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日銀に金融政策修正に向けた動きはあるか
  • MRA外国為替レポート

2022年7月18日号

◆先週の市場総括


先週は週央に発表された米国の消費者物価指数(6月)が前年同月比+9.1%と前月+8.6%から大きく加速。7月のFOMCで利上げ幅が0.75%ではなく1.00%になるとの観測が強まった。

これを受けてドル円相場は大きく上昇。週初に136円ちょうど近辺で始まり、木曜日には139円40銭をつけた。ユーロドル相場は幾度か1.00(パリティ)を割った。

公表されたベージュブック(米地区連銀経済報告)では需要鈍化の兆しも指摘され景気後退懸念が強まった。米10年債利回りは3%割れ、2年債利回りは3%台、と逆イールドが週を通じて続いた。

米国株は週初から軟調。ただ週末に期待インフレ率の低下が示されて大幅利上げ観測が後退。NYダウは大幅高となり木曜日までに下落幅の大半を取り戻した。

ドルは週末に反落。ドル円相場は138円50銭台、ユーロドル相場は1.0090近辺で引け。ユーロ円相場は円軟調、ユーロの反発に支えられ139円70銭で引け。日経平均は参議院選挙での与党圧勝を受けて政策運営の安定、政策期待から堅調。週末の引けは26,788円。

月曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。参議院選挙の結果、自民党が単独過半数を確保したことで政権の安定、円滑な政策実行期待から買われた。前週末比+500円超、27,000円の大台に乗せる場面もあった。

円安進行で輸出関連株が買われた。ただアジア時間の米国株先物が軟調、アジア株も上値重く、利益確定に押され上げ幅を縮め、引けは+295円高の26,812円。

ドル円相場は136円ちょうど近辺で始まり40銭近辺に上昇。午前中に開かれた日銀支店長会議で黒田総裁が、不確実性が高く現状の金融緩和を続け、必要なら追加緩和も、と述べたことから円安が進んだ。

ドル円相場は137円20銭台に。

ユーロ円相場は138円40銭~70銭で上下した後、139円10銭にユーロ高円安が進んだ。夕刻にかけて円安は一服。ドル円相場は136円70銭近辺に反落した。

ユーロは終始軟調。ユーロドル相場は1.0180近辺で始まり朝方1.0140へ下落。欧州から米国市場にかけて大きくユーロ安ドル高が進んだ。

ドイツ向けガス供給が定期点検のため停止したが再開への懸念から、ドイツや欧州経済全体の混乱が懸念された。

ユーロドル相場は米国市場朝方に1.0050~60へ。その後1.0090に反発したものの、軟調に変わらず、引けは1.0040の安値引け。

ユーロ円相場は138円30銭~80銭で上下した後、米国時間には138円ちょうどまで下落した。

クロス円相場は全般に円高。一方、ドル円相場は米国朝方にユーロ安ドル高の勢いに支えられ137円70銭に上昇。その後は反落して引けにかけて137円30銭~40銭で推移。

ドルインデックスはこの間の高値を更新し108ポイント台に上昇した。

米国株は反落。中国でBA5型ウィルスが発見され検査・行動規制強化の方針が示されたことで景気悪化・供給網への懸念が広がった。企業決算発表や消費者物価指数の発表を前に売買が手控えられた。

NYダウは前週末比▲164ドル安の31,173ドル。ナスダックは▲262ドル安の11,372ドル。米長期金利は低下し、10年債は2.994%、2年債は3.073%、逆イールドが続いた。

火曜日の東京市場では日経平均が4営業部日ぶりに反落。欧州でのエネルギー供給懸念、中国でのコロナ感染拡大による行動規制・供給懸念で欧米株が下落。日経平均も一時▲500円超下落した。

中国でハイテク株が下落したことも重石。引けは▲475円安の26,336円。

ドル円相場は上値の重く推移。137円40銭近辺で始まり午前中に137円ちょうど近辺に下落。その後は137円台前半で上下したが、欧州市場から米国市場にかけて136円50銭まで下落した。株安、リスク回避、米長期金利低下に押された。

ユーロは終始軟調。ユーロ円相場は138円ちょうど近辺で始まり大きく上下しながら夕刻、欧州時間には137円ちょうど近辺に下落した。

ユーロドル相場は1.0040近辺で始まり上値重く、1.0010~30で推移。欧州時間に入るとユーロは一段安。ユーロドル相場は一時1.0000(パリティ)をつけた。

発表されたドイツZEW景況感指数(7月)は期待指数が前月▲28から予想▲40に対し▲53.8と大幅に悪化した。ただその後は一旦の目途達成でユーロは下げ止まり。米国市場の引けは1.0030。

ユーロ円相場は137円30銭。米国株は3指数がそろって下落。NYダウは3営業日続落。欧州・中国懸念で世界景気後退リスクが意識されるなか、中小企業の景況感悪化が示されたことが嫌気された。翌日にCPIの発表を控え様子見姿勢も強かった。

NYダウは前日比▲192ドル安の30,981ドル。ナスダックは▲107ドル安の11,264ドル。

原油価格WTI先物は世界景気後退による需要減見通し。OPECの需要見通し引き下げで大きく下落して95.84ドル。米10年債利回りは2.971%に低下。2年債は3.051%。逆イールドが継続し逆転幅は拡大した。

水曜日の東京市場では日経平均が小幅上昇。前日の大幅安から短期的戻り狙いの買いが入った。感染は拡大しているものの行動規制を強化しない方針が明らかとなり、経済活動再開期待でリオープン関連銘柄がしっかり。

一方、米国でインフレ高止まり、金融引き締め強化が続き株価に下押し圧力がかかるとの見方が上値を抑制した。引けは前日比+142円高の26,478円。

ドル円相場は136円80銭で始まり午前中に137円20銭に上昇。その後は米国の消費者物価指数発表を前に米国市場朝方にかけて137円10銭近辺を中心に小動き。ユーロ円相場は137円30銭を中心にもみ合いのあと、50銭~70銭でもみ合い。

欧州市場ではユーロ買戻しから堅調で138円20銭まで上昇した。

ユーロドル相場は1.0030~40でもみ合い欧州市場では1.0070に上昇。

注目の米国の消費者物価指数(6月)は予想より強い数字だった。

総合指数は前月比が前月+1.0%から+1.3%へ上昇が加速。前年同月比も+8.6%から+9.1%へ。コア指数も前月比が+0.6%から+0.7%へ加速。

前年同月比は+6.0%から+5.9%にやや減速したものの予想+5.7%より高い上昇率となった。

これを受けて金融引き締めがさらに強化されるとの見方が台頭。7月のFOMC会合では0.75%ではなく1.00%の利上げとの見方も強まった。

米長期金利は上昇。10年債は一時3%を回復。ただインフレ、金融引き締め強化で景気が悪化するとの見方が強まり株価下落とともに低下。引けは2.935%と前日より低くなった。

一方2年債利回りは3.149%に上昇。2年債と10年債の逆イールド幅は広がった。

米国株は3指数がそろって下落。NYダウは前日比▲208ドル安の30,772ドル。ナスダックは▲17ドル安の11,247ドル。

原油価格WTIは概ね横ばい。

この日公表された米地区連銀経済報告では、5月中旬以降緩やかに成長したが需要鈍化の兆しもみられる、とされ、インフレで需要が減退していることが指摘された。

消費者物価指数の発表直後にドルは上昇。ドル円相場は直後に137円70銭に上昇、40銭に反落のあと、最高値を更新して137円80銭台をつけた。

ユーロドル相場は一時1.00(パリティ)割れ。ただ米長期金利が低下したことで反落。ドル円相場は137円10銭~40銭で推移し引けは40銭。

ユーロドル相場は1.0120に大きく反発したあと、引けは1.0060。

ドルインデックスは108ポイント近辺。ユーロ円相場は137円60銭に反落したあと上下しながら138円80銭に上昇し、引けはじり安で138円20銭。

この日、カナダ中銀が政策決定会合を開催。政策金利を1.50%から2.50%へ1.00%引き上げ。0.75%利上げで1.75%利上げとの予想を上回り引き締めを強化した。

木曜日の東京市場では日経平均が続伸。朝方は前日の米国株安を受けて安く始まったが、円安を支えに輸出関連株が買われた。半導体関連株も堅調。引けは前日比+164円高の26,643円。

為替市場では大きく円安が進んだ。前日の米消費者物価指数が強い数字となりインフレがさらに高まったことで大幅利上げが意識された。

カナダ中銀も1%利上げを実施したことであらためて日銀の超金融緩和維持を材料に円が売り込まれた。

ドル円相場は1137円40銭で始まり夕刻にかけて一貫して円安。欧州時間に入る頃には139円40銭までドル高円安が進んだ。

ユーロ円相場も138円20銭で始まり139円80銭に上昇。ユーロは対ドルでやや軟調。ユーロ円相場は1.0060で始まり1.0010まで下落して10~40を中心に上下。

欧州市場ではユーロが一段安。イタリアのドラギ首相が辞意を表明したことを受け下落。ユーロドル相場は一時0.9950台まで下落した。ただその後は急速に持ち直し、米国時間には1.0040に反発。米国時間には1.00を再び割る場面もあったが引けは1.0020とパリティ(1.00)は維持した。

ドル円相場は139円を挟んで138円70銭~139円30銭で上下し引けは139円ちょうど近辺。

ユーロ円相場も一時138円60銭に下落したが、米国時間には持ち直して139円20銭近辺で引け。

米国株はまちまち。NYダウはインフレ高進と金融引き締め強化を懸念して朝方は前日比▲600ドル超の大幅安。

発表された生産者物価指数(6月)は総合指数が前年同月比+11.3%と前月+10.8%から上昇率が加速した。ただコア指数は同+8.2%と前月+8.3%からやや鈍化。

その後、FRBウォラー理事が、大幅な利上げに含みを残しつつも7月の利上げは0.75%が適切で基本シナリオ、市場は先走り過ぎ、と述べたことでやや安心感が広がった。

NYダウは持ち直して下げ幅を縮め、引けは▲142ドル安の30,630ドル。ナスダックは+3ドル高の11,251ドル。

米10年債利回りは前日からわずかに上昇して2.958%。2年債は3.128%。逆イールドがなお続いている。

金曜日の東京市場では日経平均が続伸。前日に決算発表で業績見通しを上方修正したファストリテーリングが全体を牽引。

中国の小売売上高(6月)が前年同月比+3.1%と予想+0.3%を上回ったことも支え。ただGDP(4-6月期)は前年同期比+0.4%にとどまり大きく景気減速を示した。米国の利上げ加速懸念も上値を抑制。引けは+145円高の26,788円。

ドル円相場は139円ちょうどを中心に方向感なく上下、夕刻には一時138円60銭に下落した。

ユーロ円相場も同様に139円20銭近辺で始まり139円台前半で上下、夕刻には138円80銭に下落した。

ユーロドル相場は1.0020で始まり1.00台前半で上下。欧州市場に入り1.0010に下落。ただその後米国市場にかけてユーロは堅調。

米国で期待インフレ率が低下しFRBによる利上げ幅拡大懸念が一服。小売売上高が強い数字だったこともあり、米国株が堅調。リスク選好が強まるなかユーロ円相場などクロス円相場が上昇。米長期金利の低下がドルを抑制した。

ユーロドル相場は1.0100まで上昇し引けは1.0090。

ユーロ円相場は139円80銭に上昇し引けは139円70銭。

ドル円相場は軟調。138円50銭台でもみ合い引けた。

NYダウは大幅高。前日比+658ドル高の31,288ドルで引け。ナスダックは+201円高の11,452ドル。米10年債利回りは2.928%。2年債は3.131%で逆イールドが続いている。

発表された米国の小売売上高(6月)は前月比+1.0%と前月▲0.1%から反発し予想より強い数字。

NY連銀製造業景気指数(7月)は前月▲1.2から11.10に大きく改善。一方、鉱工業生産(6月)は前月比▲0.2%と前月0.2%から悪化。ミシガン大学消費者態度指数(7月・速報)は51.1と前月50.0から改善。期待インフレ率(5年)は2.8%と前月3.1%から低下した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.日銀金融政策決定会合、黒田総裁会見

水曜日・木曜日の2日間、日銀は金融政策決定会合を開催する。今回は展望レポートを公表。午後15時半から黒田総裁が定例会見を行う。

今回の会合でも政策変更は想定されていない。

ただインフレ率が上昇、円安が大幅に進むなか、過度な金融緩和に対する異論も増えている。何等かの方針修正、ニュアンス変化があるか。

頑なに現状の超金融緩和政策、長期金利抑制に固執する黒田総裁の発言に何等かの変化がみられるか。展望レポートに政策修正に向けた根拠がみられるか。

あるいは、現状維持のほか何らの新たな兆しがみえず、円先安感をあらたにするか。

2.ECB理事会、ラガルド総裁会見

木曜日に欧州ではECBが理事会を開催する。今会合では政策金利を0.25%引き上げることが予想されている。すでに利上げ方針を明確にし、7月の利上げも明言。9月の利上げも示唆しマイナス金利からの脱却方針を定めている。

ただここにきて景気後退リスクが一段と強まっている。

金融引き締め方針に躊躇がみられるか。ユーロドル相場はすでに一時1.00(パリティ)を割り込むなど下落基調が強まっている。ユーロ安に対して何等かの議論、コメントはあるか。

3.日本の貿易収支、CPI

円安の主要因は内外金利差による円先安感だが、巨額の貿易赤字が継続していることも為替需給面から底流で円安圧力となっている。

木曜日に6月の通関統計が発表される。5月は貿易赤字が2兆4千億円弱まで拡大。6月は1兆5千億円の赤字と予想されている。

ただ季節調整済みでは前月から赤字が拡大するとの予想。円先安感を刺激するか。

また金曜日には消費者物価(6月)が発表される。前年同月比は前月+2.5%から+2.4%に上昇率がやや低下する予想。一方、変動の激しい食料品とエネルギー価格を除くベースでは、前月+0.8%から+1.0%に上昇率が加速する予想となっている。

注目イベントとしては、ロシア天然ガスパイプライン・ノルドストリームの定期点検終了予定が21日となっているが、点検終了後に供給再開となるか。

再開されなければドイツを中心とする欧州経済の混乱・景気後退懸念が強まる可能性がある。

米国では6月期の企業決算発表が続き業績見通しがどうか、株価の反応に留意。週末の欧米のPMI景況感指数が景況感の分かれ目である50にどれほど近づき悪化するか、あるいは割り込むか。

◆今週のMRA's Eye


日銀に金融政策修正に向けた動きはあるか

今週20日水曜日・21日木曜日の2日間にわたり日銀金融政策決定会合が開催される。日銀の超金融緩和継続、欧米とくに米国の金融引き締め強化、内外金融政策格差が材料とされ、さらに急激に円安が進行しドル円相場は先週140円に迫った。

国内ではなお消費者物価指数は総合ベースで2%台半ば、食料品とエネルギーを除くベースで1%程度、と海外と比べてなお安定している。しかし物価上昇は随所にみられ消費者からの苦情も高まり、政府は物価対策に追われている。

主因はグローバルな資源・農産品価格の上昇ではあるが、円安の影響もある。なお低調な景気動向と強まる物価上昇圧力の狭間で、今回の会合で何らかの金融政策修正の方向性が示されるか。

現状の日銀による超金融緩和政策は、いわゆるアベノミクスで掲げられた政治主導の金融政策が、黒田総裁のもと10年近く続けられている。

景気・物価動向に変化があっても、緩和が強化されることはあれ、逆に緩和策に歯止めをかけ修正する動きはまったくなかった。その意味で、黒田総裁が任期を迎える来春、あるいはその後任が取り沙汰される年末にかけての時期は、超金融緩和政策の修正観測が生じやすい時期と想定された。

そのため、年末から来年初にかけては、日本要因、日銀の金融政策に対する思惑で、円安に歯止めがかかりやすく、あるいは円高方向に修正される可能性がある。

それが米国の金利ピークアウト観測の台頭と併せてドル高円安トレンドの転換を想定するメインシナリオの根拠のひとつでもある。

そうしたなか、安倍元首相の影響力が突然消失したことで、アベノミクスからの脱却ないし修正が早まる可能性が生じた。

岸田政権は参議院選挙を大勝のうちに乗り切った。自民党内での政治力学変化を注視する必要がある。

岸田政権は、憲法改正など防衛政策は安倍派の主張を引き継ぎ保守派の支持を得るとして、経済政策に関しては自由度が増した可能性がある。もとより、岸田首相は成長も目指しているものの、アベノミクスによる弊害の修正、分配への配慮を主張してきた。それを次第に全面に復活させるか。

与党内でも積極財政派と健全財政派の路線対立がみられる。安部元首相は最近も積極財政と超金融緩和の組み合わせを主張していた。

日銀は政府の子会社であるとして、日銀の国債購入による無制限国債購入を継続する方針だった。積極財政派は、財政赤字拡大は問題視せず、財政健全化など気にする必要がない、とする。

その根底には、日銀による無制限な国債購入、財政ファイナンスが前提としてあり、ゆえに問題にならないという議論だ。

ただ、すでに日銀は発行済み国債の過半を保有するに至り、先進国には例をみない状況となっている。

財政運営に関して先進国を見渡せば、欧州はマーストリヒト条約で財政赤字のGDP比の順守を加盟国の条件として定めてきた。米国では旧来、共和党が小さな政府で財政健全化、民主党が大きな政府で積極財政派、という位置づけだった。

しかし与野党を問わず議員に財政健全化は維持すべきとの意思がみられる。その結果、予算成立が紛糾して政府機関が一時閉鎖となる混乱は生じるが、それも財政健全化がいかに重視されているかの表れだ。ひいてはそれが根底でドルの強さにもつながっているとみられる。

円安が良いか悪いかの議論はともかく、円安の主因が政治による金融政策支配であることは否めない。

財政規律の緩み、健全化の放棄、ばら撒き的財政支出、明確な財政ファイナンス、政府・政権による中央銀行の通貨発行権の濫用のような状況では通貨安・円安となるのは道理だ。日銀の独立性消失、政治支配は懸念されるところだろう。

日銀の超金融緩和策がゼロ金利、マイナス金利から量的緩和重視にシフト。それがイールドカーブコントロール(YCC)として長期金利の上限設定と組み合わされ、無制限な国債購入・量的緩和と結びついて、財政ファイナンスが正式に日銀の政策に組み込まれた。

長期金利の動きは止まり、日本の債券市場は価格変動を失って市場機能が停止している。

こうした状況に対し、市場では修正すべきとの意見が多い。しかし予想となると、年内は修正なしとの見方が過半となる。

「べき論」と予想の相違が生じている。その背景にあるのは黒田総裁の現状政策への固執だ。市場の圧力に屈したくないという面もあろうが、政治的な圧力もあったとみられる。

足元の状況で政治からの呪縛から解放されるのか、岸田政権のスタンスや政治力学の変化が、金融政策の修正となるのかが焦点だ。

黒田総裁の任期が次第に近づくにつれて後任人事の議論が活発化。日銀内でのリフレ派と反リフレ派のバランス変化も気になるところだ。

日本の金融政策スタンスの修正がなければ円先安感は解消しない、との見方が大半。岸田政権の政策、物価重視により円安歓迎論に真に変化しているのか。

通貨政策を所管し財政健全化を維持したい財務省とともに、日銀も政治からの呪縛から解かれるのか、政治的圧力が緩和し、あるいは忖度が低下するのか。

そうした変化の可能性を投機筋が感じるだけでも円売り・円安圧力が後退する。今月の会合だけではなく、年内という時間軸で、観察していく必要がある。


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