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独統計大幅悪化とユーロ・パリティで大幅下落
  • MRA商品市場レポート

2022年7月13日 第2237号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「独統計大幅悪化とユーロ・パリティで大幅下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はほとんどの商品が売られた。上昇したのは供給制限やロシア産からのリプレース需要が強い発電燃料と、その他農産品の一角だった。

昨日発表された独ZEW景況感指数が市場予想を大幅に下回る内容で、欧州経済の先行き不透明感が高まったことが売り圧力を強めることとなった。

自国通貨安は輸入物価の上昇を通じて域内のインフレ圧力を高める。今のところ米欧の中央銀行は「景気よりもインフレ」に傾いているため、スタンスの変更がなければECBは予定通り金融引締めを加速せざるを得なくなる。

そうなると域内経済の減速を加速指せる可能性があり、そうなると貿易面で繋がりの深い中国の景気下押し圧力も強まることから、景気循環銘柄価格には下押し圧力がさらに強まる展開が予想される。

中国のみならず世界的にもコロナの感染が再び拡大しており、多少なりとも経済活動を阻害すると予想されることも、市場参加者のセンチメントを大きく悪化させている。

【本日の見通し】

本日は昨日の下落が大きかったことから、一旦買い戻しが入るとは思う。しかし、市場参加者のセンチメントが大きく悪化しているため、総じて軟調な推移になるのではないか。

本日予定されている材料で注目しているのが、米消費者物価指数と中国の貿易統計、米ベージュブックと各国中央銀行の政策金利動向だ。

いずれも金融引締めを継続せざるを得ず、さらに景気が減速していることを確認する内容になるのではないか。

カナダ中銀政策金利発表チリ中銀政策金利発表ニュージーランド中銀政策金利発表韓国中銀政策金利発表

6月米消費者物価指数 市場予想 前月比+1.1%(前月+1.0%) 前年比 +8.8%(+8.6%)コア指数 前月比+0.5%(+0.6%)、前年比+5.7%(+6.0%)

中国貿易統計 輸出 市場予想 前年比+12.5%(前月+16.9%) 輸入 +4.0%(+4.1%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された独ZEW景況感指数は大幅な悪化となった。同指数はドイツの日銀短観に相当するIFO景況感指数の先行指標であるが、内訳を見ると相当、独経済の先行きが悲観的な状態になっていることを示す内容。

期待指数は▲53.8と前月の▲28.0から急減速、市場予想の▲40.5も下回った。現状指数も 現況指数 ▲45.8(▲27.6)と悪化、ユーロ圏期待指数も▲51.1(▲28.0)となった。

アナリストの予想平均ではドイツ経済は1年以内にリセッション入りする可能性が55%、とされているがかなり早いタイミングで短期的なリセッション入りする可能性は高い。

背景は、1.インフレ抑制のための金融引締めをECBが断行する見通しであること、2.ロシアからのガス供給停止により電力だけでなく原料としてのガス供給も減少していることから、BASFなどの大手化学メーカーの原料調達に支障でて世界のサプライチェーンに影響が及ぶ可能性があること、などである。

この結果、ユーロはドルと20年振りにほぼ「パリティ」となった。恐らくこの流れは続き、ユーロは対ドルで割安な状態に転じる可能性が高い。

こうなると、ドル指数には上昇圧力がかかることになるため、ファイナンシャルな面でドル建て資産価格には下押し圧力が掛かりやすくなる。

ユーロ安の中では欧州域内の輸入物価はさらに上昇することが予想されるため、ECBの利上げペースがさらに加速することも想定される。

また、欧州経済が減速する中では、最大の貿易相手国である中国の景況感にも悪影響を及ぼすことになる。昨日、非鉄金属価格も大きく下落しているが、欧州の減速による中国経済の減速懸念が背景にあると考えられる。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は暴落した。DOE月報やOPEC月報は年内の需給緩和と2023年の需給タイト化見通しを示したが、強いて言えば2022年の需給緩和観測が材料になった下落、ということになろうか。

それよりはロシアとの対立によってドイツ経済がかなり疲弊しており、ZEW景況感指数が大幅な悪化となる中で、ユーロが対ドルでパリティまで下落する流れになったことがより売り材料となった可能性が高い。

ただ、昨日の下落でも現在の価格レンジである200日移動平均線と100日移動平均線のレンジを割り込んではいない(Brent原油ベースで97ドル~111ドル)。

Uralなどのロシア産原油からBrentなどのその他の原油へのシフトはつづいており、現在の原油価格の実力値の指標である「BrentとUralの平均値」は83.40ドル(前日比▲8.29ドル)。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態でかつ、リセッション入りが意識されている状態。リセッション入りが意識される中では想定価格のレンジも下方修正されやすいため、適宜価格レンジは見直す予定。

今週のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが「期待」されるが、逆にサウジアラビアやUAEが増産に応じると「増産余力がなくなる」として逆に買い材料とされる可能性もある。

即時増産可能国として期待していたイランはもう西側諸国の要請で増産することはないだろう。ロシア・中国とタッグを組むことはほぼ確実な情勢だからだ。

仮に増産したとしても、それは東側諸国に提供されることになるため、西側諸国のベンチマーク原油価格の下落には寄与しないのではないか。

となると、結局、米国の増産が必要になってくるが、オイル・メジャーはクラックスプレッドが空前の水準に達しており、需要も落ちていないため増産せずとも利益が確保出来ること、脱炭素派の強い牽制の動きを受けて製油所のキャパシティの拡大にも慎重になっていること、から、なかなか増産が始まらない。

教科書的には人とモノの確保が出来ないことが原油増産の遅れの要因と整理されるものの、ややうがった見方かもしれないが、環境面に厳しくオイル・メジャーを目の敵にしてきたバイデン大統領率いる民主党が「中間選挙で敗北した後に」増産に転じるのではないか。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 95-120ドル)

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 85-115ドル)

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 90-115ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(↓)  想定よりも早くリセッション入りした場合(↓↓) Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      グローバル・リセッションの場合 (↓↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は昨日の大幅下落の反動で一旦買い戻しが入るが、地合が弱気に転じているため結果的に軟調推移になると予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。ノルドストリームが稼働を停止する中、域内最大の供給国であるノルウェーからのネットガス輸出が急減したことが材料となった。

ノルウェーからの供給減少は、Sleipner油田の事故によるものでKollsnesとNyhamna処理プラントにも影響が及んでいる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州全体のガス在庫は7月10日時点で62.1%(前日61.7%)と増加。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

域内の電力供給が一番に取り上げられて報じられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて、世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの嫌がらせ(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、ノルウェーの生産も事故の影響で滞っている状況。

3.も欧州・日本で顕在化している状況で、この数週間では4.の可能性も高まっている。。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年末とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。なお、LNGターミナルの再稼働は外部監査を必要とし、書面による事前の当局の承諾が必要、と報じられておりさらに出荷回復に遅れが出そうな状況だ。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。ロシアは恐らくそれを狙って日本やドイツに圧力を掛けているのだろう。

6月27日~7月3日の世界のLNGトレードだが、取引量は670万トン(前週778万トン)と減少した。スポット取引のシェアは20%(前週32%)と低下。

スポット契約は北欧向けが▲43万トンの大幅な減少。主にトルコの調達が減少したことによる。恐らくTurk Streamの再稼働が影響したと考えられる。南米の調達も▲25万トンと減少した。

一方、ターム契約分の調達は、JKCT向けは+24万トンの増加、北欧と東南アジア向けの輸出は▲29万トンの減少だった。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも低下。Freeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下している。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物は下落。景気の先行きが懸念される中で昨日の上昇の反動で売られた。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期近は変わらず、期先は大幅に上昇し、冬場のピーク価格は46ドルを上回った。欧州ガス価格の上昇が背景。

今後も構造的なガス不足は景気の急減速や冷夏・暖冬がない限り簡単に解消するものではないため、結局、夏場~冬場にかけての価格リスクは上向きと考えるべきである。

サハリン2の影響はなんともいえない。仮に日本が今まで通りの契約が不可能になった場合はスポット市場で調達せざるを得ず、その場合は調達コストが3倍~4倍にはね上がり、コスト増加は1兆円/年を超えることになる。

ただ、ロシアが今まで同じ条件では売らない、と言った訳でもなくロシアも受け入れ先が限られるLNGを日本・欧州以外に回す選択もそれほどないため実はそこまで深刻な状態にならないかもしれない(ただし相当希望的観測)。

なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

7月3日時点の日本の発電用LNG在庫は211万トン(前年同月末226万トン、2017~2017年平均203万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回っている。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを下回っている。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の電力供給不足のリスクは高いが、ロシア政府によるサハリン2の強制接収の可能性も考えると、日本にとって夏場以降のガス調達、仮に出来たとしても価格面でのリスクは残る状況。

本日も、需給がタイトな状態に変わりはないため、ロシアの供給再開は当面ないことから、上昇すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップは上昇して430ドルに迫った。競合燃料のLNG・天然ガスのスポット価格が上昇していること、脱ロシア炭の流れから高カロリーの豪州炭が物色される流れが続いている。

また、中国政府の1兆5,000億元の経済値策の前倒し実行も、海外炭輸入圧力を強めていると考えられる。

基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇が続き、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の遅れヘの懸念が価格を押し上げている状況。

なお、BPデータを元にすると豪州の2020年の生産量は熱量ベースで12.42エクサジュール、消費が1.69エクサジュール、輸出が9.25エクサジュールとなっており、国内消費のシェアはそこまで大きくないが、何らかの影響が出ていることは事実だろう。

中国政府は2022年の石炭生産目標は1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。

また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。

ロックダウンの影響から完全に脱して言いないことで、輸入需要が減少していると考えられるが、

1.中国政府は大規模な経済対策を実施の方針であること2.懸念していた猛暑が既に始まっていること3.南半球は寒波の影響を受けていること

から中国の国内供給は不充分であり、海上輸送炭市場がタイト化する可能性は高まっている。

日本も今年の夏は猛暑見通しであり、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

特に、高品位なロシア炭の供給停止はカロリーベースで競合しやすい豪州炭などの価格を押し上げやすいことも、日本が主に輸入している豪州炭価格を押し上げることになろう。

米国でも夏場の電力供給不足への懸念が指摘されていたが、Freeportの事故の影響もあって結果的に域内供給が間に合う可能性は出てきた。結局、ほとんどの資源に恵まれる米国は強いと言わざるを得ない。

本日も発電燃料供給を巡る環境の改善が見込めない中、中国の経済対策前倒し実施観測、ガスが政治的な理由と不慮の事故により供給不安となっていることから石炭価格は高値維持の公算。

なお、景気の先行きへの懸念は強まっており恐らく2022年後半以降、いずれかのタイミングでリセッション入りすると予想されるため、先行きの見通しは比較的弱気。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。独ZEW景況感指数が大幅な悪化となり、域内の需要減少観測が強まった上、貿易面で繋がりの深い中国経済にも悪影響が及ぶ、との見方が強まったこと、上海で再度のロックダウンの可能性が高まっていることが背景。

中国政府はこの状態を打破するために、地方政府の特別債発行を2023年から前倒し、インフラ投資に充てることを決めた。

しかし、コロナの感染が拡大する中ではロックダウンが断行されるため、これらの大規模な経済対策は需要の減少を下支えする程度の効果に止まる可能性が高まっている。

今後は中国政府の景気テコ入れを目的とした経済対策の効果が、いつ、どの程度顕在化するかがポイントになるが、コロナ相手の予想であり全く先行きは不透明だ。

恐らく、ロックダウンが行われ、その後の解除でペントアップ需要が期待されると予想されるが、今のところこれが何月になるか最早明言は出来ない。

今後の非鉄金属価格動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。

最も重要なのが長期のトレンドだが、脱炭素、脱ロシア、中国・インドの「W人口ボーナス期」入り、といった材料を考えるとやはり鉱物資源需要は増加し、価格には構造的な上昇圧力が掛かりやすい。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ123・Q223あたりが景況感の底になると考えられ、当面調整圧力が掛かることになる。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わないとすると、景気後退入りはQ323からとなり、この場合はQ124に回復基調に戻る展開が想定される(欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているところが多い)。

短期的にはロックダウンの懸念や欧州景気の減速、米QTの進捗による期待インフレ率の低下を受けて下落しやすい。このコラムではここまでの下落で投機筋(ファンド筋)に買い余力が発生している、としていたが、逆に「ネットスクエア」の状態まで投機が短期的にポジションを解消する動きも否定出来ない。

その場合、LME非鉄金属価格は現在の水準から▲10%強、下落する可能性がある。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、

1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)

2.株価が上昇すること

3.期待インフレ率が上昇すること

が揃う必要がある。いずれか1つでも顕在化すれば価格は上昇すると見るが、現状、全て顕在化していない。

1.は経済対策の前倒しが決まったが、同時にコロナの感染が拡大しているため先行きが不透明になってきた。

年後半は1.<2.3.という展開が基本となるが、恐らく公共投資やペントアップ需要の顕在化が遅れるため、年後半から年初にかけての下落がなく、こちらも横這い推移となる可能性を意識しておく必要がある。

本日も、これまでの下落による割安感から実需の買いが入りやすいものの、市場参加者のセンチメントは悪化しているため軟調推移を予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は大幅に下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月・中心限月価格とも大幅に下落した。

中国上海でオミクロン株の変異種が発見されたことでロックダウンが再開される可能性が高まったことが材料となった。

また、中国第二の省である江蘇省の近隣安徽省でもコロナの感染拡大が確認されており、再び沿岸部の景気減速懸念が強まったことが鉄鋼製品先物価格を押し下げ、鉄鋼原料価格の下落要因となった。

中国政府は景気刺激のため、地方債1兆5,000億元の前倒し発行を決定、インフラ投資に充てる計画であるが、ストック需要の増加であるためフロー需要の増加が見込まれないことがこれを相殺している。

この状態が続けば、中国の経済対策は「景気の減速を下支えする程度」の効果しかもたらさず、工業金属価格が現状水準程度に止まる可能性は排除出来ない。

なお、鉄鋼製品価格から類推される鉄鉱石価格は123.6ドル、原料炭価格は207.7ドルであり、現在の価格は鉄鉱石が割安、豪州原料炭はやや割高に推移していることになる。

一時、200ドル以上まで拡大していた海上輸送原料炭の流動性プレミアムは縮小しており、徐々に粗鋼生産と鉄鋼製品価格に見合った価格に収れんしていくと期待される。

本日は中国のロックダウン懸念から水準を切下げる展開を予想。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。特段実質金利が大きく変化したわけではなかったが、株が急落する中で利益確保のための売りが発生したためと考えられる。一昨日と同様の展開。

金は安全資産として物色されており、主に株価が調整した時の調整弁として取り扱われることが多いが、昨日の株価の急落を受けてセクター全体に利益確定の動きが強まった。

金の基準価格は前日比+6ドルの1,117ドル、リスク・プレミアムは▲13ドルの609ドルに低下している。

銀は金価格の下落を受けて水準を切下げた。昨日もコメントしたが、ある意味「祭り」が終ったとも言え、金価格が下落する中では下値余地を探りやすい。

ただ、コロナ前の15~20ドルのレンジに戻るか否かに関しては、

1.太陽光パネルの設置は恐らくまだ増えること2.IOTの進捗によって銀の需要は構造的な増加が続くと考えられること

からレンジはもう少し上に切り上げっているとみてはいる。

しかし、金のリスク・プレミアムが剥落し、過去5年平均程度まで収れんすると今から▲400ドル程度下げ余地がある。これだけでも銀価格を4.5ドル程度押し下げると考えられる。逆に言えば、現状、銀の下値は最も下がったとしても14.50程度まで、ということだろう。

PGMは金価格の下落と株価の下落で大幅に下落している。

本日はこれまでの下落もあり、一旦買い戻しが入ると考えるが、米消費者物価指数の動向次第か。

市場予想は前月比+1.1%(前月+1.0%)と総合指数は上昇見通しであり、実質金利の上昇要因となる可能性があり、その場合は下落要因に。

◆穀物

シカゴ穀物市場は暴落した。原油価格の急落でガソリン価格が急落する中でトウモロコシ価格が下落したこと、昨晩発表された米需給報告が市場予想よりも弱気な内容だったことが材料視された。

昨晩発表の米需給報告は以下の通り。在庫見通しは大幅に増加、生産見通しも大豆以外が上方修正されている。

・7月米単収見通し実績(市場予想、前月)トウモロコシ 177.0Bu/エーカー(177.02、177.0)大豆 51.5Bu/エーカー(51.5、51.5)小麦 47.3Bu/エーカー(NA、46.9)

・7月米生産見通しトウモロコシ 145億500万Bu(143億7,310万Bu、144億6,000万Bu)大豆 45億500万Bu(45億2,223万Bu、46億4,000万Bu)小麦 17億8,100万Bu(17億3,348万Bu、17億3,700万Bu)

・7月米輸出見通しトウモロコシ 24億Bu(NA、24億Bu)大豆 21億3,500万Bu(NA、22億Bu)小麦 8億Bu(NA、7億7,500万Bu)

・7月米在庫見通し(市場予想/前月)トウモロコシ 14億7,000万Bu(14億3,731万Bu、14億Bu)大豆 2億3,000万Bu(2億673万Bu、2億8,000万Bu)小麦 6億3,900万Bu(6億3,712万Bu、6億2,700万Bu)

・12月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 116億738万Bu(116億4,700万Bu、12億3,500万Bu)大豆 31億4,900万Bu(31億2,781万Bu、2億5,700万Bu)小麦 13億9,000万Bu(14億1,496万Bu、17億7,400万Bu)

本日は昨日の下げが大きかったことから一旦買い戻しが入るが、需給バランスの改善(緩和)期待が強まっているため結果的に前日比マイナスに下落すると予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオか)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


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