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米国市場休場で動意薄い
  • MRA商品市場レポート

2022年6月21日 第2221号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米国市場休場で動意薄い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格米国市場が休場だったため、基本的に動意薄く、ポジション調整の範囲内の取引だったと考えられる。

【本日の見通し】

本日は目立った手がかり材料に乏しいが、FOMC明けで米連銀総裁の講演が予定されており、今後の金融政策の方向性に関するコメント動向で神経質な推移になると考える。

本日はクリーブランド連銀メスター総裁とリッチモンド連銀バーキン総裁が講演予定。両者ともタカ派の論客であり、ドル建て資産価格には下押し圧力が掛かりやすい展開になると予想される。

本日予定されている材料としては米国の住宅市場動向を占う上で重要な、中古住宅販売が予定されているが、金利上昇の中で良い数字が出るとも考え難く、基本的にはそこまで積極的に材料視されないと考える。

5月米中古住宅販売 前月比▲3.7%の540万戸(前月▲2.4%の561万戸)

【昨日のトピックス】

昨日フランスの国民議会選挙(下院選挙)では、マクロン大統領率いる与党連合が敗北し、過半数を割り込んだ。当たり前であるが、議会で与党が安定多数を確保出来なければ、政権運営に支障が出ることになる。

このコラムでは繰り返し主張しているように、「生活コスト」の上昇が国民の不満を高め、それが選挙の結果に反映されたためだ。

ただ、今回のインフレや物価上昇はマクロン大統領の失策、というわけではなく世界的に起きていることであり、しいて言えばプーチン大統領がウクライナに侵略戦争を仕掛けたことで加速した面は否めず、そのとばっちりを受けた、ともいえる。

しかし、現在の政権与党は同じような不満を抱える国民の審判を受けることになる。今年7月には日本で参議院選挙が行われ、米国では11月に中間選挙が行われる。

そもそも日本はまだインフレが欧米ほどではない。企業努力によってその価格転嫁が遅れているためだ。もし今回の参議院選挙が年末であったら多少話は変わっただろう。

米バイデン政権に残された時間はあと4ヵ月しかなく、そもそも中間選挙は米国の場合、政権与党にとって不利なのだ。恐らく共和党が多数を占めることになり、政権運営に支障がでる。恐らく対中政策、対露政策には変わりはないと考えられるが、より、エネルギー業界に親和性のある共和党の発言権が増すため、エネルギーの供給面ではプラスになるだろう。

そこも合わせて考えると、やはり年末から年初にかけてインフレが沈静化(水準が低下)する可能性が高い、といえるのではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。特段目立った材料があった訳ではないが、前日の大幅下落大幅を受けた買い戻しで小幅に上昇した。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2,の状態にあると考えられる。

今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが期待されるが、OPECプラスの結束を優先すると考えられるサウジアラビアやUAEが、米国の増産要請にどの程度応じるかは全く不透明。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日も、供給制限が続き高値維持の公算。ただしFOMCメンバーの講演が予定されており、このタイミングでハト派的なコメントが出る可能性は低いため、やや軟調な推移になると予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。FreeportのLNGターミナル火災の影響で上昇していたが、Freeportがフォースマジュールを宣言したため、より供給への懸念が強まったことが背景。

ガスや原油の販売収入を確保したいロシアが代替販売先がない現状で、欧州向けのガス供給を停止する選択肢は考え難いが、LNGカーゴ市場の需給がタイト化することは必至である以上、ロシア情勢の価格への影響度は高まっている状況。。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、欧州域内最大の天然ガス生産国であるノルウェーの天然ガス生産が、定修・計画外停止両方の影響で大幅に減少、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化している。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。

このため、ロシア産ガスからLNGヘのシフトがさらに困難になった可能性は高く、割安に推移していたスポット価格を押し上げ、これから本格化する夏場~冬場の調達が困難になることを意味する。

そして、欧州のこの窮状をみて「ロシアが意図的にガス供給を一部止める懸念」もショートポジションを取り難くし、価格を下支えしやすい。

LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、あと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

欧州全体のガス在庫は6月14日時点で52.1%(前日52.6%)と前日から減少している。ロシアのガス供給削減の影響が出ているようだ。

また、欧州域内で最大の貯蔵能力を有するウクライナの在庫積増し進捗状況は18.6%(18.4%)と遅々として進んでいない。

仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクは無視できない。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。

ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は休場。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は休場。

FreeportのLNG輸出ターミナル稼働は年後半の見込みであり、夏・冬のピーク時の供給が逼迫するのはほぼ必定の状況。

アジアを含めた輸入者はターム契約が許す限りの上限で調達をすると考えられるが、夏・冬の気温次第でスポットカーゴの需要は増加するため、足下のリスクは上向きである。

なお、期先(2023年)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

6月15日時点の日本の発電用LNG在庫は231万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。

6月6日~6月12日のLNGトレードだが、取引量は700万トン(前週731万トン)と減少した。スポット取引のシェアは26%(前週31%)と低下した。

スポット契約はJKTC(日本、韓国、台湾、中国)向けが▲27万トンの減少となった。主に韓国の輸入が減少したことによるもの。

欧州向けもポーランドやクロアチアの輸入が減少したことで▲32万トンの減少となった。

一方、ターム契約分の調達は、JKCTで+55万トンの増加。主に中国向けであり、恐らくロックダウンが解除されることに伴う夏場の需要期に向けての調達と考えられるが、再びロックダウンの懸念が強まっているためなんともいえないところ。

欧州のLNG輸入は114万トンに達したが、前月の同時期からは▲21%低い水準。カタール・ロシアの供給減少を米国の輸出が相殺した。

本日もFreeportの稼働停止を受けた供給制約が価格を高値に維持する公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物市場は休場だった。

基本、石炭とガスを「価格を見てスイッチする」ことができる様な発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている状況。

ただし中国のロックダウンの影響で同国の電力向け需要は低迷が予想され、海上輸送炭の需要も減少すると見られることから、価格の高騰は抑制されるだろう。

ロックダウンの影響がどの程度であるかを分析し難くしているのは、ロックダウンとほぼ同時期に欧州から打ち出された「脱ロシア炭」の動きと、これに伴うロシア以外の石炭需要の増加、豪州や南アフリカの洪水の影響による供給停止、豪州の寒波の影響による化石燃料輸出の制限といった事象が重なったこと。

しかし5月末からのロックダウン解除→再度のロックダウンの間の動きを見るに、ロックダウンによる中国国内の需要減少がより価格に影響を与える、といえそうだ。

しかしそれでも石炭価格は高い。在庫水準の低さ、夏場に向けた調達圧力、供給ソースの制限が背景にある。

期近と期先の価格差を流動性プレミアム(コンビニエンスイールドの効果)とするならば、180ドル程度の流動性プレミアムが付加されていることになる。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。

結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。

日本も今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。

これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

本日も、欧州ガス価格の上昇が裁定的な取引を促すこと、上海ロックダウンの影響による中国の輸入需要の減少のせめぎ合いで高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は上昇した。米国市場が休場の中で積極的な動きは控えられたが、やはり大幅続落の反動で買い戻しが優勢となり、ドルがジリ高の展開となったため、上昇余地は限定された。

本日も、中国市場がコロナの影響からの回復が遅れており、製造業の在庫積増しの動きも緩慢であることから金融政策、株価動向が価格を左右しやすい。

金融市場はFOMC明けの米各連銀総裁の講演が予定されているため、そこに注目したい。ただし、1.年末・年始に向けてはそもそも景気の減速で価格には下落圧力が掛かりやすいが、2.短期的には中国のロックダウン解除に伴う需要の回復が期待されるため、上昇→下落、のストーリーになりやすい(これはその他の景気循環系商品も同様)。

恐らく本日は昨日の戻りが緩慢だったため再び買い戻しが入ると考えるが、FOMCメンバーがこのタイミングでハト派な発言をするとは考え難く、最終的に前日比マイナスで引けるのではないか。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは大幅にげらく、豪州原料炭スワップ先物は小幅に下落、大連原料炭価格は大幅に下落、上海鉄筋先物は大幅に続落した。

中国経済がロックダウン解除後も回復しておらず、さらに7月一杯は上海でロックダウンが再び起きる可能性が排除されていないことが鉄鋼製品先物価格を押し下げており、鉄鋼原料価格の下押し要因となっている。

本日も、鉄鋼製品先物価格動向に左右される展開が予想されるが、今のところ中国景気の先行きは否定的な見方をする市場参加者が多く、鉄鋼製品先物価格には下押し圧力が掛かりやすいため、価格にも下押し圧力が掛かりやすい。

鉄鋼製品価格を基準とする回帰分析の結果は、鉄鉱石価格の推計値が124ドル、原料炭が229ドルとなっており、供給面が制約されている原料炭は高値維持だが、鉄鉱石価格はあと4ドル程度、下落余地があると考える。

◆貴金属

昨日の金価格はもみ合い、ほぼ前日比変わらず。その他の銀やPGMは金曜日の大幅な下落もあって買い戻しが入った。基本的に米国市場が休場だったため動意薄い展開。

本日はFOMC後の各連銀総裁の講演が予定されており、今後の金融政策動向の方向性を巡るコメントに一喜一憂の展開となるだろう。

基本的には利上げ・QT継続で貴金属セクターには下押し圧力が掛かりやすいが、短期的にはその方向性に関するコメントが前日比での水準を左右しやすい。

恐らくタカ派な発言が繰返されるとみており、価格の方向性は下向きか。

◆穀物

シカゴ穀物市場は休場だった。

本日は、FOMC後の各連銀の総裁の発言が相次ぐため、為替動向に左右される展開を予想。ただ、基本的には需給ファンダメンタルズはタイトであるため高値維持の見通しは変わらず。

 

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済に打撃を与える可能性も。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「円安と政権の安定性」

厚生労働省発表の日本の有効求人倍率は、コロナショックの影響で2020年9月に1.04倍と2014年1月以来の低水準に落ち込んだが、2022年4月の有効求人倍率は1.23倍と回復基調にある。

しかし、リーマンショック以降その傾向が顕著になったが、有効求人倍率の上昇が賃金上昇に繋がっていない。これは「ワークシェア」による労働の分配が行われた結果と考えられる。

アベノミクスが経済的にどのような効果をもたらしたか、といえば、その影響が最も大きかったのは、労働力の不足を今まで就労していなかった主婦(主夫)層に拡大したこと、定年している労働者を再雇用する原動力になったこと、である。

しかし、日本全体の給与のバジェットが急拡大したわけではないため、結局の所、賃金低下圧力に繋がることになったともいえる。

業種別の昨年4月と今年の4月の雇用者数の変化と賃金水準を見てみると、産業平均(25万4,000円)を下回る業種での雇用増加が顕著であり、平均を上回る業種の雇用はむしろ減少している。

恐らく、

1.コロナからの脱却によりサービス業の雇用の伸びが加速した一方で

2.資源価格の上昇や物流コストの上昇などでコスト削減意欲が高まった高賃金企業の賃金引下げが見られたため

と考えられる。

この場合、輸入物価の上昇によるエネルギー価格の上昇や食品価格の上昇に最終消費者が耐えられない可能性が出てくることになる。

「国力の通信簿」である円安が定着した場合、インバウンド消費の拡大や海外からの投資拡大が期待されるが、エネルギー問題やそもそもの労働量不足、ビジネス環境が海外と比べて働き難いこと(母語であり、日本以外で使えない日本語がビジネス用語であること、など)など、本来金融緩和中に取り組むべきだった課題に取り組めていないことから、円安は国内消費を直撃することになる。

円安は輸出企業にとってプラスに作用するが、「今日のトピックス」でも紹介したように、国民生活に支障が出た場合、政権が不安定化することは多い。

今のところ7月の参議院選挙では自民党が圧勝する、との見方が大勢であるが、このままの円安や物価上昇が続く場合、自民党が議席を失うことになる。

恐らく円安はこれまでの数十年の日本の政策に対する相対評価であるため、日銀が何かスタンスを変更したとしても恐らく急に円高に振れる、ということはないだろう。

現状、海外情勢が不安定であるため、政権の安定は国内経済にとって重要になるため、足下の円安動向は注目したいところだ。


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