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過度なインフレ懸念後退でドル安・総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2022年4月21日 第2178号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「過度なインフレ懸念後退でドル安・総じて堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は非鉄金属と、ドルではない自国通貨建ての商品、畜産セクターなどが下落した。

非鉄金属の下落は最大消費国である中国の景気の先行き懸念と、ローン金利引き下げ見送りが、自国通貨建て商品はドル安が進行したことに因るもの。市場では「そろそろインフレはピークではないか」との見方が徐々に広がっており、今年~来年にかけて10回と見込まれているFRBの利上げもかなり折り込み、そこまでのペースにはならないのでは、との見方が広がっている。

ロシアの侵略戦争までは世界経済は「平和で」「1つで」「100年後を考えるゆとり」があったが、最早その「安全で100年総じて平和」の前提が崩れたことから前提条件が変わってしまい、その変わった前提条件の下でどの方向に進むのが適切か、誰が味方なのか敵なのか、といったことを考えざるを得ない状況に陥っている。

今後についてはロシア問題を受けて各国が「どのような世界を目指すのか」といった方向性が出てこない限り、景気の循環、制裁に伴う供給制限が価格を決定することになる。

脱ロシアの動きが強まる中で、昨日は欧州排出権価格が急騰した。ガス供給の低迷から石炭を物色し、排出権を買う動きが強まったためと考えられるが、同時にほとんどの商品が上昇擦る中で割安感があった排出権が投機の対象として物色された可能性は否定出来ない。

【本日の見通し】

本日は市場でインフレへの懸念が「やや」後退していることからドルに調整的な調整圧力が強まるため、多くの商品が買い戻されると考える。

しかし、根本的に供給制限観測は今後強まる方向にあり、緩和がなかなか見込み難いことから価格は高値を維持しよう(なお、年末に向けては景気減速で下落を想定)。

本日予定されている材料としては以下に注目している。

米週間新規失業保険申請件数 市場予想 18万件(前週 18.5万件)4月フィラデルフィア連銀製造業指数 市場予想 21.4(前月27.4)

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本の貿易統計は、調整後貿易収支赤字が▲4,124億円(市場予想▲715億円、前月▲6,697億円)と予想を上回る赤字となった。

要因は原油価格の高騰に伴うエネルギー輸入の増加によるもので、原油粗油の輸入増加への寄与度が+5.3%、次いで石炭(+4.4%)、LNG(+4.0%)となっている。ロシアに対する制裁強化で脱ロシアを進める中、結局BrentやDubaiなど、ロシア以外の原油を購入する必要が出てくるため、価格が上昇してしまうことになる。

この状態は脱ロシアが完了するか、あるいは原油価格の高騰や金融引き締めの影響で景気が悪くなり需要が減少するか、のいずれかが必要となる。

もちろん、「こんな価格でエネルギーを買わなければならないようであれば、ロシアに対する制裁を止める、どちらが制裁されているか分からない」といった声が特に欧州諸国から上がる可能性がある。

欧州はそもそも組織が大きく、各国の意見がまとまり難い構造となっているからだ。実際、フランスのルペン候補がマクロン大統領を追い上げているのは、脱NATOやロシアの天然ガス・石油への制裁を停止する、といった政策を打ち出しているためだ。

この他、目を引いたのが輸出の金額は+14.7%と増加しているが、「数量指数」は▲1.5%と減少していることだ。このことは、円安が決して輸出増加に繋がっている訳ではないことを示唆している。

個別の輸出品の状況を見ると、最も増加への寄与が大きかったのが半導体製造装置で、欧州、アジア向けに出荷が増えている。このことは半導体不足と、サプライチェーンの再構築に動いている地域が増えている可能性を示唆するものである。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格はまちまち。米石油統計が市場予想に反して強気な内容だったこと、ドイツベアボック外相が年内にロシア産原油の輸入を停止する方針を示したこと、リビアの情勢不安、ドル安進行などの強材料が目立ったが、前日のIMF見通しの下方修正や、米石油統計で石油製品出荷が急速に減少しており、価格上昇や循環的な景況感の悪化観測が上値を重くしていると考えられる。

今後、どういった形で脱ロシアが完成するか(どのようなエネルギーミックスに落着くか)不透明であるが、少なくとも脱ロシアの最中は原油価格が上昇する可能性は高いと市場は判断していると考えられる。

目先、需給が「直ちに」緩和する材料は以下の通りだが、一長一短である。

1.戦略備蓄放出の大盤振る舞い

2.西側諸国(除く日本)の急速な金融引き締めによる景気減速観測

3.中国のオミクロン株感染拡大によるロックダウン・需要減少

4.停戦

1.は恐らく年後半には「再び在庫を積む動き」で逆に価格上昇要因となり2.は年後半には価格下落要因に3.はこの20年の経験則上、中国の影響はファンダメンタルズ的に大きいはずなのに、なぜかさほど価格に影響を与えず4.はロシア5月9日の終戦宣言を目指しているとされるが、ウクライナの戦況は不透明である。

ロシア以外の供給先としては、米シェールオイル企業の増産(これは米政府も要請済み)、イラン・ベネズエラの供給再開だが、後者はOPEC諸国の反米機運の高まりから容易ではない。

現在のロシア・ウクライナ情勢シナリオ別原油価格見通しでは、脱ロシアに欧州が舵を切る可能性が高まったため、2.のシナリオに近づいたといえる。

下記シナリオは数ヵ月の短期的なものであるが、長期的にはレーショニング・金融引き締めの影響・景気循環による需要減少による「基準価格(供給懸念が後退したときの着地点となる価格)は徐々に切り下がっていると考えている。

なお、年後半に掛けて米金融引き締めが進むことによる景気過熱感の沈静化で、年後半にかけての価格見通しは下向きである。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 120-140ドル

2.1.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 105-125ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 95-120ドル

4.3.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ

↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)

5.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 95-120ドル

6.5.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-100ドル

7. 脱ロシア完了Brent 50-75ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。米国の戦略備蓄100万バレル放出は半年の時限付。

本日も強弱材料が混在する中、基本的には脱ロシアを進める流れを受けて高値を維持すると予想。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は上昇して320ドル台の後半。独ベアボック首相が年内にロシア産原油の輸入停止を表明するなど、石炭の禁輸観測も強まっているが、この数日排出権価格も上昇しており、石炭+排出権の取引が増加しているためと考えられる。

なお、昨日、ポーランドのプニュベク鉱山で爆発事故が発生していることも、買い材料視されたと考えられる。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定してるとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。逆に言えば中国は脱炭素を実施するつもりはない、といえる。

なお、3月の中国の石炭生産は、前年比+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)まで急増しており、燃料炭輸入需要は減少している。ただし、目標は下回っている。

中国は、1.ロックダウンの影響、2,コロナの影響による燃料輸送の障害、3.異常気象による水力発電の不足、4.電力価格に制限が設けられていることによる石炭生産の阻害、などから今年の夏、石炭不足・電力不足が発生する可能性を懸念している。

本日も欧州の脱ロシア炭の流れを受けて高値維持の公算。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物市場は小幅に上昇。ロシアからの供給不安や、域内最大消費国であるドイツの太陽光発電回復、季節的な需要の減少といった強弱材料が混在するため。

ロシアに対する制裁の方向性もある程度固まったが、一応欧州は不需要期に入るため価格への影響が徐々に薄らいできているとの印象を受ける。

欧州は脱ロシアを推進しており、引き続きLNGを積極的に輸入すると予想される。しかし、LNGのターミナルを有しない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、1.域内供給の増加、2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)、3.需要の削減、によってガス在庫を積み上げるしかないが、結局その大半はロシアからの輸入に頼らざるを得ない。

また、仏大統領選でむしろ親ロシアの政策を推奨しているルペン候補が支持率を上げており、その結果によってはロシア制裁がなし崩し的になる可能性はある。この場合、ガス価格には下押し圧力が掛ることになる。

米国天然ガス先物市場は続落した。欧州向けの輸出増加や米北東部の気温低下による暖房需要の増加観測が価格を押し上げていたが、短期的な買われすぎ・売られすぎの判断材料であるRSI(相対力指数)が買われすぎを示唆していたため調整売りに押された形。

なお、北米の天然ガス・プロパンガス在庫の水準は過去5年と比較して低い。

JKM先物は期近が下落、期先が上昇した。足下の下落は欧州価格下落と季節的な需要減少によるものと考えられ、限月交代に伴う価格の不連続性を埋める「窓埋め」の動きは見られていない。

JKMは、1.欧州の脱ロシアの動き、2.猛暑(+今冬の厳冬)が予想されるため在庫の積増し(今のところ日本の発電業者のLNG在庫の水準は高くない)、を背景に高値での推移が続いている。

岸田政権は原発稼働も視野に入れているが、国内の反対も多く、かつ、稼働に向けたスケジュールを変更しなければ2023年まで再稼働は難しく、実質的に直ちに稼働出来る発電設備にはカウント出来ない。

結果、石炭やLNGによる発電に頼らなければならない状態は続くと予想される。ただ火力発電は老朽設備も多く、安定稼働への懸念も払拭しきれない。

弊社が懸念しているのは、構造的な需要増加が続くとみられているためか、期先の価格が上昇し、2023年末の先物で25ドルを超えてきている点。

4月17日時点の日本の発電用LNG在庫は176万トン(前年同月末201万トン、過去4年平均190万トン)と先週から小幅に増加した。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

4月4日~10日のLNGトレードだが、取引量は前週比▲5%の760万トンとなった。スポット取引のシェアは23%と前週の25%から低下。

スポット契約はインドとバングラディシュ向けが33万トン増加、長期契約は韓国や東南アジア向けが減少したが、欧州向けが増加した。

全体で日本中国韓国台湾の輸入は▲44万トン(韓国▲58万トン、中国▲35万トン、台湾+10万トン、日本+39万トン)となった。

本日は季節的に欧州の調達意欲が後退するが、今年は例外的にLNG調達が増加する見通しであり、やはり高値を維持する見込み。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。昨日は中国の景気刺激策への期待で上昇すると見ていたが、IMFの経済見通し下方修正や、ロックダウン継続、中国人民銀行が1年5年のローンプライムレートを据え置いたため、これまで「期待」で上昇してきたこともあるため、下落に転じた。

想定しているよりも中国国内の景況感は改善しておらず、ゼロコロナを目指したロックダウンがかなり経済活動を阻害しているようだ。

実際、中国の非鉄金属輸出は増加しており、過去5年と比較しても水準は高い金属が多い。

銅地金輸出は前年比+3万4,800トンの10万5,930トン、ニッケルは前年比+2,942トンの4,296トン、スズは+285トンの1,224トン、アルミは+15万880トンの59万4,360トン、鉛は+1万7,530トンの1万8,240トンとなっている。

中国からの輸出増加はLME価格の下落に繋がるが、コンテナ船の確保が遠方向けは困難である(価格が高いためペイしない)こともあり、アジア域内の需給の緩和には寄与するが、全体の需給緩和までには至らないのではないか。

本日も中国のロックダウン解除期待や金融緩和観測が価格を押し上げるものの、中国の景気刺激策の遅れもあり、上値も重いと考える。

なお、中国の景気刺激策やコロナの影響緩和で短期的には上昇するが、年後半にかけては米国の金融引き締めやレーショニングの影響でやはり低下すると見ている。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄鋼製品先物は上昇した。

鉄鋼製品価格は中国政府による住宅セクターでの景気刺激策への期待がまだ価格を押し上げており、鉄鉱石価格の上昇要因となった。

一方、原料炭は安価なロシア炭の輸入が増えており、ロシアからの輸入は1月が77万トンだったが、2月は113万トン、3月は143万トンと急増している。また、国内生産も増加していると見られ、総じて国内需給が緩和を始めている可能性が高まっている。

しかし、現在の鉄鋼製品価格を基準にした回帰分析の結果は、鉄鉱石価格が156ドル、原料炭価格が255ドルとなっており、原料炭に関してはまだ水準が高い状態。流動性プレミアムといって良いだろう。

本日は、中国政府の景気刺激への期待や徐々にロックダウンが解除となっていることから鉄鋼製品価格が上昇しやすい一方、物流環境の改善期待が原料供給状況を改善するため、鉄鋼製品価格の上昇と原料価格の調整が続くと予想する。

◆貴金属

昨日の金価格は、米長期金利の急低下、期待インフレ率の高止まりで実質金利が低下したことから基準価格が上昇、一方、株価上昇もあって安全資産需要がやや後退、リスク・プレミアムが低下したが、前日比プラスで引けた。

金の基準価格1,368ドル(+36ドル)に上昇、リスク・プレミアムは590ドル(▲28ドル)。

銀は金価格の上昇を受けて上昇したが小幅な上昇に止まった。プラチナはほぼ金と同じ値動きとなったが戻りきれず前日比マイナスで引けた。パラジウムは株価の上昇もあって大幅な上昇に。

本日は、市場参加者の「インフレはピークではないか」との見方が強まっていることから実質金利上昇に歯止めが掛る可能性があり、高値維持の公算。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシ・大豆が上昇したが、小麦が下落した。

米国の作付ペースが緩慢なことや、ベージュブックなどの結果を受けてドル安が進行したことが材料となった。小麦は利益確定の動きが続いた。

本日もロシア情勢不安と、ラニーニャ現象の継続、米国の作付状況の遅れナドを背景に高値維持の公算。

※穀物セクターのデイリーコメントは4月一杯で終了となります(不定期ですがMRA's Eyeでの農産品セクターの解説は継続の予定です)。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、もはやメインシナリオか。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「金価格は3,000ドルに?」

金価格は高値圏での推移が続いている。弊社は金価格の構造をより理解しやすくするため、実質金利(10年債利回り-期待インフレ率)で説明可能な基準価格とそれ以外の要因(安全資産需要やドル指数の変動による名目価格の変化)をリスク・プレミアムとして整理している。

米国はインフレに直面しているが、これはコロナによって物流に障害が発生し、供給不足となっていることが主因と考えられるが、輸入に関わる港湾の人員確保などが進めばある程度の解消は期待が出来る。

しかし、トランプ政権から実際に米議会が行動に移した「反中国」の動きにロシアの侵略戦争が加わり、より、専制主義国家vs自由主義国家の対立が強まる構図となり、緩やかなブロック経済誕生の可能性が高まっていることも無視できない要因となっている。

これは、ある意味ベルリンの壁が崩壊して誕生した「ポスト冷戦」の時代が、冷戦時代に逆戻りすることを意味している。

この中で、支持率低下に繋がりやすいインフレ沈静化に米政府は舵を切らざるを得ず、利上げを行い、長期金利が低位安定していた要因の1つである量的緩和を解除する方針である。

この場合、現在の実質金利と2023年1月のFF.金利先物による回帰分析の結果は、来年1月に実質金利が1.15%に達することを示唆しており、この場合、金の基準価格は1,022ドルまで低下することが想定される。

このとき、仮にリスク・プレミアムが過去5年平均程度となれば、190ドルであるため金価格は1,200ドル程度まで下落することになる。2003年以降、金のETFが上場され、金ETFがその他の市場とも強く連動するようになってからのリスク・プレミアムの最高値は、リーマン・ショック、欧州危機の流れで発生したS&Pによる米国債の格下げショックが発生した時の574ドルだが、現在はこの水準を既に上回ってしまった。

こうなると、過去を参考にしたときの目処がなくなってしまうが、何かしらのショックが発生した場合、ショックの後半でリスク・プレミアムの比率が高まる傾向が強い(恐らくそれが発生した場合、基準年を見直しする必要が出てくるのだが)。

現在は世界の構造が大きく変わる可能性があり、安全資産としての需要が非常に高まる構造転換のタイミングである可能性はある。

これは過去ニクソンショック~第二次オイルショックの際にも起きた。仮に「金価格に占めるリスク・プレミアムの比率」で考えた場合、過去の最高値は71.2%、2003年以降であれば62.6%。

仮に後者の水準までリスク・プレミアムのシェアが上昇したとすれば、基準価格を前提にすると、金価格は2,660ドル程度まで上昇する余地があることになる。

通常の見通しであれば年末までに金価格は下落することになるが、今回の戦争の終結の仕方に酔っては3,000ドルに迫る展開もありえる、ということである。


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