エネルギーは上昇・非鉄は軟調
- MRA商品市場レポート
2022年6月29日 第2227号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「エネルギーは上昇・非鉄は軟調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格はエネルギーや自国通貨建てのその他農産品などが上昇したが、LME非鉄金属価格は下落した。
米コンファレンスボード消費者信頼感の悪化を受けて株価は調整、長期金利は低下、リスク回避的な動きが強まる中で、景気循環系商品価格には下押し圧力が掛かりやすい地合だったが、供給面での問題が根強いエネルギーセクターと穀物セクターは大きな上昇となった。
昨日発表のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回り、米国の景況感が悪化していることを確認する内容だった。結果は98.7(市場予想 100.0、前月改定 103.2)、現況指数 147.1(147.4)、 期待指数 66.4(73.7)と圧倒的に将来の悪化懸念が強い。
6ヵ月後の景況感の予想でも、ビジネス環境の改善期待が14.7(16.4)であるのに対し、悪化は29.5(26.4)となっており、先行きヘの懸念は強まっている状況。
なお、注目していたリッチモンド連銀製造業指数の新規受注は▲26(▲16)と大幅に減速しており、需要の減少観測が強まっていることがこちらの統計からも確認できる。
今後、景気を悪化させることでインフレを抑制しようとしている米FRBや米政府の戦略通りであれば、個人消費はさらに減速が懸念される。
【本日の見通し】
本日も株式市場動向を睨みながら神経質な推移となるが、大きな流れでは「景気を減速(場合によってはリセッションも含む)させることでインフレを抑制する」方針に変わりはないことから、基本的には軟調な推移となりやすい。
本日の予定では、FRB議長、ECB総裁がECBフォーラムでパネル討論会に参加予定であり、現状のインフレについてどのような発言があるかに注目しているが、恐らく目新しいコメントは出てこず、タカ派な発言に終始すると考えられる。
この他、NATO首脳会議も「ロシアを刺激する」という観点から注目している。場合によってはロシアの嫌がらせでいくつかの資源供給が制限される可能性もある。
また、OPECプラス会合も注目だが、恐らく今回の会合では新しい決定はないと考える。
【昨日のトピックス】
昨日首脳宣言が発表されたG7は「まあそうなるだろう」という内容の声明が発表された。
具体的には
1.ロシア産原油価格に上限を設定2.中国に対してロシアのウクライナからの即時撤退を求めるよう要求3.東・南シナ海の状況を懸念、一方的な現状変更に反対4.台湾海峡の両岸問題の平和的な解決を促す5.気候変動クラブの年内設立6.途上国のインフラ投資に6,000億ドル拠出7.途上局の食料の安定供給に45億ドルを追加拠出
といった内容で、これまで中国が欧米先進国を出し抜いて続けてきた途上国の囲い込みを遅ればせながら実施すること、いままで「経済的な見返りをもらっているから」あるいは「地理的に遠いから」という理由で放置してきた中国の覇権主義を強く牽制する内容といえる。正直、後手に回った感は否めない。
これと時を同じくして、BRICSにイランが加盟することを表明、日本はNATO会議に初めて参加、NATOとの連携を強める方針に化時を切った。
上記は、欧米先進国と日本は対東側諸国との対立の構図がこれまでよりも鮮明になることは明らかであり、東西が分裂していた1989年前ほどの強い東西分離にはならないとは思うが、やはりブロック経済化が進む、と考える方が自然である。
中露を強く牽制することになったため、日本は対立する2つの核保有大国と対峙せざるを得なくなり、エネルギーや各種製造業が必要な部材の調達の安定性が脅かされる可能性は高い。サプライチェーンや輸送航路の再検討は必須事項となるだろう。
また、当たり前の様に中露の軍艦が津軽海峡を通過している状況、北海道はロシアの一部だ、と臆面もなく発言するロシア高官のスタンスをみるに、そもそも最も力を入れてきた北方の防衛力のさらなる強化は、沖縄を含む南方の防衛力強化と合わせて、重要な課題となるだろう。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。既に顕在化しつつある材料だが、リビアとエクアドルなどの供給減少の懸念、仮にサウジ・UAEが欧米の要求を受け入れて増産したとしても、逆に余剰生産能力の減少が意識されること、などが上昇要因となった。
引き続き、需要の減速がまだ明確に見られない中で供給面が材料視されている状況。
「BrentとUralの平均値」は101.2ドルと、昨日の98.1ドルから上昇。特に昨日はウラル原油の上昇が顕著だった。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態にあると考えられる。
今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが「期待」されるが、逆にサウジアラビアやUAEが増産に応じると「増産余力がなくなる」として逆に買い材料とされる可能性もある。
恐らくこの状況を打破するには、米国の増産が必要になってくるが、オイル・メジャーはクラックスプレッドが空前の水準に達しており、需要も落ちていないため増産せずとも利益が確保出来ること、脱炭素派の強い牽制の動きを受けて製油所のキャパシティの拡大にも慎重になっていること、から、なかなか増産が始まらない。
教科書的には人とモノの確保が出来ないことが原油増産の遅れの要因と整理されるものの、ややうがった見方かもしれないが、環境面に厳しくオイル・メジャーを目の敵にしてきたバイデン大統領率いる民主党が「中間選挙で敗北した後に」増産に転じるのではないか。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル
2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル
3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル
4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル
5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル
7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル
9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。
2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。
現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓) リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)
※矢印の向きは価格の方向性。
本日はOPECプラス会合が予定されているが、ロシアに対する配慮で大きく方向性は変わらないだろう。
サウジアラビア・UAEがOPECプラスの決定とは別にボランティアベースで増産をする可能性はあるが、それをするにしてもバイデン大統領との会談以降になると考えられるため本日はサプライズはないと考える。
なお、システム改修の遅れで発表が遅れていた米石油統計が今晩発表される。市場予想は原油在庫の▲0.1MBの減少が見込まれているが、朝方発表のAPI統計では▲3.8MBの減少が確認されており、想定外に原油に強気な統計となる可能性があり、OPECプラス会合の結果も含めて、本日は上昇余地を探る展開を予想。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は小幅に下落した。TurkStreamを通じた出荷はメンテナンス終了後に再開され、ガス供給への懸念が若干緩和したことが背景。
ただし、ノルドストリームの稼働をロシアが回復させる保証はなく、先行きの供給への不安は高まったまま。
また、フランスでは電力会社がストの影響を受けており、出力が低下、電力価格が高騰している。このタイミングでのストライキは最悪であろう。
これまで順調に増加していた欧州のガス貯蔵施設へのガス注入量は急速に減少しており、夏場は欧州の場合影響が緩和されるにしても、冬場に向けた在庫の積増しは容易ではなくなってきている。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
欧州全体のガス在庫は6月26日時点で57.0%(前日56.5%)と増加。
域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。
仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。
ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は
1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減
によってガス在庫を積み上げるしかない。
域内の電気供給が一番とりあげられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて、世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。
現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)
日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。
「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。
現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、3.も顕在化している状況。
Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。
報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。
なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。
これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。
6月20日~6月26日の世界のLNGトレードだが、取引量は778万トン(前週694万トン)と増加した。スポット取引のシェアは31%(前週28%)と上昇。
スポット契約は北欧向けが+54万トンの増加で、トルコとスペインの輸入が増加、南アジア向けの輸出もインドの輸入増加で前週比+25万トン。
一方、ターム契約分の調達は、北欧向けの出荷が+22万トンの増加で主に英国の輸入増加によるもの。JKCTはほぼ先週と変わらずだった。
LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。
このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米国天然ガス先物市場は上昇した。米国の気温上昇予報を受けて。なお、週次の在庫統計で米国の天然ガス在庫が低水準のままであることが確認されており、Freeportの事故で輸出が減少しているものの、米国のガス不足の解消にはまだ時間の要する。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物は小幅に上昇し、高値を維持した。欧州のガス輸入需要の増加と、米国の猛暑の影響によるさらなる輸出減少観測が価格を押し上げている。
Freeportの供給停止、ロシアの欧州向けのガス供給大幅削減など、スポットカーゴ市場がタイト化する材料は多い。
唯一の救いは中国がロックダウンの影響から脱却出来ておらず、輸入需要がそれほど盛り上がっていなかったこと。
しかし、中国北部は猛暑が始まり、ロックダウンによる景気減速の影響を緩和させる目的で経済対策が大規模に行われる可能性があることを考えると、今後、夏場~冬場にかけての価格リスクは上向きだろう。
なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。
6月19日時点の日本の発電用LNG在庫は229万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。
今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。
本日も供給面で消費者にとって状況が改善すると考え難く、日欧の天然ガス価格は高値維持の公算、HHは現状水準でもみ合うと予想。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。
◆石炭
豪州石炭スワップは上昇して400ドルに迫った。G7で現状の需給タイト化を緩和するような対策がすぐに打ち出せる訳ではなく、中国が猛暑となっていることに伴う国内供給不安、欧州の石炭輸入増加観測を受けて高値での推移となった。
また、カロリーの高いロシア産石炭の西側諸国への供給停止により、高品位炭を求める動きが強まっていることが、豪州炭価格の押し上げ要因となっている。
これに加え、ガス供給が制限され、原子力やその他のエネルギーの使用増加も期待できない中では、比較的資源が偏在している石炭は代替燃料となりやすい。ドイツはこの数日間、石炭火力の比率を引き上げている。
基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている状況。
中国政府は2022年の石炭生産目標は1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。
なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。
また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。
ロックダウンの影響で輸入需要が減少していると考えられるが、
1.中国政府はロックダウン時の景気減速を取り返すべく、大規模な経済対策を実施の方針であること2.懸念していた猛暑が既に北半球で始まっていること3.南半球は寒波の影響を受けていること
から国内供給では不充分であり、海上輸送炭市場がタイト化する可能性は高まっている。
日本も今年の夏は猛暑見通しであり、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。
特に、高品位なロシア炭の供給停止はカロリーベースで競合しやすい豪州炭などの価格を押し上げやすいことも、日本が主に輸入している豪州炭価格を押し上げることになろう。
米国でも夏場の電力供給不足への懸念が指摘されていたが、Freeportの事故の影響もあって結果的に域内供給が間に合う可能性は出てきた。結局、ほとんどの資源に恵まれる米国は強いと言わざるを得ない。
本日も発電燃料供給を巡る環境の改善がない中で、ガスが政治的な理由と不慮の事故により供給不安となっていることから石炭価格は高値維持の公算。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格はニッケル・亜鉛を除き下落した。価格に対する説明力が高い米国株が調整したこと、リスク回避のドル高が続いたことが四半期末も控えた手仕舞い売りをさらに加速する形となった。
ニッケル・亜鉛は売られすぎによる買い戻しと考えられるが、多くの非鉄金属が短期的に売られすぎであることは事実。
非鉄金属セクターは目立った固有の材料に乏しく、金融市場動向に左右される展開が続いている。そもそも価格の下落は中国のロックダウンと、解除後も回復がままなっていないことを受けた実需の減少観測が前提となる。
しかし、それ以上に価格に対する説明力が高くなっている株価や期待インフレ率の動向を見ると、昨日はどちらも価格面でネガティブに作用した。
今後を考える上では、短期・中期・長期で分けて考える必要がある。まず最も気にすべきは長期のトレンドだが、脱炭素、脱ロシア、インドの人口ボーナス期入り、といった材料を考えるとやはり鉱物資源需要は増加し、価格には上昇圧力が掛かりやすい。
中期的には景気の循環によって、恐らく来年のQ123・Q223あたりが景況感の底になると考えられることから調整圧力が掛かることになる。
ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わないとすると、景気後退入りはQ323からとなり、この場合はQ124に回復基調に戻る展開が想定される。
今はむしろ、欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているようだ。
非鉄金属価格が反転上昇するには、1.中国の経済活動が回復すること(必要条件)、2.株価が上昇すること、3.期待インフレ率が低下すること、が揃う必要がある。
いずれか1つでも顕在化すれば価格は上昇すると見るが、上昇の度合いは1~3がどの程度揃うか、に依拠しよう。
そのように考えると、2.3.はむしろ年末に向けてもう一段の調整がある、という見方が強まっており、可能性という意味では1.しかない。
、1.に関しては政権維持のために習近平国家主席も必死と考えられる為、これまで計画している経済対策が夏場以降、顕在化する可能性が高いと考えられることから、短期的には恐らく新しい四半期に入ってから、上昇余地を探る展開になるのではないか。
そうなると、夏場は1.>2.3.、となり、年後半は1.<2.3.となると予想され、非鉄金属価格は一旦上昇した後、中期的な見通しの通り、年後半から年初にかけて再度調整があると考えるのが自然である。
一方、上述の通り非鉄金属は全体的に売られすぎであり、株価やインフレ率との連動性の高さを考えると足下の価格変動のドライバーは金融面、と考えるのが妥当であり、恐らく一旦は買い戻しが入りやすい。
本日は目立った手がかり材料に乏しいが、売られ過ぎからの買い戻しと、四半期末を意識した売りで堅調ながらも上値が重い展開を予想する。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は続落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は上昇した。
中国が外国からの入国者の隔離期間を短縮する、との報道を受けて経済活動の再開が早まるのではとの期待が鉄鋼製品価格を押し上げ、それにつれて鉄鉱石価格も下落した。
原料炭は高値での推移となっていたが下落し、海上輸送炭に関しては燃料炭価格を下回る水準となった。まだ中国の製鉄所の稼働が本格化していないことが影響していると見られる。
本日は、中国の経済活動の再開期待を受けた鉄鋼製品価格の上昇を受けて、堅調な推移を予想する。ただし中国の公共投資の実施まで「戻りを試す」程度であり上昇余地も限定か。
◆貴金属
昨日の金価格は下落した。米実質金利が期待インフレ率の低下で上昇したことやドル高の進行などが材料となった。
金の基準価格は1,101ドル(前日比▲14ドル)、リスク・プレミアムは718ドル(+11ドル)
銀価格もほぼ金と同じ相場展開だったが金以上に下落。株価の調整が影響したとみられる。PGMも同様だったが南アフリカのEskom労働者の暴動による電力供給停止が多少影響し、前日比小幅なプラスで引けた。
昨日、南アフリカ最大かつ寡占の電力会社Eskomはステージ6の停電の可能性を指摘している。労使交渉が決裂し、労働者が役員の家に火炎瓶を投げ込むなど抗議行動が激化しており、発電に著しい影響が出ている。
南アのPGM生産者は過去の停電の影響に対する対策で自家発電を強化しているため即時に生産に影響が出るとは見ていないが、長期化した場合にはこの限りではない。
本日の金価格は、米景気の先行き懸念が長期金利の低下を促すと考えられるが、同時に期待インフレ率にも下押し圧力が掛かると予想されるため、結局高値での推移を予想。
銀・PGMに関しては株価に調整圧力がかかりそうな地合であり、軟調推移を予想。
◆穀物
シカゴ穀物市場は上昇した。トウモロコシ・大豆・小麦とも作況が低迷しており今年の終了への懸念が強まる中、一昨日発表された米週間輸出検査でいずれも輸出が増加していたこと、テクニカルに売られすぎが強まっていたことから買い戻しが入った価値。
ファンダメンタルズを強く意識した、テクニカルな買い戻しによるもの、と考えるのが妥当だろう。
これまで、リスク回避でこれまで買いを入れてきた投機資金が手仕舞いを強めていると考えられるが、需給ファンダメンタルズが改善(需給緩和)している訳でもないことから、これまでの調整幅の大きさを考えると買いが入りやすい。
なお、日本時間の7月1日未明に発表される最終作付面積に注目が集まっているが、トウモロコシは8,977万エーカーと、3月末に発表された作付意向面積である8,949万エーカーから若干上方修正の見込み。
大豆の作付面積は、意向面積が9,096万エーカーのところが9,060エーカーに減少すると予想されている。
小麦に関しては4,735万エーカーが4,697万エーカーへの減少が見込まれている。
本日もテクニカルな買い戻しが続き、堅調推移を予想。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。
・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・渇水に拠る水不足や猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオか)。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
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