CONTENTSコンテンツ

ドル円相場 歴史的高値との比較
  • MRA外国為替レポート

2022年4月18日号

◆先週の市場総括


先週はドル円相場の上昇が際立った。週初は124円ちょうど近辺で始まり早々に125円台をつけた。2015年の高値である125円80銭台を前にやや伸び悩んだが、水曜日にはこれを突き抜けて20年ぶりの高値へ上昇。一時反落したが週末は126円台半ばで取引を終えた。

FRB地区連銀総裁やハト派とみられている理事からもタカ派発言が相次いだ。5月会合での0.50%利上げやその後数次の会合でも0.50%利上げを示唆。インフレ抑制重視姿勢が一段と鮮明に。

発表された米国の消費者物価、生産者物価、輸入物価はいずれも予想を上回り上昇率が加速した。米10年債利回りは2.8%台に上昇。日米金融政策格差を意識してドル高円安が強まった。

先週は、ニュージーランド準備銀行、カナダ中銀がともに0.50%の利上げを実施した。一方ECBは理事会で想定ほどのタカ派姿勢を示さず。ユーロ安ドル高に振れ週末は一時1.08割れへ下落した。ドルインデックスは100ポイントに上昇。

米国株は長期金利上昇でハイテク株、高PER銘柄を中心に軟調。日経平均も26,000円台前半に下落。ただ週末は27,000円の大台を回復した。

月曜日の東京市場で日経平均は反落。前週末の米国株がハイテク株中心に下落。米金融引き締めへの警戒感が根強いなか、中国株が感染拡大・ロックダウンの影響で大きく下落したことも重石となった。

寄付きから下落して26,700円台で推移し、一時週末引値に戻したが上値重く、引けは▲164円安の26,821円。

為替市場では円が独歩安。ドル円相場は大きく上昇。124円ちょうど近辺で始まり朝方には40銭へ、さらに午後は124円90銭近辺へ。アジア時間に米10年債利回りが2.78%に上昇しドルを押し上げた。

欧州市場では125円40銭へ上昇した後、2015年の高値である125円80銭を試す動きとなり125円70銭台。ユーロ円相場は136円ちょうどから135円50銭に下落してもみ合ったが136円に反発してもみ合い、さらに欧州市場にかけて上昇し137円ちょうどをつけ、136円80銭でもみ合いとなった。

ユーロドル相場は1.0940~1.0950で始まり、早々に下落して1.0880~90でもみ合い。欧州市場に入ると反発して1.0930へ戻した。

米国株は大幅下落。NY連銀の調査で1年の期待インフレ率が前月6.0%から6.58%に上昇。ハト派とされるシカゴ連銀総裁が5月のFOMCで0.50%の利上げを示唆。金融引き締めへの警戒感が強まった。

米10年債利回りは一時2.75%に低下したが再び2.79%へ。

NYダウは前週末比▲413ドル安の34,308ドル。ナスダックは▲299ドル安の13,411ドル。VIX指数は+3.21ポイント上昇して24.37。

10年債利回りは引けにかけやや低下して2.77%で引け。

ドル円相場も上昇一服となり125円40銭近辺で引け。ユーロ円相場は136円40銭~50銭に反落。ユーロドル相場は1.0880割れに下落した後、1.0880~90で引け。ドルインデックスは一時100の大台をつけ99.97。原油価格WTI先物は94.29ドルに下落した。

火曜日の東京市場では日経平均が大幅続落。前日の米国株が金融引き締め懸念で大きく下落。中国での感染拡大、ロックダウンによる景気不透明感が重石となった。

またこの日発表予定の消費者物価指数への警戒感で様子見姿勢も強く、買い材料が乏しいなか下落。前日比▲486円安の26,334円で引けた。

ドル円相場は米10年債利回りの上昇に支えられつつも不安定な値動き。125円台前半で上下動。125円40銭で始まり朝方は50銭台~10銭台と高下。その後は40銭~50銭でもみ合い、昼過ぎには再び20銭近辺に下落した。東証引けにかけては125円70銭に上昇。

米10年債利回りはアジア時間に2.82%~2.83%近辺で推移した。欧州時間から米国時間朝方の雇用統計発表前にかけては前日の引けと同水準2.77%近辺に低下。注目された消費者物価指数が予想より弱かったことで2.68%まで低下した。

ドル円相場は米長期金利の動向に連れて125円50銭に下落した後、消費者物価指数の発表直後に124円80銭に急落。ただその後米10年債利回りは上昇し2.727%で引け。

ブレーナード理事があらためてインフレ抑制が最重要課題と述べたこと、10年債入札が不調だったことから金利を押し上げた。

ドル円相場は持ち直し。125円20銭中心に上下した後、引けは40銭近辺と東京市場朝方と同水準。ユーロは下落。ウクライナ情勢の悪化は重石。ユーロ円相場は東京市場朝方に136円40銭で始まりドル円相場と同様に高下して20銭~40銭で上下、夕刻にはやや持ち直し30銭~60銭で上下した。

発表されたドイツZEW景況感指数(4月)は前月▲39.3から▲41.0に悪化した。欧米市場では一貫して下落、一旦は136円ちょうどで持ち直したのちに続落して米国市場の引けは135円60銭~70銭台。

ユーロドル相場は東京市場朝方に1.0880で始まった。その後は次第に下落して夕刻は1.0860~1.0870。米雇用統計前に1.0850に下落していたが発表を受けて一時1.090に反発。しかし続かず急反落して1.0830近辺で引けた。

ドルインデックスは100.32と100の大台に乗せて引け。

米国株は下落。朝方は弱い消費者物価指数、コア指数がピークアウトした可能性を材料に買い先行。NYダウは一時+300ドル超上昇。しかしブレーナード理事の発言で金融引き締め懸念が再燃して反落。NYダウは▲87ドル安の34,220ドル。ナスダックは▲40ドル安の13,371ドル。VIX指数は▲0.11ポイント低下して24.26。

発表された米国の消費者物価指数(3月)は前月比+1.2%と前月+0.8%から上昇加速、前年同月比も+8.5%と前月+7.9%から加速して予想+8.4%を上回り40年ぶりの高水準となった。

ただコア指数は前月比+0.3%と前月+0.5%から上昇ペースが鈍化し予想を下回った。前年同月比は+6.5%と前月+6.4%から加速したものの予想+6.6%を下回った。市場ではインフレがピークアウトしつつあるのではないか、との見方が台頭した。

水曜日の東京市場では日経平均が大幅反発。米長期金利上昇が一服。米国の消費者物価指数の発表をこなし事前の警戒感がほぐれた。上海のロックダウンが一部解除され中国景気への懸念が緩和したことも支え。アジア時間に米国株先物が堅調に推移したことも心理を改善した。

日経平均は26,500円近辺で小幅高寄りした後は一貫して上昇し、引けは前日比+508円高の26,843円。

ドル円相場は125円40銭で始まり底固く60銭近辺を中心に上下。その後、午後に日銀の黒田総裁が現状の超金融緩和策を粘り強く継続する、と述べたことであらためて内外金融政策の違いが意識されて大きく円安が進んだ。

ドル円相場は126円30銭に上昇しておよそ20年ぶりのドル高円安。夕刻は126円ちょうど~20銭で推移した。ユーロ円相場は135円70銭台で始まり136円ちょうど~10銭でもみ合いの後、黒田発言で136円80銭へ急騰した。

ユーロドル相場は1.0830で始まり概ね横ばい。1.0840に上昇した後は1.0820~40で上下した。欧米市場では米長期金利の低下でドル高は一服。ユーロが上昇。

木曜日のECB理事会でタカ派スタンスが確認されるとの思惑から先取りしてユーロが上昇。ドル円相場は125円60銭に反落し、一時126円ちょうどに反発する場面もあったが125円40銭に下落した。

引けはやや戻して125円60銭~70銭。米10年債利回りがさらに低下して一時2.6%台をつけ引けはやや戻して2.702%。

FRBウォーレン理事は、5月会合で0.50%の利上げを支持。6月、7月の会合でも続けて0.50%の利上げを行う可能性を示唆した。ただ2年債利回りは2.362%に低下。

ユーロドル相場は1.0810近辺から1.0890へ上昇して高止まり。ユーロ円相場は136円80銭~90銭で高値引け。

米国株は反発。長期金利の上昇一服でハイテク株に買い。消費関連株も買われた。業績・決算に応じて強弱。決算期待で自律反発狙いの買いも入った。NYダウは+344ドル高の34,564ドル。ナスダックは+272ドル高の13,643ドル。VIX指数は▲2.44ポイント低下して21.82。

原油価格WTI先物は上昇して104.25ドル。

発表された米国の生産者物価指数(3月)は前月比+1.4%と前月+0.8%から上昇が加速して予想+1.2%を上回った。前年同月比は前月の+10.3%から+11.2%へ加速した。

コア指数も同様に+0.2%から+0.9%へ、前年同月比は前月の+8.7%から+9.2%へ加速。

この日は利上げも相次いだ。ニュージーランド準備銀行は1.00%から1.50%へ0.50%利上げ。市場の0.25%利上げを上回った。カナダ中央銀行は0.50%から1.00%へこちらも0.50%の利上げを行った。

木曜日の東京市場では日経平均が続伸。27,000円の大台を回復した。前日の米国株高を受けて買いが優勢。米長期金利上昇一服でハイテク株、グロース株が堅調。売り方の買い戻しも入った。

中国当局による景気刺激策への期待で中国株が堅調に推移したことも支え。ただ後場には伸び悩んだ。引けは前日比+328円高の27,172円。

ドル円相場は上値重く、125円70銭から20銭に下落。60銭に反発したが、午後から夕刻、欧州市場にかけては125円10銭~40銭で上下動。ユーロ円相場は136円80銭~90銭で始まり50銭~70銭で上下。欧州市場では125円50銭~90銭で上下してECB理事会前には136円70銭。

ユーロドル相場は1.0890で始まりややユーロ高ドル安に振れて1.0910~20でもみ合い。

注目のECB理事会・ラガルド総裁の会見は市場の事前のタカ派警戒感ほどではないと判断された。ユーロは大幅下落。ユーロドル相場は1.0760へ急落。ユーロ円相場も135円60銭へ下落。ドル円相場は上昇して126円ちょうどをつけた。

ECB理事会では、資産購入を7月~9月に終了する計画の妥当性が強まったとし、6月の会合で終了時期を決定する、とした。利上げは資産購入終了後、数週間から数か月のうちに実施として幅広い時期を設定したが、年内の利上げ開始の可能性が強まった。ただ想定ほどタカ派ではなかった。

一方、米長期金利は強い物価指標は当局者のタカ派発言を受けて上昇。10年債利回りは2.827%へ、2年債は2.456%へ上昇した。

ドル円相場は125円70銭に下落した後、反発して125円90銭~126円ちょうどでもみ合い引け。ユーロ安は一服し反発。ユーロドル相場は1.0830、ユーロ円相場は136円50銭に上昇し引けは136円30銭台。ドルインデックスは100.31と大台を回復。

米国の輸入物価指数(3月)は前月比+2.6%と前月+1.4%から上昇が大きく加速。ミシガン大学消費者信頼感指数(4月速報)は65.7と前月59.4から大きく上昇して予想58.8を上回った。

小売売上高(3月)は前月比+0.5%と前月+0.8%から伸びは鈍化したが、除く自動車では+0.6%から+1.1%に加速した。

クリーブランド連銀総裁は、リセッションに陥れたり好調な労働市場にダメージを与えたりすることなく十分に迅速なペースで利上げを実施、制約を受けている供給に需要を均衡させるのに必要なペースで金融緩和を縮小する、と述べた。

NY連銀総裁は5月会合で0.50%の利上げは妥当、現在の金利水準は低すぎ迅速に引き上げる、とした。

米国株は反落。金融決算良好で金利上昇もあり金融株はしっかりも、インフレ懸念から全般に軟調。長期金利上昇でハイテク株、高PER銘柄中心に下落した。NYダウは前日比▲113ドル安の34,451ドル。

ナスダックは▲20ドル安の13,351ドル。VIX指数は+0.88ポイント上昇して22.70。原油価格WTI先物はEUがロシア産原油の輸入禁輸を検討との報道で上昇し106.95ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が3営業日ぶり反落。FRB当局者からタカ派発言が相次ぎ金融引き締め加速への警戒感が強まり、米長期金利が上昇。ハイテク株中心に下落したことから軟調となった。引けは前日比▲78円安の27,093円。

ドル円相場は東京時間に大きく上昇。125円90銭で始まり126円40銭に上昇すると、東証引け後に126円70銭近辺に上昇した。ただ欧米市場ではドル高円安は一服。反落して126円40銭~50銭でもみ合った後、126円40銭近辺でもみ合い引けた。

米国株式・債券市場は休場。ユーロ円相場も136円30銭で始まり90銭に上昇。その後は136円60銭~90銭で上下した。

欧米市場では136円60銭中心にもみ合いそのまま引け。ユーロドル相場は東京市場では1.0830近辺で始まり上値重く1.08ちょうど~10で推移した。欧米市場でも1.0810近辺で動意薄。

発表された米国の経済指標は強め。NY連銀製造業景気指数(4月)は前月▲11.8から大きく改善して24.6。ただ6か月先景況指数は36.3から15.2に低下。

鉱工業生産(3月)は前年同月比で+0.9%と前月+0.5%から伸びが加速。設備稼働率は77.6%から78.3%へ大きく上昇して3年超ぶりの高水準となった。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標、ベージュブック

FRB当局者からタカ派的な発言が相次ぎ、市場は5月会合での0.50%利上げ、さらに次回以降数次にわたる0.50%連続利上げを織り込んだ。着地は3%を見込みつつある。

こうしたなか経済指標および今週はFOMCの政策判断の基礎となる地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表される。引き続き米金利先高感を支え長期金利を押し上げるか。

火曜日 住宅着工件数(3月、季節調整済み年率換算、予想1,740千戸、前月1,769千戸)

水曜日 中古住宅販売(同、予想575万戸、前月602万戸) ベージュブック(日本時間木曜日未明3:00)

木曜日 米週間新規失業保険申請件数 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月、予想20.5、前月27.4)

2.日本の貿易収支

水曜日に日本の貿易収支(3月)が発表される。前月は▲6,680億円の赤字。3月予想は▲50億円ほどの赤字への縮小予想。ただ前年同月は2,270億円の黒字で、前年同月比では大きく収支が悪化する見込み。

円急落の背景のベースには貿易収支の悪化があり、赤字幅が想定よりも大きいようだと円先安感を刺激しやすいので留意を要する。

3.PMI景況感指数

ウクライナ情勢の悪化、エネルギー不安、により欧州の景気懸念が強まるなかでも、ECBはタカ派に傾き量的緩和を縮小し年内利上げを視野に入れている。欧州の景況感はさらに悪化しないか。

一方、米国景気は依然として堅調だが、こちらも急速な金融正常化・引き締めが視野に入る。景況感が維持されるか、懸念が強まるか。欧米間の景況格差は拡大し、ひいてはユーロ安ドル高、あるいは100ポイントの大台に到達しているドルインデックスのさらなる上昇を後押しするか。

このほか、月曜日に中国で月次の重要指標(小売売上高、鉱工業生産、都市部固定資産投資)および1-3月期GDPが発表される。

◆今週のMRA's Eye


ドル円相場 歴史的高値との比較

ドル円相場が2015年、あるいはその前2007年につけた125円近辺の高値を抜き、およそ20年ぶりの歴史的高値水準となった。もはや次の高値としては、2002年初の135円となる。その時々と現在を比較して今後の動向、リスクを探るヒントとしてみよう。

2015年は、いわゆる「黒田バズーカ」、アベノミクスのもとで3本の矢のひとつである「大胆な金融緩和」、超金融緩和のもとでドル円相場が125円台をつけた。

ドルインデックスは96~98と、現状の100よりもやや低い水準だが概ね変わらず。ユーロドル相場は1.08~1.11近辺で現在よりもややユーロ高ドル安だ。

米2年債利回りは0.7%、10年債利回りは2.4%であり、こちらは現状よりも低い。とくに2年債金利が低く、イールドカーブは立っていた。

インフレ連動債が示す期待インフレ率は1.8%で、現在の2.9%より低い。この点では米金利先高感は今より弱かった。

一方、円安要因として、日本の貿易収支が悪化していたことが共通点だ。

2011年の東日本大震災の影響で原発が稼働停止してエネルギー輸入が急増。日本の貿易収支は大幅な赤字に転落し、その後持ち直し傾向にあったがなお赤字ないし均衡水準だった。

米国経済は2012年にリーマンショックの痛手を克服して底打ち、明確に回復傾向にあった。2013年には日本の貿易収支は均して月次で1兆8千億円程度の巨額となった。そこに日本の金融緩和強化、異次元の金融緩和が円安を促した。

米国のファンダメンタルズによるドル高圧力、日本の収支悪化、超金融緩和による円安圧力、という点では、2015年と現在には共通点も多い。

ユーロ円相場は140円程度で現状とほぼ同様に高値圏にあった。なお原油価格WTIは2015年の50ドル近辺に対し、現状が100ドル超と2倍になっている。

東日本震災後は輸入数量増による収支悪化だったが、現状は価格上昇による収支悪化である点が異なる。

その前に120円台半ばをつけていたのは2007年央だ。値動きが極めて荒かったが、当時は日本の個人投資家の為替証拠金取引いわゆるFX取引が市場で注目されていた時期だ。

ユーロドル相場が1.35と現在に比べかなりユーロ高ドル安水準にあり、ドルインデックスは83近辺でむしろ歴史的安値水準にあった。

米金利の水準は高く、2年債、10年債、ともに5%程度の高水準。期待インフレ率が2.7%と現状と概ね同水準の高さにあった。

しかし米国以外の金利が極めて高かったことが特徴的だ。

欧州の10年債利回りは5%弱で米国に迫る水準。イギリスの10年債利回りは米国を上回る5%台だった。オーストラリアの金利はさらに米国より高い6%台だった。ユーロ円相場は160円~170円、ポンドは250円、と高騰していた。

2000年代前半は世界的に好景気が続き、新興国経済にも脚光が当たっていた。2001年にBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)なる言葉が生まれ、実際に広くこれら各国の隆盛が意識されたのもこの頃だ。

世界的好景気のもと、日本の貿易黒字は月次で1兆円程度に拡大していた。しかし極めて大きな内外金利差で、円キャリートレードが活発化し、貿易黒字の円高圧力を、内外金利差による投機や投資による円安圧力が大きく上回って円独歩安となっていた。

内外金利差が現状に比べて圧倒的に大きく、米国金利が突出して高かったわけではないこと、日本が貿易黒字でベースでは円高圧力があったことは現在との違いだ。

世界的好景気でリスク選好が極めて強かったことも、円安・投機的な円売りを促す点で、特徴的だった。

なお、この状況は、過度なリスク選好・投機取引の極みで生じたクレジットバブルの崩壊、2008年のリーマンショックで一転。円安も終焉した。

この頃と現状では状況が大きく異なることがわかる。

市場は当時ほど楽観的ではなく、また内外金利差がいずれも拡大している点は共通するが水準が全く異なる。当時は米国ひとり勝ちではない点も、米国経済の優位性が際立つ現状とは異なっている。

次の高値として意識されているのが2002年初の135円だ。当時が現在と全く異なるのはドルの強さだ。ドルインデックスは120と現在の100よりも2割もドル高に振れていた。

ユーロドル相場は0.86と極めて低いユーロ安ドル高水準にあった。ユーロ円相場は115円~117円程度と現在よりも大きくユーロ安円高水準だ。

その他の状況をみても現状とは異なる点が多い。

米欧の10年債利回りは5%程度でほぼ同水準。日本からみて内外金利差が大きかったものの、円独歩安ではなく、明らかにドル独歩高だった。

長期的なドル高基調の頂点で、長期的にみて100近辺が高値であるドルインデックスの動きからみれば突出している。

1995年に、ドル安政策からドル高政策に180度転換。ドル安に歯止めをかけるべく、1995年以降、数字にわたるドル買い協調介入が実施された。その後、米国では空前のITブームとなり投資が活況となった。

米国経済は海外から資本を吸収しながら、2000年のITバブル頂点へと突っ走って行った時期だ。こうした状況がドルを長期的に押し上げる要因となった。

傍らで日本は金融危機にあり1997年には日本売りで140円台にドル高円安が進み、ロシア危機による大型ヘッジファンド破綻でポジション解消により一気に110円割れへドル安円高となるなど投機による乱高下もあったが、ドル高の基調は続いていたと考えられる。

1999年以降のドル高には、新通貨であるユーロの創設も影響したのではないか。ユーロは1999年初に誕生した。ユーロは誕生後に一貫して下落基調となった。推測にはなるが、1998年頃はユーロ誕生に向けた欧州通貨買いが一時的にドルを押し下げた可能性がある。

しかしそれが実際の誕生で失速し始めたとみられる。通貨ユーロの発足前は欧州には様々な高金利通貨・国債が存在した。イタリア国債はその好例だろう。

ユーロ誕生により、金融政策が統一され、域内金利は一本化。当然、イタリア国債やポルトガル、スペインなど、高金利国債が消失した。

それまでそれら欧州高金利国債に流入した資金が、それ以上の金利低下・価格上昇が見込めなくなり、ドルや米国債へと還流し、これがユーロ安ドル高をもたらした可能性が考えられる。

2002年につけたドル円相場の135円は、そうした特殊な環境、極めて強いドルのもとで生じた水準だと考えられる。

そうしてみると、今後、ドル円相場が135円をつけるには、新たに材料が必要なようにみえる。

確かに、内外金利差の拡大、日本のみが超金融緩和のもとゼロ金利に維持される状況、は過去の円安と類似している。

コロナ禍に加えウクライナ危機でエネルギー価格その他資源価格が高騰し日本の対外収支が大きく悪化して円安圧力がかかっていることは、過去にはみられなかった円安要因だ。

日米金利差が拡大傾向を続け、日本の貿易赤字が継続するなか、方向としてドル高円安予想を覆すことは難しそうだ。ピークアウトを感じさせる材料が顕在化するまで、なお時間軸では、半年程度はありそうだ。

ただ、だからといって価格軸において、水準を無視してどこまでもドル高円安が続くとは限らない。ここから130円を超える水準はレッドゾーン、行き過ぎだろう。

ドルインデックスの上昇は、米国が好景気にありインフレ抑制が最大の課題であるうちは許容されるだろう。しかし状況が変われば、歴史的な高水準が維持可能ではなくなる可能性がある。

当面は125円~130円のゾーンが高値圏とみて、130円~135円は過熱領域。仮に突入するとしても極めて短時間、との見方がメインシナリオとなる。よほどのドル全面高、円全面安、双方の要因が重ならない限りは到達が難しいのではないか。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
【MRA外国為替レポート】について