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ユーロ下落鮮明となりドル全面高
  • MRA外国為替レポート

2022年7月11日号

◆先週の市場総括


先週は週初に欧州景気後退懸念が強まりユーロ下落が鮮明に。月曜日に発表されたドイツの貿易収支が1961年以来の赤字となり、天然ガス供給懸念もあって景気後退懸念が広がった。

ユーロドル相場は1.04台前半で始まったが週央には1.01台に下落してこの間の安値を更新した。

ユーロ円相場は週初141円近辺で始まり137円近辺まで大幅下落。

一方、週後半には米国の経済指標が予想よりも強く、過度な景気懸念が緩和。米10年債利回りは2.8%台まで低下していたが3%台を回復した。

ドル円相場は135円近辺で始まり週初はドル高の勢いに支えられ136円を回復したが、リスク回避の円買い戻しに伸び悩み。しかし週後半には135円台後半を中心に上下しながら136円近辺で週末の取引を終えた。

週末に発表された米国の雇用統計は予想より強い内容だった。米国株は底固い値動き。過度な景気後退懸念は緩和したが、長期金利の反発が重石となった。日経平均は底固い米国株やドル高円安にも支えられ26,000円台前半で上下し引けは26,500円近辺。

月曜日の東京市場では日経平均が週末の下げから反発。週末の米ISM製造業景気指数は弱かったものの長期金利が低下したことで米国株が底固く、下落懸念がひとまず後退。一時+300円上昇した。

ただ買い一巡後は急速に伸び悩み、引けは前週末比+218円高の26,153円。

ドル円相場は135円30銭で始まり135円ちょうどを挟んでもみ合い。夕刻にかけては反発して135円50銭に上昇した。

ユーロ円相場は141円10銭で始まり下落して140円70銭~141円ちょうどで上下。夕刻にかけては円安に振れて141円40銭~141円ちょうど。欧州市場に入ると円安が一段と進んだ。

ドル円相場は135円70銭に上昇し、その後は米国市場が休場のなか小動き。

ユーロ円相場も上昇して141円40銭~60銭で上下。

ユーロドル相場は東京市場で1.0420~30で小動き。欧州市場では一時1.0450に上昇したが1.0420に押し戻され総じて動意薄だった。

火曜日の東京市場では日経平均が続伸。米国株先物がアジア時間に堅調に推移、円安が輸出関連株を押し上げ、一時+350円以上、上昇した。ただ26,500円を超えたところでは戻り売りに押され上げ幅を縮めた。引けは+269円高の26,423円。

ドル円相場は135円70銭で始まり136円30銭台に上昇し10銭~30銭でもみ合い。ユーロ円相場は141円20銭台で始まり142円30銭に上昇し142円ちょうど~30銭で上下。

ユーロドル相場は1.0420で始まり1.0430台でもみ合いとなった。欧州市場に入ると欧州株、ユーロが急落した。

ドイツでロシアからの天然ガス供給不安が強まり、エネルギー高による景気後退リスクが高まったとの見方が広がった。

前日のドイツ貿易収支は1961年以来の赤字に転落していた。

欧州株は軒並み急落。リスク回避が強まった。

ユーロ円相場は140円割れに下落して上下。ユーロドル相場は1.03近辺まで下落してもみ合い。ドル円相場も135円50銭台に下落した。

米国市場でもリスク回避が継続。3連休明けの米国市場ではNYダウは一時前週末比▲700ドル安に下落。

原油価格は景気後退懸念で大きく下落し一時97ドル台をつけ引けは99.50ドル。

米長期金利は低下し10年債利回りは一時2.78%をつけた。引けは2.818%。2年債も低下したが2.823%となり、2年債と10年債の利回りは逆転し逆イールドに。景気後退リスクを示した。

景気敏感株、資源株、金融株が売られる一方、金利低下を受けてハイテク株中心に買われた。NYダウは引けにかけて下げ幅を縮めて▲129ドル安の30,967ドルで引け。ナスダックは+194ドル高の11,322ドル。

リスク回避が強まりドルと円が上昇。ユーロは欧州経済懸念から続落。

ユーロドル相場は1.0230~60で上下。ユーロ円相場は139円ちょうど~20銭で上下した。ただ米国株が持ち直しリスク回避が緩和したことで、ユーロドル相場は1.0260台で引け。

ユーロ円相場は139円50銭。ドル円相場は135円台後半で方向感なく大きく上下。引けは135円90銭。ドルインデックスはユーロドル相場が大きく下落したことで106.50に上昇した。

水曜日の東京市場では日経平均は反落。欧州で景気後退懸念が強まったこと、米国で逆イールドが生じて景気後退のシグナルが灯ったこと、などが嫌気された。前日の上昇分を帳消しにして▲315円安の26,107円で引け。

ドル円相場は135円90銭で始まり上値重く大きく上下しながら下落。夕刻には135円ちょうど近辺まで下げ、その後欧州市場でも135円ちょうど~70銭で上下しながら135円割れ。

ユーロ円相場は欧州景気後退懸念、リスク回避から下落が顕著で、139円50銭で始まり上下しながら139円割れ。夕刻には138円20銭に下落した。

その後一時139円20銭に反発したものの欧州市場から米国市場にかけてユーロ全面安となるなか137円を割り込んだ。

ユーロドル相場は1.0260~70近辺で推移したあと1.0170まで下落し直近の最安値を更新した。

ドル円相場はユーロ安ドル高が大きく進むなかドル高の勢いに支えられ136円ちょうどに上昇。その後も136円近くでもみ合い引けた。

発表された米国の求人者数は前月11,681千人から減少したものの11,254千人と予想を上回った。サービス業PMI(6月改定値)は速報51.6から52.7に上方修正。

ISM非製造業景気指数(6月)は前月55.9から55.3に悪化して2年振りの低水準となったものの予想54.5を上回った。

公表されたFOMC議事要旨(6月14日・15日開催分)では、7月の利上げについて0.50%か0.75%とされ、経済の一時的鈍化でもインフレ抑制を図る、とされたがリセッションについて言及はなく、予想の範囲内のタカ派とみられた。

米10年債利回りは2.93%に上昇。2年債は3.01%に上昇して逆イールドが継続。米長期金利上昇がドルを支え。ただユーロ安は一服し1.0180~90で引け。

ユーロ円相場も持ち直し138円40銭。ドルインデックスは107.07に上昇し、直近の最高値を更新した。

米国株がFOMC議事要旨にサプライズなく下落に歯止め。ただディフェンシブ銘柄が買われ、景気敏感株、消費関連株は軟調だった。NYダウは前日比+69ドル高の31,037ドル、ナスダックは+39ドル高の11,361ドル。

原油価格WTI先物は続落し98.53ドル。金相場も1,736ドルまで下落した。

木曜日の東京市場では日経平均が先物主導で大幅高。前日に公表されたFOMC議事要旨で過度な金融引き締めへの警戒感が緩和。アジア時間に米国株先物が堅調に推移したことも支えとなった。

半導体関連にも買い。引けは+382円高の26,433円。

ドル円相場は米国時間まで終日方向感なく136円近辺を中心に上下動。135円90銭台で始まり60銭~80銭で上下。夕刻には一時136円20銭に上昇したが押し戻され、欧州市場終盤には135円60銭~90銭で上下した。

米国市場では米長期金利上昇に支えられしっかり。引けは136円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は138円40銭で始まり138円ちょうどに下落したあとは上下しながら上昇して夕刻には139円ちょうどをつけ、138円台後半で値動き荒く上下した。

欧州市場から米国市場にかけては一転して軟調。引けは138円ちょうど~20銭。

ユーロドル相場は東京市場で1.0180~90ではじまり底固く1.0180~1.0220で上下。ただ欧州から米国市場にかけては下落し1.0150~60で引け安値を更新した。

ドルインデックスは107ポイントちょうど近辺。米国株は主要3指数がそろって上昇。雇用指標が弱かったことで前日からの過度な金融引き締めへの警戒感が緩和した流れが続いた。

NYダウは前日比+346ドル高の31,384ドル、ナスダックは+259ドル高の11,621ドル。

原油価格WTI先物は102.73ドルに上昇。米10年債利回りは3.00%ちょうど近辺。2年債は3.022%で逆―ルドが続いた。

発表された米人員削減数(6月)は32.5千人と前月20.7千人から大きく増加。週次の失業保険新規申請件数は235千人と前週231千人から増加した。

FRBウォラー理事は、7月会合では0.75%の利上げを支持、9月はおそらく0.50%になろう、と述べた。

イギリスではジョンソン首相が辞任を表明。大量の閣僚辞任などで混乱していた政権運営が安定するとの見方から前向きに受け止められポンドは買われた。

金曜日の東京市場では米国株高を受けて日経平均が朝方から堅調。上げ幅は一時+400円に迫った。

しかし昼前に安倍元首相が銃撃されたとの報で上げ幅を急速に縮め、引けは前日比+26円高の26,517円とほぼ安値引け。

ドル円相場は136円ちょうどを中心に上下。その後、安倍氏銃撃の報で円高に振れ135円30銭台に下落した。

ユーロ円相場も138円20銭から60銭に上昇していたが137円50銭に下落。

ユーロドル相場は1.0160で始まり90に上昇していたが1.0160に下落。ただ円高は大幅には進まず。

ドル円相場は135円60銭~70銭で上下。欧州市場に入るとユーロが下落。

ユーロ円相場は136円90銭へ。ユーロドル相場は1.0080まで下落した。ただその後は急速に反発してユーロ円相場は138円70銭へ、ユーロドル相場は1.0170へ。

注目の米国の雇用統計(6月)は強い数字だった。非農業部門雇用者数・前月比は前月+384千人から+372千人と高水準を維持。予想+250千人を大きく上回った。失業率は3.6%で前月と変わらず。

平均時給・前年同月比は前月+5.2%から +5.1%に予想通りやや伸びが鈍化した。

強い数字を受けて過度な景気後退懸念は緩和。一方、急激な金融引き締めが継続との見方から長期金利は上昇。米10年債利回りは3.08%に、2年債は3.105%に。逆イールドは続いた。

ドル円相場は雇用統計発表直後に136円50銭まで上昇。ただその後は136円割れに反落し引けは136円10銭~20銭。

ユーロ安は一服、持ち直し。ユーロ円相場は138円10銭に下落したあと60銭に持ち直して引け。

ユーロドル相場は1.0120に下落したあと1.0190に戻して引け。米国株はまちまち。景気懸念後退が下支えも金融引き締め懸念が上値を抑制。

NYダウは▲46ドル安の31,338ドル。ナスダックは+13ドル高の11,635ドルで引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週後半の米国の経済指標が強めだったことから過度な景気後退懸念が緩和した。今週の指標でも米国経済の強さが示されるか。引き締め強化に耐えられるとの見方となりドルを支えるか。

一方、インフレ高止まりが示されれば景気懸念、引き締め懸念が再燃する可能性もある。

水曜日に消費者物価指数(6月)が発表される。前年同月比は前月+8.6%から+8.8%に加速する予想。コア指数は+6.0%から+5.7%へ上昇率鈍化が見込まれている。

木曜には生産者物価指数(同、前年同月比、予想+10.7%、前月+10.8%)、週次の失業保険申請件数。

金曜日に小売売上高(6月、前月比、予想+0.9%、前月▲0.3%)、NY連銀製造業景気指数(7月、予想▲1.3、前月▲1.2)、鉱工業生産(6月、前月比、予想+0.1%、前月+0.6%)、ミシガン大学消費者態度指数(7月速報、予想50.0、前月50.0)が発表される。

2.ベージュブック(地区連銀経済報告)

水曜日にベージュブックが公表される。7月26日・27日に開催される次回FOMCの議論に際して景気物価動向判断のベースとなる。このところの経済指標は強弱入り混じり、過度な景気後退懸念が緩和しつつも、景気悪化・後退リスクへの懸念は根強い。

当局者は米国経済は強いとしているが、急激かつ強力な金融引き締めは結局のところ景気後退をもたらすとの見方が大勢だ。

数字では判断できない各地の景気状況について、どのような報告となるか。景気減速傾向が明確となるか。強い雇用情勢に変化はあるか。肝心の物価動向について、インフレピークアウトの兆しはみえるか。あるいは高止まりか。

3.中国の経済指標

中国ではなおロックダウンが完全には解除されず景気懸念が強まったままだ。欧州とならび世界景気後退懸念を強めている。今週の指標がさらに懸念を強めるか。ひいては市場全体の慎重姿勢・リスク回避を強めるか。あるいは最悪時からの回復の兆しをみせるか。

水曜日 貿易統計(6月、輸出、前年同月比、予想+12.0%、前月+16.9%、輸入、予想+3.9%、前月+4.1%)

金曜日 6月小売売上高(前年同月比、予想+0.3%、前月▲6.7%)鉱工業生産(同、予想+4.2%、前月+0.7%) 固定資産投資(同、予想+6.0%、前月+6.2%) GDP(4-6月期、前期比、予想▲1.3%、前期+1.3%、前年同期比、予想+1.0%、前期+4.8%)

◆今週のMRA's Eye


ユーロ下落鮮明となりドル全面高

欧州景気の後退懸念がユーロを押し下げている。エネルギー供給懸念・価格高騰が欧州経済にダメージを与えていることが、経済指標でもじわり見て取れるようになってきた。

景況感が悪化していることは欧州に限らず米国においても同様。グローバルな傾向ではある。ただドイツの貿易収支が1961年以来の赤字となったことは衝撃だろう。

ウクライナ情勢はなお解決の糸口さえみえず、むしろ自体は西側諸国にとって悪化している。経済に悪影響を与えるロシア制裁は政府として強化継続せざるを得ないだろう。欧州経済への悪影響がこの先もさらに顕在化する可能性が高まっている。

ECBはFRBに遅れてインフレ抑制姿勢を鮮明にした。量的緩和を7月1日に終了。7月、および9月の会合での利上げは既定路線だ。それによりマイナス金利は解消する見込み。

ただ、利上げ幅については2会合連続で0.50%ではなく0.25%となりそうだ。欧州でもインフレ率が急速に高まったことで、当初はFRBと同様に急速な金融引き締めを行うともみられていた。

しかし経済への悪影響や信用市場のリスクが高まったことで、引き締めの手綱は緩み始めている。政策金利がマイナス金利を脱したあとの利上げ、金融引き締めが見通しにくくなってきた。

一方、米国も景気後退懸念に直面しているが、なお足元の景気は堅調でFRBは金融引き締め姿勢を緩める兆しがみえない。

7月会合では異例の0.75%の利上げを続けるとみられ、9月には上げ幅を縮める可能性はあるがなお0.50%の利上げが実施されるとの見方が大勢だ。

為替市場では各国の金融政策動向を材料に通貨を売買する流れが続いている。振り返れば、日米欧のなかでは、いち早く利上げに転じた米国、ドルが独歩高に。対円、対ユーロともに上昇した。

その後、春以降は、欧州、ECBが遅れて金融引き締め姿勢を明確に。一方の日銀が超金融緩和維持を明確にし、むしろ長期国債購入による長期金利抑制を強化したことで円が独歩安となった。

そして、足元では欧州経済のリスク、ECBの金融引き締め姿勢に疑念が生じユーロが独歩安に。市場全体のリスク回避が強まり円とドルが堅調。クロス円相場で円高が進んだ。

ただドルはなお堅調を維持している。

足元の米国経済がなお堅調を続けていること、FRBが強固な金融引き締めを継続する姿勢を崩していないことがドルの支えに。

さらにこのところのリスク回避の根源が欧州であること、ウクライナ情勢の悪化は「欧州戦争」であるとの認識が、あらためて有事のドル買いをもたらしている。

あるいは、リアルマネーがドル資金に回帰した結果としてドル高をもたらしている可能性がある。

足元でドルが強い根本的な理由は、米国が資源大国・農業大国であり、経済全体の自給率が日欧に比べて際立って高いことだろう。

となるとドルの盤石さが続きそうだ。

しかし通貨の強弱を循環的にとらえれば、やがてドル安円高に振れる可能性もみえてくる。

ドル高>ユーロ安=円安、ドル高=ユーロ高>円独歩安、ドル高>円高>ユーロ独歩安、というのがここまでの循環。

このなかでドル安だけが生じていない。

ユーロ安ドル高が1.00(パリティ)目前まで進んでいるが、ここからさらにパリティ割れに落ち込んでいくのか。それはドル高が続くことを意味するが、そこまでドルが独歩高となりうるのか。

そうした状況では欧州発リスク回避が一段と強まっているとみられるが、投機主導の円売り・円安がそれでも続くのか。リスク回避で円高に転ずることはないのか。

10-12月期に至り、米国景気の減速が一段と明確となり、あるいは景気後退が確実となれば、FRBもいよいよ金融引き締めの手綱を緩めることになりそうだ。金利ピークアウトが意識されるだろう。

現状では金利上昇⇒景気悪化だが、やがて景気後退⇒金利先安感、となる可能性がある。

そうなればドル高がいよいよピークアウト。通貨強弱の循環がいよいよドル安局面となる可能性がある。

当面はユーロドル相場がパリティを割れるのか、底打ち感が生じるか、が注目点。消去法的なドル高の持続性を左右する。

その先は、米国景気の悪化度合い、FRBの引き締め姿勢の緩和がどのように視野に入ってくるか。ドル円相場については、7-9月期はなお高値波乱とみられる。

ただ9月のFOMCでどのような判断がなされるか、その先の金融政策のパスが視野に入ってくるあたりで、基調がドル安円高方向に転ずる可能性をメインシナリオとして念頭に置きたい。


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