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新規材料乏しく高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年2月7日 第1480号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「新規材料乏しく高安まちまち」

昨日の商品市場は米石油統計が強気な内容だったエネルギーやその他農産品が上昇したが、非鉄金属などの景気循環銘柄の一角は売られることとなった。

とはいえ、目立った新規手がかり材料に乏しい中、レンジワークを継続しているという印象である。

昨日発表の米石油統計では原油在庫が増加したものの予想を下回る増加となり、石油製品の出荷が加速したことで「米景気がまだ良好」と判断される内容。

一方、ユーロ圏最大の製造業国であるドイツの製造業受注は前月比▲1.6%(市場予想+0.3%、前月▲1.0%)、前年比ベースでは▲7.0%(▲6.7%、▲4.3%)と市場予想を上回る減速となり、ユーロ安・ドル高が進行した。

結果、「米経済は堅調、一方で欧州景気は減速しているためドル高」という整理になる。結果、米国が最大消費国であるエネルギーは上昇し、その他の商品はドル高の進行が材料乏しい中で売り材料になったという整理だ。

引き続き金融政策動向を受けた実質金利の変化、ドル指数の動向がレンジワークとなっている商品価格の変動要因となる状況が続いている。

ただ、1月のFOMCとその後の経済統計の結果を見るに、FRBはまず経済統計を精査するスタンスに転じると考えられ、しばらくは金融政策の変更を行えない状態が続くと予想する。

さらに統計の内容次第で、当局担当者の発言も経済統計や市場動向を次第で利上げも、場合によっては利下げもあり得る、というどちらともつかない発言に終始することになると予想される。結果、米金融政策の動向はタカ派から中立に戻ったままであり、インフレリスク資産に対しての影響は限定されるとみられる。

経済統計の影響を受けることは間違いがないが、しばらくは金融政策動向よりも、米中、米欧、米朝といった米国を中心とする外交状況が相場を動かすことになると予想する。

本日も目立った新規手がかり材料に乏しい中、レンジワークを継続すると見る。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

原油価格は上昇した。米石油統計で在庫の増加が予想ほどではなかったことや、製品出荷が大きく増加したこと、価格上昇にも関わらずパイプラインの輸送能力の問題などで、生産が増加していないことが材料となった。

原油価格はしばらくレンジワークになると考える。

昨年の商品価格の下落要因の主因の1つであるFRBの利上げ・金融引き締めのスタンス維持が、1月のFOMCで転換しハト派的なスタンスに移行したことや、OPECの減産・ベネズエラに対する制裁強化による供給減少懸念が価格を押し上げる一方、基本的に景気は減速方向にあることや、米中貿易問題などのリスクイベントが頭を押さえるため。

ただし、1月発表のIMFの2019年の経済見通しは10月から▲0.2%引き下げられ+3.5%とされており、世界の原油需要の伸びも減速が見込まれる(なお、簡単な回帰分析の結果はこの下方修正により世界需要は▲100千バレル程度減速することを示唆しており、現時点では需要の伸び減速は軽微)。

米中貿易交渉は終了したが、2月下旬の米中首脳会談に下駄を預ける形となった。正直どのような結論を見るのかわからない。また、Brexitもどのような形になるかわからない。下りのエスカレーターに乗っている中で、イベントをどのように整理するかが今後を占う上での基本的な考え方になるだろう。

また、米中貿易戦争は長期化がやはり前提であり、北米の増産がQ119も緩やかに増加すると予想されること、年後半にかけて米国の減税効果が剥落することから上値も重く、本格的に上昇に転じるのは2020年以降のインドの人口ボーナス期入り以降となるのではないか。

短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、12月25日付のWTIの投機筋ポジションは、ロングが前週比+4枚の502,719枚、ショートが+3,300枚の196,407枚、Brentは1月29日付でロングが+11,939枚の280,509枚、ショートは▲17,830枚の47,806枚となっている。

米国のデータが更新されたが1ヵ月前のデータであり正直参考にならない。一方、Brentはロングが増加し、ショートが減少している。OPECによる減産と景気への楽観がポジション動向に見られている。

中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、2020年頃からはインドも人口ボーナス期に入り需要の増加が見込まれることから構造的に需要増加が見込めるため強気である。

なお、EVが普及して原油需要は2035年~2040年頃にピークを迎えるとの見方が市場のコンセンサスとなりつつあるが、財政的なサポートが必要なEVは、市場の期待するようなペースで拡大するとは見ていない。

また、EV化が進むにつれて同時に発生する、軽量化目的の樹脂利用(化学製品向け需要の増加)も期待できること、液体燃料は保存や輸送の観点からみて依然割安であり、アフリカなどの新興国では引き続き利用されると予想されることから、2035年に「需要の伸びは鈍化」するものの、減少に転じると判断するのは早計と見る。

実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050年頃)になるのではないか。

この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。

供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。

1.ベネズエラの内戦ぼっ発

2.中東情勢の悪化

3.上流部門投資低迷の影響

1.のベネズエラ問題は顕在化しつつある。現在、米国が支持するグアイド国会議長が暫定政権の大統領を宣言、国家が二分される可能性が出てきた。すでにベネズエラの原油生産は122万バレルまで低下しているが、100万バレル程度までの減産は十分にあり得る話で、場合によるとゼロ、ということも想定される。

ただし、OPECがたまたま減産を行っており、まだ供給余力があることから、ベネズエラ1国の問題であれば影響は限定される。しかしこれにイランの完全制裁が重なれば話は別だろう。

2.の中東情勢はより混迷を極めている。年初は、「米国+イスラエル+サウジ」vs「イラン+ロシア」という構図だったが、米国の大使館移転や、サウジアラビア ムハンマド皇太子のジャーナリスト殺害疑惑などで、米国・サウジアラビアの関係がギクシャクしてきている。

OPECもカタールが脱退、反サウジアラビアの姿勢を強め、イランもOPECの継続についてやや懐疑的な見方を示すなど、「景気後退局面・需要減速局面での産油国のエゴ」がむき出しになりつつある。

通常であれば増産攻勢が強まり、価格の下落要因となりそうだが、軍事的な衝突やサウジ対する制裁やそれに対する報復としての原油輸出停止も、今のところカショギ氏殺害について世界中から非難されていることから鳴りを潜めているが、ムハンマド皇太子が今のポジションにいる以上ない話ではない。

仮に、イランやサウジが軍事的に衝突した場合や、米国のイランに対する制裁が貫徹され、本当にイランが原油輸出できなくなるような場合には、ホルムズ海峡封鎖の可能性が高まるため、原油価格が100ドルを超えても何ら不思議はない。ただ、カショギ氏殺害疑惑を契機にムハンマド皇太子の動きが若干鎮静化していることは、日本を始めとする消費国にとっては朗報、といえるだろう。

金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

4.米中貿易戦争が終結する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。

2.は1月のFOMCでFRBはハト派的なスタンス(場合によると利下げも選択肢に)に転じており、金融面で原油価格を押し上げる可能性が高まっている。

しかし、1月の米雇用統計や米ISM製造業指数は予想外の強い内容となっており、FOMCがこの現状と1月FOMCで決定した方針との整合性をどのように取っていくかに注目が集まるだろう。

4.は短期的に貿易分野で米中が合意することはあるかもしれないが、長期的な覇権を競う争いであるためそう簡単に終息するとは思えない。

下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国の中国制裁強化による中国の財政状況悪化ないしは地方政府のデフォルト

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの強まり

5.株価の調整

6.トランプ政権の保護主義政策推進

7.新興国の財政状況悪化ないしはデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。

2.は構造的な中国の経済成長減速に、米国の制裁強化が重なっているためデフォルトまでは行かなくとも地方政府の財政状況が悪化し、地域経済に影響を与える可能性は低くなくなっている。

3.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

5.は既に顕在化した。株価下落のきっかけは7月のFOMCでの利上げ以降の金利上昇で、米2年-5年金利が逆転したのを「景気後退」と株式市場参加者が判断、過剰に反応し、ファンドの閉鎖も伴いながらポジション解消が進んでいる。ただし売り一巡で足元は逆に価格の押し上げ要因になっているようだ。

6.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しない。

7.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、内戦で政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。

1.北米の増産加速

2.OPECの結束の揺らぎ

1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、今年から再び増産ペースが加速すると予想される。

2.は、12月のOPEC総会の結果を見てもわかるように、出口を模索する状態にはない。

ムハンマド皇太子の強硬姿勢に嫌気が指し、財政状況も厳しくなったカタールがOPEC脱退を決定するなど、結束にはほころびが出始めている。イランの減産分をサウジが肩代わりするなど、対立国の利害関係が対立しており、イランの脱退で生産調整が機能しなくなる可能性もある

石炭価格はじりじりと水準を切り下げる展開となっている。北朝鮮への制裁強化や中国の環境を意識した減産の影響で需給がタイト化し、価格水準が大きく切り上がったが、現在の供給環境を所与のものとしたとき、価格動向を左右するのはやはり景況感、すなわち需要動向である。

最大消費国である中国の景況感は悪化しており、製造業PMIは50の閾値を下回った。このような需要鈍化局面では石炭価格には下押し圧力が掛かりやすい。また、北東アジアが暖冬であることも価格下落圧力となっている。当面、100ドルを上値に意識される展開が続くことになるだろう。

なお、米国と北朝鮮の交渉が進捗し、制裁が緩和された場合にはさらに価格は下押しされることになると予想される。しかし、北朝鮮が核開発を継続している可能性が高い中、制裁緩和の可能性は高くない。

それよりは、米中貿易戦争の激化で中国が米国に従わない、親北傾向を強める韓国が非合法に北朝鮮に対する制裁を緩和する、という展開はあり得るだろう。2019年のびっくり予想ではないが、韓国と北朝鮮が統合し、朝鮮半島が一気に親中国に傾く、というシナリオもなくはない。

ただし、環境規制強化の世界的な流れを受けて、上流部門投資が抑制される見通しであることに伴う供給制限から下値余地も限定されると考える。この場合、石炭先物の期先の価格が目安として参考になるが、85ドル程度が下値の目途になるのではないか。

---≪LME非鉄金属≫---

LME非鉄金属価格は下落した。ドル高が進行したことが売り材料となったが、ヴァーレが尾鉱ダムのライセンスを取消されたとの報道やLME在庫の減少で需給タイト化懸念が意識され、価格を下支えした。

非鉄金属価格は底堅い推移になると考える。

昨年のインフレ系リスク資産価格の下落要因であった、「米国の断続的な利上げ」、すなわちFRBのタカ派的なスタンスの継続が、1月のFOMCを見る限りではハト派に転じた可能性が高いこと、しかしその状態で発表された米統計が良好な内容で、期待需要の増加が予想されること、ヴァーレの尾鉱ダム崩壊の環境面への影響が、ほかの金属生産にも影響を及ぼす可能性があること、中国政府の景気刺激策の実施期待といった買い材料が多数あるため。

なお、昨年後半にかけての下落で水準が切り下がったが、実質金利の低下を受けて年初から価格が上昇、チャート上のテクニカルポイントを上抜けしたため、コアレンジが上に切り上がっている。

ただし、1月発表のIMFの2019年の経済見通しは10月から▲0.2%引き下げられ+3.5%とされており、世界の原油需要の伸びも減速が見込まれる。

しかし、米中貿易戦争が一時的な緩和はあっても、根本的なところでそう簡単に解決しないとみられることや、欧州の政情混乱(ドイツやイタリアの政治混乱、ハードBrexitなど)、秋口にかけては米減税効果が一巡することなど、基本的に価格には常に下向きのリスクが掛かりやすい。

米国の制裁の影響は顕在化しつつある。1-12月期の中国工業セクター利益は前年比+10.8%の6兆6,351億元(1-11月期+11.8%の6兆1,169億円)、12月は▲1.9%の6,808億元(前月▲1.8%の5,948億円)と、1-11月期、11月から減速している。工業セクター利益は半年後の非鉄金属価格に対する説明力が高い。

さらに中国の1-12月期の固定資産投資は前年比+5.9%の63兆5,636億元(1-11月期+5.9%の60兆9,267億元)と市場予想の+6.0%を下回った。公的セクターの投資の伸びが減速(+2.3→+1.9%)したことが影響。

工業生産も年間累計では前年比+6.2%(+6.3%)、不動産開発投資も前年比+9.5%の12兆264億元(+9.7%の11兆83億元)と伸びが減速している。

構造的な成長ペースの鈍化に、循環的な減速、米中貿易戦争の影響が顕在化し始めているとみられる。

日本の歴史を見てもわかるように、人口動態のピークアウトは住宅セクターの鎮静化につながりやすく、今後はこれまで作ってきたバブルをいかに混乱なく潰せるかどうかである。

この状況に関して習近平国家主席は「急激かつ深刻な危機に直面している」と発言、中国が置かれている状況が外から見ているよりも深刻である可能性が高いこと、同時に中国政府は国内景気維持のために、経済対策を行わざるを得ない状況にあることを示している。

なお、IMFの2019年の経済見通しは10月から▲0.2%引き下げられ+3.5%とされたが、今後、需要をけん引していくと考えるインドの成長見通しが引き上げられ(+7.4%→+7.5%)、中国の見通しは据え置かれた(+6.2%→+6.2%)。

非鉄金属需要の伸びは足元減速しているが、長期的には強気である。価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする2020年以降になるだろう。

短期的には投機筋の動向が重要になるが、1月25日付のLMEポジションには引き続き跛行性がみられたが、アルミを除くとロングの増加がみられ、中国の経済対策の影響が買い材料として意識されたようだ。

それに対してショートポジション動向がネットロング動向に影響を与えた。ただし総じて市場参加者は非鉄金属に対して強気に転じている。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は1月25日時点で96.8億ドル(前週96.7億ドル)と落ち着いてきた。買い越し枚数はトン数換算ベースで3,171千トン(3,131千トン)と増加している。

中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、2020年頃からインドが人口ボーナス期に入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気のスタンスを崩していない。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

この見通しの上昇リスクは需要面では、

1.中国の景気刺激策の実施

2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台が使われる)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

3.トランプ政権のインフラ投資計画実施

4.米中貿易戦争が終結する場合

などが考えられる。

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

ただ、既に預金準備率の引き下げは実施されているが地方政府財政も逼迫していることから支出の拡大となる公共投資の規模拡大は限定されると予想される。

2.の環境規制強化の流れの中でのEVブームは、若干鎮静化している。EV普及のためには補助金負担は必須であり、景気が減速する中ではなかなか積極的にEV政策を推し進められないことが背景にある。よって、市場が期待しているほどのペースで普及するとは見ていない。

3.はそもそも大きな政府を目指している民主党の理解が得られやすいため、メキシコとの壁は作らないと思うが一部実施される可能性は高まった。

4.は短期的に貿易分野で米中が合意することはあるかもしれないが、長期的な覇権を競う争いであるためそう簡単に終息するとは思えない。

供給面は個別性が強いが、以下が上昇リスク要因として挙げられる。

1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)

2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続

3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり

4.銅に関してGrasberg鉱山の減産

5.Valeの残渣ダム事故による環境規制強化に伴う減産

4.については2019年にインドネシアのGrasberg鉱山が露天掘りから坑内掘り(地下オペレーション)に移行する見込み。

これに伴い生産量は大幅に減少する見込みで2018年の54万4,000トンから27万トン程度まで減少すると予想される。

2018年の世界の生産上位10社の増産は+6.8%だったがGrasbergの減産で+4.1%程度に減速する。

Cobre Panamaプロジェクトの増産で15万トン程度が見込まれているがこれでもGrasbergの減産分の半分程度しか賄えない。

5.は今後のブラジル政府の対応によるが、汚染物質の流出や人が多数死亡していることを考えると、鉱山の種類・企業に関係なく金属生産に影響が及ぶ可能性がある。

金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。

2.は1月のFOMCでFRBはハト派的なスタンス(場合によると利下げも選択肢に)に転じており、金融面で原油価格を押し上げる可能性が高まっている。

しかし、1月の米雇用統計や米ISM製造業指数は予想外の強い内容となっており、FOMCがこの現状と1月FOMCで決定した方針との整合性をどのように取っていくかに注目が集まるだろう。

下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の軸となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

3.株価の調整

4.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

5.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。

2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

3.は既に顕在化した。株価下落のきっかけは7月のFOMCでの利上げ以降の金利上昇で、米2年-5年金利が逆転したのを「景気後退」と株式市場参加者が判断、過剰に反応し、ファンドの閉鎖も伴いながらポジション解消が進んでいる。今や最大の下落要因となっている。

ただし足元は売り一巡でむしろ株価には上昇圧力が掛かっており、逆に買い材料に転じている。

4.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。

5.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪鉄鋼原料≫---

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は上昇、原料炭スワップ先物は横這い、中国鉄鋼製品価格は休場のため価格提示なしだった。

ヴァーレのブラジルの尾鉱ダム決壊が環境面を通じて広く鉄鉱石供給に影響を及ぼす、との見方が広がっている中、ブルクツ鉱山ダムの資格が取消となったことや、フォースマジュールを宣言したことで供給懸念が強まってることが背景。

鉄鉱石価格は当面高値を試す動きになると考える。影響が不透明であるが、ヴァーレの尾鉱ダム決壊の供給への懸念が意識されることが材料。

ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響を正確に予想することは難しいが、少なくともヴァーレが保有する17の尾鉱ダムには監査が入り、場合によれば別種の鉱山を保有する他社にも波及する可能性がある。

既に追加で1つ、ブツクツ鉱山の尾鉱ダムの運転免許が取り消されている。

結果、ブラジルで採掘の許可を得るは今までよりも困難になり、供給を抑制することが予想される。

また、輸入鉱石の需要期に当たること、中国政府の景気刺激策の実施や、冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられることも価格を押し上げよう。場合によると100ドル超えを予想する調査機関も出てきている。

主要生産地である唐山市の直近の鉄鋼生産者稼働率は75.8%と例年の82.0%を下回っている。唐山市は稼働規制を強化する方針であり、この稼働率は70%程度にさらに落ちることになる。

中国人民銀行は預金準備率引き下げ、中国国営の中国鉄路総公司は2019年の鉄道網整備を6,800キロ(1,250億ドル)とし、2018年の4,683キロから45.2%増加させると発表、この他にも自動車販売などへの対策が行われる見込みである。

直近で発表された中国鉄鋼業PMIは51.5(前月45.6)と急速に回復した。主に新規受注の増加(39.5→53.4)によるもので、景気減速に伴う政府の景気刺激策が影響しているとみられる。

しかし中期的には、鉄鋼製品生産の減速で鉄鋼向け鉄鉱石需要の減速が予想されることが、価格の上値を押さえると考えられる。

鉄鋼製品在庫は前週比+146.9万トンの1,128.6万トン(過去5年平均1,168.6万トン)であり例年よりも在庫水準は低く、鉄鋼製品価格は例年よりも高い水準を維持しそうだ。このことは鉄鉱石価格の下支え要因となる。

直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比▲230万トンの1億3,780万トン(過去5年平均1億1,237万トン)、在庫日数は▲3.8日の30.2日(過去5年平均 29.0日)と例年の水準を上回っている。粗鋼生産が駆け込み需要が剥落したためと考えられ、鉄鉱石価格を下押し要因となる。

しかし、ヴァーレの減産の影響が徐々に顕在化するとみられるため、鉄鉱石在庫動向は注目したいところだ。

米中貿易交渉は終了したが、2月下旬の米中首脳会談に下駄を預ける形となった。正直どのような結論を見るのかわからない。また、Brexitもどのような形になるかわからない。下りのエスカレーターに乗っている中で、イベントをどのように整理するかが今後を占う上での基本的な考え方になるだろう。

また、米中貿易戦争は長期化がやはり前提であり、北米の増産がQ119も緩やかに増加すると予想されること、年後半にかけて米国の減税効果が剥落することから上値も重く、本格的に上昇に転じるのは2020年以降のインドの人口ボーナス期入り以降となるのではないか。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。

米国の制裁の影響は顕在化しつつある。1-12月期の中国工業セクター利益は前年比+10.8%の6兆6,351億元(1-11月期+11.8%の6兆1,169億円)、12月は▲1.9%の6,808億元(前月▲1.8%の5,948億円)と、1-11月期、11月から減速している。工業セクター利益は半年後の非鉄金属価格に対する説明力が高い。

さらに中国の1-12月期の固定資産投資は前年比+5.9%の63兆5,636億元(1-11月期+5.9%の60兆9,267億元)と市場予想の+6.0%を下回った。公的セクターの投資の伸びが減速(+2.3→+1.9%)したことが影響。

工業生産も年間累計では前年比+6.2%(+6.3%)、不動産開発投資も前年比+9.5%の12兆264億元(+9.7%の11兆83億元)と伸びが減速している。

構造的な成長ペースの鈍化に、循環的な減速、米中貿易戦争の影響が顕在化し始めているとみられる。

日本の歴史を見てもわかるように、人口動態のピークアウトは住宅セクターの鎮静化につながりやすく、今後はこれまで作ってきたバブルをいかに混乱なく潰せるかどうかである。

この状況に関して習近平国家主席は「急激かつ深刻な危機に直面している」と発言、中国が置かれている状況が外から見ているよりも深刻である可能性が高いこと、同時に中国政府は国内景気維持のために、経済対策を行わざるを得ない状況にあることを示している。

なお、IMFの2019年の経済見通しは10月から▲0.2%引き下げられ+3.5%とされたが、今後、需要をけん引していくと考えるインドの成長見通しが引き上げられ(+7.4%→+7.5%)、中国の見通しは据え置かれた(+6.2%→+6.2%)。

非鉄金属と同様、鉄鋼原料価格についても、長期的には基本的に強気である。価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする2020年以降になるだろう。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。

1.中国の景気刺激策の実施

2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合

3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

ただ、既に預金準備率の引き下げは実施されているが地方政府財政も逼迫していることから支出の拡大となる公共投資の規模拡大は限定されると予想される。

2.はそのプロジェクトの質(たち)の悪さから導入を見送る国が増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではない。

3.は民主党が選挙で下院の過半数を占めたことから実施の可能性が後退した。しかしそもそも民主党は大きい政府を標榜しているため、部分的な財政出動で合意する可能性はある。

下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。

1.中国の住宅バブル崩壊

2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合

3.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落する場合

4.地政学的リスクの顕在化

5.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

2.に関しては地方財政が悪化していることは確かなようで、財政状況を悪化させるような財政追加出動よりは金融緩和に舵が切られる可能性が高く、その顕在化の可能性も高まっている。

4.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

5.は貿易戦争が開戦となったが、一時的に貿易分野で米中が妥協する可能性出てきた。しかし、今回の対立は覇権争いが目的であるためことがあります仮に妥協があってもそれは仮初の妥協と考えておくべきだろう。

6.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪貴金属≫---

金銀価格は軟調な推移となった。目立った新規手がかり材料に乏しい中、欧州の統計減速を受けてドル高が進行したことが材料となった。PGMは金銀価格の下落と株価の調整を受けて水準を切下げている。

金価格はもみ合うものと考える。1月FOMCはハト派寄りだったため、金融面で金価格をサポートするものの、1月雇用統計や米ISM製造業指数が好調だったことで再びスタンスをややタカ派にシフトさせる可能性があると考えられるため。

また、英国のBrexitが無秩序なものになる可能性が出てきていること、米国の政府閉鎖は一時的に解除されるものの、あくまで一時的な措置であること、米国の中国制裁は本気であり簡単に解除されない見込みであることが、安全資産需要を高めることも価格を押し上げよう。

英Brexitはメイ政権の離脱案が否決されたことで先行きが全く分からなくなってきた(詳しくは1月16日付の総括を参照)。一番現実的な解は、「とりあえずBrexitの期限を延期する」であったはずだが、英議会はこれを否決した。

結果3月末までに何かの合意をEUとしなければならなくなっている。しかし、新たなEU離脱案をEU側は交渉する意向はない(他のEU離脱を企図する国が、「我々にも同様の措置を」となりEUが瓦解するリスクがあるため)ため、もはやハードBrexitは不可避なのかもしれない。

金価格に対する実質金利の説明力が高いことは繰り返しこのコラムで解説している通りであるが、名目金利の決定要因は景気動向そのものや、株価動向などの影響を受けるが、基本的には中央銀行の金融政策動向が左右している。

(以降の分析の詳細は2019年1月17日付けMRA's Eyeを参照ください)

過去の利上げと金価格の感応度を分析すると、仮に今年の米利上げが1回、2回だった場合各々金価格を▲100ドル、▲50ドル押し下げる。仮に景気刺激のサプライズ利下げがあれば、金価格は+50ドル押し上げられる。

同様に、期待インフレ率に対する原油価格の影響は大きく、仮にWTIが現在の50ドル近辺から40ドル程度まで下落した場合には、期待インフレ率は▲0.2%低下し、逆に何かしらの供給危機が顕在化して価格が70ドル程度まで上昇した場合には+0.4%上昇することが予想される(同様の感応度分析を行うと、金価格は各々▲65ドルの押し下げ、+130ドルの押し上げ要因に)。

以上を整理すると金価格が最も上昇する場合は、「利下げ実施(1回)、中東情勢不安顕在化」の場合で現在の価格から180ドル程度上昇し、1,480ドルを付けることになる。

最も下落する場合は、「利上げ2回実施、原油価格下落」で、1,135ドル程度までの下落があることになる。

これに地政学が加わると、最も上昇する場合が、「利下げ実施(1回)、中東情勢不安顕在化、米国債リスク顕在化」であり、1,800ドルまでの上昇、次が「「利下げ実施(1回)、中東情勢不安顕在化、軽度の信用不安顕在化」で、1,510ドルまでの上昇となる。

逆に、「利上げ2回実施、原油価格下落、イベントリスクの顕在化なし」の場合は985ドルまで下落となる。

1月のFOMCを受け、「利上げなし、原油価格は緩やかな上昇、軽度のイベントリスク顕在化」で、1,300ドル程度でもみ合うことになるのではないだろうか。

銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。

今後については金価格が、実質金利の低下を背景に堅調に推移すると考えられることから、同様に高い水準を維持すると考える。現在の金銀レシオは80に大きなチャートポイントが重なり、底堅い推移となりつつ過去最高水準を維持している。

足元、COMEXの金銀在庫レシオの金銀レシオに対する説明力が高いが、足元でも金銀在庫レシオは高い水準を維持している。記録的な水準まで積み上がった銀の取引所在庫の影響で、しばらくはこの80越えの水準を維持するだろう(詳しくは2018年10月19日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

銀価格は金銀在庫レシオの高止まりを受け、中期的には76倍~83倍程度での推移になると考える。

最も上昇する場合は金価格が1,800ドルまで上昇する場合で23.7ドル、1,510ドルまで上昇した場合で19.9ドル、985ドルまで下落し、金銀レシオが83倍で推移した場合12ドル程度真での下落はある

しかし実際には金1,300ドル、金銀レシオ80倍程度で16.25ドル程度が目安になるのではないか。

短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、12月25日時点で金のロングが+26,454枚の208,622枚、ショートが▲8,571枚の97,637枚、銀のロングが+3,291枚の77,314枚、ショートが▲2,428枚の51,764枚となっている。

統計の発表が再開されたが、1ヵ月前の統計でありあまり参考にならない。

PGM価格は金銀価格が上昇するため高値圏を維持するとみるが、実際に需給バランスがタイト化して上昇していたパラジウムは、足元の価格上昇が投機の買いによるものと考えられるため、一旦下値余地を探る動きになると考える。

中期的にも、世界景気の減速に伴う自動車販売の減速、それに伴う自動車向け排ガス触媒需要の減速が価格を下押しすると考える。

パラジウムはリースレートが20%を下回り、実際の需給面は緩和に向かいつつある。足元の上昇は恐らく、相場上昇のトレンドにBetした投機の買いによるものと考えられるが、そろそろピークだろう。

中国の12月の自動車販売(工場出荷数)は前年比▲13.0%の266.2万台(前月▲13.9%の254.8万台、10月▲11.7%の238万台、9月▲11.6%の239万4,100台、8月▲3.8%の210万3,400台、7月月▲4.0%の188万9,100台)と6ヵ月連続でマイナス成長となり、同国の耐久財需要が減少していることが伺える。

米国の1月の自動車販売は1,660万台(市場予想1,720万台、前月1,750万台)と悪化した。2019年の自動車販売は減速する、というのが市場のコンセンサスとなりつつある。

1月の米消費者信頼感は120.2と前月の126.6から大幅に減速した。ただ、FRBの利上げは打ち止めとなる可能性が高く、自動車販売を下支えすると予想される。

ちなみに1月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数では、6ヵ月以内自動車購入指数は13.3(13.1)に城所しており、PGM価格を下支えすると予想される。

弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが、直近の見通しでは2018年のプラチナの需給は50万5,000オンスの供給過剰と、前回発表の29万5,000オンスから供給過剰幅が引き上げられた。2019年についても45万5,000オンスの供給過剰が見込まれている。

2019年の自動車向けの触媒需要は前年比▲40万オンスとなる一方、供給は、南アフリカ(+5.5万オンス)、北米(+4.5万オンス)の増産がロシアの減産(▲2万オンス)を相殺、供給が+13万オンスとなることで需給の緩和感が強まる見込み。

この結果、地上在庫は312万オンス(2018年 266万5,000オンス))に増加する見込みで、在庫日数も146.8日(128.4日)と増加見込みであり、在庫の顕著な増加が価格上昇を抑制することになろう。

なお、南アフリカのPGM生産指数は11月時点で114.7(季節調整前)と過去5年の最高水準となった。今の需要動向をみるとよりプラチナ需給が緩和し、パラジウムの供給は不十分で両者のスプレッドは、需給面からまた拡大する可能性が出ている。

12月25日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが+354枚の47,335枚、ショートが+71枚の35,665枚、パラジウムはロングが▲640枚の16,956枚、ショートが▲543枚の3,250枚となっている。

CFTCデータの発表は再開されたが、1ヵ月前の統計であるためあまり参考にならない。

---≪農産品≫---

シカゴ穀物価格は小幅に下落した。欧州統計の減速を受けてドル高が進行したことが材料となった。

穀物価格は再び現状水準でもみ合うものと考える。FOMCのスタンスがハト派に転じたものの、1月の雇用統計やISM製造業指数が改善したことで再び米国の金融当局のスタンスが不透明になったこと、米中貿易交渉は、中国が何らかの譲歩をする可能性はあるものの、2月の米中首脳会談(中国側が提案)まで結果が先送りされたことから、方向性が出難いため。

しかし、2018-2019年の米穀物生産は豊作が見込まれており、さらにエルニーニョの発生が北米生産にプラスに作用すると考えられることから、価格には下押し圧力が掛かりやすい。

12月の米需給報告では、トウモロコシの在庫見通しが17億8,100万ブッシェル(市場予想17億4,400万ブッシェル、前月17億3,600万ブッシェル)、大豆が9億5,500万ブッシェル(9億4,400万ブッシェル、9億5,500万ブッシェル)、小麦が9億7,400万ブッシェル(9億6,500万ブッシェル、9億4,900万ブッシェル)と、総じて在庫は市場予想を上回っている。

12月25日付のCFTC投機筋ポジションは、トウモロコシのロングが▲10,388枚の410,561枚、ショートが+8,951枚の226,772枚、大豆のロングが▲15,941枚の129,316枚、ショートが▲5,420枚の125,206枚、小麦のロングが▲3,437枚の142,523枚、ショートが+4,089枚の132,455枚となっている。

なお、CFTCデータの発表が再開されたが、1ヵ月前のものなのであまり参考にならない。

◆本日のMRA's Eye


「中国で広がる豚コレラの影響」

中国で豚コレラの被害が拡大している。昨年8月に豚コレラ発生の報告があってからすでに半年近くが経過しているが、一向に終息の気配が見えない。

この動きを受けて中国の豚肉価格は値を切下げている。これは豚コレラに感染する前にと畜を行う養豚業者が増加することによるもので、干ばつなどの時にと畜が進むのと同じ仕組みである。昨年の春先以降も中国の豚肉価格は暴落したが、これは飼料となる大豆ミールの価格が上昇したことで今回と同様、と畜が進んだためだ。

中国の春節中は消費も回復するため価格の下落は比較的抑制されているが、春節明け後はさらに価格が下落することも想定される。いずれにしても豚コレラの影響が終息しない限り、しばらくはと畜の進行に伴う豚肉需給の緩和が価格を押し下げることになるだろう。

しかし、問題はそれ以降である。足元はと畜を勧めることで豚肉価格は下落するものの、早晩豚の飼育頭数減少に伴い中国国内で豚肉供給懸念が高まると予想されるため、価格が反転上昇する可能性があるためだ。

直近(昨年10月)の米農務省発表の豚肉需給見通しでは、2019年の世界の豚肉消費量が1億1,431万1,000トンであるのに対し、中国の消費量は5,652万5,000トンと予想されている。世界の豚肉の49.4%が中国で消費されている計算になる。

一方生産量も中国が1位で5,480万トンと世界シェアの47.8%を占める。統計上は▲172万5,000トンの供給不足で、中学は2018年には525万4,000トンの豚肉を輸入している。概ね消費量の10%程度を輸入で賄っている計算になる。

方生産量も中国が1位で5,480万トンと世界シェアの47.8%を占める。統計上は▲172万5,000トンの供給不足で、中国は2019年には
187万5000トンの豚肉を輸入する見込みである。世界の輸入量見込みが810万4000トンであるため世界の輸入量の23.1%を占めることになり、その影響は大きい。

今回の豚コレラでと畜された豚の頭数は1月14日までで91万6,000頭(猪を含む)に及ぶ。少し古いデータだがFAOの推計だと中国の豚の飼育頭数は4億3,503万7,000頭であるため、殺処分となった豚は全体の0.2%に過ぎない。

しかし影響が全土に拡大していること、終息の気配が見えないことを考えるとこの規模はさらに大きくなると見るべきだろう。

中国国内の供給不足分を賄うために海外から輸入を行うとしても、この規模であれば国際価格への影響は大きくない。しかし問題は、今回の場合、豚の飼料価格が上昇したのでと畜が進んだわけではなく、豚コレラの影響によるものであるため、簡単に中国国内の生産を増加させることが難しい点だ。

もちろん豚コレラの影響が緩和し、飼育頭数が増加すればこの限りではないが、豚が生まれてから出荷まで6ヵ月であることを考えると、この影響は比較的長期化する可能性があるとみておくべきだろう。中華人民共和国農業部も今年の後半以降の価格上昇リスクを指摘している。

中国の消費者物価指数に与える豚肉価格の影響は小さくない上、豚肉価格の高騰は中国国民の不満を高め、体制に影響を及ぼす可能性もゼロではない。

今のところ中国国内の豚肉供給の増加もあって輸入は増加していないが、輸入量という意味では次の四半期以降に増加を始め、日本が輸入する豚肉価格にも影響が出ると予想される。

また、こうした豚肉市場動向を受けてほかの市場にも影響が出ている。まず豚の飼料である大豆ミール価格が需要の減少で中国国内で低下していることだ。また大豆ミール需要の減少を受けて中国の大豆輸入量も減少している。2018年12月の大豆輸入量は前年比▲40.1%の572万1,000トンまで減少している。子細に見ると対米制裁開始と豚コレラ発生以降の前年比での輸入減少が顕著だ。

これに伴い中国の大豆在庫は取り崩しが進んでいる。このように考えると米中貿易交渉後に100万トンの米国産大豆を購入した、と言われているが(豚コレラの影響があったとはいえ)在庫の減少分を補っただけとも言える。

また、大豆輸入の減少により主に食用に用いる大豆油の価格は上昇しており、代替品であるパームオイルや菜種油にも上昇圧力が掛かることが予想され、豚肉の供給が減少して価格が上昇すれば、代替品として鶏肉などの価格上昇の可能性もあり得る。

豚コレラの動向が他商品価格にも影響を与えることは無視できないリスクの1つである。

◆主要ニュース


・12月独製造業受注 前月比▲1.6%(前月▲0.2%)、前年比▲7.0%(▲3.4%)

・1月独建設業PMI 50.7(前月53.3)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲2.5%(前週▲3.0%)
 購入指数▲4.9%(▲2.3%)
 借換指数+0.3%(▲5.5%)
 固定金利30年 4.69 %(4.76%)、15年 4.11%(4.16%)

・1月ブラジル自動車生産 196,767台(前月177,503台)

・1月ブラジル自動車販売 199,794台(前月234,531台)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計
 原油+1.3MB(クッシング+1.4MB)
 ガソリン+0.5MB
 ディスティレート▲2.3MB
 稼働率+0.6%

 原油・石油製品輸出 7,415KBD(前週比+271KBD)
 原油輸出 2,454KBD(+201KBD)
 ガソリン輸出 720KBD(+42KBD)
 ディスティレート輸出 1,079KBD(▲31KBD)
 レジデュアル輸出 263KBD(+23KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 926KBD(▲87KBD)
 その他石油製品輸出 1,780KBD(+148KBD)

・OPEC、ロシアを中心とする10ヵ国で構成されるグループと正式なパートナーシップを結ぶことを目指す。

【メタル】
・ブラジル政府、Valeのブルクツ鉱山ダムの免許取り消し。

・Vale、鉄鉱石の販売契約でフォースマジュールを宣言。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.30%/ ▲4.73%
2.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +2.21%/ ▲3.28%
3.NYM RBOB ( エネルギー )/ +2.10%/ +9.98%
4.ICEココア ( その他農産品 )/ +1.71%/ ▲6.58%
5.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +1.71%/ +12.16%

【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲3.74%/ +7.68%
67.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲2.26%/ +29.02%
66.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲1.52%/ +1.34%
65.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲1.49%/ +4.75%
64.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.27%/ +5.81%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,390.30(▲21.22)
S&P500 :2,731.61(▲6.09)
日経平均株価 :20,874.06(+29.61)
ドル円 :109.99(+0.03)
ユーロ円 :124.97(▲0.45)
米10年債利回り :2.69(▲0.00)
独10年債利回り :0.16(▲0.01)
日10年債利回り :▲0.01(▲0.00)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :3,366.36(▲56.24)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.03(▲0.14)
エネルギー :34.92(▲1.05)
ベースメタル :16.55(▲0.09)
貴金属 :15.78(+0.36)
穀物 :12.54(+0.24)
その他農畜産品 :19.56(▲0.08)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :34.74(▲0.84)
Brent :25.13(▲4.39)
米天然ガス :72.98(+0.13)
米ガソリン :39.62(+0.24)
ICEガスオイル :21.10(▲1.65)
LME銅 :14.14(▲0.23)
LMEアルミニウム :23.90(+0.12)
金 :11.84(▲0.28)
プラチナ :14.27(+0.7)
トウモロコシ :14.10(▲0.14)
大豆 :11.84(▲0.28)

【エネルギー】
WTI :54.01(+0.35)
Brent :62.69(+0.71)
Oman :62.77(+0.57)
米ガソリン :145.58(+2.99)
米灯油 :191.10(+1.35)
ICEガスオイル :583.50(+3.75)
米天然ガス :2.66(±0.0)
英天然ガス :49.88(▲0.60)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :62.69(+0.71)
SPO380cst :400.82(+0.43)
SPOケロシン :76.51(+0.42)
SPOガスオイル :75.88(+0.46)
ICE ガスオイル :78.32(+0.50)
NYMEX灯油 :190.58(+0.64)

【貴金属】
金 :1306.48(▲8.84)
銀 :15.68(▲0.17)
プラチナ :806.33(▲12.45)
パラジウム :1375.48(▲6.88)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,231(+40:20.5C)
亜鉛 :2,719(▲42:0B)
鉛 :2,097(▲17:17C)
アルミニウム :1,913(▲11:26C)
ニッケル :13,025(+75:95C)
錫 :20,825(▲75:75B)
コバルト :33,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6247.00(+24.00)
亜鉛 :2710.00(▲21.00)
鉛 :2083.00(▲20.00)
アルミニウム :1908.00(▲16.50)
ニッケル :12910.00(▲150.00)
錫 :20975.00(+105.00)
バルチック海運指数 :629.00(▲5.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :89.1(+0.67)
NYMEX鉄鉱石 :88.98(+0.82)
NYMEX原料炭スワップ先物 :204(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :357(+2.00)

【農産物】
大豆 :921.75(+1.50)
シカゴ大豆ミール :309.00(▲0.50)
シカゴ大豆油 :30.90(+0.52)
マレーシア パーム油 :休場( - )
シカゴ とうもろこし :380.00(▲0.75)
シカゴ小麦 :526.00(▲1.25)
シンガポールゴム :休場( - )
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :12.90(+0.08)
アラビカ :105.50(+0.65)
ロブスタ :1556.00(+21.00)
綿花 :73.66(+0.26)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :55.93(▲0.50)
シカゴ生牛 :126.40(▲0.30)
シカゴ飼育牛 :143.18(▲0.65)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。