で9月の大幅利上げの後は緩和されるとの見方が支えとなった。NYダウは前日比+436ドル高の32,197ドル。ナスダックは+469ドル高の12,032ドル。

木曜日の東京市場では日経平均が上昇。前日に米国株が大幅高となったことで買いが先行。28,000円台に乗せた。ただその後は利益確定売りに押され上げ幅を縮小。135円台へドル安円高が進んだことで輸出関連株の重石となった。

為替市場ではFOMCを受けたドル売り・円買い戻しの動きが優勢。ドル円相場は136円60銭で始まり朝方136円ちょうどに下落。40銭に反発したものの午後には135円20銭~60銭で上下した。

ユーロ円相場は139円30銭で始まり138円割れに下落。その後は持ち直し138円30銭~40銭。

ユーロドル相場は1.02ちょうど近辺で始まりもみ合いながらやや強含み夕刻は1.0230。その後欧州市場にかけてはユーロ安。ユーロドル相場は1.0120へ、ユーロ円相場は137円40銭に下落。

ユーロ圏経済信頼感(7月)は前月104.0から99.9へ悪化。ドイツCPI(7月)は前年同月比+7.6%から+7.5%へ若干上昇率が低下した。

米国市場に入ると弱いGDP統計を受けてドル安円高が大きく進んだ。発表された米国のGDP(4-6月期速報)は前期比年率▲0.9%となり、前期▲1.6%に続き2期連続のマイナス。テクニカルリセッション(数字のうえでのリセッション)となった。

米10年債利回りは2.672%に低下。2年債は2.866%。逆イールドが続きながらさらに水準がさらに低下した。

ドル円相場は134円割れに下落。その後は持ち直して134円40銭~70銭で上下して引けは134円20銭。

ユーロドル相場は1.01台半ばで上下したあと持ち直して1.02ちょうど近辺で引け。

ユーロ円相場は136円60銭まで続落したあと持ち直して引けは136円80銭。

米国株は上昇。弱いGDP統計で景気後退が意識され下落して始まったが、利上げがペースダウンするとの見方が支えとなった。NYダウは前日比+322ドル高の32,529ドル、ナスダックは+130ドル高の12,162ドル。

金曜日の東京市場では日経平均は小幅反落。米国株高で買い先行も伸び悩み。円高が急進したことで下げに転じた。ただ下値は限定的。米長期金利低下が支えとなった。引けは▲13円安の27,801円。

為替市場では午後に急速に円高が進んだ。前日からのドル円相場の上値の重さからポジション手仕舞いの円買い戻しが一段と活発化した。

ドル円相場は134円20銭で始まり朝方60銭台に上昇したが昼には30銭に押し戻された。午後に入ると急落して132円50銭近辺まで下落。ただその後、欧州市場から米国朝方にかけては反発して134円60銭まで上昇した。

ユーロ円相場も136円80銭で始まり137円20銭に上昇したものの昼には137円ちょうど、午後には大きく円高が進み135円90銭へ、さらに欧州市場では135円60銭まで下落。

米国市場にかけては持ち直し136円20銭~60銭。ユーロドル相場は1.02ちょうど近辺でもみ合いの後1.0250へ上昇、欧州市場では1.0190へ反落。その後は1.02をはさんで1.0240~1.0150で上下した。

米国株は堅調。前日引け後に発表されたハイテク大手決算が良好とみられ、決算全般が市場予想を上回る内容が続いたことで事前の警戒感が後退した。

利上げがペースダウンするとの期待、長期金利低下も支え。NYダウは前日比+315ドル高の32,845ドル、ナスダックは+228ドル高の12,390ドル。

米10年債利回りは一時2.62%まで低下して2.666%。2年債は2.891%。

ドル円相場は米国時間に入ると下落して133円20銭~40銭で推移し引けは133円20銭近辺。ユーロドル相場は1.0230へユーロ高ドル安。

ユーロ円相場は136円30銭に持ち直して引けた。ドルインデックスは105.82へ下落。

発表された米国の個人所得・消費支出(6月)は前月比+0.6%・+1.1%と強めの数字。シカゴ購買部協会景気指数(7月)は前月56.0から51.5へ悪化した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週は米国の景気後退懸念が一段と強まった。今週は重要な経済指標が相次ぐが、さらに懸念が強まるか。

ISM景気指数は前月から悪化予想。雇用の堅調さがなお景気後退に至っていないとする根拠だけに、とくに週末の雇用統計が弱い数字かが鍵。

月曜日 ISM製造業景気指数(7月、予想52.0、前月53.0)

水曜日 同非製造業景気指数(同、予想53.5、前月55.3) 製造業新規受注(6月、前月比、予想+1.2%、前月+1.6%)

木曜日 米週間新規失業保険申請件数(予想265千件、前週256千件) 貿易収支(6月)

金曜日 雇用統計(7月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+250千人、前月+372千人、失業率、予想3.6%で前月と変わらず、平均時給、前年同月比、予想+5.0%、前月+5.1%)

2.FRB・ECB以外の中央銀行政策動向

欧州では景気先行き懸念が強まり利上げの持続性に疑問が生じ、米国ではさらなる景気悪化やインフレピークアウトによる利上げ幅の縮小が視野に入ってきた。

そうしたなか、他の国々の金融政策動向はどうか。なおも日本からみた内外金利差拡大が際立ち円買い戻しに歯止めがかかるか。リスク選好の抑制が逆に円買い戻しをさらに強める可能性はないか。

火曜日に豪中銀が政策決定会合を開催し、政策金利を1.35%から1.85%へ0.50%引き上げる見通し。

英中銀は水曜日・木曜日の2日間金融政策決定会合で1.25%から1.50%へ利上げ見通し。

水曜日にはブラジル中銀が13.25%から13.75%へ、木曜日にはインド中銀が4.90%から5.40%に利上げ見込み。新興国の利上げは市場に混乱をもたらさないか。

3.欧州の経済指標

欧州ではロシアの天然ガス供給懸念、使用量制限から、一段と景気後退懸念が強まっている。経済指標がさらに懸念を強めるか。ユーロ安を促し、反面でドル安にブレーキをかけるか。あるは円全面高の勢いを増すか。

月曜日 ドイツ小売売上高(6月、前月比、予想+0.2%、前月+0.6%)

水曜日 ユーロ圏小売売上高(同、予想+0.1%、前月+0.2%) ドイツ貿易収支(6月、予想+2億ユーロの黒字、前月▲10億ユーロの赤字)

木曜日 ドイツ製造業受注(6月、前月比、予想▲0.7%、前月+0.1%)ドイツ鉱工業生産(6月、前月比、予想▲0.4%、前月+0.2%)

このほか中国で財新PMI景況感指数(7月)が、月曜日に製造業、水曜日にサービス業、が発表されるが、景況感の持ち直しはみられるか。なお下押しリスクを示すか。

◆今週のMRA's Eye


ピークアウト感強まる円安

先週、ドル円相場は一時132円50銭近辺まで下落した。FOMCで0.75%の利上げが実施され、FF金利の誘導水準は2.25%~2.50%となり、従来から想定されていた中立金利に達した。

これで金利水準としては緩和が終了。この先の利上げは本格的に景気を抑制する引き締めとなる。

パウエル議長は次回9月の会合でも手綱を緩める気配はみせなかったが、その先となると、引き締めのペースダウンが適切となる可能性が高い、として利上げ幅の縮小を示唆した。

4-6月期のGDPが2期連続のマイナス成長となったこともあり、市場では景気後退、将来の利上げ打ち止めを織り込み、長期金利は大きく低下した。10年債利回りはピーク3.5%から2.6%台へ。ドルは対円のみならず、対ユーロでも反落。ドルインデックスは先週央に107ポイント台に上昇していたが週末には105ポイント台へ下落した。

これで長らく続いたドル高円安基調がピークアウトした可能性が一段と強まった。

振り返れば、米景気急回復、緩やかな減速、のなかで、利上げがいち早く始まり、これがドル全面高をもたらした。さらに欧州ほか先進各国で利上げが実施されたことで、現状維持の日銀の金融緩和姿勢が際立ち、円全面安の様相が強まった。

ただFRBの強力なインフレ抑制姿勢、金利上昇が米国景気後退の可能性を強めると、景況感の悪化と逆行し上昇していた長期金利が低下に転じ、2年債と10年債は逆イールドに。イールドカーブでも景気後退のシグナルが点灯した。

しかし、米長期金利低下にもかかわらずドルはなお堅調を維持。なおも利上げ継続、日米金融政策格差を囃してドル高円安が進んだ。

ただ景気後退が現実のものとなると、さすがにドルは下落した。ドル高のモメンタム、方向感だけでドル買いを続けてきたが、ドル高が勢いを失ったところで、ポジション手仕舞い、ドル売り、円買い戻しで、逆回転が生じたとみられる。ひと相場終了の典型的なパターンだ。

金利差拡大がドル高円安をもたらすとの見方もなお根強い。しかし、金利差だけでは為替相場の方向は定まらない。

とくに金利差を材料に投機的な動きが先行、金利差以上に相場が進んだ場合、往々にして最終局面では伸び悩み、ないし反落が早々に生じることになる。

直近の見通しでは、7-9月期はドル高円安の転換点、135円~140円のレンジで高値圏の乱高下。その後、10-12月期にはドル安円高に転じて130円を試すとみていた。

これまでも予想シナリオのタイムスケジュールよりも相場の動き、タイミングが早くなることが往々にして生じた。その経験からすれば、10-12月期とみていたシナリオが前倒しで到来している可能性がある。

すでに135円台は上値が重く、130円~135円のレンジに移行した可能性をみておく必要はありそうだ。

とくに、今週末の雇用統計は注目される。2四半期連続でマイナス成長となったものの、テクニカルな数字上のもので、実際に総合的にみれば景気後退には陥っていない、というのが大方の見方。

その根拠は雇用が堅調である点。

ここに弱さが確認された場合、さらに景気後退を前倒しで確認する可能性がある。金利動向にかかわらず、行き過ぎたドル高は修正されるリスクが強まるだろう。

これまでの見通し、メインシナリオを総括すれば、年初時点において、FRBの利上げ、金融引き締め姿勢は市場が考えているよりも強いとみていたことから、平均的な見方よりもドル高円安が進行し120円台への動きを想定していた。

しかし、実際にはそれ以上に金融引き締めが強化され、市場の見方が180度転換して強気となって、当初の想定が追い抜かれて大幅なドル高円安に振れた。

秋から年末には円高方向に転換とみていたものの、高値水準が年初の想定よりも大幅にドル高円安に振れた。その後は135円~140円を高値水準とし、時間軸はそのまま、秋以降にドル安円高との見方は維持してきた。

概ね想定通りの展開にはなりつつあり、あるいはスケジュールがやや前倒しとなってきた可能性がある。

リスクシナリオとしては、米国景気が想定外に強く、インフレがピークアウトしない可能性で、利上げ強化がなおも長期化して140円台に乗せるというケース。

ただその可能性は大きく後退したようにみえる。

その分、逆サイドのリスク、ドル安円高サイドのリスクが強まったようにみえる。

次はユーロの動向。欧州景気が悪化しユーロが対ドルで1.00パリティを割り込むリスクはなお残っている。その場合には相対的にドル安のリスクは軽減される。

その結果として、ユーロ独歩安となるものの、ドル円相場は下支えられ130円割れが遅延するか。あるいは、ドルとユーロがともに円に対して下落を強め、円独歩高となる可能性はないか。

これを踏まえても、リスクバイアスは、すでに中立よりもドル安円高サイドに傾いているとみて良さそうだ。


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