パウエル発言を受けてまちまち
- MRA商品市場レポート
2022年6月30日 第2228号(簡易版)商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「パウエル発言を受けてまちまち」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格はまちまちとなった。パウエル議長がECBフォーラムで「現在はインフレの抑制が最優先」で有ることを繰返し協調。FRBのデュアル・マンデートである雇用を多少犠牲にしてでもインフレを抑制する、との見方が景気循環系商品価格を下押しした。
ファンダメンタルズがタイトと考えられる農産品は広く上昇、非鉄金属には割安感からの打診的な買いが入り上昇した金属が散見され、実質金利の上昇もあって金銀は下落した。
足下、景気循環系商品の代表選手であるエネルギーと工業金属ではやや動きに乖離が見られた。これは最大消費国が米国であるか、中国であるかの違いに拠る。
中国政府は3期目を盤石にしたいと考えている習近平国家主席の意向もあって対策が積極的に行われる見通しであり、先行きの方向性は少なくとも党大会までは上向きになりやすい。
一方、エネルギーに関しては最大消費国である米国が、景気を多少犠牲にしても需要を鈍化させて需給をバランスさせる、と発言しており先行きの方向性は下向きである。
ただ、米国の金融引締めの影響が非鉄金属価格に全く影響しないわけではなく、仮にFRBの思惑通り期待インフレが制御出来るのであれば、非鉄金属価格にも下押し圧力が掛かりやすい。
【本日の見通し】
本日も方向感に欠ける展開が予想されるが、市場参加者の注目はOPECプラス会合に集まっていると考えられる。
しかし、OPECプラスでは「まだバイデンとムハンマド皇太子の面談」が終っていないことから、このタイミングで何らかの決議が行われるとは考え難いため、恐らく影響は中立だろう。
もし仮に増産に踏み切った場合、まだ明確な需要の減速が確認されていないため、逆に「生産余力不足」が意識され、むしろ買い材料となるリスクは無視できない。
また、工業金属価格動向を占う上で重要な中国製造業PMIにも注目しているが、市場予想は50.5(前月49.6)と、ロックダウンの解除と政府の対策への期待から回復が見込まれており、工業金属価格の押し上げ要因になると考えられる。
株式市場動向を睨みながら神経質な推移となるが、大きな流れでは「景気を減速(場合によってはリセッションも含む)させることでインフレを抑制する」方針に変わりはないことから、基本的には軟調な推移となりやすい。
この他、注目は米国の個人消費とコアPCE価格指数。市場予想では個人所得が前月比+0.5%(前月+0.4%)、支出が+0.4%(+0.9%)が見込まれており、特に支出の伸び鈍化があるかどうかに注目している。
また、価格デフレーターは総合指数が前月比+0.7%(前月+0.2%)、前年比+6.4%(+6.3%)と上昇ペースが加速する見通しだが、コアPCEデフレーターは前月比+0.4%(+0.3%)、前年比+4.8%(+4.9%)とやや鈍化が見込まれている。
【昨日のトピックス】
NATOはスウェーデンとフィンランドの加盟を認めた。これにあたり両国は、トルコが要求していた政治的に対立するクルド人の支援打ち切りや、クルド人活動家の引渡しを加速させることを盛り込んだ。
両国は人道面でクルド人を擁護していただけに、この決断は重い。それ以上にロシアの軍事的な侵攻への懸念が大きかった、と考えられる。
しかし、今回の決断は人権問題ももちろんだが、今回の決定で世界最大規模の少数民族(3,000万人いるとされる)であるクルド人に、ロシアが接近する可能性が出てきた。
クルド人はイラク・シリア・トルコ・イランにまたがって生活しており、これらの地域がロシアの影響を受ける可能性がある。実際、クリミア半島をロシアが接収した際に、ロシアはクルド人勢力に秋波を送っている。
敵の敵は味方、の理屈で再び中東北東部の治安が悪化し、周辺諸国に波及するリスクは無視できないのではないか。
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