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米統計を受けてエネルギー上昇 鉱物資源価格調整続く
  • MRA商品市場レポート

2022年6月27日 第2225号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計を受けてエネルギー上昇 鉱物資源価格調整続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は原油価格を始めとするエネルギーが上昇、その他農産品などが物色され、引き続き工業金属が売られる流れとなった。

昨日発表された米経済統計が「低インフレと景気がさほど悪化していない可能性」を示唆する内容で、最大消費国の米国の金融引締め鈍化期待がリスクテイク意欲を一時的に回復させたことが影響したようだ。

ただしこれに対して鉱物資源の価格は安い。このことは、鉱物資源の最大消費国である中国の景況感改善が、政府の頑ななゼロコロナ政策の影響で遅れており、このままだとリセッションも意識されかねない状況であることが、地合を弱気にしている。

しかし、これは共産党政府も認知しているところであり、大規模な経済対策が打たれる見込みであることから、こちらに関してはエネルギーのように反発するまではまだ時間が掛りそうだ。

こうした米国・中国の状況や政策の方向性の違いを反映した相場だったといえる。

なお、このコラムでは繰り返し指摘しているが、今年はラニーニャ現象で異常気象が発生しやすい。日本は既に気温が上昇を始めているが、お隣の中国では山東省など40度を超えており、電力需要は前年比+11%の増加となっている。

また、南部では洪水が発生しており、送電線の維持に苦慮していると報じられている。

今後、夏が本番を迎える中で、「生活向けの発電」を優先するために電力が配給制となり、製造業向けの供給が停止するリスクが出てきた。

【本日の見通し】

週明け月曜日は週末の株上昇の反動から一旦、リスク資産が売られる展開を想定しており、一旦下落する商品が目立つのではないかと予想する。

週明け月曜日の注目材料は、ロシア情勢を考える上で重要なG7首脳会議、米国の金融政策を市場がどのように判断しているかの判断材料となる米2年・5年債入札あたりに注目している。

また、週末は改善したが、米住宅市場動向を占う上で参考になる米中古住宅販売仮契約件数(市場予想 前月比▲3.9%、前月▲3.9%)、設備投資の先行指標である米コア資本財受注(前月比+0.1%、前月+0.4%)と総じて弱気な見通しのものが多いことも、価格を下押しするのではないか。

【昨日のトピックス】

昨日発表された米国のミシガン大学消費者マインド指数改定値は、過去最低水準となり、景気の先行きへの懸念から、期待インフレ率は低下した。

しかしこれを受けて株式市場は「買い」と判断した。これは、米国の金融引締めによって比較的早期に景気が減速し、引締めペースが鈍化するとの期待を高めたことが背景と考えられる。

しかし、同時に発表された米新築住宅販売は、前月比+10.7%の69.6万戸と今年に入って初めて前月でプラスとなった。金利上昇があったにもかかわらず、である。

また、新築住宅価格の中央値は前年比+15%上昇の44.9万ドルとなり、在庫率は7.7ヵ月(前月8.3ヵ月)と低下。ただしこれは販売増加による低下であり、実際にこの水準が来月以降も続くとは考え難い。

このことは、まだ米国の実態経済の減速が鮮明になっている訳ではなく、まだFOMCメンバーが、速やかな利上げによる景気減速・インフレ沈静化の必要を感じていることの裏付け、と考える方が適当ではないか。

昨日もカンザスシティ連銀製造業活動指数で、先行きのインフレ見通しがさほど低下していない一方で、新規受注が減速していることから、かなり強い意思をもって金融引締めをしなければ、恐らくインフレの沈静化に時間が掛る、と指摘したが昨日の統計も実は一昨日の統計と、さほど内容は変わらなかったのではないか、と見ている。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。特段固有の材料はなかったが、米ミシガン大学消費者マインド指数の期待インフレ率の低下と、米新築住宅販売の回復を受けた株価上昇を受けて、100日移動平均線のサポートラインでベンチマークのBrent原油がサポートされていたことから、週末を控えた買い戻しが入ったと考えられる。

ただ、金融引締めの効果による景気の循環的な減速は想定通りであり、恐らく年末に向けて原油価格は下落するとみている。

なお、やや乱暴では有るが「BrentとUralの平均値」がロシア制裁を考慮しなかった場合の「原油価格の実力値」と見做すと、現在の価格は100ドル程度であり、最高値も122.1ドルである。実力ベースでは現在の原油価格は100ドル程度、と見るべきだろう。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態にあると考えられる。

今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが期待されるが、OPECプラスの結束を優先すると考えられるサウジアラビアやUAEが、米国の増産要請にどの程度応じるかは全く不透明。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は、目立った手がかり材料に乏しいが、消費者の期待インフレ率予想の低下と米株の上昇もあって上昇すると考える。しかし、基本的には景気は減速の方向性であり、上値も重い。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。供給面で新規の材料が出ない中、IFO景況感指数が悪化し、ガス供給を巡る不安が景気を減速させ、結果的に需要を減速させるとの見方が強まっているのは事実だろうが、恐らく、週末を控えた調整売りだったと考えられる。

これまで順調に増加していた欧州のガス貯蔵施設へのガス注入量は急速に減少しており、夏場は欧州の場合影響が緩和されるにしても、冬場に向けた在庫の積増しは容易ではなくなってきている。

ロシアはガス供給減少は技術的な問題、としてるが、ドイツの在庫が6割に迫り、かつ、LNGの供給が制限されているタイミングでの供給減少であり、明らかにロシアの「嫌がらせ」だろう。

ロシアは「メンテナンスの影響」としているが、ドイツ国内ではメンテナンス終了後も供給が再開しないのではとの懸念が広がっている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州全体のガス在庫は6月23日時点で55.1%(前日54.8%)と増加。ロシアからすれば「在庫積増しを邪魔する良いタイミング」。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

域内の電気供給が一番とりあげられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて、世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、3.も顕在化している状況。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は小幅に続落した。週次の在庫統計での在庫増加が大きく、域内需給の緩和期待が高まっていることが背景。

米国もご多分に漏れずガス在庫不足の状態であるが、今回のFreeportの事故の影響で国内供給はかなり緩和されると期待される。

ただし米国のガス在庫の水準はまだ低く、やはり今年のHH価格は高値で推移しよう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は小幅に下落したがほぼ水準は変わらなかった。

Freeportの供給停止、ロシアの欧州向けのガス供給大幅削減など、スポットカーゴ市場がタイト化する材料は多い。

唯一の救いは中国がロックダウンの影響から脱却出来ておらず、輸入需要がそれほど盛り上がっていなかったこと。

しかし、中国北部は猛暑が始まり、ロックダウンによる景気減速の影響を緩和させる目的で経済対策が大規模に行われる可能性があることを考えると、今後、夏場~冬場にかけての価格リスクは上向きだろう。

なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

6月19日時点の日本の発電用LNG在庫は229万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。

6月6日~6月12日のLNGトレードだが、取引量は700万トン(前週731万トン)と減少した。スポット取引のシェアは26%(前週31%)と低下した。

スポット契約はJKTC(日本、韓国、台湾、中国)向けが▲27万トンの減少となった。主に韓国の輸入が減少したことによるもの。

欧州向けもポーランドやクロアチアの輸入が減少したことで▲32万トンの減少となった。

一方、ターム契約分の調達は、JKCTで+55万トンの増加。主に中国向けであり、恐らくロックダウンが解除されることに伴う夏場の需要期に向けての調達と考えられるが、再びロックダウンの懸念が強まっているためなんともいえないところ。

欧州のLNG輸入は114万トンに達したが、前月の同時期からは▲21%低い水準。カタール・ロシアの供給減少を米国の輸出が相殺した。

週明け月曜日もスポットカーゴ市場が緩和するようなな材料に乏しいため、高値を維持すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップは下落した。目立った手がかり材料に乏しいが、天然ガス価格の下落が影響したと考えられる。

中国政府は国内石炭販売価格に上限を設定しているが、国内価格の方が水準が低いため海上輸送炭市場への影響は限定されている。

基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている状況。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。

また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。

ロックダウンの影響で輸入需要が減少していると考えられるが、1.中国政府はロックダウン時の景気減速を取り返すべく、大規模な経済対策を実施の方針であること、2.懸念していた猛暑が既に一部の地域で始まっていること、から国内供給では不充分であり、海上輸送炭市場がタイト化する可能性は高まっている。

日本も今年の夏は猛暑見通しであり、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

温室効果ガス対策を施していない石炭火力を根絶する方針だった欧州も、背に腹は変えられず、電力供給不足を補うために休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

米国でも夏場の電力供給不足への懸念が指摘されていたが、Freeportの事故の影響もあって結果的に域内供給が間に合う可能性は出てきた。結局、ほとんどの資源に恵まれる米国は強いと言わざるを得ない。

週明け月曜日も、欧州ガス価格の上昇が裁定的な取引を促すこと、気温上昇による季節的な需要の増加、ドイツの石炭火力使用への思惑から、高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に続落した。市場参加者の注目は最大消費国である中国の経済活動の再開具合に注目しており、足下、経済活動の大幅な回復が確認されていないことから、これまで、コロナショック以降の価格上昇を牽引してきた一因であるファンド勢の四半期末を意識したポジション調整売り圧力が強まっている状態が続いている。

また、非鉄金属価格全体に対する説明力が高い、期待インフレ率や株価が、欧米の金融引締めの影響で下押し圧力が掛かりやすくなっていることも価格を押し下げている。

弊社は夏場に向けて中国の対策期待で一旦価格が上昇し、その後は循環的な景気の減速で中期的な下落となり、長期的にはインドや脱炭素といった構造的な需要増加を受けて再度上昇する、と考えている。

問題は各々がこの1~2年のウチのどのタイミングで起きるかであるが、中国政府の経済対策は、コロナの影響や発電燃料の制限、気象状況の悪化などで執行が遅れていると見られるため、上昇はQ322に入ってからになると見ている。

通常、中国の経済対策は年後半に厚くなることが多いため、場合によるとQ322は低いままであり、その他の景気循環系商品とは異なりQ422に上昇、という展開はあり得る。

ただ、来年のQ123~Q223が景気の底になるとみていることから、いずれの場合でも再び下落の後、Q323から再度価格が上昇することになるのではないか。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わないとすると、景気後退入りはQ323からとなり、この場合はQ124に回復基調に戻る展開が想定される。

今はむしろ、欧米の調査機関はこちらのシナリオを支持しているようだ。

週明け月曜日は米新築住宅販売の回復を受けた株価の戻りや、原油価格上昇による期待インフレ率の上昇もあって、一旦買い戻しが入るだろう。月曜日に発表される中国の工業セクター利益(非鉄金属価格に対する説明力が高い)の水準によっては、比較的大きな上昇となる可能性もある。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は続落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は上昇した。

中国経済がロックダウンの影響から脱しておらず、経済状況が非常に厳しい状態にあると考えられるが、中国政府は経済対策を強化する方針であり、それが鉄鋼製品価格を支え、鉄鋼原料価格を高値に維持している。

週次の在庫統計では、鉄鋼製品在庫は+3万8,000トンの1,677万2,000トンと、過去5年平均(1,222万5,000トン)を大きく上回っており、季節的にも在庫の水準は高い。

鉄鉱石は▲190万トンの1億2,440万トン(過去5年平均1億2,926万6,000トン)、在庫日数も23.0日(▲0.4日、過去5年平均27.0日)とこちらは在庫水準が例年を下回っており、生産者の在庫積み圧力は低くない。

原料炭は前週比+4万トンの174万トン(過去5年平均175万トン)、在庫日数は6.2日(+0.3日、過去5年平均7.0日)とこちらも水準は低い。そもそも石炭は豪州炭の供給が事実上停止した状態が続いているため、中国ではショート感がより強い。

海上輸送炭価格よりも中国国内炭価格の方が高いのは、そういった背景もあると考えられる。

週明け月曜日も、中国政府の経済対策期待を受けた鉄鋼製品価格の高値維持と、在庫不足に拠る積増しの動きが鉄鋼原料価格を高値に維持すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅高。米債券利回りが上昇したものの、原油価格が反発したことを受けて期待インフレ率が上昇、基準価格が上昇したことなどが影響したが、株価の戻りを受けた短期的なリスクテイクの回復が上値を重くした。

銀価格は上昇。金価格の上昇と株価の戻りが背景。プラチナも上昇。

パラジウムは金価格の上昇と株価の急騰を受けて買い戻しが入り、週末は大幅な上げとなった。

週明け月曜日も神経質な推移が続くと考えている。価格に対する説明力は10年金利よりも高くはないが、米2年債・5年債の入札動向に左右されることになるだろう。

足下、米金融引締め強化と、それを既に意識した景気の減速による金利低下圧力がせめぎ合う形となっており、方向性が出難い。

銀やPGMも足下は株価に一喜一憂、という感じであるが恐らく週明け月曜日は週末の上昇の反動での下落が予想され、銀・PGM価格の上値を抑えよう。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシ・大豆が上昇、小麦が下落した。

トウモロコシは代替燃料であるガソリン価格が原油価格の上昇を受けて上昇したことで、テクニカルな買い戻しが入った。大豆もトウモロコシに連れる形となった。

小麦は冬小麦のハーベスト・プレッシャーに押された。ロシア・ウクライナ問題はあるが、米農務省の需給方向ではカナダや豪州の増産で一応供給は足りる、となっていることもあり、ややテクニカルな売りに押されている形。

今後は200日移動平均線のサポートを割り込むか否かが焦点となる。

週明け月曜日は、市場のリスクオン・オフにふらされてドル指数が不安定な推移となっていることもあり、高値圏でのもみ合いが続くと考える。

ただし、下落したとは言っても、肥料やエネルギーの価格はまだ高いことから、コスト面で穀物価格は支持されると見る。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済(特に、中東、北アフリカ、東欧、中南米など)に打撃を与える可能性。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・渇水に拠る水不足や猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給指定(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、緩やかな新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオか)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「FOMCを受けた金価格見通し」

6月15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、27年7か月ぶりに0.75%の政策金利の大幅利上げが行われた。3月に0.25%、5月に0.5%の政策金利の引き上げが行われ、金融緩和の縮小を始めてからもインフレの加速が止まらず、前回5月の会合で事前に示唆した利上げペースを上回る強硬策がとられた。

会合後の金価格動向を振り返ると、会合前の6月10日に公表された5月の米消費者物価指数が予想(前年比+8.3%)に対して前年同月比+8.6%と約40年ぶりの水準まで上昇していたことを受け、急遽市場は0.75%の利上げを織り込み、米長期金利も同様に既に上昇。

利上げ発表後はイベント通過で米長期金利はむしろ低下し、金価格は上昇した。

金価格と米実質長期金利の間には高い相関性があるのは、当コラムでも触れてきた。

市場のインフレの指標である期待インフレ率は10年の物価連動債を元に算出されるが、金はその物価連動債が上場される前からインフレヘッジに用いられてきた商品であり、両者に強い相関性がみられるのは自然だ。

米実質金利が上昇する局面では、金利の付かない金は売られやすく逆の動きとなる。今回のFOMCは利上げ決定にもかかわらず、金価格は上昇した。

今回6月の会合で発表されたFOMCメンバーによる2022年末時点での政策金利(米FFレート)の見通しは3.4%。23年末の見通しは3.8%まで上昇し、24年末の見通しは3.4%と利下げを織り込む予想となっている。

期待インフレ率を目標まで抑制するため、2022年は強力な利上げを行い、23年度も様子を見ながらの利上げが続くものの、24年には物価上昇が落ち着き、25bpの利下げを2回程度見込んでいることになる。

そして市場は、米長期金利については3.5~4.0%程度までの上昇余地を見込んでおり、依然として米長期金利の先高観は強い。

つまり、市場が織り込んだシナリオ通りに米長期金利が上昇した場合、金価格は下落することが予想される。

しかし、直近の10年金利は低下を始めている。これは米国の金融引締めの影響で、景気が悪化する、との懸念が強まっていることによる。即ち、この場合は金融引締め加速観測が後退し、金価格を下支えすることになる。

実際には期待インフレも考慮した実質金利で見通しを想定するべきだが、簡単のため今回の分析では10年金利(10年債券利回り)と金価格の関係性のみに着目すると、直近1年の米10年金利に対する金の感応度は±1bpあたり±2.5ドルであるため、50bpの米長期金利上昇によって、金価格は▲150ドル下落することになる。

現在の金価格が1,835ドル程度であるため(原稿執筆時点)金の価格は1,685ドルとなり、2020年のコロナ感染拡大を受けて利下げが実施される前の金価格1,700ドルを下回る水準まで下落することになる。

しかし、物価上昇を制御できないまま景気後退(スタグフレーション)が起こることも有り得、この場合は期待インフレ率が高止まりして10年名目金利が上昇しても、実質金利が充分上昇しない可能性があり、この場合は価格下落は抑制されることになる。

一方、金価格の構成要素のうち、金利以外の要因であるリスク・プレミアムの動向も、金価格を下支えすると考えられる。現在市場が織り込んでいるシナリオでは、中立金利を上回る強力な利上げの後にはその副作用として景気減速が予想されている。

米国が仮に制御が可能だったとしても、米利上げによって資金が米国に還流、自国の通貨が下落した場合財政が脆弱な新興国をはじめ信用リスクが高まる可能性がある。

アジア危機が起きた2000年頃の状況に似ているが、東南アジア諸国は20年前から財政状況や経済規模が拡大しており、相応の耐久力があることを考えると、恐らく今回は中東、北アフリカ、東欧、中南米などの新興国が対象となるだろう。

この場合、リスク・プレミアムは上昇し、金価格が下支え、場合によるとさらに上昇することも想定される。米長期金利が上昇する局面においても、近い将来の景気減速、信用リスクの悪化が懸念されている状況を勘案すると、金価格の下落余地は限られ、高止まりする可能性が高いとみている。


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