CONTENTSコンテンツ

リスクテイク続き総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2022年5月30日 第2205号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「リスクテイク続き総じて堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、前日に続き非鉄金属やエネルギーが物色されたが、その他農産品などの非景気循環系商品商品価格は水準を切下げた。

米個人消費・所得が発表され米国はインフレの中でも貯蓄を切り崩しながら消費を行っていることが確認されたこと、PCEも高い水準ではあるが前年比での上昇ペースが鈍化を始めていることから、これまでの苛烈な金融引締めによる長期金利上昇や、それに伴う住宅セクターの減速などのリスクが「やや」後退し、再びリスクテイク意欲が回復したと考えられる。

これまではいつのタイミングでどこまで金利が上昇するのか、が市場参加者の主な懸念だったがこれが足下は修正されているようだ。

しかし、6月からQTが始まり、2会合連続でFOMCでは利上げが行われる見通しであることを考えるとそこまで楽観して良いのか、という見方があるのも事実。

現時点で気にしているのはこの楽観論が強まり、猛暑見通しの中でリスクテイク意欲が加速してエネルギー価格が必要以上に上昇してしまうリスクである。

【本日の見通し】

週明け月曜日は米国がメモリアルデーで休場のため、総じて動意薄く現状水準でのもみ合いになると考える。また、これまで上昇が顕著だった商品(例えばエネルギー)は一旦利食い売りに押されるのではないか。

足下の懸念は総括のところでもコメントしたが、「利上げは継続して経済活動にブレーキを踏むものの、猛暑見通しで原油価格、天然ガス価格、石炭価格などが想定以上に上昇し、特に秋以降の景気にブレーキを踏む可能性があること」である。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国の工業セクター利益は、4月単月で前年比▲8.5%の減速となり、年初来の伸びも+3.5%(1-3月期+8.5%)と急減速が確認された。明らかにロックダウンの影響を意識したものである。

工業セクター利益と非鉄金属価格の間には長らく高い相関性が確認されており、誤差考慮後の銅価格は5月平均で9,870ドル程度が妥当となるが、現在の価格はこれを下回る9,500ドル台である。足下のロックダウンの影響、それに伴う工業セクターの活動減速があったとしても、価格は割安、といえるだろう。

恐らく中国政府による経済対策実施が工業活動を回復させ、ペントアップ需要の高まりで銅価格は一時、統計で説明可能な11,500ドル程度までの回復局面があると考えている。

しかしその後は利上げやQTの影響で再び下落に転じると考えている。QTは6月から始まる見通しであるため、中国がロックダウンを解除するタイミングと重なることから、価格が高値を付けるのは7~8月頃であり、その頃から年末に掛けては水準を切下げやすい地合になるのではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は続伸。G7がOPECに増産を求める決議を採択したが、これは逆に足下の自国内の調達が不充分であることの裏返しともいえ、株価が上昇してリスクテイクのドル安が進行する中で、需給ファンダメンタルズがタイトであることから再び買いが入った形。

また、今年の夏の北半球の猛暑、各地で発生している渇水が水力発電を減じ、特にディーゼルオイルの需要を増加させること、そもそも石油製品の在庫水準が低い状態が続いていること、市場参加者が金融引締めのペース鈍化を期待し始めていること、から買いが入りやすくなっている。

今後の展開でやや気になっているのが、OECDで協調放出した原油の「在庫再積増しが即時に行われるかどうか」。現状を考えると先送りされることになるとは思うが、仮に価格が下落していて、やはり在庫積増しとなれば価格の上昇要因となる。

なお、掘削~生産開始までのリードタイムが1年程度に長くなってしまった週末のベイカーヒューズリグ稼働数は、原油リグの稼働が減少し(▲2基)、ガスリグは小幅に増加(+1基)しているが、その程度である。恐らく増産が始まるのは年後半以降になると予想される。

とは言っても、景気は下りのエスカレーターに乗っている状況であり、多くの景気循環系商品と同様、年末に向けて水準が切り下がるという見通しは維持でよいとみているが、

1.レーショニングの影響でより低くなる

2.供給不足の継続で想定よりも高くなる

の分水嶺に差し掛かっているといえる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。イランの増産がほぼ期待できなくなってきたため、当面、2.の状態が想定される。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 120-140ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 95-125ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-120ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-105ドル

↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ

↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)

6.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 95-115ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-100ドル

8. 脱ロシア完了(東西諸国の分裂が発生した場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

週明け月曜日は米国市場が休場のため動意薄く、どちらかと言えばこれまでの上昇が顕著だったため、一旦利食い売りに押されると考える。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は上昇した。欧州のガス価格の上昇や、中国の経済活動再開観測が材料となった。

足下、中国は国内生産を増やし、輸入を減らす方向に舵を切っているため港湾在庫の水準が余り参考にならないが、前週比+51万1,000トンの1,786万トンとなったが、過去5年平均の1,934万9,000トンを下回っている。

また、中国6大電力会社の石炭在庫、インドの石炭在庫水準も低く、まだ需給はタイトな状態が続いている。

これまでのガス価格の上昇による「石炭の割安感」が「脱炭素(一時棚上げ)・脱ロシアの動き」で修正される動きが価格を押し上げていると考えられる。結果、ガス価格の下落が石炭価格下落の必要条件になるのではないか。

中国は、以下の理由から引き続き石炭不足・電力不足が発生する可能性を懸念しているが、恐らくこのリスクは顕在化しており、最早可能性ではない。

1.ロックダウンの影響

2,コロナの影響による燃料輸送の障害

3.異常気象による水力発電の不足

4.電力価格に制限が設けられていることによる石炭生産の阻害

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。

結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。

結局、ロックダウンは中国の電力需要を減じるものの、生産も制限するため海上輸送炭市場をタイト化させているといえるだろう。

日本も対岸の火事ではなく、今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。

これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持しよう。

週明け月曜日も在庫積増し圧力は継続すると見られ、高値維持の公算。

なお、NEWCは限月交代でスワップの水準が50ドル程度低下しているが、窓埋めの動きで400ドルを目指すのか、現在の水準を維持するのかに注目している。

ガスと同様、現在の「流動性に問題がなかった場合」の価格は、石炭の場合2027年頃まで参照出来るが、現在215ドル程度である。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物市場は上昇。ロシアからのガス供給は継続しているが、欧州域内のTroll、Skarv地区のメンテナンスが延長された他、Osbergが計画外の停止となったことで域内供給への懸念が高まったため。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下の5点に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.欧州ロシアの対立(価格の上昇要因)3.景気減速(価格下落要因)4.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)5.そもそもの在庫不足(価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通しであり、「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持する、というのがメインシナリオとなる。

LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかないが、結局その大半はロシアからの輸入に頼らざるを得ない。なお、欧州全体のガス在庫は25日時点で44.5%(前日44.0%)と順調に在庫が積み上がっている。

しかし、欧州はまだ良いのだが、現在戦闘状態にあるウクライナのガス在庫の水準が著しく低い。ウクライナは欧州域内で最大の貯蔵能力を有するが、現在の在庫積増し進捗状況は5月25日時点で16.5%(16.3%)とほとんど在庫が積めていない状況。

仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクはまだ回避できていない。

※週次の更新となります。

米国天然ガス先物市場は下落した。週末の3連休を控えた投機筋の手仕舞いと、気温上昇見通しが「やや」低下したことが材料となっている。

なお、米国から欧州向けに10隻程度のLNGカーゴが向かっている、との報道があった。引き続きアービトラージはオープンであるため価格差に着目した欧州向けの輸出は増加しそうだが、当の米国も原油増産がままならない中、ガス供給不足に陥っており、今年のHH価格は高値を維持することになりそうだ。

※週次の更新となります。

JKM先物は期先を中心に上昇。中国のロックダウン解除観測や、冬場のガス供給が不足するとの懸念(上述)から足下は良いにせよ、今年の冬を意識した買いが入っている状況。

なお、足下の「適正な」価格、即ち供給に問題が全くない場合の価格は期先の価格を参考にする必要がある。現時点で確認できる期先の価格は2023年12月が最長であるが、21.64ドルとなっている。即ち、現状に於いては20ドル前後が「基準」になると考えられる。

5月22日時点の日本の発電用LNG在庫は199万トン(前年同月末194万トン、過去4年平均198万トン)と減少。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

5月16日~22日のLNGトレードだが、取引量は720万トン(前週740万トン)、スポット取引のシェアは33%と前週の27%から上昇した。

スポット契約は日本・韓国・中国・台湾の輸入が前週比+36万トンの増加となった。特に日本と韓国の輸入が増加している。

長期契約ベースの輸入は北欧とイタリア向けが減少(▲10万トン)した。

週明け月曜日も基本的な需給ファンダメンタルズに大きな変化がない中で、高値を維持すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は軒並み上昇した。価格に対する説明力が高い工業セクター利益は非常に悪い内容だったものの、逆に経済対策が行われるとの期待感を広げることになったほか、非鉄金属価格に対する説明力が高いドル指数が、米国の利上げペースの鈍化期待を受けて下落したことが材料となった。

これまで、中国の経済活動停止、それに伴う中国からの海外向け現物フローの増加によってLME価格は下落してきたが、そもそもアービトラージがクローズになりつつあることから輸出の動きが鈍化していると見られる。

今後、対策が行われるなれば中国の輸入が増加する可能性は高く、その動きを受けてこれまでポジション調整を進めてきたファンド筋の買い戻しが予想される。

6月以降はQTも始まることから、場合によると買い戻しはQ222の終わりである6月末まで、ということもありえるが、取りあえずは割安感からの買いが入る可能性は高い。

なお、繰り返しになるが基本的には、経済は下りのエスカレーターに乗っていることから年末に向けてのトレンドは山谷があったとしても、下向きと考えられる。

週明け月曜日は米国市場が休場のため動意薄いとみるが、中国の対策期待による買い戻しがから上昇余地を探る動きになると予想する。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄鋼製品先物は上昇した。

中国の工業セクター利益が大幅な減速となったが、逆にこれを受けて経済対策が加速するのではないかとの期待感を高めたことが下落を続けてきた鉄鋼製品価格を押し上げ、在庫水準の低下していた鉄鉱石価格を押し上げた。

原料炭はそもそも供給不足の状態が続いているため、鉄鋼製品価格が上昇する中では価格水準が切り上がりやすい。

週次の在庫統計では、鉄鉱石港湾在庫が▲295万トンの1億3,430万トンと過去5年平均(1億3,286万トン)に在庫水準が近接している。在庫日数は▲0.6日の26.7日とこちらも過去5年平均(28.5日)を下回っており、鉄鉱石市場の需給はタイト。

原料炭の港湾在庫は+22万トンの144万トンとなったが、過去5年平均(174万4,000トン)は下回り、在庫日数も5.2日と過去5年の最低水準(5.2日)であり需給はタイトな状態が続く。

鉄鋼製品の港湾在庫は前週比▲28万5,000トンの1,632万4,000トンと、過去5年の最高水準である1,599万6,000トンを上回り、足下の在庫水準は潤沢。しかしロックダウンが解除されればこれでも恐らく充分ではないだろう。

鉄鋼製品で説明可能な価格は、鉄鉱石が139.1ドル、原料炭が236.8ドルとなっている。原料炭は供給が制限されているため、過去の価格で説明可能な水準に戻るには相当時間が掛るだろう。

週明け月曜日も、ロックダウン継続と、ロックダウン解除後を睨んだと経済対策期待在庫積増しの動きといった強弱材料が混在する中、原料に関して在庫不足であり高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。米PCE価格指数が発表され、上昇は続いているもののトレンドとしてピークアウトの兆しが見えていることで過度な米国の金融引締め加速観測が後退、長期金利の低下に加え、原油価格上昇による期待インフレ率の上昇が価格を下押しした。

銀価格は金価格の上昇を受けて上昇、景気への期待から株価が上昇したこともあって金銀レシオを引下げながらの上昇となった。プラチナも銀価格の上昇を受けて水準を切上げた。

パラジウムは株価の影響も受けやすく、株上昇を受けて金以上の上昇となった。

週明け月曜日は米国がメモリアルデーで休場のため動意薄く、現状水準でのもみ合いを予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇。トウモロコシはかねてから作付の遅れが指摘されていたがそれとドル安進行、原油高が材料にされた形。大豆もドル安や作付の遅れが材料視された。ただし週末の3連休を控えて引けに掛けては小幅に水準を切下げた。

小麦は上昇。ロシアがウクライナからの輸出を認めるといった類いの報道もあったが、ウクライナ東部への攻撃が激化したことで「やはり無理か」という反応になったことが買い戻しを誘った。

週明け月曜日はメモリアルデーで米国市場は休場。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「小麦のリスクは秋に顕在化か」

5月の米需給報告が発表され、2022-2023年の小麦需給見通しが示された。今年はラニーニャ現象が継続しているため各穀物の作付けの遅れや収穫量の減少などのリスクが特に意識されている。

これまではラニーニャ現象は降雨の影響で豊作に、というのが穀物市場における一般的な理解だったが、この20年を見てみると少なくとも主食である小麦はラニーニャ現象発生時に何らかの供給障害(生産の減少や洪水による物流の障害など)が発生し、価格が上昇することが多い。

2022-2023穀物年度の小麦生産は前年比▲446万トン減少の7億7,483万トンが見込まれ、価格に対する説明力が高い需給率(需要÷供給)は、78.7%と前年の77.9%から+0.8%上昇することが見込まれている。

需給率1%の上昇でブッシェルあたり40セント程度上昇するため、見通し通りの生産・需要となった場合でも2022年の平均価格は上振れすることが見込まれる。全体を俯瞰すると、やはり2022年~2023年にかけての小麦価格は高値を維持しそうだ。

今回の需給報告でより重要なのが輸出動向であるが、見通しはどうだろうか。

ロシアの軍事侵攻で南部の耕作が事実上不可能になっているウクライナの生産見通しは、前年比▲1,151万トンの2,150万トンに激減する見通しである。同国の輸出の見通しも前年比▲900万トンの1,000万トンとなる見込みだ。

ただ、この10年の穀物年度の輸出平均が1,544万トンであることを考えると▲544万トンも減少しており、ウクライナが置かれている状況が厳しいことに変わりはない。

一方、戦争を仕掛けた側のロシアは生産が+484万トンの8,000万トン、輸出が+600万トンの3,900万トンが見込まれており、輸出の多くは同盟国の中国、軍事的にも繋がりの強い中東・北アフリカ地区向けになるが、全体で見た場合ウクライナからの供給減少の多くを相殺出来る見込みだ。

世界全体でもカナダ(+850万トン)、EU(+500万トン)、インド(+35万トン)、カザフスタン(+98万トン)などの輸出増加が、米国(▲82万トン)、豪州(▲350万トン)、アルゼンチン(▲150万トン)の輸出減少を相殺するため、輸出は前年比+500万トンの2億489万トンとなり、輸出市場での供給はそれほど問題がないということになる。

しかし本当にそうなのだろうか。

基本的に生産から需要を引いた残りが輸出に回されることになるが、主要生産国で生産下方修正や輸出停止などの動きがみられている。

EUは世界の小麦生産の17.6%を占める重要な生産国であるが、フランスの生産が干ばつの影響で減少する可能性が指摘されている。

世界3位の生産国であるインドも熱波の影響で減産が見込まれ、さらには輸出の一時停止を決定した。

また、現在では生産シェアは6.1%、輸出市場でのシェアも10.3%に低下したが引き続き重要な生産国である米国も、昨年の冬小麦の作況が悪化し、春小麦の作付けも進捗が遅れているため生産への影響は不可避だろう。

今年の秋頃までラニーニャ現象が継続する可能性があることを考えると、これらの国々の生産が下触れするリスクは小さくない。

また、ウクライナの港から本当に小麦を輸出できるのか、に関しても戦闘状態に左右されるため、なんともいえないところである。

さらに、ロシアからの肥料輸出の減少やガス価格の高騰で肥料の価格が上昇しており、この生産コストの上昇も消費国にとっては打撃となる。

米国の生産コストデータを元に、エーカーあたりの肥料価格を過去データによる回帰分析を元に計算すると2022年の小麦の肥料代はエーカーあたり65.2セントと2021年かの43.6セントから増加する見込みであり、燃料代も20.6セントと前年の10.6セントから大幅に上昇が見込まれる。

恐らくこれら諸々のリスクが顕在化するのは、北半球の収穫期である秋以降だ。

日本企業は2022年~2023年の調達を長期契約で対応していると考えられるため、フォースマジュール(不可抗力条項。暴動や洪水などにより物理的に輸出が不可能になる場合など)が発生するような事態にならなければ、現物の確保は出来ると思われる。

しかし、供給が途絶すれば当然需給はタイトになるわけで、その中で代替先を確保出来たとしても価格が上昇する可能性は高く、生産コストも上昇が見込まれることから価格面で有利な水準で調達出来る保証はない。

こうした価格上昇リスクへの備えも必要になってくるだろう。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について