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不透明感・変動率上昇が円安抑制
  • MRA外国為替レポート

2022年5月16日号

◆先週の市場総括


先週は米国株が大幅に下落。インフレ、金融引き締めへの警戒感、中国景気減速・先行き懸念、ウクライナ情勢の不透明感、などからリスク資産・株式を手放す動きが活発化。暗号資産も急落。米国株主要3指数はそろって年初来安値を更新した。日経平均も26,000円の大台を割り込んだ。

米10年債利回りは一時3.2%をつけていたが、リスク回避のなか資金流入で上昇一服、利回りは2.8%台に低下した。

株価が大幅安、リスク回避が強まるなか為替市場では円買い戻しが強まり、クロス円相場を中心に大きく円高が進んだ。ユーロ円相場は週初の138円から132円台後半に下落し、週末は株安一服で戻して引けは134円台半ば。

ドル円相場は週初131円台に上昇したものの127円台半ばまで大きくドル安円高が進んだ。その後は反発して129円台前半で引け。

月曜日の東京市場では日経平均が大幅下落。米国での金融引き締め強化、長期金利上昇、中国景気悪化懸念、ロシア戦勝記念日式典を前にしたウクライナ情勢の不透明感、などでグロース株中心に売りが広がり、中国関連株、消費関連株も下落した。

中国でロックダウン強化との報道から中国景気減速懸念が強まった。引けは前週末比▲684円安の26,319円。

ドル円相場は130円60銭で始まり堅調。一貫して右肩上がりとなり欧州市場に入る夕刻には131円30銭をつけた。その後は131円10銭~20銭でもみ合い。

ユーロ円相場は137円70銭で始まり137円後半で上下動し夕刻は138円10銭に強含み。ユーロドル相場は1.0540で始まりユーロ安ドル高に振れて1.05ちょうど~1.0520で上下動。

注目されたロシアの戦勝記念日式典でプーチン大統領は懸念された戦争宣言を行わず、控えめな式典となり、欧州懸念が緩和した。

ユーロドル相場は1.0570へ上昇。ユーロ円相場は137円80銭に下落した後138円30銭に上昇。ドル円相場は130円50銭に下落。その後は米国株が大幅安となり、リスク回避の円買い戻しが強まり円は全面高となった。

米10年債利回りは欧州時間に一時3.2%に上昇。スタグフレーション懸念が強まった。

米国株主要3指数はそろって年初来安値を更新。NYダウは一時▲700ドル超の下落。引けは▲653ドル安の32,245ドル。ナスダックは▲521ドル安の11,623ドル。VIX指数は+4.56ポイント上昇し34.75の高水準。

原油価格WTIは▲6.68ドルの大幅下落で103.09ドル。米10年債利回りは一転して低下して3.03%。2年債は2.6%に低下。

ドル円相場は130円90銭に上昇した後130円10銭~20銭に急落し、引けにかけては20銭~40銭で上下して引けは130円30銭。ユーロ円相場は137円10銭に大幅安の後急反発して90銭~50銭で上下した。

ユーロドル相場は1.0520に下落した後1.0570に反発して引けは1.0560。アトランタ連銀総裁は、0.50%の利上げ継続が望ましい、0.75%の必要はない、と述べた。

火曜日の東京市場では日経平均が寄付きから大幅安。一時25,800円を割り込んで、25,800円台前半で上下した。その後11時頃から急速に反発して後場はじり高。下げ幅を縮めて前日比▲152円安の26,167円で高値引け。

中国株の持ち直し、米国株先物の反発が支えとなった。

ドル円相場は130円30銭で始まり60銭に上昇した後、午前中に129円80銭に下落。その後は株価持ち直しとともに反発して夕刻・欧州市場にかけては130円30銭~50銭で上下した。

ユーロ円相場は137円60銭~80銭で始まり137円10銭に下落。その後は持ち直して138円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.0560で始まり1.0580へ緩やかに上昇した。

欧州市場から米国市場にかけてはリスク回避の動きが強まり円は全面高。米10年債利回りの低下につれてドル円相場は129円90銭に下落した。その後終盤にかけては落ち直して130円40銭台。

ユーロ円相場は137円10銭~40銭で上下動し30銭台で引け。ユーロドル相場は1.0540~1.0570で上下し引けは1.0530近辺。

米国株はまちまち。NYダウは朝方+500ドル高となったものの反落して一時32,800ドル割れ。引けは▲85ドル安の32,160ドル。年初来安値を更新した。

一方ナスダックは反発して+114ドル高の11,737ドル。

米10年債利回りは2.989%に低下。原油価格WTIは景気減速懸念から続落して99.43ドルと100ドルを割り込んだ。

クリーブランド連銀総裁は、恒久的に0.75%の利上げを否定するものではない、と発言。NY連銀総裁は、中立水準に近づけるため迅速に動く、と述べた。ウォーラー理事は、積極的な引き締めが必要、とした。

水曜日の東京市場では日経平均は小幅高。朝方は26,000円ちょうど近辺まで下落したが押し目買いに支えられた。ただ米国消費者物価指数の発表を前に膠着。+46円高の26,213円で引けた。

ドル円相場は130円30銭~40銭で小動き。東証引け後、欧州市場朝方にかけては129円60銭に下落した。米国市場朝方は129円90銭。ユーロは堅調。ユーロドル相場は1.0530で始まりユーロ高ドル安が進み1.057台。

米雇用統計発表前は1.055近辺。ユーロ円相場は137円30銭台から50銭に上昇。しかし欧州市場にかけては136円80銭に反落した。

注目の米国消費者物価指数(CPI、4月)は予想よりも上振れ。インフレ懸念は鎮静化せず金融引き締めへの警戒感、スタグフレーション懸念が続いた。

発表直後に米10年債利回りは2.92%から3.07%に急上昇。しかし株価が大きく崩れると、リスク回避、債券への資金流入で2.92%台へ低下した。2年債利回りは2.643%。

米国株主要3指数はそろって年初来安値を更新し全面安。NYダウは一時31,800ドルを割り引けは▲326ドル安の31,834ドル。ナスダックは▲373ドル安の11,364ドル。VIX指数は▲0.42ポイント小幅低下したが32.56と高水準。

ドル円相場は直後に130円80銭に急騰したが急反落して130円10銭~20銭でもみ合った後続落して129円50銭をつけた後、反発して130円ちょうど近辺で引けた。

ユーロドル相場は1.05ちょうどにユーロ安ドル高となった後、反発して1.0570に戻したが、結局は1.051台に押し戻されて引けた。

ユーロ円相場は137円70銭に上昇した後、株安・リスク回避で反落し136円20銭に急落。引けは戻して136円70銭。

CPIは前月比+0.3%と前月+1.2%から上昇は鈍化したが予想+0.2%ほど鈍らず。前年同月比も+8.5%から+8.1%への鈍化予想に対し+8.3%と高かった。

コア指数も同様に、前月比は+0.3%から+0.4%への小幅加速予想を上回る+0.6%の大幅上昇。前年同月比は+6.5%から+6.0%への鈍化予想に対して+6.2%となった。

仮想通貨は下落傾向が続き、ビットコインは3万ドルの大台を割り込んだ。ドルインデックスは104ポイントに上昇。

木曜日の東京市場では日経平均が寄付きから大幅安となり一時25,700円割れ。米国株が下落基調を続け年初来安値を更新する状況で投資家心理が悪化した。その後押し目買いで26,000円を回復したものの、引けにかけてはじり安となり、前日比▲464円安の25,748円で引けた。

為替市場では年初来安値を更新する米国株の動向、リスク資産全般の下落、リスク回避が強まるなか、クロス円相場を中心に円買い戻しが強まり大きく円高が進んだ。

アジア市場から欧米市場にかけてユーロが大幅に下落。ユーロ円相場は136円70銭で始まり40銭~70銭で上下、その後欧州市場にかけて134円30銭近辺に2円ほど急落。さらに米国市場朝方にかけて132円70銭に大幅続落し、下げ幅はほぼ4円に達した。

ユーロドル相場は1.051台で始まり1.0510~30で上下したあと夕刻は1.0450~70。さらに米国市場では1.0360近辺まで大きく下落した。

ドル円相場は130円ちょうど近辺で始まり129円80銭近辺で上下。午後から夕刻・欧州市場朝方にかけては128円40銭。さらに米国市場では127円50銭まで下落。その後は反発して引けは128円10銭~40銭で上下して引けは128円40銭近辺。

クロス円相場中心の円高、リスク回避による米長期金利低下がドル円相場も押し下げた。

米国株は不安定な値動き。NYダウは景気懸念、利上げ警戒、で続落し、マージンコール(追証)に迫られた売りから▲600ドルの大幅安。その後は持ち直して下げ幅を縮め前日比▲103ドル安の31,730ドルで引け。

ナスダックは+6ドルで11,370ドル。VIX指数は▲0.79ポイント小幅低下して31.77。リスク回避の動きで債券市場に資金が流入して長期金利は低下。

米10年債利回りは2.853%。2年債は2.576%。インフレがピークアウトしつつあるのではないか、との見方も金利低下要因。

発表された米国の生産者物価指数(4月)は前月比+0.5%と前月+1.6%から上昇ペースが鈍化、前年同月比は前月+11.5%から+11.0%に。

コア指数も同様に、前月比は+1.0%から+0.6%へ、前年同月比は+9.6%から+8.8%へ上昇が鈍化した。

金曜日の東京市場では日経平均が大幅反発。前日の米国株が引けにかけて大きく戻して引け味が良かったことで市場心理が改善。リスク回避が緩和し、この間の大幅な下落からの自律反発狙いの買いが入った。

値がさ株の買いが全体を押し上げ、指数の上げ幅は一時+700円を超えた。特別清算指数算出日にあたり、売り方の買い戻しが活発化したとの見方も。引けは+688円高の26,427円。

為替市場ではリスク回避による円高が一服。円が反落した。ドル円相場は128円40銭で始まり朝方129円30銭へ大幅上昇。ユーロ円相場は133円30銭~50銭から134円30銭へ。

ただ午前中に円安は一服。ドル円相場は128円80銭へ、さらに夕刻には50銭まで反落した。

ユーロ円相場は133円80銭~134円30銭で上下動の後、欧州市場では133円60銭~134円20銭で大きく上下動。ユーロドル相場は東京市場ではユーロが底固く推移したが、欧州市場ではユーロ安に転じた。

1.0380近辺で始まり午後は1.0390~1.0400。夕刻はさらに1.0420へ上昇した。しかし欧州市場から米国市場朝方にかけては1.0350へ下落した。

欧州株もこの日は堅調。リスク回避が緩和してドル円相場は米国市場朝方には129円40銭に上昇した。米国株は大きく反発。前日までに投資家の投げが一巡し、買い戻しや自律反発狙いの買いに支えられた。

NYダウは+466ドル高の32,196ドル。ナスダックは+434ドル高の11,805ドル。VIX指数は▲2.90ポイント低下して28.87。

米長期金利は反発。10年債利回りは2.928%に上昇。2年債はわずかに上昇して2.588%。朝方に発表された米国の輸入物価指数は前月比変わらず前月の+2.6%から上昇一服。予想を下回った。

ミシガン大学消費者信頼感指数(5月速報)は59.1と前月65.2から大きく低下して2011年以来の低水準となった。ユーロドル相場は反発しユーロ高ドル安。1.0410近辺に戻して引け。

ユーロ円相場はリスク回避後退、ユーロ高ドル安に支えられて134円70銭台に上昇し、引けは50銭~60銭。ドル円相場は129円20銭~40銭で上下動し30銭台中心に推移。引けは129円20銭。ドルインデックスは104.47と高水準。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

スタグフレーション懸念、景気悪化懸念が強まるなか、足元の経済指標は景気堅調を示すか。市場予想より弱い数字に反応しやすいので留意。

月曜日 NY連銀製造業景気指数(5月、予想15.0、前月24.6)

火曜日 小売売上高(4月、前月比、予想+1.0%、前月+0.5%) 鉱工業生産(同、予想+0.4%、前月+0.9%) 設備稼働率(予想78.5%、78.3%)

水曜日 住宅着工件数(4月、季節調整済み年率換算、予想1,770千戸、前月1,793千戸)

木曜日 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(5月、予想16.1、前月17.6) 米週間新規失業保険申請件数 中古住宅販売(4月、季節調整済み年率換算、予想566万戸、前月577万戸) 景気先行指数(4月、予想+0.0%、前月+0.3%)が発表される。

2.日本の経済指標

日銀が超金融緩和に固執する背景は、インフレよりも景気懸念。それを支持する指標が示されるか。

水曜日 GDP(1-3月期、前期比年率、予想▲1.8%、+4.6%)

木曜日 機械受注(3月、前月比、予想+3.8%、前月▲9.8%)

金曜日 消費者物価指数(4月、前年同月比、予想+2.5%、前月+1.2%)

4月の消費者物価指数は昨年4月の携帯電話料金の引き下げの影響が剥落し2%台に上昇する見込み。また木曜日には通関統計(4月)が発表となる。

貿易収支は1兆2千億円の赤字予想。前月の4,100億円から増加する見込みで為替需給面での円売り圧力・円安圧力が続いていることを示す見込み。

3.中国の経済指標

中国景気減速が世界景気全体の懸念となり大幅な株価調整の一端を担っている。月曜日に主要経済指標が発表されるが、いずれも前月から減速予想のなか、予想比弱い数字となれば市場の懸念を強める可能性があり留意を要する。

小売売上高(4月、前年同月比、予想▲6.2%、前月▲3.5%)鉱工業生産(同、予想0.0%、前月+5.0%)固定資産投資(同、予想+7.0%、前月+9.3%)

このほか、今週はFRB当局者の発言が多い。火曜日にはパウエル議長、4地区連銀総裁が発言。水曜日から金曜日にかけてはG7財務相会合、木曜日にはECB理事会議事要旨が公表される。

◆今週のMRA's Eye


不透明感・変動率上昇が円安抑制

先週、米国株が大きく調整し連日年初来安値を更新。市場参加者のリスク回避姿勢が強まり、為替市場ではクロス円相場を中心に大きく円高となった。投機的な円売りが炙り出されて買い戻しを余儀なくされたとみられる。

暗号資産いわゆる仮想通貨も大きく下落し混乱を生じている。こうした動きには一時的な要素もあるが、中期的に続く要素もみられる。ドル円相場のリスクバイアスは、これまでのようにドル高一辺倒ではなく、ドル高・円高、両サイドに均衡しつつあることが確認されたようだ。

まず、この間の急速なドル高円安は投機的な動きが主導してきたとみてよいだろう。

日本の対外収支の悪化、貿易赤字の拡大継続は、確かに為替需給面から円安圧力として効いている。しかしそれだけでここまで急速な円安にはならない。本来はもっと緩やかな円安となるはずだ。

一部には輸入企業の損失確定のような円売りドル買いが生じた可能性もあるが、それでもここまでの円安にはならない。また日本の投資家の海外投資が活発化して円安が加速したとも考えにくい。

米国債利回りの上昇は確かに魅力的だがドルのリスクをとって投資する動きが加速したとは考えにくい。内外の投機的な動きが円売りに集中した結果、ここまでの急速な円安になったとみるのが自然だ。

投機筋にとってはわかりやすいシナリオが必要。ひとつのロジックで、あたかも直線定規をあてるように、右か左か、買いか売りか、判断して行動する。

ドル円相場に関しては、日米金融政策の明確な格差、日米長期金利差の拡大、グローバルに広がる金融引き締めのなか日銀が唯一超金融緩和策を維持するというわかりやすさ、があった。

さらに黒田総裁が円安を歓迎しているという心理的な「お墨付き」も加わって、安心して、円売りポジションを積み上げることもできた。

基本的に円売りを維持しながら、日米金利差、米長期金利の動向に応じて売買。その結果、日米金利差の動向とドル円相場の相関が強まって、いわば自己相関のようになった。

投資家の売買動向がこうした短期的なドル高や円安をもたらすほど機敏なことはない。日本の貿易赤字による円安は日米金利差と無関係だ。

ドル高円安を主導してきた投機筋にとって、不透明感や変動率の上昇、あるいは日米金利差動向との相関の崩れ、市場全体のリスクポジション圧縮の流れは逆風となる。

足元で米国経済をめぐって、インフレ見通し、景気見通し、は揺れ、スタグフレーション懸念が台頭。

まず株式市場で逆風が強まった。FRBは供給制約がインフレの一因とみているが、金融引き締めによって需要を抑制して、現状において需給を均衡させてインフレを鎮静化するとの考えだ。確実に景気を悪化させるということになる。

企業業績が現状維持、増益率に変化がなくても金利上昇分は株価の評価を悪化させる。

さらに伸び悩みないし減益ともなれば株価への下落圧力は強まる。金利上昇、景気減速、となれば、株式のみならずリスク資産全体に下押し圧力がかかり、リスクポジションに逆風となる。

また、仮に景気がさほど悪化しないとしても、その可能性が意識され、見通しが複雑化することだけでもリスクポジションにとってマイナスだ。

インフレはピークアウトするか、米金利上昇は想定以上に続くのか、景気減速ソフトランディングか、景気後退リセッションか。

中国景気は持ち直すのか、悪化を続けるのか。ウクライナ情勢の不透明感が続くのか、経済への悪影響がこれから顕在化するのか、逆に早期に不透明感が解消するのか。

先々が読みにくいことそのものがマイナス。シナリオの複雑化、シンプルな相場シナリオが描きにくくなれば、手放しのポジションキャリーは難しい。

先週初、株式市場が荒れ相場を続け、あるいは大きく調整し、ボラティリティが上昇、リスク回避が強まった状態では、日米金利差とドル円相場の相関が崩れる可能性がある、と述べた。

投機筋の動きは相関の変化に弱く、投機筋の手仕舞いによる円買い戻し、短期的円高リスクは強まった状態と記したことが現実となった。

中期的にみても、米国景気減速、需要減退、資源価格調整、長期金利ピークアウト、となる可能性は以前より高まっている、との判断。ドル円相場のリスクバイアスは、ここまではドル高円安サイドだったが足元では中立に変化。

ドル円相場が再び130円台に上昇する可能性はあるが、中期的にみれば、すでにドル高円安トレンドはピークアウトしつつあり、高値波乱になったとみる。年後半を展望すれば、ドル安円高方向のリスクも視野に入れ始める必要はある。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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