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景気への懸念から続落
  • MRA商品市場レポート

2022年6月24日 第2224号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気への懸念から続落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は一部の商品を除いて続落した。米国の金融引締め加速と、それの影響を受けた新興国の金融引締めも加速。それに伴う景気減速懸念が景気循環系商品価格を押し下げる形となった。

ここまでの商品価格上昇はファンドの買いで助長された側面はあり、株価が調整する中では同様に利益確定の動きが強まりやすい。忘れられがちであるが、今月は欧米ファンドの四半期・半期末である。

恐らく買い戻しは入ると考えられるがこの流れであれば、7月の新しい四半期に入ってからと考えるのが妥当ではないか。

昨日は株上昇を受けて若干のリスクテイク意欲が回復したことでビットコインが最も上昇した。次いでパーム油や供給面に問題が出ている日欧の発電燃料価格が大きく上昇している。

一方で一番下落したのは流動性が低く、リスクオフの状況では変動性が特に高まりやすいスズ、次いでFreeportの火災の影響で輸出が大きな影響を受けている米天然ガスだった。

【本日の見通し】

本日は週末ということもあってポジション調整的な取引が主体となり、まずは買い戻しが入る商品が目立つと考えられる。

なお、今後の景気は恐らくQ422~Q123に短いリセッションに入り、Q323~Q423は景気は低迷、回復感が出てくるのはQ124になってから、となるのではないだろうか。

うがった見方をすれば、米政府は今年のうちにインフレを抑制すれば選挙に有利に働くと考えており、その後、景気が実際に悪くなってからは2024年に掛けて雇用対策を行えばよい、と考えている可能性があると見ている。

本日予定されている材料で注目は、引き続き米連銀総裁の発言であるが、基本、ハト派もタカ派もタカ派的な発言しかしないため恐らく材料視はされないだろう。

そのほか、ドイツの日銀短観に該当するIFO景況感指数、長期金利上昇を受けた米新築住宅販売に注目している。市場予想は以下の通り。

6月IFO企業景況感指数 市場予想 92.8(前月93.0)現況指数 99.0(99.5)期待指数 87.4(86.9)

5月米新築住宅販売 前月比▲0.2%の59万戸(前月▲16.6%の59.1万戸)

【昨日のトピックス】

昨日発表された欧米のPMIは市場予想を上回る減速が確認された。6月の独製造業PMIは52.0(市場予想 54.0 前月改定 54.8)、ユーロ圏製造業PMIが52.0(53.8、54.6)、米製造業PMIが52.4(56.0、57.0)となった。

弊社は契約の都合上、内訳を確認できないが景気の先行指標である製造業の落ち込みが顕著であり、新規受注が減速、そして仕入価格・物価とも高い水準が続いたと指摘されている。

また、もう1つ製造業の活動を示す指標であるカンザスシティ連銀製造業活動指数も発表され、12(市場予想10、前月23)と、市場予想は上回ったが大幅な減速となった。

カンザスシティはミズーリ州の都市であり、航空宇宙産業、輸送機器、食品加工、化学工業、電気機械などの産業がある。

昨日発表の統計の内訳を見ると、特に気になるのが新規受注(15→▲8)と受注残(20→▲4)の減速だ。端的に需要が減少していることを示唆している。

一方、これまで物価上昇要因の1つだった納入期限は25(29)と減速しており、徐々に正常化が進んでいるものの、仕入価格は71(72)と高く、国際価格の上昇の影響が続いていることが確認できる。

同時に6ヵ月先の各指数もアンケート調査されているが、新規受注は28→10に減速、出荷も32→13、一方で仕入価格は69→66と高止まる見込み。

これらを総合すると、インフレを抑制するためには、かなり強い意志を持って金融引締めを行わなければならず、かなり経済活動が鈍化するリスクがある、と考えられる。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。FRBパウエル議長の下院議会証言は引き続きタカ派なトーンであり、急速な金融引締めへの懸念が高まる中で売り圧力が強まった。

ただし、ドル安も進行、株価が反発したこともあって100日移動平均線のサポートラインではサポートされて引けた。

昨日は米石油統計が発表される予定だったが、システム障害のため発表が遅れており、昨日はリリースされなかった。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態にあると考えられる。

今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが期待されるが、OPECプラスの結束を優先すると考えられるサウジアラビアやUAEが、米国の増産要請にどの程度応じるかは全く不透明。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこないBrent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

昨日、100日移動平均線でサポートされていること、この数日の下落が大きいことからまず買い戻しが入ると予想され、ドル安も進行していることから本日は堅調な推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。ドイツがガス供給に関して警報を発したことで需給逼迫懸念が強まり、かつ、ガスが配給制になる可能性が出てきたことがスポットカーゴの買い急ぎを促したと考えられる。

これまで順調に増加していた欧州のガス貯蔵施設へのガス注入量は急速に減少しており、夏場は欧州の場合影響が緩和されるにしても、冬場に向けた在庫の積増しは容易ではなくなってきている。

ロシアはガス供給減少は技術的な問題、としてるが、ドイツの在庫が6割に迫り、かつ、LNGの供給が制限されているタイミングでの供給減少であり、明らかにロシアの「嫌がらせ」だろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州全体のガス在庫は6月21日時点で55.4%(前日55.1%)と増加。ロシアからすれば「在庫積増しを邪魔する良いタイミング」といえる。

域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。

仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。

ドイツはLNGのターミナルを持たないため、少なくともあと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

域内の電気供給が一番とりあげられているが、ガス供給が充分ではない場合、世界最大の総合化学メーカーである独BASFなどの化学セクターへの影響は小さくなく、場合によると化学製品の供給途絶を通じて、世界経済に大きな打撃となる可能性も否定出来ない。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、3.も顕在化している状況。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。

ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈しているが、欧州が夏場の猛暑を控え、先に音を上げる可能性が高まっていると考えられる。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は大幅に下落した。週次の天然ガス統計で、在庫増加が74BCFと市場予想の61.92BCFを大きく上回ったことが材料となった。

米景気の減速懸念や、FreeportのLNGターミナル火災の影響による輸出減少の影響で、域内ガス需給は緩和しているとみられる。

ただし米国のガス在庫の水準は高いわけではないため、やはり今年のHH価格は高値で推移しよう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は今冬の期先の価格が上昇した。夏場の気温上昇リスクも高まっているが、Freeportの供給停止によるスポット調達需要が増加している状況。

また、ドイツのガス供給がロシアのガス供給減少を受けて警告レベルに達しており、冬場に向けたスポットカーゴの調達圧力が高まっていることも価格を押し上げている。

アジアを含めた輸入者はターム契約が許す限りの上限で調達をすると考えられるが、夏・冬の気温次第でスポットカーゴの需要は増加するため、足下のリスクは上向きである。

なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

6月19日時点の日本の発電用LNG在庫は229万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。

6月6日~6月12日のLNGトレードだが、取引量は700万トン(前週731万トン)と減少した。スポット取引のシェアは26%(前週31%)と低下した。

スポット契約はJKTC(日本、韓国、台湾、中国)向けが▲27万トンの減少となった。主に韓国の輸入が減少したことによるもの。

欧州向けもポーランドやクロアチアの輸入が減少したことで▲32万トンの減少となった。

一方、ターム契約分の調達は、JKCTで+55万トンの増加。主に中国向けであり、恐らくロックダウンが解除されることに伴う夏場の需要期に向けての調達と考えられるが、再びロックダウンの懸念が強まっているためなんともいえないところ。

欧州のLNG輸入は114万トンに達したが、前月の同時期からは▲21%低い水準。カタール・ロシアの供給減少を米国の輸出が相殺した。

本日もFreeportの稼働停止、欧州向けにロシアがガス供給を制限していることから、スポットカーゴ価格は高値を維持する公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップは小動きだが小幅に上昇し、期近は400ドルを目指した。中国政府は国内石炭販売価格に再び上限を設定したが、国内価格の方が水準が低いため海上輸送炭市場への影響は限定されている。

基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている状況。

ただし中国のロックダウンの影響で同国の電力向け需要は低迷が予想され、海上輸送炭の需要も減少すると見られることから、価格の高騰は抑制されるだろう。

ロックダウンの影響がどの程度であるかを分析し難くしているのは、ロックダウンとほぼ同時期に欧州から打ち出された「脱ロシア炭」の動きと、これに伴うロシア以外の石炭需要の増加、豪州や南アフリカの洪水の影響による供給停止、豪州の寒波の影響による化石燃料輸出の制限といった事象が重なったこと。

しかし5月末からのロックダウン解除→再度のロックダウンの間の動きを見るに、ロックダウンによる中国国内の需要減少がより価格に影響を与える、といえそうだ。

しかしそれでも石炭価格は高い。在庫水準の低さ、夏場に向けた調達圧力、供給ソースの制限が背景にある。

期近と期先の価格差を流動性プレミアム(コンビニエンスイールドの効果)とするならば、180ドル程度の流動性プレミアムが付加されていることになる。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。

また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。

結局、ロックダウンの影響で電力需要が減少しているためと考えられる。ただし在庫水準が充分ではないため、やはり海上輸送炭市場の需給はタイトな状態が続くことになろう。

日本も今年の夏は猛暑見通しであり、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

温室効果ガス対策を施していない石炭火力を根絶する方針だった欧州も、背に腹は変えられず、電力供給不足を補うために休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

米国でも夏場の電力供給不足への懸念が指摘されていたが、Freeportの事故の影響もあって結果的に域内供給が間に合う可能性は得てきた。

本日も、欧州ガス価格の上昇が裁定的な取引を促すこと、上海ロックダウンの影響による中国の輸入需要の減少のせめぎ合いとなるが、高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に続落した。中国の製造業の業況に影響が大きい欧州の製造業PMIが市場予想以上に減速、中国の輸出需要の減少観測が価格を押し下げた。

また、米国の金融引締めバイアスは強まりこそすれ弱まっておらず、景気を悪化させてでもインフレを抑制する方針であること、これを受けて需要の牽引役である新興国も利上げに追い込まれていることから、世界的な景気減速懸念が強まったことが背景。

なお、弊社は中国政府の経済対策の効果で一時的に非鉄金属価格は上昇すると見ているが、コロナの影響で執行が遅れていると見られるため、上昇はQ322に入ってからになると考えられる。

通常、中国の経済対策は年後半に厚くなることが多いため、場合によるとQ322は低いままであり、その他の景気循環系商品とはことなりQ422に上昇という展開はありえる。

いずれの場合も恐らく来年のQ123~Q223が景気の底になるとみており、再び下落の後、Q323から再度価格が上昇すると予想している。

ただし、世界景気が在庫の投資循環サイクル通りに起きるのであれば、特段政府が対策を行わないとすると、景気後退入りはQ323からとなり、この場合はQ124に回復基調に戻る展開が想定される。

本日は週末ということもあってポジション調整的な取引が主体となるため、一旦買い戻しが入ると考えられる。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅に下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は小動きだった。

中国経済がロックダウンの影響から脱しておらず、経済状況が非常に厳しい状態にあるものの、政府が経済対策を積極的に行う方針であることが鉄鋼製品価格を高値に維持し、それを受けて鉄鉱石の在庫積増しの動きがみられた。

原料炭は供給不足が価格を高値に維持させているが、昨日の海上輸送炭価格は水準を小幅に切下げている。

昨日もコメントしたが、複数の中国メディアが景気刺激、インフラ投資(個人の意思とは関係なく、比較的即時に需要として顕在化しやすい)を加速する、というコメントを掲載している。

これは政府の方針を示したものであること、足下の中国の状況が厳しいことを示唆している。経済対策のテコ入れが実際に行われる場合、工業金属需要が増加することは明らかで、鉄鋼製品価格・鉄鋼原料価格にも上昇圧力が掛かりやすい。

しかし、同時に、不動産市場の沈静化は続ける必要があるため上昇は一時的なものに止まるのではないか。

本日も、鉄鋼製品先物価格動向に左右される展開が予想されるが、今のところ中国景気の先行きは否定的な見方をする市場参加者が多く、鉄鋼製品先物価格には下押し圧力が掛かりやすいため、価格にも下押し圧力が掛かりやすい。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。金利低下を受けた実質金利の低下が価格を押し上げたものの、株価の反転上昇などを材料に売り圧力も強まり、水準を切下げた。

銀・プラチナは金の下落もあって大幅な下落、パラジウムは株価の戻りもあって小幅な下落に止まった。

本日はパウエル議長の上下院での証言も終了、基本的にタカ派姿勢であることに変わりがないことが確認されたが、市場は「景気」に注目し始めており、利上げが起きても長期金利が上昇しない(むしろ低下)する可能性はあり、価格は下支えされると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。需給ファンダメンタルズ面では、受粉期に降雨の見通しが示されたことで、トウモロコシ・大豆とも下押し圧力が強まったが、それ以上に景気への懸念から原油価格が下落する中で、燃料向けの需要減少観測が強まったこと、これまで買い上げてきた投機の手仕舞い売り圧力が強まったことが影響したようだ。

基本的に穀物は非景気循環系商品であるが、この数年の「再生可能エネルギーブーム」で両者の間の相関性は高まっており、景気循環系商品であるエネルギーが大きく動く局面では価格は変動しやすい。

本日はこの数日の下落が大きいため一旦買い戻しが入ると考える。なお、肥料やエネルギーの価格はまだ高いことから、コスト面でトウモロコシ価格は維持される見込み。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済に打撃を与える可能性も。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


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