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中国景気減速懸念とドル高で下落
  • MRA商品市場レポート

2022年4月26日 第2181号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国景気減速懸念とドル高で下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はほとんどの商品が下落した。中国上海市でのコロナ感染拡大によるロックダウンが継続、さらにその他の沿岸部の都市にもロックダウンが拡大、物流に障害が生じ、石炭供給などにも障害が出て電力供給が不安定化するなど、同国の経済活動に著しい悪影響が及んでいる、と判断されたことが景気循環系商品を中心に下落要因となった。

一方、この景気減速が米国の利上げやQTのペースを鈍化させるのではとの期待が高まったことで米国時間の後場にかけてはむしろ株価が上昇し、引けに掛けては下げ幅を削る展開となった。

昨日最も上昇したのが米国の灯油と天然ガス、パーム油などであり、製品供給の不足やパーム油に関してはインドネシア政府の食用油禁輸報道が引き続き材料になっている。

最も下落したのが欧州天然ガス。ただこれはロシからの供給が増加したり、LNG供給が増加したり、というよりも中国景気の減速に伴う同地域経済への悪影響が意識されたもの、と考える方が妥当ではないか。

【本日の見通し】

本日も引き続き、ロシア・ウクライナ情勢とそれに対する制裁動向、中国のロックダウンの動き拡大、それに伴う金融引き締めペースの鈍化、といった強弱材料が混在する中、もみ合うものと考えるが、恐らく取引序盤は昨日の下落が大きかったことから恐らく実需筋を中心に買い戻しが入るが、上値重く、先週末の水準は回復せずに、前日比プラスで引けると予想する。

本日の注目材料は国連事務総長のプーチン大統領との会談、米長期金利が上昇する中での米新築住宅販売動向に注目している。

プーチン大統領と国連事務総長との会談は恐らく何もなく平行線で終ると思われるが、ロシア情勢は現状、最重要なイベントの1つであるため確認せざるを得ない。

新築住宅販売は、金利上昇の影響を受けるため、今回は前月比▲0.6%の76.8万戸(前月▲2.0%の77.2万戸)と減速が見込まれ、建材需要の減少観測が価格を押し下げよう。

また、物価が上昇する中で個人の消費行動を把握する上で重要な、コンファレンスボード消費者信頼案指数(市場予想108.2、前月107.2)にも注目したい。

【昨日のトピックス】

昨日、フランスの大統領選挙の結果が発表され、マクロン大統領が勝利した。得票率は58.5%、ルペン候補が41.5%と事前予想の中では極めてマクロン寄りの結果となり、取りあえず欧州の仕組みが維持されるという観点で「一安心」といえる。

しかし、前回の米国の大統領選挙もバイデン・トランプの接戦、前々回もトランプ・クリントンの接戦だったが、結局どちらのケースも勝利した方は「辛勝」という感じである。

今回はロシアを擁護することに「義」はないはずだが、それでも40%を超える有権者が「それに義がないとしても、先立つ自分の生活が確保出来なければ意味がない」という状況に追い込まれていることを示唆している。

特に、生活必需品価格の上昇や供給の不足は貧困層・低所得者層への影響が大きいため、より「人口のボリュームが大きいゾーン」からの票がルペン候補に集まったといえる。

このように、西側諸国は個々の意思や主張を尊重するため、専制主義国に比べてある意味政治のリスクが大きい。現在、ロシア問題を契機に我々西側諸国は試されているともいえる。

この状況を勘案すると、イデオロギーとは関係ない国民の対立を招くインフレは各国にとって最優先事項であることは間違いがなく、結果、景気を過剰に冷やしてしまうリスクは無視できない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。世界2位の原油消費国である中国のコロナの封じ込めを目的としたロックダウンが拡大しており、沿岸部では深刻な物流障害やエネルギー供給問題が発生、景気が悪化するとの見方が強まっていることが、需要減少観測を強めた。

しかし、これまで中国の材料で原油価格が上下したことは(不思議ではあるが)余りなく、むしろ株価の下落やリスク回避のドル高が進行したことが価格を押し下げた、と考える方がしっくりくる。

目先、需給が「直ちに」緩和する材料は以下の通りだが、一長一短である。現在、3.が顕在化している状況。

1.戦略備蓄放出の大盤振る舞い

2.西側諸国(除く日本)の急速な金融引き締めによる景気減速観測

3.中国のオミクロン株感染拡大によるロックダウン拡大・需要減少

4.停戦

1.は恐らく年後半には「再び在庫を積む動き」で逆に価格上昇要因となり

2.は年後半には価格下落要因に

3.はこの20年の経験則上、中国の影響はファンダメンタルズ的に大きいはずなのに、なぜかさほど価格に影響を与えていない。しかし株の下落やドル高を通じて今回は価格に影響を及ぼしているう

4.はロシア5月9日の終戦宣言を目指しているとされる。ロシアからの供給制限は比較的限定されているものの、目先の最大の材料が一旦終了することで「一旦手仕舞い」となる可能性はある。

ロシア以外の供給先としては、米シェールオイル企業の増産(これは米政府も要請済み)、イラン・ベネズエラの供給再開だが、後者はOPEC諸国の反米機運の高まりから容易ではない。

また食品価格高騰による飢饉の影響でナイジェリアなどの情勢が不安定化しており、原油パイプラインからの盗掘も増加しているため、中東の生産状況も不安定である。

現在のロシア・ウクライナ情勢シナリオ別原油価格見通しでは、脱ロシアに欧州が舵を切る可能性が高まっていたが、独財務相が即時禁輸は行わないと発言するなど、足並みが揃っておらず、再び3.にステータスに戻ったと考えられる。

下記シナリオは数ヵ月の短期的なものであるが、長期的にはレーショニング・金融引き締めの影響・景気循環による需要減少による基準価格(供給懸念が後退したときの着地点となる価格)は徐々に切り下がると考えている。

なお、年後半に掛けて米金融引き締めが進むことによる景気過熱感の沈静化で、年後半にかけての価格見通しは下向きである。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 120-140ドル

2.1.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 105-125ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 95-120ドル

4.3.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ

↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)

5.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 95-120ドル

6.5.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-100ドル

7. 脱ロシア完了Brent 50-75ドル

8. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。米国の戦略備蓄100万バレル放出は半年の時限付。

本日も固有の材料は少ないが、この数日の下落が大きかったことから、実需筋を中心に安値拾いの買いが入ると予想する。

ただし足下、中国に端を発する景気減速懸念が景気循環系商品価格を下押ししているため、上昇余地も限定されよう。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は上昇。中国政府が電力供給が不足しており、江蘇省、浙江省、福建省、遼寧省、海南省、広西壮族自治区などの電力不足が懸念されていることから、海外炭を求める動きがみられたためと考えられる。

山西省当局は石炭価格が中央政府設定の570~770元を1.5倍上回る価格での販売を許可、供給懸念の解消に勤めている。

基本、国内供給を増加させることが中国政府の優先課題だが、足下は供給不足の解消に手段を選ばないと見られていることが価格を押し上げていると見られる。

中国は、以下の理由から引き続き石炭不足・電力不足が発生する可能性を懸念している。

1.ロックダウンの影響2,コロナの影響による燃料輸送の障害3.異常気象による水力発電の不足4.電力価格に制限が設けられていることによる石炭生産の阻害

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定してるとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。逆に言えば中国は脱炭素を実施するつもりはない、といえる。

なお、3月の中国の石炭生産は、前年比+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)まで急増しており、燃料炭輸入需要は減少している。ただし、目標は下回っている。

足下中国の6大電力会社の石炭在庫は過去5年の最低水準を上回っているが、在庫日数は同じ時期の過去5年の最低水準よりも低く、供給は十分とはいえない。

なお、港湾在庫は減少しているが、国内供給を優先させる方針のため輸入が減少しており、在庫が減少していてもある意味当然かもしれない。

本日も中国やインドの石炭在庫が十分でないこと、欧州の脱ロシア炭の動きを受けて価格は高値を維持すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物市場は下落した。ノルウェーの輸出が回復したことや、域内天然ガス在庫が増加していることに加え、最大の貿易相手国である中国のロックダウンの動きが拡大、景気自体の悪化懸念が意識されたことが売りを誘ったとみられる。

なお、LNGの輸入フローや在庫水準はこの数日、むしろ低下しており価格の上昇要因となるはずであるが、それでも在庫が積み上がり始めていることを市場は材料にしたようだ。

ただし、欧州全体の在庫はタンク貯蔵量の31.1%(前日30.7%)と増加はしているが在庫積増しは遅々として進んでいない。

特にロシアに阿っているハンガリーや、マクロンを支持率でルペンが追い上げているフランスの在庫積増しは遅れている。ロシアの制裁を差し置いても、大衆迎合的な政策の方が支持されやすい地合になりつつあることを示唆している。

ただし、ロシアに対する制裁の方向性もある程度固まったが、一応欧州は不需要期に入るため価格への影響が徐々に薄らいできているとの印象を受ける。

大きな方向性として、欧州は脱ロシアを推進する計画であり、引き続きLNGを積極的に輸入すると予想される。

しかし、LNGのターミナルを有しない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかないが、結局その大半はロシアからの輸入に頼らざるを得ない。

米国天然ガス先物市場は、一時、気温低下が価格上昇要因となってきたが徐々に気温上昇への感応度が高まり、南部の気温上昇見通しが価格を押し上げることとなった。

北米の天然ガス・プロパンガス在庫の水準は過去5年と比較して低い状況が続いている。

JKM先物は欧州価格の下落や、中国の景気減速懸念などが材料となり、水準を切りさえた。しかし特に今年の冬場の価格は高く、まだ30ドルを上回った状態であり、2023年についても25ドルを上回る限月がある状態。

原発再稼働を望む声が少しずつ増えているが、それでも現在の再稼働に向けた監査のスケジュールを考えると、実際に稼働出来るのは早くても来年となる可能性が高い。

この場合、需要増加期には化石燃料で対応せざるを得ないが、火力発電所の老朽化が進んでおり、安定稼働には疑問が残る状況。夏場・冬場の工場稼働停止要請のリスクは低くなく、景気の下押し要因となる可能性は排除出来ない状況。

4月17日時点の日本の発電用LNG在庫は176万トン(前年同月末201万トン、過去4年平均190万トン)と先週から小幅に増加した。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

4月4日~10日のLNGトレードだが、取引量は前週比▲5%の760万トンとなった。スポット取引のシェアは23%と前週の25%から低下。

スポット契約はインドとバングラディシュ向けが33万トン増加、長期契約は韓国や東南アジア向けが減少したが、欧州向けが増加した。

全体で日本中国韓国台湾の輸入は▲44万トン(韓国▲58万トン、中国▲35万トン、台湾+10万トン、日本+39万トン)となった。

本日も中国のロックダウンの影響を受け、アジア・欧州の需要が減少する可能性が意識されることが価格を下押しするものの、それでも欧州は冬場に向けた在庫積増しの必要があるため、価格は高値を維持する見込み。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は大幅に下落した。最大消費国である中国でコロナの感染が拡大、死者が急増している訳ではないのだがく(4月24日時点で39人、出所 Our World in Data)、ゼロコロナにこだわるが故に沿岸部でのロックダウンが拡大。中国の経済は沿岸部が牽引役であり、この地域のロックダウンが物流に障害をもたらし、エッセンシャルな工場の稼働も低下させていること、物流の停滞が発電燃料の供給粗制限し、生産活動に障害が出ていることが要因。

これを受けて最大貿易相手経済圏である欧州の景気もさらに減速する、と見られたことも非鉄金属価格を押し下げることになった。

昨日はBHP Billitonの決算が発表された。銅は前年比▲10%の減少。Olympic Damの増産をEscondida(コロナの影響)や地域住民の抗議活動が相殺して上回った。ニッケルも銅と同様、コロナの影響で▲13%となっている。

銅・ニッケルに限らずほとんどの金属の生産が前年比で減少しており、コロナ、輸送能力の不足、悪天候などが影響している。これはBHP Billitonに限らずこれまで決算を発表してきたほとんどの鉱山会社に当てはまることであり、この状況の改善には時間経過が必要であることをうかがわせる。

結果、供給面の障害はしばらく続き、非鉄金属価格を供給面で下支えするものと予想される。

本日は、ここまでの下落が大きいことから実需筋を中心に安値拾いの買いが入ると予想されるため、一旦上昇余地を探る動きになると考える。

しかし、中国のロックダウン解除への道筋が見えない中、景気への懸念が根強いこと、リスク回避のドル高も進行していることから上昇余地も限定されるだろう。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄鋼製品先物は下落した。

中国のロックダウンの動きが沿岸都市に拡大しており、ゼロコロナを目指す戦略が国内物流を阻害し、電力供給にも支障をもたらして生産活動が度鈍化する、と見られていることが価格を押し下げた。

そもそも供給懸念で推定値よりも高い水準で推移していたが、この供給不足に拍車が掛ることになるものの、価格への説明力が高い需要の減速が強く意識された形。

中国政府は企業に対して2022年の粗鋼生産を2021年を下回るよう指導しており、結果的に鉄鉱石需要が低下する見通し。また、国内生産の増加や投機規制強化によって鉄鉱石価格は低下が見込まれる。

なお、鉄鉱石の国内生産は前年比+4.3%の2億6,800万トンに増加すると見られている(BBGによる推計)。石炭も同様だが、中国は海外資源への調達依存が価格動向を不安定化させるため、環境汚染は一旦横に置き、国内サプライチェーンの拡充に力を注ぐ方針と考えられる。

その意味で、中国は当面、脱炭素を行うつもりはないともいえる。

なお、昨日発表のBHP Billitonの決算では、鉄鉱石生産は減少していた。その他の鉱物資源、他社も同様であるが、悪天候やコロナの影響が生産の障害となっている。この問題の解決は時間経過が必要となる。

現在の鉄鋼製品価格を基準にした回帰分析の結果は、鉄鉱石価格が151ドル、原料炭価格が256ドルとなっており、原料炭に関してはまだ水準が高い状態。

本日も中国のロックダウンの動きが経済活動を阻害、鉄鋼製品価格の下落と余って鉄鋼原料価格を押し下げるものと予想する。

◆貴金属

昨日の金価格は米長期金利が景気への懸念から低下したものの、中国のロックダウンによる景気の悪化懸念から原油価格が急落したため実質金利が上昇、金の基準価格が低下した。

また、長期金利の低下で株価が持ち直したため、安全資産としての金需要がやや低下しリスク・プレミアムが低下したことも価格を押し下げた。なお、金のリスク・プレミアムは現在542ドル(前日比▲33ドル)と大幅に低下している。しかし、過去5年の平均である204ドルよりは遙かに高い。

基本、ロシア・ウクライナの情勢不安や米利上げによる新興国経済のリスクが意識されるためリスク・プレミアムは高止まりしやすいが、昨日は米国の金融引き締めが景気を意識して今年~来年にかけて合計10回、というのは相当困難では、との見方が強まったことが、逆に安全資産需要を後退させているといえる。

銀、プラチナも下落、ガソリン車が主体の中国の景気減速懸念でパラジウムは大きく水準を切り下げた。それでもパラジウムのETFはほとんど減少しておらず、先物主導の下落だったと考えられる。

本日も、中国の景気悪化への懸念が長期金利上昇の抑制要因(金価格の上昇要因)となるが、原油価格の下押し要因にもなるため(価格の下落要因)、結局高値でもみ合うものと考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。トウモロコシは米週間輸出統計が急増したことが材料となり、大豆・小麦は逆に輸出需要が減少したことが材料となった。

それ以上にドル高が進行しているため、需給ファンダメンタルズ以上に昨日はファイナンシャルな影響が大きかったと見られる。

本日は朝方発表の作付状況、冬小麦の作況が良くないため、需給ファンダメンタルズはタイトなことから価格には上昇圧力が掛るが、リスク回避のドル高が金利低下にも関わらず継続していることから上昇余地は限定されると考える。

※穀物セクターのデイリーコメントは4月一杯で終了となります(不定期ですがMRA's Eyeでの農産品セクターの解説は継続の予定です)。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、もはやメインシナリオか。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「米QTの影響~下落リスクは無視できず」

米政府・FRBはインフレが継続していることを受けて、物価上昇沈静化のために金融引き締めを加速させる見通しであり、今後はQTの金額やそれに伴う長期金利の動向、期待インフレ率の動向が注目されることになる。

恐らく早晩、「米10年国債利回り>期待インフレ率」となり、実質金融引き締めに舵が切られると予想される。

なお、実質金利がプラスに転じるのは2020年初のコロナショック以来であり、コロナショック以降に取られていたある意味例外的な政策が正常化に向かう、ともいえる。

リーマンショック以降の一連の金融政策と米長期金利、米国の金融政策の影響を受けやすいと考えられる新興国の原油需要の前年比増減を確認すると、両者の間には一定の関係性があることが分かる。

QE1、QE2、QE3は開始直後は前年比で新興国需要が増加しているが、いずれも景気刺激策が終了に向かう局面で需要の伸びが減速している。

利上げ・QT実施時は「景気がよいから引き締め策を行っている」という認識で(実際、ISM製造業指数なども改善を続けていたタイミング)あり、その間、原油価格は上昇している。

利上げ開始後は需要の伸びは鈍化、QTが始まると長期金利の上昇がやはり需要の伸びを抑制、その後米中対立が深まり、かつ、循環的な景気減速が重なった2018年頃から原油価格は下落に転じ、同時に長期金利も低下する。

そしてその後、金融引き締めやQTの影響で長期金利が上昇する中では、、その政策の序盤は価格が上昇、しかし景況感の悪化でその後下落に転じている。

その後、コロナショック前後は需要の急減・急増が見られたが、足下は米利上げ・QT観測を織り込んだ長期金利上昇で、新興国需要の伸びは減速した。

(過去の一連の金融政策の期間)

QE1 2008年11月~2010年6月QE2 2010年1月~2011年6月QE3 2012年9月~2014年10月利上げ期間 2015年12月~2018年12月QT 2017年10月~2019年9月コロナショック 2020年1月~米金融引締第2弾 2022年3月~

今回は利上げとQTを同時に行うタイミングが前回よりも早く、ISM製造業指数やPMI製造業指数は既にピークアウトしているため循環的な景気減速局面での金融引き締めとなることから、需要減速と価格下落が同時に起きる可能性は否定出来ない。

足下の原油価格上昇は、供給面のある意味特殊な材料が要因といえるが、ロシア・ウクライナ問題が緩和するあたりから実態経済が意識され、価格下落リスクは小さくないと考える。


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