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米統計減速で総じて軟調
  • MRA商品市場レポート

2022年7月1日 第2229号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計減速で総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は一部の商品を除いて軟調な推移となった。

注目の米国の個人所得・支出が所得は予想通りだったものの、支出が大幅に減速、インフレのピークアウトを確認する内容だったことから景気の先行きへの懸念が台頭、総じてリスク資産価格は下落することとなった。

なお、恐らくインフレはピークを打ったと考えられるものの、1.上昇ペースの鈍化がFRBが期待する2%に本当になるのか、2.上昇ペースの鈍化であり価格が高い水準を維持する可能性は高く、景気にマイナスになる可能性は高い、と考えられる。やはり年後半から来年前半に掛けては景気減速がメインシナリオとなりそうだ。

また、昨日、米政権がFreeportの再開には外部監査と政府の書面による承諾が必要、と報じられたことで欧州向けの発電燃料供給が減少し、LNGスポット・ガススポット市場がタイト化すると見られ、発電燃料価格は大幅に上昇している。

市場の注目は今後の景気そのものに焦点が当たる。循環的には昨年末に景気はピークアウトしているため減速して行くことに余り異論はないのだが、より話を分かり難くしているのが、ロシアに対する制裁でブーメランのように物価が上がり、それによって欧米とも金融引締めを加速しなければならなくなっている点。

ロシア側も苦しいことに変わりはないが、西側諸国もその「価値観」の維持のために大きな代償を支払っている状況、

なお、先行きは不透明だが、サハリン2に関して「ロシア企業に無償で譲渡する法案にプーチン大統領が署名」と報じられていることは、日本の夏場・冬場に向けたガス調達へのリスクを高めるため、今のところ続報待ちであるが、小さいニュースではないと見ている。

【本日の見通し】

本日も景気に焦点が当たり多くのリスク資産価格には下押し圧力が掛かる展開が続くと予想されるものの、本日から新しい四半期に入る、ということもあってこれまでポジションを落とし続けてきたファンド勢の買いが入ると予想され、底堅い推移になるとみている。

本日注目の材料は、米ISM製造業指数。市場予想は54.5(前月56.1)と減速見込みであるが、これは恐らく予想通り減速するだろう。

より注目しているのが新規受注で市場予想は52.0(前月55.1)と50の閾値を維持すると見ているが、減速幅が大きくなってきているためこの水準にも注目したい。

あと、本日は英国から中国への香港返還25周年記念の式典が行われ、習近平国家主席が出席する予定。一応祝賀行事であるため、あえて西側諸国を刺激するような発言は出ないと思われるため念のためチェック、という程度だろうか。

【昨日のトピックス】

6月の中国製造業PMIは50.2(前月49.6)と市場予想の50.5は下回ったが、前月からは回復、先月の予想通り閾値の50も上回り、ロックダウン解除後の中国経済が回復を始めていることを確認する内容だった。

内訳を見ると、需要の指標である新規受注が48.2→50.4と50を回復、輸出向け新規受注は50こそ下回ったが46.2→49.5と回復した。これを受けて生産も52.8(49.7)と回復。経済活動が再開していることを示唆している。

サプライヤー納期は51.3(44.1)と需要回復による需給逼迫と前向に捉えたいが、どちらかと言えば需要が回復する中でコロナの影響によるサプライチェーンの回復遅れのリスクが顕在化した、と考える方が適切か。

米国の金融引締め、中国のロックダウンの影響で多くのリスク資産価格が下落した影響で、購買価格は52.0(55.8)と2ヵ月連続で低下、最終消費の弱さから販売価格は46.3(49.5)と閾値を下回った状態が続く。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは急回復。完成品が1.037(0.978)、原材料が1.048(1.006)と完成品・原材料とも閾値の1を上回った。需給はタイトであり特に中国の消費シェアが大きい鉱物資源価格の上昇要因となろう。

規模別の製造業PMIを見てみると、大企業が50.2(51.0)と減速、中堅企業(49.4→51.3)、中小企業(46.7→48.6)は回復。より小規模な企業に配慮した政策の影響が出ていると見られる。

政府が掲げる5.5%成長を達成するために、今後資金繰り支援やその他の対策は既に対応済みであり、鉱物資源価格には上昇圧力が掛ると予想される。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。OPECは想定通りの現状維持(予定通りの増産実施)となり、新味がない会合だったが、景気の先行きを悲観する市場参加者が増える中で地合は軟調であり、夜間に発表された米統計の減速がさらに価格を下押しした。

Uralなどのロシア産原油からBrentなどのその他の原油へのシフトはつづいており、現在の原油価格の実力値の指標である「BrentとUralの平均値」は100.3ドル。

OPECプラスは想定通り、前回会合で決定した内容を踏襲した。恐らくバイデン大統領と直接面談してからでないと、自主増産も含めて追加増産は行われないだろう。

次の焦点は8月3日の次回会合。ただ、追加増産を決定すれば増産余力が削られるため、需要が減少していなければ逆に価格の上昇要因となる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態にあると考えられる。

今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが「期待」されるが、逆にサウジアラビアやUAEが増産に応じると「増産余力がなくなる」として逆に買い材料とされる可能性もある。

即時増産可能国として期待していたイランはもう西側諸国の要請で増産することはないだろう。ロシア・中国とタッグを組むことはほぼ確実な情勢だからだ。

仮に増産したとしても、それは東側諸国に提供されることになるため、西側諸国のベンチマーク原油価格の下落には寄与しないのではないか。

となると、結局、米国の増産が必要になってくるが、オイル・メジャーはクラックスプレッドが空前の水準に達しており、需要も落ちていないため増産せずとも利益が確保出来ること、脱炭素派の強い牽制の動きを受けて製油所のキャパシティの拡大にも慎重になっていること、から、なかなか増産が始まらない。

教科書的には人とモノの確保が出来ないことが原油増産の遅れの要因と整理されるものの、ややうがった見方かもしれないが、環境面に厳しくオイル・メジャーを目の敵にしてきたバイデン大統領率いる民主党が「中間選挙で敗北した後に」増産に転じるのではないか。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(↓)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      グローバル・リセッションの場合 (↓↓)Q323~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米景気の先行きへの懸念が強まっていることから軟調推移を予想するが、同時に供給面の制限が解消していないことから結局高値を維持の公算。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。米当局がFreeportの再開に関して、外部監査と政府の書面による承諾が必要、としたことで供給再開の遅れが懸念されたことが材料となった。

ノルドストリームの稼働をロシアが回復させる保証はなく、先行きの供給への不安は高まったまま。

これまで順調に増加していた欧州のガス貯蔵施設へのガス注入量は急速に減少しており、夏場は欧州の場合影響が緩和されるにしても、冬場に向けた在庫の積増しは容易ではなくなってきている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州全体のガス在庫は6月26日時点で57.6%(前日57.3%)と増加。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

域内の電力供給が一番に取り上げられて報じられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて、世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、3.も顕在化している状況。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年末とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。なお、LNGターミナルの再稼働は外部監査を必要とする、という政府方針を受けてさらに出荷回復に遅れが出そうな状況だ。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。

6月20日~6月26日の世界のLNGトレードだが、取引量は778万トン(前週694万トン)と増加した。スポット取引のシェアは31%(前週28%)と上昇。

スポット契約は北欧向けが+54万トンの増加で、トルコとスペインの輸入が増加、南アジア向けの輸出もインドの輸入増加で前週比+25万トン。

一方、ターム契約分の調達は、北欧向けの出荷が+22万トンの増加で主に英国の輸入増加によるもの。JKCTはほぼ先週と変わらずだった。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は暴落した。米当局がFreeportの再稼働に関して外部監査と、同政府の書面による許可なしに再開することは出来ない、としたことで輸出再開に暗雲が立ちこめたことが材料となった。また、国内の個人消費関連統計の減速も売り材料となった。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は上昇し、今冬の価格は40ドルを超えた。米Freeportの輸出再開に、外部監査と政府の書面による承諾が必要、と報じられたことでさらに輸出再開に時間が掛ると判断されたことが、LNGカーゴ市場のタイト化観測を強めた。

中国北部は猛暑が始まり、ロックダウンによる景気減速の影響を緩和させる目的で経済対策が大規模に行われる可能性があることを考えると、今後、夏場~冬場にかけての価格リスクは上向きだろう。

なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

6月26日時点の日本の発電用LNG在庫は215万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを大きく下回っている。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の電力供給不足のリスクは高いが、ロシア政府によるサハリン2の強制接収の可能性も考えると、日本にとって夏場以降のガス調達、仮に出来たとしても価格面でのリスクは残る状況。

本日も供給面で消費者にとって状況が改善すると考え難く、米国のガス供給再開の遅れ、サハリン2の強制接収の可能性も考えると、日欧の天然ガス価格は高値維持の公算、HHは逆に低下余地を探る動きに。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップは小幅に上昇して400ドル近辺での推移が続いている。北半球の猛暑や、欧州が石炭火力使用に舵を切り直していることで、海上輸送炭市場需給が逼迫する、との見方が価格を高止まりさせている。

カロリーの高いロシア産石炭の西側諸国への供給停止により、高品位炭を求める動きが強まっていることが、豪州炭価格の押し上げ要因となっている。

基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念が価格を押し上げている状況。

なお、BPデータを元にすると豪州の2020年の生産量は熱量ベースで12.42エクサジュール、消費が1.69エクサジュール、輸出が9.25エクサジュールとなっており、国内消費のシェアはそこまで大きくないが、何らかの影響が出ていることは事実だろう。

中国政府は2022年の石炭生産目標は1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。

また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。

ロックダウンの影響から完全に脱して言いないことで、輸入需要が減少していると考えられるが、

1.中国政府は大規模な経済対策を実施の方針であること2.懸念していた猛暑が既に始まっていること3.南半球は寒波の影響を受けていること

から中国の国内供給は不充分であり、海上輸送炭市場がタイト化する可能性は高まっている。

日本も今年の夏は猛暑見通しであり、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

特に、高品位なロシア炭の供給停止はカロリーベースで競合しやすい豪州炭などの価格を押し上げやすいことも、日本が主に輸入している豪州炭価格を押し上げることになろう。

米国でも夏場の電力供給不足への懸念が指摘されていたが、Freeportの事故の影響もあって結果的に域内供給が間に合う可能性は出てきた。結局、ほとんどの資源に恵まれる米国は強いと言わざるを得ない。

本日も発電燃料供給を巡る環境の改善が見込めない中、まだ景気の減速が顕在化していないこと、ガスが政治的な理由と不慮の事故により供給不安となっていることから石炭価格は高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて下落した。中国製造業PMIの改善はあったものの、足下、非鉄金属価格に対する説明力が高い株価と期待インフレ率が、弱めの米統計を受けて低下、四半期末を控えたファンド勢と思しき売りで下落した。

一昨日のニュースだが、英政府はNorilsk NickelのポターニンCEOに対する制裁を決定した。同氏に対する制裁は報復も相まって、ニッケル・パラジウムの供給懸念を想起させる。

実際、ロシアのオリガルヒでRusalをグループに保有するデリパスカ氏が制裁を受けた際、アルミ価格は高騰している。

非鉄金属セクターは当面、景気に焦点が当たっているため、特に米金融政策動向と、中国情勢が重要になっている。

今後は、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。最も重要なのが長期のトレンドだが、脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期入り、といった材料を考えるとやはり鉱物資源需要は増加し、価格には構造的な上昇圧力が掛かりやすい。

中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ123・Q223あたりが景況感の底になると考えられ、当面調整圧力が掛かることになる。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わないとすると、景気後退入りはQ323からとなり、この場合はQ124に回復基調に戻る展開が想定される(欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているところが多い)。

短期的に非鉄金属価格が上昇するには、1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)、2.株価が上昇すること、3.期待インフレ率が上昇すること、が揃う必要がある。

いずれか1つでも顕在化すれば価格は上昇すると見るが、上昇の度合いは1~3がどの程度揃うか、に依拠しよう。

そのように考えると、2.3.はむしろ年末に向けてもう一段の調整がある、という見方が強まっており、可能性という意味では1.しかない。

1.に関しては政権維持のために習近平国家主席も必死と考えられ、これまで計画している経済対策が今後、顕在化する可能性が高いと。短期的には恐らくこの四半期以降、上昇余地を探る展開になるのではないか。

そうなると、夏場は1.>2.3.、となり、年後半は1.<2.3.という展開が想定され、非鉄金属価格は一旦上昇した後、中期的な見通しの通り、年後半から年初にかけて再度調整があると考えるのが自然である。

本日は新しい四半期入りしたこともあり、中国の経済対策実施を期待した買いで一旦買い戻しが入ると考えるが、株価動向次第の面も否めず、戻りは緩慢と予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は続落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は直近限月が下落、中心限月が上昇した。

中国政府による景気刺激策への期待、製造業PMI、建設業PMIの改善を受けて経済活動再開期待が高まっていることが鉄鋼製品価格を押し上げたが、同時に鉄鋼業PMIは悪化しており、まだ回復には時間がかかるとみられている。

6月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は36.2(前月40.9)と2ヵ月振りに悪化し、中国の鉄鋼業の業況が低迷していることを確認する内容だった。エピデミックの影響がまだ残存しており、鉄鋼業界の回復は緩慢。

新規受注は25.9(32.4)と大幅低下、輸出受注が47.1(40.9)と回復しているが、国内の需要の戻りが弱いことを示唆している。生産も需要の回復が緩慢であることから34.1(42.7)と再び急低下した。

今後は中国政府の経済対策期待や、ロックダウン解除に伴うペントアップ需要の積み上がりで新規受注や需要は回復すると期待される。中国の鉄鋼需要を牽引してきたのは建設セクターだが、6月の建設業PMIは56.6(前月52.2)と回復している。

しかし、完成品在庫(49.9→48.0)、原材料在庫(36.6→36.9)と在庫の水準がさほど変わらなかったこともあり、新規受注完成品レシオは0.54(0.65)と低下、原材料も0.70(0.89)といずれも閾値の1を下回り需給は緩和した状態にある。

7月は季節的に中国の経済活動が鈍化するタイミングであるため、中国政府の対策期待はあるものの鉄鋼製品・鉄鋼原料価格の戻りを緩慢なものにすると予想される。

本日は、中国の経済活動の再開期待を受けた鉄鋼製品価格の上昇を受けて、堅調な推移を予想する。ただし中国の公共投資の実施まで「戻りを試す」程度であり上昇余地も限定か。

◆貴金属

昨日の金価格は続落した。名目金利の低下はあったが原油価格の下落を受けて実質金利が下げ渋ったこと、株価調整を受けた「他商品での利益確定の動き」が見られたことがいわゆる安全資産需要を後退させたことが背景。

金の基準価格は1,111ドル(前日比+10ドル)、リスク・プレミアムは694ドル(▲20ドル)

銀価格もほぼ金と同じ相場展開だったが金以上に下落。株価の調整が影響したとみられる。PGMも同様だったが、英政府がNorilsk NickelのポターニンCEOに対する制裁を決定したことで、PGMの供給リスクが意識されたことが下げ幅を削った(特にパラジウム)。

過去に、ロシアのオリガルヒでRusalをグループに保有するデリパスカ氏が制裁を受けた際、アルミ価格は高騰している。

南アフリカ最大かつ寡占の電力会社Eskomは30日の14時から深夜まで、ステージ6の負荷制限を実施、1日の5時までステージ4を実施することを決定した。

同社の電力供給状況は制限が続いており、PGM生産者への電力供給減少もPGM価格の押し上げ要因となる。ただ、南アのPGM生産者は過去の停電の影響に対する対策で自家発電を強化しているため、即時に生産に影響が出るとは見ていないが、長期化した場合にはこの限りではない。

本日の金価格は、米景気減速に伴うインフレ率の減速観測が強まっていること、株下落に伴う「利益確定」の動きが強まっていることから軟調な推移を予想。

銀・PGMに関しては株価に調整圧力がかかりそうな地合であり、軟調推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。

トウモロコシは注目の確定作付面積が、8,992万エーカーと、市場予想の8,977万エーカーを上回ったことが売り材料視された。また、米経済統計の減速を受けた原油価格の下落、さらにそれを受けたガソリン価格の急落を受けてエタノール向けの需要減少観測が強まったことで大幅に下落した。

大豆は上昇した。逆に、確定作付面積が8,833万エーカーと、市場予想の9,060万エーカーを大きく下回ったことで需給逼迫観測が強まったことが背景。

小麦は大幅に下落。ロシア海軍が黒海のウクライナ領「蛇島」からウクライナの穀物輸出を妨げていないことを示すため、として部隊を引き揚げたとロシア国防省が発表。

ただ、これに先駆けてウクライナ軍は大規模な攻撃でロシア軍が撤退、と報じており、どちらが正しいかは分からないが輸出が可能になる可能性が高まったため供給懸念が緩和したことが背景。

また、確定作付面積も4,709万エーカーと、市場予想の4,697万エーカーを上回ったことも売り材料となり、長らく維持してきた200日移動平均線を下回った。

本日は昨日の下落が大きかったことから実需の安値拾いの買いで一旦上昇すると考える。ただこれまでタイトとされてきた需給バランスも「やや」緩和の方向性が見えてきており、戻りも鈍いと考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・渇水に拠る水不足や猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオか)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
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