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金融引き締めと景気鈍化懸念で荒れ相場
  • MRA外国為替レポート

2022年5月2日号

◆先週の市場総括


先週は日銀金融政策決定会合・黒田総裁会見をきっかけに木曜日に一段と円安が加速。ドル円相場は一時131円、ユーロ円相場は138円ちょうど近辺に上昇した。

週初から中国での感染拡大・ロックダウンの拡大から景気懸念が燻り、米長期金利上昇が一服。米国株は金融引き締め加速が懸念されるなか、景気懸念も台頭して下落。個別決算の良し悪しで大きく上下し、週末は大幅安となった。

週末にかけて米10年債利回りは反発して2.9%台を回復したがドル円相場は大きく反落。株価急落でリスク回避が強まり、週末・月末のポジション調整もあって円買い戻しが優勢となった。

NY市場の引けはドル円相場が129円90銭、ユーロ円相場が137円ちょうど近辺。日経平均は上値の重い展開。日銀の強固な緩和継続姿勢は支えとなり、また円安進行で輸出関連銘柄は買われたが、米国株の動向に左右され、26,000円台半ばを中心とした値動きにとどまった。

月曜日の東京市場では日経平均が大幅安。前週末の米国株が大幅安となったことが重石となるなか、中国で感染拡大・ロックダウン規制が上海以外にも広がり景気先行き懸念が広がった。

アジア株全般が大幅安、中国株も大きく下落し市場心理が悪化。一部決算が不芳だった銘柄に売り。下げ幅は一時▲600円を超えた。引けは▲514円安の26,590円。

為替市場では、景気先行き懸念、リスク回避、株安、米長期金利低下のなかクロス円相場を中心にドル円相場でも円高が進んだ。ドルは円以外に対しては堅調。ドル円相場は128円50銭で始まり早朝に80銭台に上昇。その後は50銭~80銭台で高下。

ただ昼頃には米10年債利回りが2.83%へ低下。原油相場WTI先物が景気懸念からアジア時間に100ドル割れ。ドル円相場は128円30銭~40銭に下落した。

その後、一時反発したが欧州時間には128円ちょうど~30銭で上下動。ユーロ円相場は139円30銭で始まり下落して138円50銭近辺でもみ合い、さらに午後から夕刻にかけてもう一段大きく下げて137円20銭に下落。20銭~80銭で高下した。

ユーロドル相場は1.0830で始まり段階的に水準を切り下げた。欧州時間には1.0710~50で高下。米国市場で円は一段高。

原油価格は95ドルまで下落。リスク回避の債券買いで米10年債利回りは一時2.76%まで低下した。

ドル円相場は127円60銭へ、ユーロ円相場は136円50銭へ下落した。その後は原油価格、米長期金利、株価の持ち直しで反発し、ドル円相場は128円10銭台、ユーロ円相場は137円20銭で引け。ユーロドル相場は1.07ちょうど~1.0710近辺で取引を終えた。

ドルインデックスは101.74ドルと直近高値を更新。WTIは98.54ドル、米10年債利回りは2.818%で引け。

米国株は中国景気懸念で続落して始まり前場は低迷。NYダウは一時前週末比▲450ドル安に下落。ただ売り一巡後は買い戻され後場は持ち直し。引けは+238ドル高の34,049ドル。

ナスダックは長期金利低下を好感して高PER銘柄が買われたことで+165ドル高の13,004ドル。VIX指数は▲1.19ポイント低下して27.02。

発表されたドイツIFO景況感指数(4月)は91.8と前月90.8から予想外の改善。ダラス連銀製造業活動指数(4月)は前月8.7から1.1に悪化した。

火曜日の東京市場では日経平均が3営業日ぶり反発。前日の米国株が底固く、前日まで2営業日で1,000円近く下落したことで自律反発狙いの買いも入った。ただ決算・業績への警戒感は根強く、中国景気懸念が強まるなか上値は重かった。

一時は+200円高も引けは+109円高の26,700円。中国株・上海総合指数は続落して年初来安値を更新した。

為替市場ではリスク回避でクロス円相場を中心に値動きが荒いなか円買い戻し・円高が進んだ。ドル円相場は128円10銭~20銭で始まり朝方9時頃には127円40銭割れに急落して40銭~60銭で上下。

その後、米10年債利回りが2.86%へ反発したことで128円20銭に反発。しかし夕刻にかけては米10年債利回りは低下に転じたことで上値重く、欧州時間朝方には127円70銭~128円ちょうどで高下した。

ユーロ円相場は137円20銭~30銭で始まり136円60銭割れに下落。その後は90銭に反発して70銭~90銭で上下。137円50銭に上昇した後反落して136円60銭近辺で上下した。

ユーロドル相場は1.0710近辺で始まり1.0730中心に上下。その後欧州時間にかけてはユーロ安ドル高が進み1.0670~1.0690で推移した。

米国株は大幅安。寄付きから下落して終日軟調となり安値引け。中国でロックダウン拡大の可能性が高まり、サプライチェーンの混乱や世界景気減速懸念が広がった。ハイテク決算を前に様子見姿勢も強まった。

NYダウは前日比▲809ドル安の急落で33,240ドル、ナスダックは▲514ドル安の12,490ドル。VIX指数は+6.50ポイント上昇して33.52。

ロシア・ガスブロム社がポーランド、ブルガリアへの天然ガス供給を停止すると発表。原油価格WTIは反発して102ドル。

欧州不安でユーロはさらに下落、リスク回避でユーロ安円高が進んだ。ユーロ円相場は135円40銭に大幅続落した後、136円に反発したが、反落して135円40銭近辺で引け。

ユーロドル相場は1.0640~60で上下し、引けは1.0640の年初来安値。リスク回避・株安の傍らで米10年債利回りは低下し2.728%、2年債は2.482%。ドル円相場は米金利低下に押されて127円ちょうど近辺に下落。

その後70銭に反発する場面もあったが引けは127円20銭。リスク回避のなかドルは円以外の通貨に対して堅調で、ドルインデックスは102.30に上昇した。

水曜日の東京市場では日経平均は続落。下げ幅は一時▲600円を超えた。前日の米国株が急落したことに加え、時間外で米国アルファベット社の決算が予想より不芳だったことで大幅安となったことも重石。

ただその後、中国株が下げ止まりこの日は3営業日ぶりに反発。米国株も時間外で上昇に転じ、日経平均は下げ止まった。引けは▲313円安の26,386円。

為替市場では円高が一服。ドル円相場は127円20銭で始まり127円ちょうどに下落したが昼にかけて127円80銭に上昇。その後50銭に反落したが持ち直し、東証引け後には128円10銭に上昇した。

欧州市場にかけては127円80銭~128円で上下。ユーロ円相場は135円30銭台で始まり136円10銭に上昇。ただ15時過ぎにユーロ安主導で急落して135円30銭。直後に136円ちょうどに急反発したものの上値重く、その後は上下動しながら軟調となった。

ユーロドル相場は1.0640~50で推移した後、15時過ぎに1.0590に下落した。ロシア・ガスブロム社が東欧2国への天然ガス供給を停止したことから欧州懸念が広がった。

発表されたドイツGfK消費者信頼感指数(4月)が前月▲15.7から▲26.5へ大幅に悪化し過去最低の水準となった。欧米市場ではユーロが続落。ユーロドル相場は1.0510台へ急落した。2017年以来5年振りの安値。

その後は下落一服し1.0550台で引け。ユーロ円相場も134円80銭へ下落した後、反発して135円60銭近辺でもみ合い引け。ドル円相場はじり高。127円80銭~128円20銭でレンジを切り上げながら上下し128円60銭に上昇した。引けは128円50銭近辺。

ドルインデックスはユーロ安ドル高を主要因に5年振りの高値103ポイントに上昇した。

米国株はまちまち。好決算銘柄に買いも続かず。金融引き締めへの警戒感や景気減速懸念、業績先行き不安が上値を抑制した。NYダウは+61ドル高の33,301ドル。ナスダックは▲1ドル安の12,488ドル。VIX指数はやや低下して31.60。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅高。日銀が現状の金融緩和策をさらに強固に継続する姿勢を鮮明にし、円安が進んだことで、輸出関連銘柄中心に買いが広がった。

前日まで大きく下落していたことで値ごろ感の買いも入り、好決算銘柄、景気敏感株も買われた。前日比+461円高の26,847円で引け。ドル円相場は128円40銭~50銭で推移し午前中に一時90銭に上昇するなど底固く、日銀金融政策決定会合の結果待ち。

12時頃公表された会合結果では、長期金利の上昇を抑制するために変動幅上限に設定している0.25%で無制限に長期国債を購入する指値を毎営業日実施する、とされた。

これが現状の超金融緩和策を強固に継続する姿勢とみられ急速に円安が進んだ。ドル円相場は130円20銭に急騰。ユーロ円相場も135円60銭中心に推移していたが136円60銭に上昇。

さらに15時半から行われた黒田総裁の会見を受けて一段と円安が進んだ。総裁は、円安が全体的に日本経済にプラスとの考えに変更はない、と述べた。

ドル円相場は131円ちょうどをつけ、ユーロ円相場は138円ちょうどに上昇。欧州市場から米国市場にかけて円安は一服したが、ドルが堅調となった。ユーロドル相場は1.055台で始まりアジア時間に1.048へユーロ安ドル高。

夕刻にかけて1.056に上昇した後、下落して1.048~1.052で推移しNY市場では1.050近辺で引けた。ドル円相場は130円30銭に反落した後、上下しながら持ち直して米国市場では131円20銭台に上昇。引けは130円80銭~90銭。

ユーロ円相場は136円80銭に下落した後、137円90銭に反発し、引けは137円40銭。ドルインデックスは103.67に上昇して年初来高値を更新した。

米国株は大幅高。前日引け後に決算を発表したメタ社の決算が良好で大幅高、ハイテク株全般に買いが広がった。他の好決算銘柄も買われ、金利上昇で下落していた高PER銘柄も買われた。NYダウは前日比+614ドル高の33,916ドル、ナスダックは+382ドル高の12,891ドル。

VIX指数は▲1.61ポイント低下して29.99。米10年債利回りは前日とほぼ変わらず2.832%、2年債は2.629%。

金曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は130円90銭近辺で始まり上値重く40銭に下落。その後80銭に反発したが夕刻にかけて129円80銭へ下落した。ドル買い円売りが一服。週末にかけて手仕舞いが入った。

ドルはユーロに対しても下落。ユーロドル相場は1.05ちょうど近辺で始まり1.0530に上昇し、さらに夕刻は1.0590まで上昇。前日までのユーロ安ドル高が一服した。

ユーロ円相場は137円40銭中心に30銭~50銭で上下した後、ドル安円高の勢いに押されて137円ちょうど近辺。欧州時間には円安に振れ、ドル円相場は130円50銭へ、ユーロ円相場は138円ちょうどへ反発したが、その後米国市場にかけてはリスク回避・米国株大幅安のなか円買い戻しが優勢となり円は全面高となった。

ドル円相場は129円80銭~130円40銭で上下した後、米国市場終盤には129円40銭~50銭でもみ合い、NY引けはやや戻して129円90銭。ユーロ円相場は136円60銭へ大きく円高が進み、もみ合いの後やや戻して136円90銭~137円ちょうどで引け。

ユーロドル相場は1.0520~40で上下した後1.0580へ反発したが引けは1.0540近辺。ドルインデックスは103.21。

米国株は大幅安。アップル社は好決算だったが、アマゾン社が7年振りに赤字決算となったことで巣ごもり需要の一巡感が広がった。金融引き締め、中国景気懸念、世界景気減速懸念も気がかりとなるなか全面安。

NYダウは終始下落基調となり引けにかけて下げ足を速めた。引けは前日比▲939ドルの大幅安の32,977ドル。下げ幅は一時▲1,000ドルを超えた。

ナスダックは▲536ドル安の12,334ドル。VIX指数は+3.41ポイント上昇して33.40。

米10年債利回りは上昇して2.938%。2年債は2.731%。

雇用コスト指数(4-6月期)は+1.4%に加速。大幅利上げを支持するとみられた。

個人所得・消費支出(3月)は前月比+0.5%・+1.1%と堅調。ただインフレ率を差し引いた実質消費支出は+0.2%にとどまった。消費支出価格指数はコア指数が前年同期比+5.3%から+5.2%に上昇率が鈍化。

シカゴ購買部協会景気指数(4月)は前月62.9から56.4へ大きく悪化して予想61.0を下回った。

ミシガン大学消費者信頼感指数(4月確報)は速報65.7から65.2に予想外の下方修正。インフレピークアウト感や景気減速懸念からドル買いが一服した。週末かつ月末で、ポジション調整のドル売り円買い戻しが入ったとみられる。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC、パウエル議長会見

今週最大の注目材料は火曜日・水曜日の両日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)。結果は日本時間木曜日未明3:00、その後3:30からパウエル議長が会見を行う。

今回の会合では0.50%の利上げと、毎月950億ドルのペースでバランスシート縮小を開始することが決定されると予想されている。

反対意見として0.75%を主張する意見がどれほどみられるか、パウエル議長が金融引き締めにどれほど前向きか、従来以上のタカ派スタンスがみられるかがポイント。

市場の反応としては、予想通りであれば一旦材料出尽くし、金利上昇一服となる可能性がある。

景気減速懸念も強まっていることから、引き締め姿勢がとくに株式市場で嫌気され、リスク回避が強まり株価がさらに下落する可能性には留意を要する。ドル円相場は上下双方に振れやすいが、さらに調整しドル安円高となる可能性も。

2.米国の経済指標

今週は重要な経済指標が目白押し。堅調な数字が予想されているものが多いが、金融引き締めが強化され、中国景気に懸念が強まるなか、予想よりも弱い数字に反応しやすいとみられる。

月曜日 ISM製造業景気指数(4月、予想58.0、前月57.1)

火曜日 製造業新規受注(3月、前月比、予想+1.2%、前月▲0.5%) JOLT求人者数(3月、予想11,000千人、前月11,266千人)

水曜日 ISM非製造業景気指数(4月、予想59.0、前月58.3) ADP雇用報告(同、雇用者数前月比、予想+370千人、前月+455千人)

木曜日 米週間新規失業保険申請件数

金曜日 雇用統計(4月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+400千人、前月+431千人、失業率、予想3.6%、前月3.6%、平均時給・前年同月比、予想+5.5%、前月+5.6%)

3.豪準備銀行、英国中銀の利上げ

米国以外でも各国中銀はインフレ抑止に傾いている。そうしたなか、火曜日にはオーストラリア準備銀行(RBA)が、水曜日・木曜日の2日間はイギリス中銀(BOE)が、それぞれ金融政策決定会合を開催する。

RBAは0.10%から0.50%へ、BOEは0.75%から1.00%への利上げが想定されている。

今後の利上げペースや景気見通しについて、何等かの示唆があるか。景気減速への配慮から利上げや金融引き締めにやや慎重な姿勢がうかがわれるかどうか。慎重なら株価には金利面でプラスだが、景気見通しの悪化はマイナス。この場合は円安は一服となるがどうか。

◆今週のMRA's Eye


金融引き締めと景気鈍化懸念で荒れ相場

先週の米国株は荒れ相場となった。GAFA4社の決算が明暗を分け、とくに予想より悪い内容への反応が大きかった。米長期金利が週前半は上昇一服となったことでハイテク株は支えられたが、週末にかけての金利再上昇はマイナス要因に。

また中国での感染拡大・ロックダウン地域拡大の動き、景気減速懸念、物流混乱への懸念は株価の重石となった。底流には金融引き締めを急ぐFRBの姿勢を嫌気する地合いは続いている。

一方、日銀が現状の超金融緩和策をむしろ強固なかたちで継続する姿勢を示したことはサプライズだった。

長期金利10年債利回りの変動幅の拡大を示唆する可能性があるのではないか、との市場の思惑とは真逆に、連日の指値オペ実施で上限を維持する姿勢を示した。

黒田総裁は円安が日本経済全体にとってプラスとの考え方は変わらないと頑なな発言を繰り返し、投機筋による円売りを刺激した。ドル円相場は一気に131円をつけ高値を更新している。

各市場は荒れ相場が一段と強まりそうだ。ボラティリティの上昇でリスクが高まる。米国が金融引き締めを加速するなか、景気減速懸念がちらほら気になり始めていた。

その矢先に中国で感染が拡大。依然としてゼロコロナ政策を続けるなか強力なロックダウンが上海、そして北京でも実施され、消費低迷や物流・サプライチェーンの混乱による景気減速懸念が強まっている。

週末に発表された中国のPMI景況感指数(4月)は予想以上に悪化。とくに非製造業・サービス業の悪化が際立った。

原油価格は、東欧2国に対してロシアが天然ガス供給停止に踏み切ったことで高騰したが、景気減速懸念が広がると上昇一服となった。

注目は米国の経済指標に移ろう。

市場は金融引き締めの強化、利上げの加速、早いペースでのバランスシート縮小を織り込んでいる。

米長期金利は3%への利上げは織り込み、2年債利回りは2.7%台、10年債利回りは2.9%台に上昇し3%まであとわずか。ミシガン大学消費者信頼感調査による長期の期待インフレ率が3%であり、10年債利回りがついにキャッチアップした。

ここからの利上げ織り込みには限界があろう。

一方で、景気減速が懸念ではなく経済指標によってリアルに確認されるようだと、より長い金利は低下する可能性がある。

金利上昇・景気減速は株価に大きな逆風だ。先週末にみられた通り、リスク回避による株安が加速する可能性がある。VIX指数は33ポイント台と高止まり。市場は荒れ相場への警戒感を強めている。

為替市場でも値動きが激しい状況が続いている。ドル円相場は、この間、とくにドル高円安方向への動きが速く、予想変動率も上昇している。

通常は円高に振れる際の動きが速いことから、ドル安円高に備えるオプションの価格が強まりながら(ドルプットオーバー)、予想変動率が上昇することが多い。

しかしここ最近はドル高円安で利益を得られるオプションの人気が強い状態(ドルコールオーバー)のなか、予想変動率が5年来の高水準に高まっていた。ただ次第にドルプットオーバーに転じており、高値警戒感、上下双方に同程度大きく動くとの見方が強まっている。

今週のFOMCで利上げが実施されるのは確実。日銀は超金融緩和を継続。となれば、ドル高円安を否定しにくい状況だ。

ただそれによるドル高円安を牽引しているのは投機筋が中心とみられる。ここからドルのリスクをとってドル資産を購入する日本の投資家は少ないだろう。

投機筋はドル買い円売りをしても、なお短期金利差はさほど広がっておらず、とくに為替変動リスクが上下双方に大きい状態では、金利差で得られる収益はリスクに見合わない。

単純に金利差拡大=ドル高円安というトレンドが継続することに賭けたポジションに過ぎない。そのため、ドル高円安の流れや、米長期金利が上昇してもドル高円安にならないなど、為替相場の相関に変化が生じれば、投機ポジションは危機に陥る。

利上げ加速のなか景気減速懸念が強まれば、そうした事態が生じやすい。株価がさらに調整すれば、リスク回避による債券への資金流入で、利上げ加速観測にもかかわらず、米長期金利は低下するだろう。

あるいは、長期金利の上昇そのものが経済指標の弱さとあいまって株価下落・リスク回避をもたらすこともある。

ドル金利が低下すれば、相関が維持されるなかでドル安円高となる。ドル金利が上昇していても株安・リスク回避なら投機筋の手仕舞いをもたらすだろう。

投機筋主導の相場は足腰が弱い。ドル円相場が一段と確実に上昇するには、ドルへのリアルな資金フローがグローバルにさらに強まることも必要だ。

この点、ウクライナ情勢の悪化や欧州景気混乱への懸念から、欧州からの資金逃避が強まるか、それによって一段のユーロ安ドル高が進むか、も鍵だろう。

FRBの利上げが織り込み済み、景気減速懸念が強まる状態で弱い経済指標、となれば、ひとまずドル買い円売りにさらなる手仕舞いが広がる可能性もある。日本の貿易赤字が拡大したまま、日米金融政策格差が明確なままでは、中長期的なリスクバイアスはなおドル高円安サイドのままだ。

しかし、ドル高円安が加速した現状では、短期的なリスクバイアスはドル安円高に傾いているようにみえる。

金利上昇と景気減速懸念の組み合わせは市場のボラティリティを高める。株価は波乱が続く可能性が大きい。ドル円相場はこれまでのようなドル高円安見通し一辺倒では済まなくなるだろう。

値動きは複雑化、ボラティリティが高まった状況で、リスクバイアスは均衡した状態すなわち上下いずれにも大きく荒れ相場、となる可能性が大きいので留意を要する。


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