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ECB利上げ開始と中国ロックダウン懸念で総じて軟調
  • 新村ブログ《油売りのひとりごと》

2022年6月10日 第2214号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ECB利上げ開始と中国ロックダウン懸念で総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は天然ガスやその他農産品、穀物価格が上昇したが、エネルギーや非鉄金属などの景気循環系商品価格は水準を切り下げる流れとなった。

ECBが想定通り利上げを実施する方針を決定したが、9月の大幅利上げの可能性もあり「景気を減速させても」インフレを抑制させる方針であることが意識されたこと、解除期待が高まっていた中国のロックダウンが再び発生する可能性が意識されたこと、などが総じて景気循環系商品価格を押し下げた。

天然ガスに関しては米Freeport社のLNGターミナルにおける火災の影響で上昇、農産品関連は非景気循環銘柄ということでディフェンシブに物色された可能性は高い。

総じて資源価格高は続き、それに伴うインフレ抑止で中央銀行や企業は苦慮している状況である。そんな中、昨日のニュースで太平洋セメントが石炭価格を販売価格に転嫁する、サーチャージ制の導入が報じられていた。

今後も資源インフレが続く、というのが市場のコンセンサスとなりつつある中、こういった動きは広がっていくと考えられる。

しかし、この類いのサーチャージは特殊な価格体系になっていないことが、価格リスクマネジメントを行う上での必要条件になる。

複雑な、売り手・買い手が特殊な条件でリスクを分かち合うフォーミュラ、例えば、「●●の場合は売り手が××、△△の場合は買い手が■■」といった「IF」構文のフォーミュラの場合、この価格リスクを制御をしようとすると、オプションが必要になるため、結果的にコスト高になる、あるいは制御出来ない、というリスクが発生することになるため、充分注意する必要がある。

【本日の見通し】

本日は欧米の金融引締め観測の強まりを受けた景気減速観測に加え、再び中国の経済活動が停止する可能性があることを考えると、期待需要減少観測が強まるため、景気循環系商品は軟調な推移になるだろう。

再び市場の物価上昇に対する感度が上がっているため、本日発表の米中物価指標には注目したい。仮に市場予想を上回れば引締め加速でリスク資産価格の下落要因に。

米CPI 市場予想 前月比+0.7%(前月+0.3%)、前年比 +8.3%(+8.3%)米コアCPI 前月比+0.5%(+0.6%)、前年比 +5.9p(+6.2%)

中国CPI 市場予想 前年比 +2.2%(+2.1%)中国PPI 前年比 +6.4%(+8.0%)

【昨日のトピックス】

4月の中国の貿易統計は輸出が前年比+16.9%(前月+3.9%)と加速、市場予想(+8.0%)も上回った。一方、国内の経済活動動向を判断する上で重要な輸入は+4.1%(市場予想+2.8%、前月±0.0%)と加速、ロックダウンは解除されていなかったが、一連の対策が顕在化したためと考えられる。

6月1日にロックダウンが解除されたが、まだゼロコロナ政策を継続していること、景気刺激のための金融緩和もあって人民元安が進みやすく、輸入企業にとっては厳しい環境が続くと予想される。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。この数日の上昇が顕著だったことに加え、ECBが金融引締めに舵を切ったこと、中国が再びロックダウンになる可能性が出てきたこと、断続的なドル高進行が下押し要因となった。

原油価格は足下の供給が充分ではないため、夏場の猛暑や利上げQTの影響による需要の伸び鈍化が見られていないため、まだ高値での推移となっている。

昨日発表された5月の中国の原油輸入は前年比+11.9%の4,583万トン(前月+6.6%の4,303万トンいずれも季節調整を行わない単純な前年比)と前月から伸びが加速した。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は3,の状態にあると考えられるが、今までの増産の延長線上で、予定通りOPECプラスの増産が9月で打ち止めとなれば、2.の状態に戻ると予想される。

脱ロシアが進み、景気の後退が明確にならなかった場合、短期的に1.にシフトする可能性もゼロではなくなってきている。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

6.ロシアがウクライナから撤退Brent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形で収束するか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q422 需要の伸び高止まり・供給制限継続 (↑)Q422~Q123 需要の伸び減速・供給不足期 (↓)      リセッションの場合 (↓↓)Q123~Q423 需要減速底入れ・供給回復期 (↑)2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産) (→)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日はドル高や中国・欧州の景気減速懸念を背景に調整売りに押される展開を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。米Freeport社のLNG液化プラントの火災によって同プラントが最短で3週間停止する見通しであることを受け、欧州向けのLNGカーゴ需給が逼迫すると見られたことが材料。

なお、2022年時点の米国の液化用量は9,090万トン/年であり、同社のプラントは1,500万トン/年(シェア16.5%)であり、影響は甚大。

ただ、たまたま不需要期であることや、ECB利上げ、中国ロックダウン再開の可能性が足下のLNG需要を抑制するため、ショート買い戻しの後は比較的落着いた推移となった、

また、3週間であればどうにか夏の需要期前の調達には間に合いそうではある。しかし、これが延長された場合、夏場のLNGスポット価格は上昇が不可避となる。

昨日発表された中国の5月の天然ガス輸入は前年比▲12.1%の907万トン(前月▲20.3%の809万トン)と伸び減速はやや収まったがそれでも過去5年平均は上回っている。

ロックダウンの影響で需要が減少していると考えられる。実際、中国国内の天然ガス生産は+5.0%の1,770万トン(前月+6.5%の1,448万5,000トン)と、伸びが鈍化している。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下の6点に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)3.景気減速(価格下落要因)4.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)5.季節要因6.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通しであり、「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、あと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。結局その大半をロシアからの輸入に頼らざるを得ない。なお、欧州全体のガス在庫は6月7日時点で50.2%(前日49.9%)と順調に在庫が積み上がっており、「このペースで行けば」10月までに90%の在庫積増しが達成出来る可能性が高まっている。

欧州全体では良いのだが、現在戦闘状態にあるウクライナのガス在庫の水準が著しく低い。ウクライナは欧州域内で最大の貯蔵能力を有するが、現在の在庫積増し進捗状況は17.8%(17.7%)とほとんど在庫が積み増しできていない状況。

仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクは無視できない。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、これ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。

LNGのタンカーレートはスエズ以西・以東とも上昇しているが、特に以西の価格が季節性を無視して顕著に上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は上昇。FreeportのテキサスLNGターミナルでの火災が輸出需要の減少で米国内ガス需給を緩和する、との見方が強まったため下落していたが、昨日発表の米天然ガス統計で、在庫の増加が市場予想に及ばなかったこと、そもそも米国のガス在庫の水準はまだ低いことから、安値拾いの買いが入った形。

本日発表の米天然ガス統計では、97.1BCFの在庫流入(前週90BCF)が見込まれている。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は上昇した。米FreeportのLNGターミナルでの火災により、LNG市場の需給が逼迫すると見られたことが材料となった。

本邦企業も同社からかなりまとまった規模のLNGを輸入する契約となっているが、仮に稼働停止が長びいた場合、代替調達をしなければならなくなるため、スポット価格の上昇要因となる。

6月8日時点の日本の発電用LNG在庫は214万トン(前年同月末204万トン、過去4年平均195万トン)と増加し、例年の在庫水準を上回った。

今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくなく、実際、政府は夏場の省電力を要請している。

5月30日~6月5日のLNGトレードだが、取引量は731万トン(前週716万トン)と増加した。スポット取引のシェアは31%(前週25%)と上昇した。

スポット契約は欧州・イタリア向けが+27万トンの大幅な増加となった。主にイタリアの輸入増加によるもの。一方、日中台韓の輸入量は+15万トンの増加。韓国の輸入増加の影響。

長期契約ベースの輸入は日本と中国向けが各々▲15万トン、▲39万トンの減少となった。

本日は、米国Freeportの火災事故の影響を受けて、米国からの供給減少観測がスポットLNG価格を高値に維持すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は下落した。経済活動再開が期待された中国上海が、再びロックダウンのリスクに晒されているとの報道を受けて、需要減少観測が強まったことが背景。

昨日発表昨日された5月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲2.3%の2,055万トン(前月+8.4%の2,354万9,000トン)と減速した。中国の国内生産増加で輸入需要が減少していることもあり、前年比マイナスの状態。恐らくロックダウンの継続に伴う需要減速が、輸入需要を減じたと考えられる。

しかしそれでも石炭価格は高い。在庫水準の低さ、夏場に向けた調達圧力、供給ソースの制限が背景にある。期近と期先の価格差を流動性プレミアム(コンビニエンスイールドの効果)とするならば、180ドル程度の流動性プレミアムが付加されていることになる。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。

結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。

日本も対岸の火事ではなく、今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。

これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

本日は、最大消費国である中国で再びロックダウンのリスクが高まっていることを考えると、やや軟調な推移になると考える。しかし在庫水準の低さ、それに伴う在庫積増し圧力の高まり、欧州・アジアのLNG・天然ガス価格の上昇を受けて下落余地も限定されると考える。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に下落した。回復下と期待されていた上海の経済活動だが、再び一部の地域でロックダウンが発生する懸念が強まっていることで、急速に売り圧力が強まった。

また、ECBが金融引締めに舵を切り、一時はユーロ高・ドル安となったがむしろ景気の減速を懸念してドル高に転じたことも非鉄金属価格を押し下げることになった。

また、中国が再びロックダウンした場合、中国のみならず貿易で関係の深い欧州の景気にも悪影響が及び、さらにECBの利上げ加速が域内景気を悪化させるため、非鉄金属需要にとってはレバレッジが効いてマイナスに作用する。

非鉄金属価格は中国の経済対策の影響で夏場に向けて一旦戻す、と考えていたもののこのゼロコロナ政策が頑なに維持される以上、経済対策を行っても実際に行動が出来ないため、むしろ足下のリスクは下向きになりつつあるといえる。

5月の中国の貿易統計では、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+4.3%の46万5,000トン(前月▲4.0%の46万5,330トン、3月▲8.7%の50万4,009トン、2月+12.1%の45万9,461トン)と同じ月の過去5年の最高水準に迫った。

前年比での増加率もプラスに転じており、中国政府の経済対策や金融緩和が一定の効果をもたらしたといえる。

一方、銅鉱石の輸入は前年比+12.8%の218万8,612トン(前月▲1.9%の188万3,593トン)と回復した。鉱石需給の緩和によるTCの上昇、電力供給の回復などが材料になったと考えられる。

4月の銅スクラップの輸入は前年比▲19.3%の13万5,331トン(前月▲12.8%の14万9,935トン)と、こちらは減速している。

本日は昨日の下落が大きかったこともあり、一旦安値拾いの買い(主に実需筋と考えられる)で上昇も、中国の経済活動が再び停止する可能性があること、ECB会合を乗り越えてドル高が進行していることを受けて軟調な推移になると予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は大幅に下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は直近限月が変わらず、中心限月が小幅に上昇した。

鉄鋼製品価格の上昇は中国貿易統計で製品輸出が加速したことを受けてのものと考えられる。一方、鉄鉱石、原料炭輸入は減少していること、再びロックダウンが上海で発生していることが売り材料となった。

鉄鋼製品価格で説明可能な水準は、鉄鉱石が142ドル、原料炭が現在の期先の価格水準とほぼ同じ240ドル。原料炭に関してはスポットと期先の価格差である250ドル程度が流動性プレミアムと考えられる(コンビニエンスイールドの効果)。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲33.4%の80万6,440トン(前月▲18.3%の95万6,300トン)と低迷が続き、過去5年の最低水準を下回った状態が続いた。5月はまだロックダウンの影響で工業活動停滞してたことが背景。

5月の中国粗鋼生産は前年比▲5.1%の9,278万トン(前月▲6.1%の8,830万トン)と回復している。ロックダウンの影響による鉄鋼製品不足で鉄鋼製品価格が高値を維持していることが生産増加に繋がったと考えられる。

中国政府は2022年の粗鋼生産を2021年実績を上回らないようにする計画。

5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+47.2%の775万9,170トン(前月▲37.5%の497万7,000トン)と急回復した。国内経済がロックダウンの影響で低迷し、内外価格差に着目した輸出が増加したためと考えられる。

5月の鉄鉱石の輸入は前年比+3.0%の9,250万トン(前月▲12.7%の8,606万トン)と回復し、過去5年平均を回復した。ロックダウンの影響で鉄鉱石在庫の水準が低下したため、在庫積増し需要が旺盛と考えられる。

5月の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比▲2.3%の2,055万トン(前月+8.4%の2,354万9,000トン)と減速した。中国の国内生産増加で輸入需要が減少していることもあり、前年比マイナスの状態。恐らくロックダウンの継続に伴う需要減速が、輸入需要を減じたと考えられる。

本日は上海の一部で再びロックダウンが発生していることもあり、先物主導で下落の見通し。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。ECBが想定通りの利上げ決定、9月にも追加利上げを示唆し、ユーロが上昇する局面があったがこれに伴う景気減速を意識したとみられるユーロ安・ドル高で引けに掛けては水準を切下げる展開となった。

金の基準価格は前日比▲4ドルの1,243ドル、リスク・プレミアムは▲2ドルの605ドルとなった。

銀は金価格の下落を受けて水準を大きく切下げた。結果、金銀レシオは+0.74倍の84.04倍に大幅に上昇。

PGMは株価の下落や中国のロックダウンを受けた需要減少観測が価格を押し下げた。

基本、FRBがインフレ抑制と金利引き上げの方針であることから、ベンチマークである金価格には下押し圧力が掛かりやすい状況が続く。しかし、ロシア問題や米金融引締めの裏側にある新興国経済や財政状況の悪化リスクがリスク・プレミアムを押し上げる形で価格を下支えしており、なかなか方向性が出難い。

本日は引き続きドル高基調となっていることが価格を下押しすると見られ、軟調推移を予想。銀・PGMは株価動向の影響を受けやすいため、足下週末に向けた株の調整売りが予想されることから、やはり軟調な推移に。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシ・大豆が総じて上昇した。米週間輸出統計で、トウモロコシ・大豆・小麦の輸出が大幅に増加したことが買い材料となった。

なお、中国の貿易統計も発表されたが、大豆の輸入は967万トンと、過去5年の最高水準に達している。

小麦に関してはロシアが(出所はどちらか判然としないが)小麦輸出を進めているといった報道が出ていることもあり、ドル高の進行もあって小幅に水準を切下げた。

需給環境の改善が見込み難い中、高値での推移が続いている。一番懸念されている小麦は豪州やカナダなどの豊作見通しで供給のつじつまが合う、との期待はあるものの、ロシア問題や天候問題などの不確定要素が余りに多く、リスクは引き続き上向き。

今晩発表予定のUSDA需給報告の予想は以下の通り。この中では小麦の生産・輸出見通しに注目している。

・5月米単収見通し市場予想(前月)トウモロコシ 177.1Bu/エーカー(177.0)大豆 51.5Bu/エーカー(51.5)小麦 NA(46.6Bu/エーカー)

・5月米生産見通しトウモロコシ 144億4,993万Bu(147億6,000万Bu)大豆 46億4,148万Bu(46億4,000万Bu)小麦 17億1,913万Bu(17億2,900万Bu)

・5月米輸出見通しトウモロコシ NA(24億Bu)大豆 NA(22億Bu)小麦 NA(7億7,500万Bu)

・5月米在庫見通し(市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,144万Bu(13億6,000万Bu)大豆 2億9,415万Bu(3億1,000万Bu)小麦 6億2,270万Bu(6億1,900万Bu)

本日も穀物価格は高値を維持する見通し。ただし上記のUSDA統計待ちであり、アジア~欧州時間には方向感が出難い。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


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