総じて堅調 中東情勢不安で原油高い
- MRA商品市場レポート
2022年4月19日 第2176号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「総じて堅調 中東情勢不安で原油高い」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、イースターで欧州・香港などが休場であり総じて動意は薄かったが、その他農産品や穀物、貴金属、エネルギーなどが幅広く物色されて上昇した。
引き続き市場の材料としてはロシア・ウクライナ情勢(供給面で価格↑)、ラニーニャ現象による穀物生産不安や輸送障害(↑)、中国のロックダウン(↓)、米国の金融引き締め加速観測(まだ1回しか利上げしていないが↓)、などであるが強弱材料が混在しており、方向感が出難い。
しかし現時点ではより供給面が意識されており、さらにその状況改善?時間が掛ると見込まれているため高値を維持する商品が多い、という印象。
逆に供給面の問題が解消した場合の下落余地がより低下しているともいえ、年後半の価格急落は既に意識をした方が良いかもしれない。
ただ、供給不安がどのタイミングで解消するかが不透明な中では、「スワップや固定価格の値決めで粛々と上昇リスクに備え」「万一の下落リスクに備えてプットオプションを活用する」という方法などを検討する必要がある。
価格が著しく高い状態では(当たり前だが)下落リスクを回避する商品のコストは安い。
【本日の見通し】
本日も上述の通り、強弱材料が混在し、その状況に大きな変化が期待できないことから高値維持の公算。
ただ、本日は商品の需要動向を考える上で最重要な統計の1つであるIMF経済見通しが発表される。景気見通しの下方修正は確実視されているが、ロシアとロシアに対する制裁の影響、中国のロックダウンの影響、米国の金融引き締めの影響をどのように判断しているかに注目している。
ただ、見通し下方修正の可能性が高いため、多くの景気循環系商品価格の下押し要因になるとみる
そのほか、予定されている材料で注目は米国の住宅着工。金利急騰の中でどの程度、建設活動に影響が出ているか。
3月米住宅着工 市場予想 前月比▲1.6%の174万戸(前月+6.8%の176.9万戸)3月米住宅着工許可件数 前月比▲2.4%の182万戸(▲1.6%の186.5万戸)
【昨日のトピックス】
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、単月ベースでは+5.0%となったが、1-2月累計で前年比+6.5%(1-2月期+7.5%)と伸びが鈍化しており、コロナの影響によるロックダウンやロシア問題を契機とする供給停滞、物流の障害によって工業活動が減速したと見られる。
住宅セクターは加熱沈静化を目的とした政策、コロナの影響などにより同様に減速して1-3月の不動産販売はは前年比▲25.6%の1兆3,652億元(1-2月期▲22.1%の1兆3,650億元)と減速した。
不動産開発投資は1-3月期累計で前年比+0.7%の2兆7,765億元(1-2月期+3.7%の1兆4,499億元)とこちらも減速している。市場予想が+1.2%程度の伸びを見込んでいたため、想定以上に中国の不動産・住宅セクターが減速していることが窺える。
ストック需要の指標である固定資産投資も1-3月期が前年比+9.3%(1-2月期+12.2%)と減速、公的+11.7%(+14.1%)、民間+8.4%(+11.4%)ともさえなかった。
とは言え、ソフトランディングを目指す中国政府の対策(不動産規制緩和・預金準備率引き下げ)の影響で減速は数ヵ月後に底入れすると考えられる。
しかし、GDPに占める比率が上昇している個人消費の指標である小売売上高は、前年比+3.3%の10兆8,659億元(1-2月期+6.7%の7兆4,426億元)、3月単月で前年比▲3.5%の3兆4,233億元と減速しており、中国景気の戻りは緩慢なものにならざるを得ないだろう。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。リビアで暫定政権に反対する勢力が最大のシャララ油田に侵入、フォースマジュールが宣言されたことで供給懸念が意識されたことが背景。
米国の原油増産が始らない中、脱ロシアで中東依存度が高まっているため、同地区の供給動向が原油価格に影響を与えやすくなっている。
今後、どういった形で脱ロシアが完成するか(どのようなエネルギーミックスに落着くか)不透明であるが、少なくとも脱ロシアの最中は原油価格が上昇する可能性は高いと市場は判断していると考えられる。
目先、需給が直ちに緩和する材料は以下の通りだが、一長一短である。
1.戦略備蓄放出の大盤振る舞い
2.西側諸国(除く日本)の急速な金融引き締めによる景気減速観測
3.中国のオミクロン株感染拡大によるロックダウン・需要減少
4.停戦
1.は恐らく年後半には「再び在庫を積む動き」で逆に価格上昇要因となり2.は年後半には価格下落要因に3.はこの20年の経験則上、中国の影響はファンダメンタルズ的に大きいはずなのに、なぜかさほど価格に影響を与えず4.は早期の停戦が否定された。また停戦になっても脱ロシアは継続するため影響は限定される。
ロシア以外の供給先としては、米シェールオイル企業の増産(これは米政府も要請済み)、イラン・ベネズエラの供給再開だが、後者はOPEC諸国の反米機運の高まりから容易ではない。
現在のロシア・ウクライナ情勢シナリオ別原油価格見通しでは、脱ロシアに欧州が舵を切る可能性が高まったため、2.のシナリオに近づいたといえる。ただし戦略備蓄の放出効果をリビアの供給減少が相殺するためこのレンジの中で水準を切り上げる展開が予想される。
下記シナリオは数ヵ月の短期的なものであるが、長期的にはレーショニング・金融引き締めの影響・景気循環による需要減少による「基準価格(供給懸念が後退したときの着地点となる価格)は徐々に切り下がっていると考えている。
なお、年後半に掛けて米金融引き締めが進むことによる景気過熱感の沈静化で、年後半にかけての価格見通しは下向きである。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 125-140ドル
2.1.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 110-130ドル
3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 100-125ドル
4.3.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 80-115ドル
↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ
↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)
5.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 100-120ドル
6.5.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 80-100ドル
7. 脱ロシア完了Brent 50-80ドル
※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。米国の戦略備蓄100万バレル放出は半年の時限付。
本日はリビアの供給不安が高まる中で高値圏での推移が予想されるが、本日発表のIMF見通しが下方修正される見通しであることから上値も限定されると考える。
◆石炭
豪州石炭スワップ先物価格は横這いだった。
豪州、南アフリカ、インドネシア、ロシア、米国などの主要石炭輸出国5ヵ国の週間石炭輸出は、悪天候や今年に入ってから安定的に過去5年平均の水準を回復するに至っていない。異常気象や制裁が影響しているとみられる。
中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定してるとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。逆に言えば中国は脱炭素を実施するつもりはない、といえる。
しかし、1-2月の石炭生産は前年比+11%の1,160万トン/日(2ヵ月合計で6億8,700万トン、3億4,350万トン/月)と、増加しているものの目標は下回っている。
中国は、1.ロックダウンの影響、2,コロナの影響による燃料輸送の障害、3.異常気象による水力発電の不足、4.電力価格に制限が設けられていることによる石炭生産の阻害、などから今年の夏、石炭不足・電力不足が発生する可能性を懸念している。
本日も脱ロシアや悪天候に伴う供給障害を背景に、高値での推移を維持すると考えられる。
◆天然ガス・LNG
欧州天然ガス先物市場は小幅に下落した。域内風力・太陽光発電の回復、例年よりもやや高いLNG在庫などが材料になった。しかしガス在庫の水準はまだ低く、価格の絶対水準は高い。
欧州は脱ロシアを推進しており、引き続きLNGを積極的に輸入すると予想される。しかし、LNGのターミナルを有しない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、1.域内供給の増加、2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)、3.需要の削減、によってガス在庫を積み上げるしかないが、結局その大半はロシアからの輸入に頼らざるを得ない。
また、仏大統領選でむしろ親ロシアの政策を推奨しているルペン候補が支持率を上げており、その結果によってはロシア制裁がなし崩し的になる可能性はある。この場合、ガス価格には下押し圧力が掛ろう。
ドイツの風力発電は急速に回復していたが低迷しており、全体の発電量も低下している。
米国天然ガス先物市場は大幅に上昇し、一時、8ドルを超えた。同国内の在庫水準の低さに加え、欧州向けの輸出増加による裁定取引が価格を押し上げている形。
JKM先物は小幅に上昇した。なお限月交代したため価格の絶対水準は▲7ドル程度低下している。
JKMは、1.欧州の脱ロシアの動き、2.猛暑が予想される夏場に向けた在庫の積増し(今のところ日本の発電業者のLNG在庫の水準は高くない)、を背景に高値での推移が続く見込み。
岸田政権は原発稼働も視野に入れているが、国内の反対も多く、かつ、稼働に向けたスケジュールを変更しなければ2023年まで再稼働は難しく、実質的に直ちに稼働出来る発電設備にはカウント出来ない。
結果、石炭やLNGによる発電に頼らなければならない状態は続くと予想される。ただ火力発電は老朽設備も多く、安定稼働への懸念も払拭仕切れない。
4月10日時点の日本の発電用LNG在庫は166万トン(前年同月末201万トン、過去4年平均190万トン)と先週から小幅に増加した。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。
4月4日~10日のLNGトレードだが、取引量は前週比▲5%の760万トンとなった。スポット取引のシェアは23%と前週の25%から低下。
スポット契約はインドとバングラディシュ向けが33万トン増加、長期契約は韓国や東南アジア向けが減少したが、欧州向けが増加した。
全体で日本中国韓国台湾の輸入は▲44万トン(韓国▲58万トン、中国▲35万トン、台湾+10万トン、日本+39万トン)となった。
本日はイースター明けで市場参加者が増加するが、エネルギーセクターのベンチマークである原油価格がリビアの情勢不安で上昇していることもあり、高値での推移となろう。
注目は限月交代後のJKM価格でどの程度の窓埋めがあるかどうか。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は上昇した。最大消費国である中国のロックダウン解除期待や、景気刺激のための金融緩和を受けて中国製造業の稼働再開が意識されたため。
ただしゼロコロナを目指す中国のロックダウンの影響は大きく、多くの工場の稼働が低下し、物流にも影響が出ている状態が続いており、価格には下押し圧力が掛りやすい。
なお、調査が続いているが今回のニッケル問題は中国政府が関与した可能性は否定出来ず、取引所の信頼性が著しく損なわれている。他の資源でも同じかもしれないが、100年以上非鉄金属市場の指標として君臨してきたLMEだが、その他の代替市場を整備する、という動きが強まってもおかしくない状況。
本日も中国のロックダウン解除期待や金融緩和観測が価格を押し上げるものの、IMFの経済見通し下方修正やそれでもロックダウンが続いていることから上昇余地も限られるとみる。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は上昇、上海鉄鋼製品先物は直近限月が上昇、中心限月が下落した。
鉄鋼製品価格は限月交代に伴う買いで直近限月価格が上昇したが、期先は下落している。ロックダウンの影響が小さくなく、景気に悪影響を及ぼしていることが背景。鉄鋼原料もロックダウンの影響で需要が減少、価格はやや下押しされている。
本日は中国がロックダウンを一部解除に舵を切っていることと、それでもロックダウンが続いていることが綱引きとなり、高値でもみ合うものと考える。
◆貴金属
昨日の金価格は、米長期金利上昇と原油価格上昇に伴う期待インフレ率の上昇が相殺しあう形となり、ほぼ前営業日と同じ水準で引けた。銀価格は金の高止まりを受けた「貧者の金」需要で上昇、プラチナ、パラジウムは大きく水準を切り上げた。
プラチナ・パラジウムは足下、ロシア・ウクライナ情勢を反映する指標としての色彩が強まっているが、ロシア軍が東部での攻撃を激化させていることでより、供給への懸念が強まっていることが材料になったとみられる。
本日もドル高基調が維持されていること、ロシア・ウクライナ情勢不安を背景に安全資産需要が高まっていること、といった強弱材料が混在する中で、総じて安全資産需要と制裁に伴う供給リスクの方が強く意識されていることから高値維持の公算。
◆穀物
シカゴ穀物市場は上昇した。ロシア・ウクライナ情勢不安が続き、ロシア軍のウクライナ東部への攻撃が激化していることで、生産・輸出への懸念が強まったことが背景。
また、米国の冬小麦の作柄が過去5年で見ても最悪な状態にあることで、そもそもの供給懸念が強まったことが価格を高値に維持している。
本日もロシア情勢不安とそもそもの気象状況の悪化を受けて生産ヘの懸念が強いことから高値維持の公算。
※穀物セクターのデイリーコメントは4月一杯で終了となります(不定期ですがMRA's Eyeでの農産品セクターの解説は継続の予定です)。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)
・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
むしろこの可能性は高待っており、もはやメインシナリオか。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。
また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。
ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。
・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
◆本日のMRA's Eye
「食品価格上昇のリスク」
先日発表された米需給報告ではウクライナ・ロシア問題で供給への懸念が強まっている小麦の見通しは、期初在庫の減少と国内需要の増加による総需要の増加で、需給率が低下し先行きの価格上昇リスクの高まりを意識させる内容だった。
概要を整理すると、2021-2022穀物年度の世界の小麦生産は前年比+256万トンの7億7,883万トンと増加見通しである。米国(前年比▲496万トン)、カナダ(▲1,353万トン)、ロシア(▲1,019万トン)の減産を、EU(+1,172万トン)、ウクライナ(+758万トン)、アルゼンチン(+336万トン)などの増産が相殺する見通しであるためだ。
通常、小麦はどのような土地でも生産が出来てしまうため最終的に生産の帳尻が合うことが多いのだが、ロシアの侵略戦争によって治安が悪化しているウクライナが計画通りに増産が出来るとは考え難く、さらに今年は秋まで小麦生産の下振れ要因となるラニーニャ現象の継続が見込まれていることを考えると、生産のリスクはむしろ下向きだろう。
今回の統計で特徴的だったのは、国内需要が前年比+710万トンの7億8,935トンと増加している一方で、輸出需要は▲254万トンの2億1,000万トンに減少している点だ。
国内需要の伸びは堅調である一方、ウクライナの南部の主要港湾が稼働していないことなどが影響したためとみられる。
しかし全体では国内需要の増加から+456万トンの9億8,945万トンとなり、在庫も含めた供給量が前年比▲121万トン12億6,665万トンであるため、価格に対する説明力が高い需給率(需要÷供給)は78.1%と2015-2016年以来の高水準になることが予想されており、価格の上昇要因となる。
しかし、過去データを元にした分析では前年比でせいぜい15セント程度上昇するインパクトであり現在の価格上昇はこれ以上に供給が制限される可能性を織り込んでいると考えられる。
また、足下の価格上昇は原油・ガス価格の高騰に伴う生産コスト(肥料、燃料・電気代)の上昇が織り込まれている可能性は高い。
米国の生産コストデータを元に、エーカーあたりの肥料価格を計算すると2021年以降のデータはまだ発表されていないが、2021年の肥料代が56セント、2022年が70セント、2021年の電気代が39セント、2022年が45セントに上昇することが見込まれている。
2022年は両者を合計すると115セントとなる。2016年~2022年の小麦生産コストに占める両者の比率は各々13.2%、3.6%。少し粗い分析となるが両者を合計すると16.8%、115セントを基準に計算すると小麦の生産コストは685セントに上昇する見通しとなる。
これは2020年の320セントの2倍を超える。少なくともこれだけで3ドル程度の上昇要因になるということだ。
今後はこのコスト上昇分を企業が吸収するのか、消費者に転嫁して消費者が負担するのかといったことを真剣に考えざるを得なくなる。
恐らく調達に関しては長期契約を締結しているところが多いと推察されることから調達自体は問題がないだろう。
しかし、価格面は今後、豊作になるあるいは急速に進んでいる円安が反転するといったことがなければ高い水準で購入せざるを得ない。穀物類の輸入金額のGDPに占める比率は0.1%と低いがこれらの価格上昇は我々国民の生活に直結する部分であるため、社会的な影響も含めてそのインパクトは小さくないのではないか。
主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
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