CONTENTSコンテンツ

景気への懸念とドル安で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート

2022年6月17日 第2219号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気への懸念とドル安で高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はとにかく株が急落したが、商品市場はエネルギーやその他農産品、貴金属などが水準を切り上げた

一昨日のFOMCを楽観したリスクテイク再開が見られたが、米国時間に発表された住宅関連統計が悪化、フィラデルフィア指数も悪化、米国の金融引締めの効果による長期金利の急上昇が米国経済を悪化させる、との見方が広がり「悪いドル安」が発生したことが、特に景気に連動し難い農産品や穀物価格を押し上げた。

需給面で消費者にとっての改善(供給増加)が起きていない原油やガスなどはドル安も手伝って総じて堅調な推移となっている。

一方、大きく下落したのは非鉄金属。FOMCを時間的に織り込めなかったこともあって再び水準を切下げた。特に米国時間に入ってからは足下、説明力が高い期待インフレ率や株価の下落がさらに下げを助長した。

しかし、非鉄金属は為替の影響が大きいため、引けに掛けては下げ幅を削った。

【本日の見通し】

本日は昨日の流れを受けて株安・リスク回避の動きで下落するとみるが、ドルの修正安が同時に発生しているため、ファイナンシャルな面でドル建て資産価格は下支えされることになるだろう。

市場参加者の注目は再び「景気そのもの」にシフトする可能性があり、この状況で発表される米経済統計を受けても、米国が金融引締めを強化する方針が揺らがないかどうかがポイントとなる。

ただ、供給面の改善がなければ需要を落すことでインフレを抑制せざるを得ず、米国民も目先はインフレ抑制が最大の関心事であり、それにともなう経済のオーバーキル、失業、といったリスクは「そうなってから考えればいい(というよりはそうなって初めて気がつく)」とみているのではないか。

そのように整理すると、むしろ早期の景気減速は米国政府・中央銀行の望むところであり、特に米政権は2024年の大統領選挙に向けて政策のフリーハンドが増えることの方が望ましい、と考えている可能性は低くないと考えている。

【昨日のトピックス】

昨日発表された5月の日本貿易収支は、季節調整前で▲2,384億円の赤字(前月▲8,428億円の赤字)と貿易赤字状態が続いた。

輸出の伸びも堅調でったが、引き続き原油粗油(金額ベース伸び率前年比+147.2%)、石炭(+267.7%)、LNG(+154.7%)となっている。数量というよりは価格の高騰に因るものであり、エネルギー価格の下落がなければ当面貿易収支は赤字の状態が続き、円安圧力となり得る。

輸出が増加するかどうかは、最大貿易相手国である米中の経済動向によるが、これまでの経済統計や政策の方向性を見ると、両国はむしろ短期的にでもリセッション入りする可能性があり、今後、輸出数量は鈍化するのではないか。

なお、昨日発表された米住宅着工と許可件数はいずれも市場予想を下回っており、想定以上に金利上昇が住宅投資マインドを冷えこませて居ることが分かる。

また、ISM製造業指数や米GDPの先行指標の1つであるフィラデルフィア連銀指数は、▲3.3(市場予想5.0、前月2.6)と悪化。特に新規受注の悪化(22.1→12.4)が顕著であり、さらに入荷遅延も状況改善が見られる(17.5→9.9)。

徐々に物流が正常化し、かつ、金融引締めのアナウンスメント効果による長期金利上昇が実態経済に影響し始めたといえる。

通常、金融政策の変更が実態経済に及ぶには4~6ヵ月掛るとされる。初めの利上げが3月であるとちょうどその影響が出始めるのは今頃である。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。供給不安が解消しない中で「悪いドル安」で価格も下落していたが、ドル安が加速したために金融要因がこれに勝り、価格は結局前日比プラスで引けた。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は2,の状態にあると考えられる。

今回のバイデン大統領の中東訪問で3.に移行することが期待されるが、OPECプラスの結束を優先すると考えられるサウジアラビアやUAEが、米国の増産要請にどの程度応じるかは全く不透明。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続・金融引締め加速(→)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日はドル安が進行したものの、供給面の影響が続くことから結局高値維持の公算。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は大幅に上昇後、水準を切下げたが前日比大幅プラスで引けた。

米Freeport社のLNGターミナル火災からの復帰が年後半になる可能性が高く、スポット市場の需給がタイト化しているタイミングで、ロシアから欧州への重要なパイプラインであるノルドストリームのガス流量が激減し、需給逼迫への懸念が強まったことが背景。

Gazpromは「技術的な問題」としながらも、その他のパイプラインでも流量が減るなど、過去に欧州がロシア産原油の禁輸の方針を打ち出した後も、カザフスタンからCPCパイプライン(56万バレル/日)を、技術的な問題で停止している。

このときはガス決済をルーブル建てに切り替えることを発表し、「まずはガスから始めようか」とプーチン大統領が発言、原油にも...という懸念が広がった直後の稼働停止であり、今回の流量減少が「嫌がらせ」で有ることは否定出来ない。

ただ、ガスや原油の販売収入を確保したいロシアが代替販売先がない現状で、欧州向けのガス供給を停止する選択肢は考え難い。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田の不慮の停止3.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)6.季節要因7.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通し。

「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

現在、2.に関して、欧州域内最大の天然ガス生産国であるノルウェーの天然ガス生産が、定修・計画外停止両方の影響で大幅に減少、米Freeport社のLNGターミナル火災による輸出停止リスクが顕在化している。

Freeport社のLNG液化容量は全米の16.5%に相当。2020年実績を元にすると、世界のLNG貿易量の4.1%に相当するため影響は大きい。

報道ベースでは部分回復は9月頃、完全回復は年後半とされるターミナルの不稼働に伴う供給リスクが顕在化している状況。

このため、ロシア産ガスからLNGヘのシフトがさらに困難になった可能性は高く、割安に推移していたスポット価格を押し上げ、これから本格化する夏場~冬場の調達が困難になることを意味する。

そして、欧州のこの窮状をみて「ロシアが意図的にガス供給を一部止める懸念」もショートポジションを取り難くし、価格を下支えしやすい。

LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、あと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。

欧州全体のガス在庫は6月14日時点で52.1%(前日52.6%)と前日から減少している。ロシアのガス供給削減の影響が出ているようだ。

また、欧州域内で最大の貯蔵能力を有するウクライナの在庫積増し進捗状況は18.6%(18.4%)と遅々として進んでいない。

仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクは無視できない。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、供給が充分であっても受入側の都合でこれ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。米国のLNG供給制限もその動きを加速させるのではないか。

ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも急落。恐らくFreeportの事故の影響とみられるが、これでほぼ過去5年平均程度まで水準が低下した。

このことは在庫を例年以上のペースで積増ししなければいけないタイミングで、例年程度のフローしかなくなっている可能性を示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は小幅に上昇。米国の気温上昇見通しが価格の上昇要因となっているが、週間天然ガス統計で在庫流入量が、92BCF(市場予想90.25BCF、前週97BCF)と市場予想を上回ったことが上値を抑えた。

基本的にFreeportの火災の影響で輸出が減るため、米国内は在庫積増しが進むと見られHH価格には下押し圧力が掛かりやすい。

しかし中長期的には欧州向けのフローが増加することは確実であり、構造的には「絶対価格の水準訂正」が起きるステージにあるといえる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期近が期近が上昇、期先は下落した。期近の上昇は夏場に向けた調達と、欧州ガス価格の上昇が背景。

Freeportの火災を巡るLNGカーゴ市場の需給環境に変化(逼迫)が、価格の絶対水準を押し上げている状況、。

FreeportのLNG輸出ターミナル稼働は年後半の見込みであり、夏・冬のピーク時の供給が逼迫するのはほぼ必定の状況。

アジアを含めた輸入者はターム契約が許す限りの上限で調達をすると考えられるが、夏・冬の気温次第でスポットカーゴの需要は増加するため、足下のリスクは上向きである。

なお、期先(2023年)の価格の高止まりはLNG市場の構造変化を反映したものであり、脱ロシアが完了し、ロシアのガスが「浮く」状態になってからは再び水準が切り下がると考えているが、それはまだ先のことになる見込み。

6月15日時点の日本の発電用LNG在庫は231万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。なお、弊社集計データによる過去5年平均との比較では、まだ例年のレベルを回復していない。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。

6月6日~6月12日のLNGトレードだが、取引量は700万トン(前週731万トン)と減少した。スポット取引のシェアは26%(前週31%)と低下した。

スポット契約はJKTC(日本、韓国、台湾、中国)向けが▲27万トンの減少となった。主に韓国の輸入が減少したことによるもの。

欧州向けもポーランドやクロアチアの輸入が減少したことで▲32万トンの減少となった。

一方、ターム契約分の調達は、JKCTで+55万トンの増加。主に中国向けであり、恐らくロックダウンが解除されることに伴う夏場の需要期に向けての調達と考えられるが、再びロックダウンの懸念が強まっているためなんともいえないところ。

欧州のLNG輸入は114万トンに達したが、前月の同時期からは▲21%低い水準。カタール・ロシアの供給減少を米国の輸出が相殺した。

本日は、欧州の窮状を受けたロシアの供給減少観測もあり高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は上昇した。基本、石炭とガスを「価格を見てスイッチする」ことができる様な発電業者は限られるものの、Freeport問題やロシアのガス供給減少などの報道を受けたLNG・ガス価格の上昇で、カロリーベースの割安感が出たことや、豪州の寒波の影響による石炭輸出の減少懸念(発電燃料の主力は引き続き石炭)が価格を押し上げている。

ただし中国のロックダウンの影響で同国の電力向け需要は低迷が予想され、海上輸送炭の需要も減少すると見られることから、価格の高騰は抑制されるだろう。

ロックダウンの影響がどの程度であるかを分析し難くしているのは、ロックダウンとほぼ同時期に欧州から打ち出された「脱ロシア炭」の動きと、これに伴うロシア以外の石炭需要の増加、豪州や南アフリカの洪水の影響による供給停止、豪州の寒波の影響による化石燃料輸出の制限といった事象が重なったこと。

しかし5月末からのロックダウン解除→再度のロックダウンの間の動きを見るに、ロックダウンによる中国国内の需要減少がより価格に影響を与える、といえそうだ。

しかしそれでも石炭価格は高い。在庫水準の低さ、夏場に向けた調達圧力、供給ソースの制限が背景にある。

期近と期先の価格差を流動性プレミアム(コンビニエンスイールドの効果)とするならば、180ドル程度の流動性プレミアムが付加されていることになる。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。

結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。

日本も今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。

これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

本日は、欧州ガス価格の上昇が裁定的な取引を促すこと、上海ロックダウンの影響による中国の輸入需要の減少のせめぎ合いで高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。FOMCを受けて楽観論が広がりドル安で取引序盤は買い戻しが優勢となった。しかし、中国の新築住宅販売価格の減速や、米国時間に発表された住宅着工・許可件数が市場予想よりもさらに悪い内容になり、米国の金融引締めによる長期金利の上昇が、実態経済に影響を及ぼしつつあり、建材需要への影響も不可避と見られたことから下げが加速した。

しかし急速にドル安が進行したこともあって引けに掛けては下げ幅を削る展開。鶏非違最終日ということもあって鉛やスズは大きく上昇したが、ややテクニカルな上昇だろう。

非鉄金属の期間構造は需給バランスを占ううえで参考になるが、昨日第三水曜日を経て限月が交代したが、その後もコンタンゴの状態にあるのがアルミとニッケル、期近の鉛でありその他はバックワーションの状態になっている。

本日は再び世界景気の先行きがフォーカスされており、予定よりも早く景気が減速するのではとの見方が価格を下押しするが、実需筋の買い下がりもあり、朝方は一旦上昇すると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは続落、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月が上昇したが、中心限月を初め、期先は低下した。

鉄鋼製品価格の下落を受けたマージンの悪化で鉄鋼原料需要が減少していることが背景。住宅市場の加熱沈静化は中国政府の望むところだったが、上海ロックダウンの影響を受けた景気の悪化によるバブル沈静化であり、中国政府からすれば余り許容したくない価格下落といえる。

中国の鉄筋価格は例年よりも高い状態が続いていたが、このロックダウン期間の需要減少で水準を切下げており、価格面では過去5年レンジまで水準を切下げている。

昨日発表された中国の新築住宅価格は前月比▲0.17%(前月▲0.30%)と低下が続き、都市別の動向でも新築住宅価格の上昇した都市は23都市と前月の30都市から減少する一方、値下がりは46都市(39都市)と増加している。

本日も中国のロックダウンの懸念と、米国の金融引締め加速観測による景気減速懸念が強まっていることから水準を切下げる展開を予想。

ただし、中国の工業生産の回復や在庫積増しの需要も相応に見込まれることから、やはり高い水準を維持すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。FOMCを受けた楽観論が広がっている、との見方が昨日では大勢だったが、米住宅関連統計やフィラデルフィア連銀指数の減速を見て景気への懸念が強まり、株安・債券高となったことで実質金利が低下したこと、景気の先行きへの懸念から安全資産需要が高まったことが背景。

金の基準価格は1,127ドル(前日比▲5ドル)、リスク・プレミアムは+28ドルの724ドル。2016年基準で推定したリスク・プレミアムは既に700ドルを上回るようになっている。(リスク算定の際の「基準年」からの時間が離れすぎると、過去もそうであるがリスク・プレミアムが大きくなることがある。今後、基準年を変更する可能性はあるが、当面は2016年基準を採用の予定)

銀価格は金価格の上昇を受けて上昇、PGMは株価の急落はあったものの金価格の上昇もあって前日比プラスで引けた。

本日は、良い金利低下か、悪い金利低下かの議論は難しいが、いずれにしても株安で金利低下となりやすく、インフレ率の低下ペースを上回るとみられることから貴金属価格は堅調な推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は堅調な推移となり、上昇余地を探った。米国の金融引締め強化に伴うリセッションリスクが高まりドル安が進行したことが背景。

株式市場がFOMCの結果を楽観し、リスクテイクによるドル安進行とみていたが、悪いドル安が価格を押し上げた形。

穀物需要は景気に影響を受けにくい(エタノールなどの燃料向け需要は増加しているが、基本的には飼料・食用に用いられるため)ことから買いが入った。

米輸出統計ではトウモロコシ、大豆、小麦とも輸出が前週から減少しており、シカゴ定期の需給バランスはタイト化観測が強まったのだが、昨日はそれ以上のドル安の影響が上回った。

本日は恐らく米国株安を受けたリスク回避で再びドル高が進行すると予想されるため、価格には下押し圧力が掛かりやすい。

しかし、米国の景気が悪くなる、との見方が過度なリスクに晒された際の逃避通貨であるスイスフランや円に向かった場合、ドル安進行で穀物価格を押し上げる可能性。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

また、米国の金融引締めが新興国経済に打撃を与える可能性も。

・中国のゼロコロナ政策にこだわるスタンスがロックダウンを頻発させ、中国景気がハードランディングする場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について