短期的なリスクテイクで上昇
- MRA商品市場レポート
2022年6月22日 第2222号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「短期的なリスクテイクで上昇」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は、景気循環系商品が物色され、景気に連動し難い農産品や畜産品価格が下落した。
短期的ではあるが市場参加者のリスクテイク意欲が回復、金利が上昇したものの株価が上昇して投資余力が増したこと、景気循環系商品に関しては下落局面で実需家の安値拾いの買いが入ったことが価格を押し上げた形。
昨日最も上昇したのはJKM。米国のFreeportの火災事故によるLNGカーゴ供給逼迫懸念が強まっていることに加え、恐らくロシアが「嫌がらせ」していると考えられる欧州向けのガス供給減少に伴う、スポットカーゴ需要が増加していることが背景にある。
恐らく、この状況だと「脱炭素」といっている場合ではなく、欧州諸国も比較的資源が遍在している石炭火力などへのシフトを強めることになるのではないか。
ただ、ドイツが褐炭の生産再開、という形にはまだならないと考えられ、結局海上輸送発電燃料価格は高止まりしやすい。
その中で昨日はドル円が136円台に突入した。資源価格の下落がない中で貿易収支赤字が比較的定着してしまっていること、日銀は今の緩和スタンスを変更するつもりはないこと、から、円安が加速している状態。
円安が輸出企業にとってプラスであるのは事実だが、GDPの6割を占める個人消費に影響が出ることが懸念され、景気の先行きのリスクを下振れさせる可能性が出てきた。
日本の値上げは購買契約が、過去の価格を参照するものが多いため時間差をもって行われることから、本番はこれからである。
【本日の見通し】
本日は市場参加者の注目が中央銀行のオペレーションと、「景気そのもの」に移っていることから、半期に1回の米上院でのFRBパウエル議長の議会証言に注目している。
しかし、景気を悪くしてでもインフレを抑制する方針であるFRBが、ここでハト派な発言をする理由はあまりなく、本日は多くの商品に下押し圧力がかかる展開になるのではないか。
【昨日のトピックス】
昨日発表の米中古住宅販売は、前月比▲3.4%の541万戸と、前月の▲2.6%の560万戸から減速したが、市場予想の▲3.7%の540万戸は上回った。
ただし、米中央銀行が「景気を後退させてでも」「住宅市場の多少の冷え込みがあっても」利上げ・QTを続ける方針であることから、長期金利は上昇しており住宅セクターへの影響が顕在化している状況。
中古住宅在庫率は2.6ヵ月と前月の2.2ヵ月からは増加、徐々に歴史的に厳しい供給環境に改善は見られるものの、販売価格の中央値は40万7,600ドルと、前月の39万5,500ドルから+14.8%上昇しており、恐らく家賃など、CPIに影響を与える影響が大きい項目はまだ高止まりしそうである。
この状況を見るとFRBによる利上げ・QTは現在想定している以上のペースで行われる可能性もまだ排除出来ない状況といえる。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。エクアドルの供給不安や、欧州に対してロシアが恐らく意図的にガス供給を絞っていることで、原油にも影響が出るのでは、との潜在的な供給不安が価格を押し上げている状況。
また、ここに来て非常に強く意識され始めている「製油所の能力不足」が製品高に繋がり、原油価格の上昇に寄与しているのでは、との懸念も価格を高値に維持している。
南米のOPECメンバーであるエクアドルでは、ラッソ大統領に対して先住民グループが抗議活動を展開、原油生産に支障が出ており、このまま抗議活動が続けば月末までに生産量が半分になる、との懸念が表明されている。
引き続き、原油を巡る供給環境は不安定な状態が続いている。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2.の状態にあると考えられる。
今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが期待されるが、OPECプラスの結束を優先すると考えられるサウジアラビアやUAEが、米国の増産要請にどの程度応じるかは全く不透明。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル
2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル
3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル
4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル
5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル
7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル
9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。
2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。
現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓) リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)
※矢印の向きは価格の方向性。
本日も、供給制限とインフレ抑制のための中央銀行のスタンスの綱引きとなり、高値でのもみ合い維持を予想。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物価格は上昇した。FreeportのLNGターミナル火災の影響でLNGカーゴ市場がタイト化する中、これまで供給を続けてきたロシアのノルドストリーム経由でのガス供給がさらに減少したことが価格を押し上げる形となった。
ロシアはガス供給減少は技術的な問題、としてるが、ドイツの在庫が6割に迫り、かつ、LNGの供給が制限されているタイミングでの供給減少であり、明らかにロシアの「嫌がらせ」だろう。
、域内最大の消費国であるドイツはガス供給に関し、早期警告、警報、緊急の3段階を設置しており、今は警報のレベル。
仮に緊急(Emergency)となった場合、病院や家庭など向けの供給を優先することになるため、企業活動が停止するリスクが高まることになる。
現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)
日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。
「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。
現在、2.に関して、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化、3.も顕在化している状況。
Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。
報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。
このため、ロシア産ガスからLNGヘのシフトがさらに困難になった可能性は高く、割安に推移していたスポット価格を押し上げ、これから本格化する夏場~冬場の調達が困難になることを意味する。
そして、欧州のこの窮状をみて「ロシアが意図的にガス供給を一部止める懸念」もショートポジションを取り難くし、価格を下支えしやすい。
LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、あと数年は
1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減
によってガス在庫を積み上げるしかない。
欧州全体のガス在庫は6月19日時点で54.7%(前日54.3%)と増加。ロシアからすれば「在庫積増しを邪魔する良いタイミング」といえるだろう。
なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。
これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。
ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。
LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。
このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米国天然ガス先物市場は下落した。FreeportのLNGターミナル火災の影響で輸出が減少、域内ガス需給が緩和するとの期待が高まっていることが背景。
また、気温見通しも緩和しており、季節的な需要増加観測がやや後退したことも価格を押し下げた。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物はほぼ全ゾーン大幅な上昇となり、期近は40ドルを目指す展開になっている。大手発電業者のLNG在庫は過去5年平均を目指して増加しており、足下、「例年通りの気温」であれば恐らく供給に問題はない。
しかし今年は猛暑予想であり、かつ、米国のLNG供給が減少する見通しであることから夏場に向けたスポットカーゴ市場はタイト化し、価格は高値で推移しやすい。
アジアを含めた輸入者はターム契約が許す限りの上限で調達をすると考えられるが、夏・冬の気温次第でスポットカーゴの需要は増加するため、足下のリスクは上向きである。
なお、期先(2023年以降)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。
6月12日時点の日本の発電用LNG在庫は231万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。
今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。
6月6日~6月12日のLNGトレードだが、取引量は700万トン(前週731万トン)と減少した。スポット取引のシェアは26%(前週31%)と低下した。
スポット契約はJKTC(日本、韓国、台湾、中国)向けが▲27万トンの減少となった。主に韓国の輸入が減少したことによるもの。
欧州向けもポーランドやクロアチアの輸入が減少したことで▲32万トンの減少となった。
一方、ターム契約分の調達は、JKCTで+55万トンの増加。主に中国向けであり、恐らくロックダウンが解除されることに伴う夏場の需要期に向けての調達と考えられるが、再びロックダウンの懸念が強まっているためなんともいえないところ。
欧州のLNG輸入は114万トンに達したが、前月の同時期からは▲21%低い水準。カタール・ロシアの供給減少を米国の輸出が相殺した。
本日もFreeportの稼働停止、欧州向けにロシアがガス供給を制限していることから、スポットカーゴ価格は高値を維持する公算。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。
◆石炭
豪州石炭スワップは期近が小幅に下落したが、期先は上昇した。
基本、石炭とガスを「価格を見て切り替える」ことができる発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている状況。
ただし中国のロックダウンの影響で同国の電力向け需要は低迷が予想され、海上輸送炭の需要も減少すると見られることから、価格の高騰は抑制されるだろう。
ロックダウンの影響がどの程度であるかを分析し難くしているのは、ロックダウンとほぼ同時期に欧州から打ち出された「脱ロシア炭」の動きと、これに伴うロシア以外の石炭需要の増加、豪州や南アフリカの洪水の影響による供給停止、豪州の寒波の影響による化石燃料輸出の制限といった事象が重なったこと。
しかし5月末からのロックダウン解除→再度のロックダウンの間の動きを見るに、ロックダウンによる中国国内の需要減少がより価格に影響を与える、といえそうだ。
しかしそれでも石炭価格は高い。在庫水準の低さ、夏場に向けた調達圧力、供給ソースの制限が背景にある。
期近と期先の価格差を流動性プレミアム(コンビニエンスイールドの効果)とするならば、180ドル程度の流動性プレミアムが付加されていることになる。
中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。
なお、5月の中国の石炭生産は、前年比+12.7%の3億6,800万トン(1,187万トン/日)と、前月+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)からは減速してる。
また、5月の燃料炭輸入は前年比▲22.0%の1,055万8,000トンと減少している。ロシアからの輸入は+92万トンの増加となったが、インドネシアからの輸入が▲96万トン、カナダからの輸入が▲16万トンの減少となったことが相殺した。
結局、ロックダウンの影響で電力需要が減少しているためと考えられる。ただし在庫水準が充分ではないため、やはり海上輸送炭市場の需給はタイトな状態が続くことになろう。
日本も今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。
また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。
これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。
本日も、欧州ガス価格の上昇が裁定的な取引を促すこと、上海ロックダウンの影響による中国の輸入需要の減少のせめぎ合いとなるが、高値維持の公算。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は上昇した。この1~2週間の株価調整や中国のロックダウン解除後の経済活動の戻りが緩慢なこと、7月末までにまたロックダウンがあるのではないか、との見方が強まっていることが価格を大きく調整させてきたが、昨日は割安感から、恐らく実需家の安値拾いの買いが入ったと考えられる。
多くの非鉄金属価格に対して説明力が高いのは米株価と期待インフレ率であり、米国はこの期待インフレ率を押し下げようとしている(これに加えてQTを行うことで物価連動債の価格は下落し、実質金利は上昇しやすい)ことから、基本的には下りのエスカレーターに乗っている状況で、価格には下押し圧力が掛かりやすい。
4月から始まった中国のロックダウンの余波が続いている状況であり、中国の経済対策やロックダウンの懸念が後退してペントアップ需要が顕在化する中では一旦上値を試す動きになると予想しているが、コロナの影響に依拠するため、まだなんともいえないところ。
本日も、中国市場がコロナの影響からの回復が遅れており、製造業の在庫積増しの動きも緩慢であることから金融政策、株価動向が価格を左右しやすい。
金融市場ではFRBパウエル議長の議会証言が予定されており、ここでの発言に注目しているが、基本的にはタカ派な発言に終始すると見られ、相場のトレンドを反転(上昇)させるようなコメントにはならないのではないか。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅に上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月価格が下落、中心限月は変わらずだった。
中国経済がロックダウン解除後も回復しておらず、さらに7月一杯は上海でロックダウンが再び起きる可能性が排除されていないことが鉄鋼製品先物価格を押し下げているが、鉄鉱石や原料炭の在庫水準は充分ではなく、これまでの下落で割安感が出ていることも事実であり、先々のペントアップ需要顕在化時に備えた在庫積増しの動きが強まったためと考えられる。
本日も、鉄鋼製品先物価格動向に左右される展開が予想されるが、今のところ中国景気の先行きは否定的な見方をする市場参加者が多く、鉄鋼製品先物価格には下押し圧力が掛かりやすいため、価格にも下押し圧力が掛かりやすい。
◆貴金属
昨日の金価格は軟調な推移となった。昨日は再び短期的にリスク選好が回復、長期金利上昇を受けて実質金利が上昇したことが材料となった。金基準価格は前日比▲11ドルの1,112ドル、リスク・プレミアムは+5ドルの721ドル。
銀価格は金価格の下落もあって、金銀レシオを引き上げつつ水準を切下げた。PGMは株価の戻りもあり、前日比プラスで引けている。
貴金属はドル指数の上昇はあっても高止まりしている。現状、円が独歩安の状態であり、円建ての貴金属価格にも上昇圧力が掛かりやすい。
本日は半期に1回のパウエル議長の議会証言(上院)が予定されており、これに注目しているが現状、FRBメンバーがハト派な発言をする可能性は低いと考えられ、恐らく金利上昇で貴金属セクターには下押し圧力が掛ることになるだろう。
◆穀物
シカゴ穀物市場は大幅に下落した。ドル高が進行していることがファイナンシャルな面で価格を下押ししやすい地合だったが、米輸出検証高がいずれも先週から減少していること、米国のトウモロコシ・大豆の作況が悪くないこと、などが材料となった。
小麦に関しては冬小麦の収穫に伴うハーベスト・プレッシャーが引き続き価格を下押ししている。
しかし、ロシア・ウクライナ問題を巡り、小麦やトウモロコシの供給に影響が出ることは不可避であること、肥料コストやエネルギーコストの上昇、といったコスト面で穀物価格が下支えされる状況は続くと考えられ、高値を維持する見込み。
本日は、半期に1回のパウエル議長の議会証言(上院)が予定されており、これに注目しているが現状、FRBメンバーがハト派な発言をする可能性は低いと考えられ、農産品セクターにも下押し圧力がかかろう。
ただし、需給ファンダメンタルズはタイトな状態が続いているため、高値は維持する見込み。
※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
また、米国の金融引締めが新興国経済に打撃を与える可能性も。
・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。
また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。
ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
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