良い米統計で総じて軟調 エネルギーは堅調
- MRA商品市場レポート
2022年6月6日 第2210号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「良い米統計で総じて軟調 エネルギーは堅調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は英国市場、中国市場が休場だったが、米国ではエネルギー価格が上昇、その他の鉱物資源などの価格は下落した。
エネルギーはOPEC増産が9月までの増産を前倒ししただけのものであり、9月以降の増産有無はよく分からないこと、原油・石油製品在庫の水準の低さが改めて意識されて上昇(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)した。
その他の商品は、米雇用統計、ISM非製造業指数が悪い内容ではなく(詳しくは昨日のトピックスをご参照下ください)、金融引締め加速への懸念が高まったことが価格を下押しした。
昨日もコメントしたが「インフレになってから」のインフレ抑制は、利上げペースと量的緩和解除をかなりのペースで行う必要が出てくるため、特に利上げやQTが加速する可能性がある年後半の景気下振れリスクを高めることになる。
再び市場は米国の金融政策動向に注目し始めており、今後、CPIやPPIなどの物価関連統計の注目度が増すことになるだろう。
【本日の見通し】
週明け月曜日は週末の雇用統計の内容が良好であり、ISM非製造業指数も悪化はしたが詳しく中身を見ていると悪い内容ではなく、需要が堅調であることを確認する内容だったため、総じて金融引締め加速観測が意識される形となり、価格には下押し圧力が強まると予想される。
ただ、まだ米国の景気が悪くない、加熱している状態であることもまた事実であり、さらに景気が減速している中国はロックダウン期間中の失われた需要を取り返すべく、経済対策が行われること、を考えると商品価格は景気循環系商品に関しては下支えされると考える。
また、劇的な状況改善が見込み難い農産品・畜産品セクターは供給面が意識されるため、高値での推移が続こう。
【昨日のトピックス】
昨日発表された雇用統計は 前月比+390千人(前月改定+436千人(速報比+8千人))と市場予想を上回る改善となり、市場予想を下回ったADP雇用統計とは逆の結果となった。
失業率は市場予想に反して横這いの3.6%だったが、これは労働参加率が62.3%(前月62.2%)に上昇したことによるものであり、さほどネガティブな数値ではない。
一方、フルタイムを希望しながらパートなどでしかできない人も含めた(希望職種に就けないなどの、雇用形態のミスマッチを考慮した)失業率である不完全雇用率は7.1%(7.0%)と上昇しており、引き続き希望の労働者を企業が確保出来ていないことを示唆している。
そのため、時間あたり賃金の前月比は+0.3%(+0.3%)と横這いであり、引き続き労働市場需給の逼迫を示唆している。しかし前年比では+5.2%(+5.5%)と伸びが鈍化しており、一応、賃金インフレはピークアウトしてはいるようだ。
しかし、賃金インフレが沈静化してもそれが2%といった水準に落着く可能性はそれほど高くなく、FRBは慢性的なインフレに悩まされることになるだろう。
同時に発表されたISM非製造業指数は55.9(前月57.1)と前月から減速したものの、市場予想は上回った。
しかし内容を細かく見ると。新規受注は好調(54.6→57.6)、雇用も堅調(49.5→50.2)であり総じて需要は堅調。数値低下は入荷遅延がやや改善したこと(65.1→61.3)したことが影響したようだ。
先行きの指標であるISM非製造業指数も悪くない内容であり、米国の国内景気がまだ加熱していることを示唆している。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。米雇用統計、米ISM非製造業指数が市場予想を上回る改善となり、米国の需要面が堅調であると判断されたこと、OPECプラスの増産はあくまで先々の増産の前倒しであり、将来の供給量の増加を約束したものではないこと、などが改めて意識されたため。
これに加えて、今年の夏の北半球の猛暑、各地で発生している渇水が水力発電を減じ、特にディーゼルオイルの需要を増加させること、そもそも石油製品の在庫水準が低い状態が続いていることから買いが入りやすくなっている。
今後の展開でやや気になっているのが、OECDで協調放出した原油の「在庫再積増しが即時に行われるかどうか」。現状を考えると先送りされることになるとは思うが、仮に価格が下落していて、やはり在庫積増しとなれば価格の上昇要因となる。
なお、掘削~生産開始までのリードタイムが1年程度に長くなってしまった。北米の生産者の上流部門投資は増加しているのだが、いろいろな制限の下、恐らく増産が始まるのは年後半以降になると予想される。
一方中期的な視点では景気が下りのエスカレーターに乗っている状況に変わりはなく、多くの景気循環系商品と同様、年末に向けて水準が切り下がるという見通しは維持でよいとみている。
ただし、
1.レーショニングの影響で弊社が予想していた水準よりも低い価格で着地
2.供給不足の継続で弊社予想よりも高い水準での着地
の判断が難しい。今のところ弊社は1.2.のうち、2.の可能性が高まっているとみている。
今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。OPECプラスが形式的にでも増産ペースを加速させたため、現在は3,の状態にあると考えられる。
ただ、今までの増産の延長線上で、予定通り増産は9月で打ち止めとなれば、2.の状態に戻ると予想される。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル
2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル
3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル
4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル
5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ
↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)
6.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 95-120ドル
7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル
8. 脱ロシア完了(東西諸国の分裂が発生した場合)Brent 60-90ドル
9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル
※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。
※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。
週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しい中、米経済統計の改善を受けた金融引締め観測の強まりを背景に、ファンダメンタルズよりは金融要因で一旦下値余地を探る展開を予想する。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物市場は下落した。LNGの輸入増加観測が下落要因、となっているがLNG輸入は減少しており在庫も減少、LNGの受入能力も限界に達している国も出始めていることから、どちらかと言えば季節的な需要減少による下落だったと整理する方が適切だろう。
現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下の5点に集約される。
1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.欧州ロシアの対立(価格の上昇要因)3.景気減速(価格下落要因)4.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)5.そもそもの在庫不足(価格上昇要因)
日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通しであり、「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持する、というのがメインシナリオとなる。
LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、
1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減
によってガス在庫を積み上げるしかないが、結局その大半はロシアからの輸入に頼らざるを得ない。なお、欧州全体のガス在庫は6月1日時点で47.6%(前日47.1%)と順調に在庫が積み上がっている。
しかし、欧州はまだ良いのだが、現在戦闘状態にあるウクライナのガス在庫の水準が著しく低い。ウクライナは欧州域内で最大の貯蔵能力を有するが、現在の在庫積増し進捗状況は17.2%(17.0%)とほとんど在庫が積増しできていない状況。
仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクはまだ回避できていない。
なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、これ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。
これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
米国天然ガス先物市場は上昇した。一昨日の天然ガス統計で在庫増加が市場予想を上回ったため大きく下落していたが、米国の在庫水準の低さや気温上昇観測もあって安値拾いの買いが入った形。
※週次(原則金曜日)の更新となります。
JKM先物はほぼ変わらず。
足下の「適正な」価格、即ち供給に問題が全くない場合の価格は期先の価格を参考にする必要がある。現時点で確認できる期先の価格は20ドル程度であり、この価格が「基準」になると考えられる。
5月29日時点の日本の発電用LNG在庫は199万トン(前年同月末194万トン、過去4年平均198万トン)と減少。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。
5月23日~29日のLNGトレードだが、取引量は730万トン(前週720万トン)、スポット取引のシェアは25%(前週33%)と低下した。
スポット契約は日本・韓国・中国・台湾の輸入が前週比▲46万トンの大幅な減少となったことがスポット取引のシェアを低下させた。また、欧州・イタリア向けも▲25万トンの減少となった。
長期契約ベースの輸入は日本(+21万トン)、中国(+16万トン)の増加となったが全体として緩やかな増加に止まった。
週明け月曜日も、季節的な需要の減少観測を受けて水準が切り下がり安くなっているが、主要国・地域の天然ガス在庫水準は過去5年平均に達しておらず、在庫積増し需要は旺盛とみられ、結局高値での推移になると考える。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。
◆石炭
豪州石炭スワップ先物価格は欧州休日のため取引なし。足下、夏場に向けた調達圧力と中国の経済活動再開の影響で高止まりしている。
中国のロックダウンの解除が
1.中国国内の供給の回復>需要の増加、となるのか2.中国国内の供給の回復<需要の増加、となるのか
は、まだなんともいえないところだが、今のところ2.となる可能性が高まっている。中国6大電力会社の石炭在庫、インドの石炭在庫水準も低く、まだ需給はタイト。
中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。
なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。
結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。
結局、ロックダウンは中国の電力需要を減じるものの、生産も制限するため海上輸送炭市場をタイト化させているといえるだろう。
日本も対岸の火事ではなく、今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。
また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。
これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。
週明け月曜日も夏場に向けた在庫積増しの動きは継続していると考えられ、引き続き石炭価格は高値維持の公算。
◆非鉄金属
LME非鉄金属市場はロンドン休日のため休場、上海も休場だった。取引が行われていた米国市場では米雇用統計が改善したことを受けてドル高、株安が進行して銅価格は下落している。
固有の材料だが、チリの銅鉱山生産はCodelcoの生産減少によって過去5年の最低水準まで低下している。TCには低下圧力となる。
週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しいが、中国勢が休み明けで市場に戻ってくるため買いが入るとみるが、米雇用統計を受けた金融引締め観測、ベンチマークの銅に対して説明力が高い株価が調整する見通しであることから、上昇余地も限定されると考える。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は休場、上海市場は休場だった。
鉄鉱石に関しては中国の経済活動の再開を受けた在庫積増しの動きで上昇、原料炭も同様。
週次の港湾在庫は、鉄鉱石が▲230万トンの1億3,200万トンと過去5年平均である1億3,177万トンに近接しており、在庫はまだ充分ではあるがこれまで長らく過去5年の最高水準にいたことを考えると、企業の在庫積み圧力は旺盛と考えられる。
中国唐山市京唐港の原料炭在庫は前週比+4万トンの10万トンとなったが、過去5年の最低水準である186万トンを大幅に下回っており、明らかに不足している。
鉄鋼製品在庫は1,622万3,000トンと、過去5年の最高水準である1,531万3,000トンを上回っており、まだ製品在庫は充分な状況。
週明け月曜日も中国の経済活動再開を受けた鉄鋼製品需要の回復と価格上昇を受けて、鉄鋼原料価格も上昇余地を探る動きになると考える。
◆貴金属
昨日の金価格は下落した。米経済統計が市場予想を上回る改善となり、米国の50bpの利上げが9月も行われるのでは、との見方が広がり長期金利が上昇、ドル高が進行する中で、ドル価上昇に伴う価格訂正が起きたため。
ただし、原油価格の上昇や景気の過熱を受けた期待インフレ率の上昇を受けて実質金利が低下したため、金の基準価格は前日比+18ドルの1,275ドルに上昇、リスク・プレミアムは▲36ドルの576ドルとなった。
銀は金価格の下落を受けて下落、プラチナ・パラジウムは株価の下落もあって大幅な下落となった。
週明け月曜日はまず買い戻しが入るとみているが、米雇用統計の改善を受けた米金融引締め加速観測が強まっていることから下落に転じると考える。
◆穀物
シカゴ穀物市場は下落。米雇用統計を受けて米金融引締めへの懸念が強まりドル高が進行したことが材料となった。
個別の材料ではプーチン大統領が「ウクライナからの穀物輸出を妨害していない。ウクライナの穀物を含め問題なく運ぶ用意がある」と発言したことも供給懸念を後退させた。
トウモロコシに関しては、米中西部の転向改善を受けてトウモロコシの発芽への懸念が後退。大豆は習慣輸出が大幅に減少したことが材料となったが、定常的な油脂不足を背景に大豆油は高かった。
週明け月曜日は目立った手がかり材料に掛けるが、週末の米雇用統計やISM非製造業指数の改善を受けた米金融引締め加速観測によるドル高が価格を下押しするが、需給ファンダメンタルズがタイトであることから高値維持の公算。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。
また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。
ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。
・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
◆本日のMRA's Eye
「原油・石油製品在庫の水準低く価格を押し上げ」
OPECプラスは9月まで増産の見通しだったが、7・8月で今後3ヵ月分の増産を前倒しで行う見通しで、9月以降の増産動向はまだはっきりしていない。しかし、世界的に石油製品の在庫水準が低下しており、製品価格を押し上げインフレを助長し、消費にも悪影響を及ぼしつつある。
米国の石油製品需要(出荷)は過去5年のレンジを大きく上回る水準まで増加していたが、価格の高騰や米FRBの金融引締めの影響などもあって急速に減速し、現在は過去5年平均程度の巡航速度まで低下している。やはり価格上昇が需要を減じるレーショニングが発生し始めている、と考えられる。
しかし、渇水や原油供給の不足、価格上昇に伴う採算性の改善を受けて米国の輸出は増加しており、出荷に輸出を含めた総出荷は過去5年の最高水準を上回っている状況で、総じて見るとまだ需要は堅調といえる。
一方、原油の国内生産の回復は労働力の確保や資材の確保が困難な状況にある中、過去5年の最高水準にまでは達しておらず、結果的に米国の原油・石油製品在庫は過去5年レンジを下回る最低水準での推移となっており、危機的な状況。
在庫水準を需要で割った実効在庫水準の指標である在庫日数は、ガソリンが24.7日(過去5年の最低水準は24.2日)、ディスティレートが27.6日(同27.8日)と低く、輸出も含めた在庫日数はガソリンが22.3日(同22.8日)、ディスティレートが21.0日(同21.5日)と同様に過去5年の最低水準にある。
コロナの影響で劇的に落ち込んでいた航空機輸送も回復しており、旅客数は2019年のコロナ前の水準(とは言っても米中対立が激化して景気の減速が起きていたタイミング)と同様の水準まで回復するに至った。
景気が回復し、むしろまだ好況の状態が続いていることを考えると現在の回復でもまだ道半ばの状態。
ジェット燃料供給はその他の石油製品と同様、限られており、製品在庫はアジア、米国で過去5年の最低水準を下回っている。
欧州のARA在庫の水準は高かったがロシアのウクライナへの軍事侵攻以降、急速に在庫が減少し過去5年平均近辺まで在庫水準が低下している。主に需要面というよりは供給面での問題と考えられる。
米国の需給環境を消費者にとって改善(緩和)するには、1.増産、2.輸入増加、3.需要の減少、のいずれかあるいは全てが満たされる必要がある。
1.2.については、クラック・スプレッドが拡大しても各製品とも原油供給の制限などの影響で生産が急増している訳ではないことを考えると、今後は3.を追求することに(利上げや金融引締め、価格上昇による需要の自然減)なるため、当面高値は続くと見る。実際に下落があるとすれば年後半になるのではないか。
しかし、ジェット燃料に関しては、コロナからの脱却による航空輸送需要の回復、ロシア上空を飛行出来ないことによる迂回ルート利用に伴う1フライトあたりの燃料増加と、米国の金融引締め、QT実施による景気の減速、循環的な景気減速といった強弱材料が拮抗する。
しかし、どちらかといえばコロナからの脱却による国際輸送回復の影響の方が大きいと考えられ、年末に掛けては需要は回復すると考えられ、相対的に他製品比較で高値での推移になるのではないか。
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